誤字脱字報告ありがとうございます。
めちゃ長くなりそうだったので、タイトルは違いますが前後編になります。
主に会話です。
読みにくいかもしれません。
ご指摘していただけると助かります。
横島が妙神山や氷室村で過ごしていた頃。
USNAダラスに滞在している雫の元にほのかから慌てたように連絡が来る。
「雫……落ち着いて聞いて……」
「何、ほのか?」
「学校で横島さんに本命チョコを渡した女の子がいたの……」
「!!……誰!?……あの子、要が学校まで来たの?」
「違うの、もっと強力よ。前も話したと思うけど、雫と交換留学できたアンジェリーナ・シールズさん。あだ名はリーナなんだけど、すごい美人なの」
そう言ってほのかはリーナと一緒に撮った写真を、映像通信で改めて雫に見せる。
「……」
雫は何度か見たことがあったのだが……
やはり、写真の女性は大学生程度に見え、とても同年代に見えない。さらにモデル並みのスタイルに金髪碧眼の美女ときている。
横島だったら必ず手をだすだろう。しかし、何故か雫は冷静だ。
「リーナは勉強も優秀で、魔法力も深雪に匹敵して、人当たりもよくて、すでに学校の人気者になっているわ」
「ほのか、でも横島さんが日本に戻って1週間も経ってない、ほのかの勘違いではない?」
「私、見たの、学校の食堂で……リーナがお手製らしいバレンタインチョコを横島さんに渡して、それで、横島さんに後ろから思いっきり抱き着いていたのを……」
「!!」
「でね。私調べたの、そしたら学校中で横島さんとリーナが付き合っているのではと噂になっていて、『美人留学生アンジェリーナさんがまさかの学校一の問題児ゾンビ横島と付き合っている?美女と野獣の誕生か』って学校新聞や噂サイトにも載ってたの」
「………ほのか、でも、それおかしい。そんな短期間で横島さんの良さが分かるはずが無い。横島さん学校には3日しかまだ登校してないって言ってた。きっとほのかの見間違い」
雫はほのかの話に驚いていたが、じっとなにやら考えてから、冷静に話す。
話しぶりから、どうやら、横島と何度か連絡をとっているようだ。
「うーんでも、クラスの男子はみんな横島さんの悪口言っているし、『なんであんな奴にアンジェリーナさんが!』って。聞いたところによると、休憩時間や昼休みから放課後まで、リーナは横島さんにべったりらしいわ。なんでもずっと腕をからめているとか……」
「ほのかは見たの?」
「……私は見てないけど」
「たぶん、横島さんのことだから、その子にちょっとナンパしただけ。それを男子が面白おかしく、脚色して嫌がらせしてる。横島さん、一科生の男子になぜか嫌われてるから」
雫はほのかが聞いた噂をまったく信じていなかった。
ほのかが見たそのシーンも、見間違いだろうと一笑するほどだ。
「うーん。そうじゃなさそうなんだけどなー」
ほのかは雫にピンチであることを納得してもらえず。どう話したらいいのか悩む。
そこに、雫の元に深雪から連絡が来た。
「ほのか、深雪から連絡きた。せっかくだから、一緒に話す?」
「そうだね。深雪もその噂とか知ってるし」
雫は一度、深雪と二人だけの通信に変更して話す。
「こんにちは、雫、今いい?」
「うん。今、ちょうどほのかと話してた。一緒に話す?」
「……ちょうどいいかもしれないわ」
映像でみる深雪は深刻そうな顔をしていた。
「?……じゃあ繋げる」
「ほのか、こんにちは、お兄様にワザワザあのような物を頂いて」
「深雪、こんにちは、いえいえ、私は好きで自分の思いを形にして達也さんに渡したのだから」
深雪とほのかの挨拶はどこかよそよそしい。
ほのかがバレンタインの本命チョコを達也に渡したことをまだ引きずっているようだ。
「??……!」
雫は二人の挨拶が何故かよそよそしい事に疑問を持つが、雫はほのかが達也に本命チョコを渡すと前に言っていたことを思い出し、そのことだと気が付く。
「深雪は私に何か用事?」
「雫、魔女マリアとは仲が良いと聞いていたのだけど」
「マリアはとってもやさしいお姉さん。魔女って言うのは良くない」
雫のマリアへの好感度はかなり高いようだ。
「ごめんなさい。そのマリアさんと連絡つけたりできるかしら?」
「マリアとはすごく仲が良いけど、今はいない。もしかして深雪はマリアと会った?
「いいえ、その……会ったとはどういう事?USNAにいるマリアさんとどうしてかしら?」
「マリアは私とマリアが作ったバレンタインチョコを横島さんに渡すために、大気圏突破して、大陸間弾道飛行で現地時間で昨日の午前には日本に着いているはず」
「はぁ?どういうこと雫?そんなことのためだけに大陸間弾道飛行?本当にそんなことが出来るの?」
ほのかが、ここで話に入ってくる。
雫の話が信じられない様子だが、いたしかたがないだろう。誰でも普通は信じない。
「マリアは何でも出来る。ドクター・カオスの着替えの世話から食事まで、ドクター・カオスが暴走しても、鉄拳で止めることも出来る」
何故か雫が自慢そうにマリアのことを言う。
「それ、ドクター・カオスのことだけだよ。雫、しかもドクターカオスって介護が必要なの?」
ほのかは呆れた顔をする。
「マリアは凄い!」
雫は満足そうに頷く。
「……ということはお兄様が言っていたことは本当だった」
深雪は小声で申し訳なさそうに言う。
「深雪どういうこと?」
ほのかが達也の事とあって、聞いてきた。
「………マリアさんに聞きたいことがあったのは、お兄様のことなの」
「達也さんがどうかした?」
「お兄様、マリアさんに会っていたようなの」
「え?どういうこと深雪。なんで達也さんとマリアさんが……」
「……実は……昨日…」
深雪は一瞬躊躇するような顔をしたが、昨日の出来事をゆっくり語りだす。
昨晩、横島宅から達也が朝方帰ってきた時のことだ。
深雪は気が気でなく。寝ずに玄関で待っていたのだ。
深雪は鬼の形相で達也に散々わけが分からない嫉妬心やら怒りをぶちまけていたが、達也がなだめ、何とか話が出来る状態に落ち着かせ。リビングで改めて話し合いをしたときの事である。
「お兄様が男色だとは知りませんでした……深雪の愛の力で元に戻してさしあげます」
「落ち着け深雪、何を根拠にそんなことになった」
「横島さんの家で遅くまで何をしていたのですか?……横島さんあての預かり物のバレンタインチョコレートとはブラフで、本当はお兄様から横島さんに渡すためのチョコだったのではないのですか?私がお兄様からチョコの袋を渡していただいた(奪った)際の慌て様、何かおかしいと思っておりました」
「俺と横島は男同士だぞ。ありえん」
「クラスの友人達が、男同士でもありえると言っておりました。お兄様のような素敵なかたにそういう方が多いとも……。素敵な男性からダメな男性へとか、素敵な男性から、肉体がたくましい男性などは、……よく分かりませんが、大好物だとかも言ってました。深雪もそのことを調べましたら、そんな情報は女子の間ではごく普通に噂されているということ……また、USNAやヨーロッパでは正式に男性同士の結婚まで認められているとまで……」
世事に疎く純粋な深雪はクラスのBL好きに半分洗脳されたのだろうか?
「何を馬鹿な……」
「いいえ、最近のお兄様はあまりにも横島さんと仲が良過ぎです。あのようなお兄様は今まで見たことがありません」
「……ありえん」
「年頃の健全な男子なら、女性の体に興味があると聴いております」
「誰からそんな事を……」
「八雲先生です」
「……」
達也は心の中で余計なことを悪態を付く。
どうやら、深雪は九重八雲に相談したようだ。
八雲が面白がって、そんな事を言ったのだろう事が目に浮かぶ。
「お兄様は、私の裸同然の恥ずかしい姿を見られても、平然とし、まったく反応を示しません」
「それは深雪が妹だからだ」
「では、私以外の女性の体に興味があるということですか?」
「そうは言っていないだろう」
「やはり、そうなのですね。女性の体には興味が無いと……夏休みのあの海の皆の水着を見ても、無反応でした」
「深雪、お前も知っているだろう。俺は感情の一部が欠落しているんだ」
「いえ、最近のお兄様は、喜怒哀楽を感じておられます。特に横島さんの事になると……」
「……深雪、横島の家に確かに長居していたが、そこにはリーナや七草先輩と七草先輩の妹たち、そして、マリアさんがいたんだ。深雪が思っているようなふざけたことにはならん。なんなら、マリアさんに聞いてみるがいい」
「……マリアさんとは誰ですか?なぜリーナや七草先輩ではなく、マリアさんという方を指名されたのですか?」
深雪の疑問はもっともであるが、昨日のあのメンバーの中で、真夜のチョコの件を気を利かせて、黙っていてくれそうなのはマリアぐらいだろう。
「マリアさんはあの世界最強の一角のマリアさんだ」
「魔女マリア……お兄様。いい加減にしてください。USNAに居る魔女マリアが日本にいるはずが無いではありませんか」
「いや、横島に会いに来たらしい。雫と自身で作ったバレンタインチョコを渡すために」
「お兄様、見苦しい嘘はおやめになって観念してください。今ならまだ間に合います。深雪がお兄様を必ず、まともな道へ戻して差し上げます」
「深雪……なぜ、そこまで疑う」
「ならば、お兄様、横島さんにわたしたあのバレンタインチョコレートは誰からのものかお答えください」
「……それは言えん。本人たっての希望だ」
達也にはそれを深雪に伝えることが出来るはずが無い。あのバレンタインチョコレートの送り主が、四葉家当主、四葉真夜……自分たちの叔母であり、愛の告白が刻まれた本命チョコだということを……
さすがの深雪も倒れ、寝込む事間違いない事実なのだ。
「実の妹の、私にもですか?……」
「……深雪、聞き分けてくれ、これは伝えることが出来ない物なんだ。それと俺は横島に決して懸想などしていない。俺も男だ。素敵な女性を見れば心を奪われることもあろう。肉体も反応するというものだ……」
「本当なのですね。深雪は信じてもよろしいのですね」
「ああ、俺は深雪に嘘をつけないからな」
「肝心なことは、いつも、お話になさらないくせに………ところで、お兄様。お兄様の話しぶりから、短時間しか会ってないはずの魔女マリアを随分信用を置いているご様子ですが……」
「マリアさんは、噂のような人ではなかった。非常にすばらしい女性だった」
達也はつい、しみじみとそんな事を言ってしまう。
それはいたし方が無いことだろう。達也は今日一日で一生分精神をすり減らされるような思いをしていた。しかも、身内(深雪と真夜)のせいで……
そんな時に、マリアが的確に達也をフォローし、癒しまで与えてくれたからだ。
「!?……まさか」
深雪は取り合えずそこでいったん話を終えたとの事だった。
「お兄様がもしかして、横島さんにバレンタインで愛の告白をしているのかもと思ったのですが……でも、お兄様はそれは絶対無いといっていました。そうすると、マリアさんに興味がおありなのかもしれません。結局真相は闇の中……どちらにしても、知らなければ、私は気を病んでしまいそうで……それで意を決してマリアさんに直接お聞きしようと、伝のある雫に相談したの」
「そんな!達也さんがライバルなんて……でも負けない!」
雫が深雪の話を真に受けていた。
「……深雪、雫も、達也さんが横島さんにって、どう見てもありえないから………どうしてそうなったの?
クラスの子達が言っていたのは、ボーイズラブを見たいという願望だけで話しているだけなの……ただの妄想よ。妄想。そんな事をいちいち真に受けていたら、学校中、男子カップルしか居なくなるわよ」
ほのかは呆れながら説明する。
「そうなのほのか?でもみんな。レオ×幹か、達×横はありえるって……しかもベストはやはり達×横だって言ってました」
「妄想!!妄想に決まっているでしょ!!ただの言葉遊び!!」
ほのかは声を大にして、二人に言う。
「よかった。達也さんがライバルじゃなくて」
雫は心底ほっとしている様子だった。
「そうなんですか!!そんなことはありえないのね!!思い切って、二人に相談してよかった」
深雪は沈んだ表情だったが一気に明るくなる。
この二人のお嬢様は度が過ぎるほど、世間を知らないようだ。
「深雪は達也さんにちゃんと謝らないと、達也さんに呆れられて、そのうち嫌われちゃうんだから……私としては強力なライバルが減ってありがたいけど」
ほのかは友人らしくちゃんと深雪に言い聞かせる。ほのかはやはり人がいいようだ。
「深雪、ブラコンの嫉妬は良くない」
雫は思ったことをそのまま口にしている。
「でも……マリアさんには……」
深雪の顔がまた曇る。
「どうなの雫?」
ほのかはむしろそっちのほうが気になるようだ。
「うん。マリアは誰にでもやさしい。私もだけど、マリアと話をすると心が落ち着く。たぶん。達也さんもそんな感じだと思う。マリアに癒されたいとは誰もが思う」
「深雪が達也さんを追い込んだんじゃないの?達也さんバレンタインチョコいっぱいもらっていたから……だから、そんなマリアさんに癒された……でもそれが恋に発展するかも……」
ほのかは深雪にダメだしをする。深雪のせいで強力なライバルが誕生するかも知れないからだ。
「………私がお兄様を追い込む……そのせいで」
深雪には心当たりが十分にあった。【159話・161話参照】
深雪の顔が真っ青になる。自分のせいで他の女性に達也が恋をしてしまうかもしれないと思ったからだ。
「よくわからないけど、違う気がする」
雫は根拠はないが、マリアを良く知る雫だからこそ、こんな感想を漏らす。
「それは、マリアさんに聞いても、答えが出そうもない……雫がそう言うなら、そうかもしれないけど」
ほのかは雫が感じている事を、信じようとしているが、不安は残る。
「そうね。今後お兄様を注視しないと……雫、ほのかありがとう。だいぶ楽になったわ」
深雪も不安が残るが相談し始めた頃と比べると大分気持ちが楽になっていた。
今回はどっちかっと言うと深雪ちゃん編
次回は、雫ちゃん編