横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

前回の167話なのですが……説明がかなり不足しておりました。
冒頭と中盤に合わせて700字程度追記しております。改めて読んでいただければ助かります。
すみませんでした。

六道家の後編行きます。


168話 横島 六道家再び!!後

「今日は氷室家15代当主氷室蓮としてお願いがあり、ここに参りました。六道家54代当主六道芽衣子さん」

蓮は改まり、本来の目的である悪霊対策の協力要請について交渉を進めだす。

 

交渉案件は主に3つある。

①七草家、千葉家、USNA軍スターズなど、今回の協力体制を築いた組織へ霊具等悪霊対策アイテムの六道家からの販売許可

②悪霊などに取り付かれ、心霊医術が必要な患者の受け入れ

③悪霊対策の直接協力体制

上記3つの上、最低限①は成功させなければならない。②については、最悪、氷室でも受け入れ態勢は取れる。③はあわよくば程度でしかない。

わざわざ、六道家にこのような交渉をするのも意味があった。

現在、国内での省庁を巻き込んだ縄張り争いのため、この吸血鬼(悪霊)事件に六道家や氷室家が直接介入が出来ない状態である。それは、国防軍の後ろ盾がある魔法協会、十師族。警察省をバックにしている千葉家が、この件について、他者を排除して介入しているからだ。無論両者も元々仲たがいしている。

そんな中、本来、宮内庁や内務省からこの件を受諾するはずだった。六道家や氷室家が動けない状態に陥っていたのだ。

さらに、この東京において、六道家は七草家や千葉家、そのほかの魔法協会、伝統派とも何かと、縄張り争いなどで衝突しており、お互いほぼ音信不通状態である。

それを、七草家、千葉家から折れたような形で、悪霊対策アイテムを六道から買うことによって、少しでも、関係改善すればという横島の思いがあった。

 

 

芽衣子はアンティーク調のおしゃれな丸テーブルを挟んで蓮の正面に笑顔を振りまきながら座っている。

 

横島はすぐそばに居るのだが、式神に懐かれ、囲まれたままでイスに座ることもできない。

その式神なのだが、今横島に絡んでいるのは8体だけだ。本来12体いるはずなのだが……最初から見当たらない。

 

「お姉さま~~、いつもの様に芽衣って呼んでください~~」

 

「まずは……」

蓮はそんな芽衣子の言葉を無視して話し始める。

 

「お姉さま~~、今東京で起きている。悪霊の件はお断りいたしますわ~~」

芽衣子は蓮が言おうとした案件を先に口に出し、断ったのだ。

③の案件である。元々これについては、無理があるのは承知している。

 

「そう言われると思っていましたが、理由をお聞かせ願いますか?」

 

「政府から~直接要請を受けておりませんもの。本来この件は六道家の仕切りのハズなのに~~警察庁やら、十師族及び軍部が介入しております~~どっかの誰かさんが横やりいれているのですね~~~。直接火の粉が掛かれば、取り除きますが~~」

 

「やはりそうですか。では、せめて、心霊医術が必要な患者さんの受け入れをお願いできますか?」

 

「うーーん~~どうしましょうか~~~。でも、なぜお姉さまたちが、こんな事をお願いされるのです~~~氷室家としてもあの人たちの介入を快く思っていないはずではないですか~~?」

 

「すみません。それ、俺のわがままなんですよ。このままだと、悪霊に好き勝手されちゃうんで、彼らをまとめたんです」

横島は式神に囲まれ、懐かれながら、手を上げて答える。

 

「という事は……お姉さまたちだけでなく、横島さんにも恩がうれるのですね~~。……分かりました。いいですよ~~~。患者さんには罪は無いですし~~~」

芽衣子は少し考えるしぐさをした後に了承する。

 

「ではこれは電話でも伝えていた件ですが………」

 

「七草家と千葉家とUSNAスターズに、氷室の商品を販売してほしいという事ですね~~~」

 

「そうです」

 

「うーーーん、彼らが悪霊退治が出来ちゃうと、此方の存在価値が低くなりそうで嫌なんですよね~~~」

芽衣子は難色を示す。

 

「その商品群の中に、ドクター・カオスの開発品が入っていたとしてもですか?もし、これが受け入れられない場合。私共の氷室村から直接販売することも可能なのです……それをわざわざ六道家に販売してもらう意義もおわかりでしょう?」

 

「ドクター・カオス!!本当なのですか~?」

 

「私が芽衣に嘘をついたことがありますか」

 

「なるほど~~魔法協会の方で、悪霊退治が出来たとしても、その為の霊具自身は此方が抑えておくべきだという事ですね~~さらに、ドクター・カオスの商品など、日本ではオークションに上がる位の物しか手に入れられない。それを古式魔法、いえ、六道と氷室で独占するわけですね~~~、氷室だけだと販売網が小さいし、六道と合わせれば、今後の事も考えれば~~~……お姉さまもなかなかお人が悪いですね~~~これでは、受けざるを得ないではないですか~~~。しかも、先ほどの協力の件も便宜をはかれとおっしゃりたいのでしょ~~~先にこちらを言っていただければ……」

 

「では、患者さんの受け入れと、七草と千葉、USNAスターズへの販売の許可。協力体制の便宜の件お願いいたします」

ここで、蓮は立ち上がり、芽衣子に頭を下げる。

 

「分かりましたわ~~便宜の件は直接協力はいたしませんが、氷室家を通して情報提供はいたしますわ~~~………お姉さま~~、でもドクター・カオスとはどうやって繋ぎを結べたのですか~~~?」

 

「それ俺なんで、カオスのじーさんは俺の古い友人なんで……それで」

またもや、式神になつかれ、巻かれたり上に乗っかられたりしている横島が、手を上げそれに答える。

 

「ドクター・カオスと友人!!!!……お姉さま~~~~正式に氷室家に要請しちゃいます~~~是非とも横島さんを我が家の、いいえ、私のお婿さんに~~~」

 

「………ダメです」

 

「ええ~~だったらお姉さまが私と結婚してくださいまし~~~~」

 

「……女どうしでは結婚できません」

 

「お姉さま~~~」

そう言って芽衣子は席を立ち座っている蓮に後ろから抱き着くが、蓮はすました顔で、無視して紅茶を飲んでいた。

 

 

 

「ところで、芽衣、式神の数が少ない様ですが、どうしたのですか?」

しばらく、芽衣子の抱擁を好きにさせていた蓮は芽衣子に疑問を投げかける。

 

「それは~~、次期当主の子に今、メキラちゃん、サンチラちゃん、クビラちゃん、ショウトラちゃんを預けているんです」

 

「次期当主の子……芽衣には兄の和彦さんしかおりませんが、そうですか、和彦さんの娘さんですね」

 

「そうなんです~~」

芽衣子はそう言って、テーブルに置いてあった鈴を鳴らす。

 

 

すると、テーブル近くの何もない空間から、いきなり巨大な虎が現れた。

メキラと言う、短距離の瞬間移動が可能な大きな虎の式神だ。

そのメキラの上に、ちょこんと巫女服に身を包んだ4歳児ぐらいの見たからに気が強そうな幼女が乗っかっていた。

「呼んだか、おばうえ」

 

「もぉ~~、お姉さまと呼んでって~」

 

「うむ、ではあねうえ」

 

「お姉さま~~~、横島く~ん。この子が、次期当主になる。六道日向(ひなた)ちゃんです」

芽衣子はその幼女、六道ひなたを紹介する。

 

「うむ、ろくどうひなたなのだ」

六道ひなたはメキラの上からカミカミながらどこか横柄な口調で自己紹介をする。

 

ひなたは、芽衣子の兄、六道和彦の娘なのだが、内包する霊気の量が非常に高いため、次期当主に選ばれたのだ。

ひなたは、父和彦が六道家の関西の拠点となる会社の経営をしていたため、最近まで、親子で京都に住んでいた。

今は、両親と離れ六道家本家で生活している。式神コントロールがある程度、安定するまで、両親と生活させるわけには行かないためだ。

 

「私は、氷室家15代目当主氷室蓮です。よろしくね。ひなたちゃん」

蓮は立ち上がり、ひなたに近づき、頭を優しくなでながら、ニコっとした笑顔をし自己紹介をする。

 

「よろしくなのだ。じゅうごだいめ」

ひなたは、気恥ずかしそうに軽く会釈する。

 

「俺は横島忠夫。よろしくひなたちゃん」

横島は相変わらず、八体の式神になつかれ、どう見ても拘束されてるようにしか見えない状態だが、そんな恰好で挨拶をする。

 

すると、メキラがひなたを乗せたまま横島に覆いかぶさり、顔を舐め始めたのだ。

「グボッ!くすぐったい~~、もう、キスは大人になってから~~」

もはやムツゴロウさん状態の横島。

 

「こら、メキラ、おきゃくさまにしつれいなのだ。やめるのだ」

ひなたはメキラに言い聞かすが言う事を聞いてくれない様だ。

 

「ひなたちゃん。大丈夫、じゃれてるだけだから」

横島はメキラにのしかかれたまま、笑顔で答える。

 

「ヨコチマはひなたたちが、こわくないのか?」

 

「ヨコチマ?ああ俺の事ね。ああ大丈夫。慣れてるしな」

 

「……その、ひなたたちと遊んでくれるか?」

ひなたはもじもじとしながら横島にこんな事を言う。

 

勿論横島の答えは……

「じゃあ、遊ぼっか」

 

 

そして、横島はひなた相手に遊ぶことになるのだが、あの12体の式神を相手をすることになる。並みの人間にはまず1秒と持たないだろう。

 

六道家直系の子女は生れた時から霊気・霊力が異常に高く、生まれながらにして式神使いの素質を持っている。

そして、幼い時から次期当主として育成がはじまる。

育成とは12体の鬼神ともいえる強力な式神を受け渡す事なのだ。

それを行う事によって、常に霊力の消費を余儀なくされ、霊力と霊力コントロールの訓練を常時行う事に等しい状態となる。

そうやって強力な式神使いを育成してきたのだ。

それには弊害がある。そんな子供を普通の人間が扱えるわけが無いからだ。暴走すれば、甚大な被害が出る。通常は子守をするだけで、沢山の死人ができてしまう。

歴代の当主は、受け渡した式神も、近くに居ればコントロールが可能なため、子供が自分のコントロール範囲にいれば、子供が原因で暴走することは無い。

ただ、そんな巨大な爆弾を抱えた子供に近づこうと思う人間はまずいない。友達も出来ようがないのだ。

よしんば、成長して式神コントロールを完全に掌握したとしても、恐れられ、怖がられ、気味悪がられるのが落ちだ。

 

六道芽衣子も例外ではなかった。

しかし、10歳の芽衣子の元に、大学生の蓮が現れたのだ。

式神を怖がらず。式神を暴走させても対処できるだけの力を持ち。さらに、蓮は包容力を持った女性である。

アヒルのすり込み現象に近いなつき方になるのは致し方が無いだろう。

今の芽衣子が盲目的に蓮を慕うのも必然的であった。

 

今のひなたも同様だ。4歳という幼子でありながら、両親からも離れた暮らしを強要され、幼稚園にも通うことも出来ない。

いつも一緒にいてくれるのは式神たちだけ……寂しく無いわけが無いのだ。

 

 

今、横島は必死の形相で奇声をあげながら、ひなたと、そして十二神将たちと中庭で遊んでいた。

一つ間違えば大怪我では済まないが、そこは横島、十二神将の扱いには慣れたものだ。

100年前も同じような事をよくやっていたのだ。

しかし、あの式神たち十二神将の横島へのなつき方は尋常じゃない。もしかしたら、式神たちに100年前の記憶が残っているのかもしれない。……調べようはないが。

気の強そうな顔をしていたひなたも非常に楽しそうに、今は子供らしい表情をしている。

 

「あらあら」

「あらあら~~」

そんな横島とひなたたちの姿を、微笑ましそうに見ながら紅茶をすする蓮と芽衣子。

六道家では和やかな空気が流れていた。

 

 

「ねえ~~お姉さま~~~、やっぱり横島さんをお婿さんにください~~~」

「ダメです」

「お姉さまのいじわる~~」

 

 

 

 

 

一方、七草家では……

「お姉ちゃんまた台所で何かやってる」

 

「横島さんに食べてもらうための料理の練習ですね」

 

「ああ!!顔を赤らめてクネクネしだした!!」

 

「香澄ちゃん声が大きいです」

 

どうやら、真由美は台所で横島の為に料理の練習をしているらしい。

それを香澄と泉美はこそっと覗き見ていたのだ。

 

「横島の奴、調子に乗って!!」

 

「別に横島さんが調子に乗っているわけではないですよ香澄ちゃん」

 

「お尻叩いた恨みも晴らさないといけないし、どうしてくれよう」

 

「横島さんはかなり強いですよ。私達ではとてもかないません」

 

「そうなんだよ。いかにも弱そうな感じなのに、うーん」

 

「しかも、お父様に叱られて、ペナルティで学校の帰りに横島さんの家によってお姉さまのお手伝いすることになりましたよね……何か横島さんにしたら、またペナルティが増えると思います」

 

「ぐぬぬぬぬっ、卑怯だ横島!」

 

「あ~~、マリアお姉さまはいらっしゃるのでしょうか?」

 

香澄、泉美の双子姉妹は相変わらずのようだ。

 

 

 

七草家の書斎では……

弘一は一人思考している。

「横島くんにバレンタインチョコを実名で……四葉家当主……真夜殿は何を考えている。……

いずれにしろ、四葉家が横島くんに手を出してきたという事だ。我々も、うかうかしていられない。一刻も早く。横島くんを七草家に取り込まなくては……やはり、一番早いのは真由美か……」

 

どうやら、真由美に四葉真夜が横島宛にバレンタインチョコを送った事を聞いたらしい。

まあ、驚くのも無理もない。

 

「魔女マリアか……、娘たちの話によると、人当たりの良い人物のようだが……いや、しかし。一つ間違えば、滅びかねない。横島くんが居たからこその対応かもしれん。単独接触は避けた方が良いだろう。横島くんの家にずっと滞在するつもりなのだろうか?となるとやりにくい事この上ないな」

 

マリアの件は、真由美、香澄、泉美からも聞いているのだろう。

特に泉美の様子がおかしかったのだが……気にしても仕方が無い。

 

弘一はこうして次の一手を模索していたのだった。




次回は司波家とか、ほのかとか雫とか深雪とかのお話予定。


六道家式神 干支の姿をした式神
クビラ:ネズミの式神霊視能力を持つ。
バサラ:牛の式神。丸い図体で巨大な口を持ち口から霊をブラックホールのように吸引する
メキラ:大きなトラの式神。短距離の瞬間移動能力ができる。
アンチラ:ウサギの式神。長い耳で相手を切り裂くことが出来る。
アジラ:龍の式神。口から火を吹き、相手を石化させることが出来る。
サンチラ:ヘビの式神。電撃攻撃が出来る。
インダラ:ウマの式神。最高で時速300キロでの走行が可能。術者を良く乗せている。
ハイラ:ヒツジの式神。毛玉のような式神。毛針を使用した攻撃を行う。自分と周囲の人間を夢に入り込ませるサイコダイブの能力を持つ。
マコラ:サルの式神。変身能力を持つ。(形状記憶金属生命体みたいな形状)
シンダラ:トリの式神。巨大なエイに似ている。亜音速での飛行が可能。空中戦が得意
ショウトラ:大きな白い犬の式神。怪我や病気の治癒や悪魔化を直すことも出来る。
ビカラ:イノシシの式神。いのししの姿には見えない。力持ちの式神、毎度横島を飲み込む。

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