横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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双子ちゃん再び登場!




164話 横島 七草双子姉妹に再び会う!!

七草家の双子姉妹の七草香澄と七草泉美は、姉真由美を変態の魔の手から救うべく、横島の自宅に、親兄弟や家人に黙って家を飛び出し向かっている。

 

現状、移動手段として便利な無人タクシーは利用することができない。

22:00以降は、まだ中学生である二人だけでは運行制限が掛かり、乗る事が出来ないからだ。

 

そこで乗り慣れていない電車での移動を余儀なく無くされたのだが……

「泉美、ここ何処?」

 

「えーと、多摩動物園って書いてあります」

 

「あれ?八王子じゃないの?」

 

「香澄ちゃん、何処を調べたのですか?」

 

「これ」

 

「さっきの駅で乗り換えが必要だったみたいですよ」

 

「あれれ、間違えちゃった」

 

案の定、路線を間違えてしまった様だ。

 

 

 

「うーん、電車の数が少ない。こうなったら一直線で加速魔法を使って走った方が速そうだよ」

 

「香澄ちゃん。ここから横島さん宅までは10㎞はありますよ。せめて、中央線、京王本線に出ましょう」

 

「駅ついても、電車が直ぐ来るかわかんないから、このまま行こうよ。じゃあレッツゴー」

香澄は加速魔法を展開する、泉美はしぶしぶと言った顔で、香澄の後に続く。

二人は山手の裾を走り北東へと走り出し横島が住む八王子方面へと向かった。

 

 

 

 

しばらく走り、浅川にかかる橋を渡ろうとした際……

「香澄ちゃん、危ない!」

 

「うわっ!」

 

突如として氷の礫が二人に降り注ぐ、明らかに魔法攻撃を受けたのだ。

泉美がそれに気が付き、香澄を掴み、大きくジャンプして避けたのだが、そのまま、河川敷へと落下する。

二人は、魔法により軟着地に成功したが、既に、河川敷の暗がりで4名の男に囲まれていた。

 

「あんた達、いきなり攻撃してくるなんて!!ボクと泉美じゃなきゃ、大怪我していた所だよ!!」

泉美は香澄を背にして、怯まずに男たちを睨みつける。

 

「香澄ちゃん………」

泉美は腕に巻いているCADに手をやり、構える。

 

男達は無言で、それぞれが攻撃魔法を二人に対し発動する。

起動が早く、とてもCADを操作している様にはとても見えなかった。

 

「何!?速い!でもいくよ泉美!!」

「はい!」

 

二人は密着したまま、お互いが同じ魔法式の構築し高強度の防御魔法を展開する。

彼女らはお互いの魔法が全く干渉せず、魔法構築を分担し魔法を素早く展開することや、より強力な魔法を構築することが可能なのだ。

俗に乗積魔法と呼ばれ、高度な技術が必要なのだが、この双子はそれをいとも簡単に構築でき、二人が揃う事で無類の力を発揮する事ができる。

 

防御が成功すると、香澄と泉美は乗積魔法でドライアイスの散弾(ドライミーティア)を当たりにランダムにばらまき、反撃けん制する。

 

しかし、男たちは加速魔法や防御魔法でそれぞれ回避、防御を行っていた。

 

「速い!やっぱりそうだ。CAD無しで魔法を発動してる!!」

 

「……お姉様が言っていた。吸血鬼かもしれないです」

悪霊に取り憑かれた人物の中ではCADを使わずに魔法を発動していた人物もいたことが確認されている。どうやっているのかは不明だが、ミアと同様に力を得た悪霊はそのような事も可能になるらしいのだ。

しかも、悪霊のターゲットは魔法師だ。

特にサイオン量が多い魔法師を狙っている。

そんな中、運悪く出くわしてしまった。

しかも、この双子、七草家の一族とあって、そこらへんの魔法師に比べるとサイオン量は多い。

悪霊にとっては絶好の獲物なのだ。

 

「吸血鬼って、お姉ちゃんや十文字さんでも、手こずっていたバケモノのこと?」

 

「はい」

 

「……逃げるよ泉美!」

そう言って香澄と泉美は霧を発生させる魔法を展開、一気に周囲30mを視界を遮る程の霧を発生させる。暗い夜の戦闘で視界が悪い上に、これでは目視での確認は不可能になるだろう。

二人は霧の目くらましを発生させると同時に加速魔法を使い離脱をはかる。

 

しかし、霧を抜けた先に、既に男が一人待ち構えていた。

その男は目の色を金色に怪しく輝かせている。

男は霧の中、正確に双子の二人の位置を把握していたようだ。悪霊の能力なのだろう。

 

 

「な!?」

「香澄ちゃん!」

 

 

金色の目の男は接近戦の構えをし、香澄と泉美に迫る。

 

香澄が防御障壁を展開しつつ、泉美が加速魔法で回避。

しかし、後ろからいつの間にか、他の男が魔法を展開し激しい風を起こす魔法を展開させ、二人を防御障壁ごと、吹き飛ばす。

二人は吹き飛ばされながらも空中で軌道修正し地面へと着地する。

 

そして、また、男たち4人に囲まれる元の展開に戻ってしまった。

 

「ヤバい……勝手に出て来ちゃったのはまずかったかな」

「うん」

 

金色の目の男が近づいてくる。

「我々の同士に迎えるにふさわしい肉体だ……有効利用させてもらおう」

男は沈黙を破り、ここでようやく言葉を発した。

 

「この変態にロリコン!!泉美には触らせないんだから!!」

「香澄ちゃん多分意味が違うと思う」

香澄は金色の目の男に威圧するように叫ぶがどうやら勘違いしている様だ。

泉美はこんな状況だが、さりげなくフォローを入れる。

 

 

そして、他の囲んでいる男たちもじりじりと間合いを詰めていく。

 

 

香澄と泉美は意を決して、反撃の構えをとるが……

 

正面から迫ってくる金色の目の男が、突如として勢いよく斜め上に吹っ飛ぶ。

 

「へ?」

思わず間抜けな声が出る香澄。

一瞬何かが、金色の目の男の横を通り過ぎた様にも見えた。

 

 

そして、周りを見渡すと、迫ってきた男たちも次々と吹っ飛んで行き、一か所に落下し4人折り重なるように倒れる。

 

「何が起きたの?」

「香澄ちゃんこれは……助かった?」

 

先ほどまで、二人を追い詰めていた男たちが何が何だか分からないうちに、折り重なり倒れピクリとも動かない様子を呆然と見ていた。

 

 

後ろから不意に陽気そうな声で話しかけ掛かる。

「ん?あれ?なんで双子ちゃんがこんなところに?」

 

そこにはコート姿の男が何も無かったようにニヤケ顔で近づいてきていた。

香澄にとって、大事な姉を盗ろうとする張っ倒したい男、この男を殴り倒すために、香澄たちは家人に黙ってここまで来ていたのだ。

 

「んん?……あああ!!横島!!」

香澄は暗がりの中目を凝らし、近づいてくる男を漸く確認出来た様だ。

 

「香澄ちゃん、先輩なんですよ。呼び捨てはダメです」

泉美も確認できたようでホッとした表情をする。

 

 

その男は横島だった。

マリアに自宅を放り出され、買い物を言い使った横島は、人目が付きにくい浅川の河川敷を走り、府中市と国立市の境目にある24時間スーパーへと向かっていたのだ。

そんな中、戦闘の気配を察知し、加速しここへたどり着くと、七草の双子姉妹が悪霊に取り憑かれた人間に襲われていたのだ。

そして、金色の目の男は霊気を纏わせた拳で殴り飛ばし、他の男も同様に蹴りや拳で吹き飛ばしたのだ。

勿論吹き飛ばした4人は一か所に集め、氷室の拘束術式でしっかり、捕らえ、霊気を今も奪っている。

 

 

「子供は寝る時間だぞ。夜遊びは大人になってから!」

横島は軽い感じで二人に注意するが……

 

「なんでお前がこんなところに居るんだよ!!お姉ちゃんはどこ!?」

香澄は横島を睨み付け、こんな事を言う、

 

「ありがとうございます。横島さん、助かりました」

泉美はどうやら状況を理解し、横島が4人の男を倒したのだと判断し、お礼を言う。

 

「へ?泉美どういう事?このバケモノたちを、こいつが倒したっていうの?一瞬で?ウソだ!」

 

「たははははっ、バケモノじゃないよ。悪霊に取り憑かれた人達だ。一歩間違えば、香澄ちゃん達もこうなってたんだ。……家の人に言われなかった?夜に出歩かない様にって」

 

「……申し訳ございません」

泉美は素直に謝る。

 

「えーっと泉美ちゃんだっけ、素直なのはよろしい」

 

横島は泉美の頭をやさしく撫でる。

 

「香澄ちゃんは、お尻ぺんぺんの刑じゃ!!」

そう言って横島は香澄をすっと小脇に抱える。

 

「ボクにさわるな変態!!な……なに?え……やめ!!」

 

横島は容赦なく香澄のお尻を数度叩く。

 

「痛!!へんたーーーい!!痛いって!!やめてーーー!!」

 

泉美はそんな横島と香澄を手をフラフラと前に出し、オロオロとしながら見ている事しかできない。

 

横島は香澄を下ろす。

香澄はしゃがみ込みお尻をさすりながら、横島を涙目でキッと睨み付ける。

 

横島は真剣な顔をし、そんな香澄に諭すように話しかける。

「香澄ちゃん、こんなところで本当に何やってたの?俺が来なかったら、本当にとんでもない事になってたところだ。真由美さん……お姉ちゃんを悲しませたいの?」

 

「ううう……だって……お姉ちゃんが取られると思ったから…………」

香澄は俯き、涙をポロポロとこぼしながら、小声で話し出す。

 

「あの、横島さん……香澄ちゃんをあまり責めないで下さい。シスコンの香澄ちゃんは横島さんにお姉さまをとられると思って、それで、帰ってこないお姉さまを心配して追いかけてきたんです」

 

「はぁ、そう言う事か……お姉ちゃんをって、そんな事あるわけないじゃん。俺にはそんな資格もないし……香澄ちゃん……」

横島はそう言って香澄の頭をやさしく撫でる。

 

「……ごめんなさい」

未だ涙目の香澄は小声で謝る。

 

「バカだな、香澄ちゃん。それと、真由美さんは俺の事、何とも思ってないと思うし……」

横島がそんな事を二人に言ってしまった。

 

「バカはそっちだ!!」

香澄はそれを聞いて、いきなり横島の腹にパンチを入れる。

 

「グボッ!……あれ?なんで?」

 

「………フンだ。鈍感!‥…………まあ、助けてくれたことで、チャラにしてあげる」

 

そんな香澄の行動に、泉美が代わりに何度も横島に謝る。

 

 

 

「はあ~、まあ、いいや、香澄ちゃん、泉美ちゃん、お父さんに連絡して迎いに来てって……でも、このまま置いておくわけにも行かないし……」

 

 

「ダメ!!それはダメ!!」

香澄は弘一からは説教を喰らうのがよっぽど怖いのか、慌てて横島を止めようとする。

まあ、どちらにしろ、説教は確定だが……

 

「まあ、ここからだと近いし、つれて帰るか……」

 

「連れて帰るって……まさか!!ボク達にいかがわしい事を!!このロリコン変態!!」

香澄は顔を真っ赤にして、横島に噛みつく。

その横で、泉美はまたしても、頭を下げ、横島に謝っていた。

 

「あのな~、ロリコンでも変態でもないし、俺は年上派なんだよ!」

 

「やっぱ、お姉ちゃんを!!」

 

「は…話が進まん。……家には今、真由美さんが居るし、一緒に帰った方が、まだ、心強いだろ?……今俺の家には、マリアやリーナとか……他の友達もいるし」

 

「ほかにも、女の人を連れ込んで!!何をしてる!!お姉ちゃんが可哀想だ!!」

香澄はそう叫んでいたが、先ほどとはどうやら意味合いが違う……何かの心境の変化か?

 

泉美は何故か顔を赤くし……

「お姉さまと他のお姉さま方が……」

ほっておいてあげよう。

 

「はぁ~、何もないから………まあいいや、ここから6㎞位だけど、加速魔法でついてこられる?おぶった方が良い?」

 

「だ、大丈夫です」

「ボク達を舐めてる?余裕だ!」

 

 

「はぁ~、じゃあ、ついて来て……」

横島は、ため息を付きながら走り出した。

 

 

 

 

 

 

その頃、横島宅では……

「マリア、その……昔のタダオってどんなだった?」

 

「記憶喪失の・横島さん・そのものです」

 

「そうなんだ。私だけ、昔のタダオに会っていたんだ……私・だ・け」

リーナはそう言って、真由美を見据える。

 

「……横島くんはよく生徒会でお茶や紅茶を入れてくれていたかしら……とてもおいしかったわ」

真由美はピクっとしながらも、平静を装い反撃する。

 

「フン……マリア、タダオは私の事をどう思っていると思う?」

 

「妹」

マリアは一言

 

「……い、妹?どういうことよマリア?」

 

「クスッ、やはりここはお姉さんの出番のようね。横島くんは年上の包容力で癒してあげるのが一番」

真由美は満足そうに頷く。

 

そんな、リーナとマリア、真由美で女子トークを繰り広げている横で、達也は身じろぎせず考えをまとめていた。

先ほどのマリアの横島の話は、色々と合点がいくところがあった。

なぜ、死を恐れていないのか……もしかしたら、自分は死んでもいいぐらいに思っているのかもしれない。

横島の死。それは今の達也にとって許容できることではなかった。

マリア曰く、このままの精神状態だと、横島は常に自分の死を考えずに行動をとるという事になる。

それを回避させるにはどうすべきか………

過去のトラウマが原因であることは分かっているが……その克服は困難だ…それは達也達が知らない過去の出来事だからだ。

横島は過去に囚われている……ならば……今を生きようとする力が必要……しかしどうすれば。

 

「ん?」

達也はふと声が漏れる。

深雪以外の事で、他人の事を真剣に考えている自分自身に気が付き、驚いたのだ。

 

(ふっ、これも奴の影響か……良くも悪くも人の心に入ってくる奴だ……しかし、自分だけ死に逃がれようなどとは、思わぬことだな…横島)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なかなか話が進まない……
ここを抜ければ、また話は加速するんですが……
次でチョコにまつわる話が全て終わりのハズ。
チョコだけで、何話使ったのか……

漸く本編に戻れます。
しかし、まだ、回収できていない話が二つあるんで、それらを終わらし、悪霊退治へ

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