横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。


六道家当主はこんな感じになってます。


49代目六道冥子の式神の説明を200文字程度追加してます。
冒頭に六道家の情報を400字程度追加いたしました。


167話 横島 六道家再び!!前

六道家……日本魔法協会に属せず、古式魔法の伝統派とも一歩引いた立場であるが、東北の氷室家と並ぶ、隠れた名家として知られている。

実際どのような力を持っているのかを世間では知られていない。

その実は陰陽術、特に式神を扱う技術に秀でた一族である。その中でも歴代当主が扱う式神は古式魔法で言う式神とはまったく異なる異質のもの……本物の鬼を式神として従えていたのだ。その力は、他の式神の能力とは一線を画する。因みに鬼とは西洋で言う悪魔と同義である。

その歴史は氷室家よりさらに古く平安時代までさかのぼる。平安時代から現代まで、その技術と強力無比な式神を脈々と受け継いでいたのだった。

 

世間では六道家は古式魔法等の術儀で使用する数々の道具や霊具、札などを手広く扱っている業界最大手の製造メーカーであり、全国規模で展開する販社でもあることは一般的に知られている。

その他にも、日本有数のお嬢様学校の経営、氷室家など共に霊脈や風水を使った農業教導事業なども手がけている。

政府内部では、内務省、宮内庁、農林水産源食料資源省などに強い影響力を持っているとも言われている。

 

 

 

 

 

 

横島と氷室家15代目当主氷室蓮は昼過ぎに東京の六道家本家に到着する。

付き人の向井麻弥は途中で別れ、東京の六道家古式魔法術具販売ショップの中にある氷室家のアンテナショップの方へ向っていた。

 

蓮と横島は、今は広大な六道家の敷地を通され、中庭に設けられている洋風のティーハウスに通されていた。

六道家当主は少し遅れてくるとの事だった。

 

「忠夫さん、氷室村を出ると高校生らしくするために性格を改変するようにしていると聞いてましたけど、全然変わった様にはみえませんね。要や彩芽は、明るい感じだと言ってましたが……」

氷室家の人達には予め、横島が20歳であることは最初に伝えている。そのうえで氷室村を出ると、高校生の振る舞いをするためにわざと性格改変し、高校生時代の自分の性格に戻している事を知らせていた。

 

「いえ、今も自制心で必死に抑えてるんです。蓮さんや麻弥さんの様にステキな方が近くに居ると、ドキドキが止まらなくて、今にも飛びついたりナンパしたしたくなるんですよ」

 

「あらあら、こんなおばさんに、嬉しい事をいってくれます」

 

「いや~、正直。蓮さんは20才そこそこと言っても全く違和感ないですからね。中学生の子がいるとは誰も思わないでしょう」

蓮は36歳だが見た目は一世代以上若く見える上に、色気むんむんの着物が良く似合う和風美女なのだ。容姿がよく似た要とは歳離れた姉妹と言っても違和感が無い。

しかし、今日は何時ものとは違い、パンツスーツのような動きやすい恰好をしている。それはそれで豊満な胸が協調されて色気がさらに溢れているのだが……

 

「ふふふふっ、ありがとう……それと、今の当主に会う際に、必ず身体強化の術と自身の防御を常に準備してくださいね」

蓮は微笑んでいたが、急に真面目な顔になり、横島に注意を促す。

 

「はぁ~」

横島は蓮が言ったその意味を十分理解していた。

溜息を付き、心の中では(やっぱりか)とつぶやいていた。

 

 

バタン!

大きな扉が大きな音をたて一気に開く。

 

「蓮おね~~~~~さま~~~~~~~~~~~!!」

 

舞踏会からでてきたかのような煌びやかなドレスを身に纏った若い女性が、いきなり蓮の胸に飛び込んできたのだ。

 

「芽衣、久しぶりですね」

 

「ああ~~~~~~ん!!お姉さま~~~~ん!!お会いしとうございました~~~~!!芽衣は芽衣は、一日千秋の思いでいつもお姉さまの事をお待ちしておりましたの~~~~~お姉さま~~~お姉さま~~~」

 

かなり百合百合した空間がこの二人の周りで出来上がっていた。

 

間延びした口調で蓮の豊満な胸に顔を埋め、ほんのり顔を赤らめ、涙目で嬉しそうにしている芽衣と呼ばれた女性こそ、六道家54代目当主六道芽衣子である。因みにあどけない顔をし、一見横島とそれ程年齢が変わらない様に見えるが年はこれでも28歳……勿論独身である。

蓮は高校を卒業してから、しばらく東京の普通の大学で学んでいた。その時の六道家で下宿しており、芽衣子と出会っていたのだ。

 

横島は六道家の厄災が降りかかるのではないかと身構えていたのだが、この展開には流石に呆気にとられるしかなかった。

 

「芽衣、今日は氷室家の当主としてきました」

 

「ああ~~~ん。お姉さまの香しい匂い~~~、このお胸の感触~~~~。あ~~~ん。芽衣は芽衣は」

六道芽衣子は蓮の胸に顔を埋めたまま、暴走しっぱなしだ。

どうやら六道芽衣子は蓮に対し、一方的に慕っている様だがその慕い方が尋常ではない。

要や彩芽を連れてこなかった事は正解だろう。

 

「芽衣!!」

 

「お姉さま~?」

 

「芽衣、何時までも、その様な振舞をしているのですか?」

蓮は芽衣の体をそっと離す。

 

「クスン~お姉さまに会えたのは久しぶりなんですもの~~」

 

「芽衣、あなたはもう、六道家の当主なのですよ。幼いあなたはもういないのです」

蓮は芽衣を優しく諭そうとする。

 

「だって、だって~お姉さま中々会いに来てくれませんし、お電話しても、なかなかつながらないし~」

 

「用事もないのに毎日かけてくるからです。私もお役目もありますし、家族もいます」

 

「クスン、クスン、お姉さまは私よりもあのインテリメガネ(敦信)の方が良いのですね~~~~」

 

「当然です。夫なのですから」

 

「クスン、クスン、グス……うぁ、うわーーーーーーーーーーーーーーーーんお姉さまに嫌われた~~~~~~!!あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!」

芽衣子は盛大に泣き喚き始めた!!

それと同時に芽衣子から強大な霊圧が膨れ上がり、同時に芽衣子の影から、とんでもない物が一気に現れたのだ。

 

ズバババババッズゥゥゥゥーーーーーーーーーン!!!!!

 

六道家当主が代々、使役している本物の鬼……12神将と呼ばれる強力な式神たちだ!!

芽衣子が泣くことによって、精神コントロールが制御不可能となり、暴走しだしたのだ!!

一体一体がとんでもない力を持つ式神だ。毎度毎度この暴走で、建物や街の一区画を吹っ飛ばしてしまうのだ。だから、六道芽衣子は滅多に外に出ない。出たら困るからだ。

 

さらにタチが悪い事に近代最恐と言われた49代目六道家当主六道冥子と同等の霊力を内包しているのだ。

一度暴走したら、芽衣子の霊気、霊力が切れるまで、暴れまくる。

 

蓮はそれを見越して、既に防御態勢をとっていた。

家人もそれを見越して、居住区や本館には招かず、広大な中庭にポツンとあるこのティーハウスに蓮たちを通したのだ。

勿論ティーハウス自体強力な結界を張ってあるが、激化した暴走に耐えうる事は出来まい。

 

 

しかし、凶荒に対し蓮は身構えていたが……暴走の嵐は訪れなかった。いや、ある一点に集中していた。

 

 

「いいいいいいやーーーーーーーーーーーーーーっ!!やっぱりーーーーーこうなったーーーー!!ふごっ!!ぐぼば!!がぼーーーーーーーーん!!」

 

何故か横島だけが、式神たちにもみくちゃにされていたのだ!!

 

そう、100年前と同じように……

近代最恐と呼ばれた式神使い49代目六道冥子と横島は当時知り合いだった。

17歳の頃の横島は何度となく、冥子にセクハラしようとして、式神で撃退された。ここまでは何時もの横島だ。

酷いことに、この49代目六道冥子、歩く厄災なのだ。何もしていないのに、冥子の暴走に毎度巻き込まれていたのだ。確かに当時の横島は今とは比べ物にならないぐらい弱かったが、ギャグ補正で大概は切り抜けられた。しかし、この六道家の式神暴走だけは、さすがの横島も毎度入院を免れなかったのだ。

この式神たちは、それ程強力な攻撃力を誇っているのだ。

 

 

 

「た…忠夫さん!……芽衣!!泣き止みなさい。芽衣!!」

 

「お姉さまに嫌われた~~~うわ~~~ん!!」

芽衣子はまだ泣きじゃくっている。

 

「私は嫌ってなどおりません。どうして嫌いな相手の家にわざわざ訪問するのですか?」

 

「クスン、嫌ってない……本当ですか~?」

 

「本当です」

 

「クスン、お姉さま大好き~~」

そう言って芽衣子は泣き止み、嬉しそうに蓮に抱き着く。

 

蓮は苦笑しながら、芽衣子の頭を撫で、漸く式神たちも落ち着きを取り戻す。

 

 

しかし横島は………チーーーーン

ビカラと言う大きな体躯の式神に上半身を飲まれた状態だった。……口からはみ出して見えているボロボロの下半身はだらんとし、ピクリともしない。

 

「ああ!忠夫さん!」

 

「あらあら~?あの子たち~怒ってるのじゃなくて~ぇ、嬉しがってる?」

 

「芽衣!」

 

バサラは横島を床に吐き出すが、他の式神たちは横島を囲んだままだ。

吐き出された横島はビヨーンと上半身だけ起き上がる。

「たははははっ、死ぬかと思った」

平気そうだ。

 

「忠夫さん、大丈夫ですか?」

蓮は横島を起きあがらせようと手を差し伸べる。

 

「たはっはははっ」

引きつった笑いをしながら自ら立ち上がる。

しかし、式神たちは横島になついて、そばを離れようとしない。

 

「蓮お姉さま~~この人はだ~れ?……うーーーーんでも見たことがある様な~~」

芽衣子は首を傾げながら横島の顔を覗き見る。

 

「横島忠夫さん……私達の家族です」

「よ、横島忠夫です。よろしくお願いします」

蓮は家族と紹介。横島は顔を引きつらせながら、ここでは普通に挨拶をする。

ここで、何時もの様にナンパでもしようならば、また、式神が暴走するだろう。

 

「蓮お姉さまの家族~!?インテリメガネと離婚されて、この方と再婚を??そんな酷いですお姉さま~~~芽衣を差し置いて~~~グスン」

芽衣子はまた泣きだし、暴走しそうになる。いちいちたまったもんじゃない。

 

「違います。敦信さんとは夫婦円満です。……そうですね。彼は従弟か弟のような存在の方です。芽衣も見たはずです。横浜事変の彼のあの姿を……」

そう、六道芽衣子は横島を見ていたはずなのだ。亜音速飛行が出来るシンダラと強力な霊視能力を持つクビラという式神を使って、横浜事変の成り行きを見ていたのだから、当然横島が『救済の女神』を発動した事や、凄まじい力で、レールガンを迎撃した事も知っているハズなのだ。

 

 

「お姉さまの弟~~!?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・横島さ~~~ん!!私と結婚してください~~!!」

芽衣子は急に横島の両手を掴んでこんな突拍子もない事を言う。

何時も横島がやっている事を、逆にやられたのだ。珍しい展開だ。

 

「ええええええ!!」

「芽衣、急に何を言っているのですか!」

 

「横島さんと結婚すると~~、蓮お姉さまと本当の姉妹になれますし~~~~」

 

「またあなたは、短絡的な事を……」

「たはったははははっ」

蓮は呆れた様に芽衣子を見る。

横島は笑うしかなかった。

 

「あんなに式神たちがなついているなんて~~今まで無かった事です~~。それと……『救済の女神』を発動できるほどの霊力と技術~~、あの他を寄せ付けない圧倒的な攻撃力は……六道家にもほしいですもの~~独り占めはよくありませんわ~~お姉さま~~」

にこやかな笑顔を振りまきながら、当然の様にこんな事を言ってくる。

これが芽衣子のもう一つの顔。東北の氷室や西の西園寺とは連携していたとしても、この政治的駆け引きや、縄張り争いが激化している東京の中で、軍事拡大、現代魔法の波にも飲み込まれずに伝統を守り、六道家を孤軍奮闘して守って来たのだ。歴代当主は49代目を除いて、皆そのしたたかさも持っていたのだ。

 

「芽衣、先代様から聞いておりますよ。好きな人を作るわけでもなく。お見合いも悉く断っているそうじゃないですか」

 

「だって、お母さまが紹介してくださる方って~~、欲の塊のような殿方ばかりで~~、しかも私の事をいやらしい目で見るのですもの」

 

「それと、先代様は、もはやこの東京でいがみ合うのは大変だろうと、せめて休戦協定をと、魔法協会や有力氏族と表向きだけでも、協力関係を結ぼうとしたのを、あなたがすべて破棄したと聞いてますよ」

 

「だって~~、あの七草弘一って言うおじ様と、千葉丈一郎っていうおじ様、いやらしい目で私の事を見るんですもの……しかも、七草家や魔法協会は私の事を利用しようとしているのですよ~~~。そんな男どもは信用できないです~~~」

芽衣子は子供っぽいあどけない顔をしているが、気品は有るし、スタイルもかなりいい方だ。

 

「その点、横島さんはスケベに見えますけど~~~野心などの欲が無いし~~~~~、男の人は怖いけど、式神たちも仲良くしてくれそうだから~~~」

どうやらこの六道芽衣子と言う女性、見た目だけで判断すると痛い目に合う様だ。

横島の事もかなり調べている。

 

「……分かりました。忠夫さんの件は先に言っておきますが、諦めて下さい。……本人がいいと言えば別ですが」

 

「横島さんから良いお返事を頂ければいいのですね~~。ありがとうございますお姉さま~~では早速~~」

 

「………」

蓮は氷室家としてはっきりと断るが、一応、横島の意思も尊重する形を残す。

蓮は横島が芽衣の申し出など受けないだろうと思っていたからこその言葉だった。

しかし肝心の芽衣子はそれをワザとなのかポジティブに解釈し、行動に移そうとしたのだ。

その神経の図太さに蓮は呆れて言葉もでなかった。

 

「横島さ~~ん。芽衣と結婚してください~~~い!」

芽衣子は、横島を式神達で拘束しながら、笑顔で結婚を迫る。

 

「たははははっ、アレ?逃げられない?」

芽衣子は顔は童顔だが、美人の類に入る。しかもスタイルもよく。お嬢様然とした気品もある。

本来ならおいしい話のハズである。

しかし、横島は知っている。この人(六道の人間)と付き合ったら命が幾つあっても足りない事を……

 

「芽衣と結婚すればっ、一生働かなくていいです~~~」

 

「へっ!?まじ?……いやいやいやいや」

横島は芽衣子の提案に一瞬それもいいかな~などと考えがよぎってしまう。

 

「芽・衣・と・結婚してい頂けたら・色・々・と・ご奉仕いたしますわ~~」

芽衣子は前かがみになり、蓮程ではないが、その大きな胸を突き出して色っぽいポーズをとる。

 

「ゴクリッ」

横島は生唾を飲む。式神に拘束されたままではあったが、色香に惑わされ理性が吹っ飛び、今にも暴走し飛びつきそうである。蓮や向井麻弥の前では何とか自制心で抑えていたが、もはや限界だろう。

 

しかし……

 

「でも、浮気はダメですよ~~~~私だけを見て下さいね~。そんな事をしたらこの子たち(式神たち)が暴れちゃいますよ~~~~」

芽衣子は式神に拘束されている横島に顔を近づけ笑顔でそんな事を言う。それは死の宣告に近いものがある。

 

「たはっ、たははははっ……蓮さーん!た、助けて下さーい!」

横島は血の気が一気に引き、冷静さを取り戻し、蓮に助けを求めるのであった。

 

 

妙齢の美女に対し、たじたじのこんな横島の姿を友人達が見たらなんと思っただろう。

非常に珍しい光景であった。

 




今回の横島くん、何時も自分がやっている事をされちゃっているの巻きです。
もはや、迷惑千万女横島くん状態です。

次回はもう一人、六道家の人が出ます。

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