横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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前回の続きです。


172話 横島、リーナと達也に霊具を渡す!!

エリカにとんでも刀(擬似インテリジェンスソード紅鮫丸)を手渡した後。

なぜか、横島宅に集まっている全員で夕食を取ることになった。

真由美と深雪が食卓に出したものは、肉じゃが、豚汁、ほうれん草の胡麻和えと茶碗蒸しと意外にも和食だった。

しかし、メインに肉じゃが、そして汁物は味噌汁ではなく、食べ盛りの高校生に大人気がっつり系の豚汁をチョイス。男心をくすぐるラインナップとなっている。何となく弘一のアドバイスが見え隠れしているようだ。

 

真由美の料理は深雪に手伝ってもらったとはいえ好評であった。練習した甲斐があったようだ。

 

横島宅は合計12人が一同に会したため、リビングには入りきらず、寝室にまたがり食事をとる。

横島もなんだかんだ不平を言っていたが、皆でとる夕食を楽しんでいる様だった。

 

食事を済ませた後、リーナとシルヴィと達也と深雪を屋上に連れて行く。

エリカ達と同じように、悪霊対策の霊具の受け渡しと説明をするようだ。

 

「タダオ、なんで達也と深雪と一緒なの?」

 

「うーん。まあ、このメンバーはみんな戦闘経験は豊富だし、渡す霊具も似たようなものだから、一気に説明しようと思っただけなんだけど……」

 

「俺はかまわん」

「お兄様にお任せします」

 

「……タダオがそう言うなら」

リーナは不満そうではあったが、しぶしぶ了承する。

まあ、何度となく、煮え湯を飲まされた達也と深雪が一緒なのは、不本意ではあろう。

 

「それじゃこれをみんなに渡す。すでに、真由美さん達やエリカ達には説明済みなのだが」

横島はそう言って、ジェラルミンケースから、スキーなどで使用するような重厚なゴーグルを皆に渡す。

 

「これは何だ?」

 

「霊視ゴーグル。霊能力者でもなくとも悪霊が見分けられる代物だ。霊気の波動を読み取る装置……まあ、簡単に言うと霊気……サイオン量もある程度視覚的に分かることが出来る。これで悪霊の判別と共に悪霊が持つ、霊力、霊圧……悪霊の強さや成長具合が判別可能なんだ。まあ、とりあえず装着して右のスイッチを押してくれ」

 

「こんなコンパクトなもので、サイオン量が測れるだと……霊力、霊圧とは………」

「サイオン量がこんな小さなものでわかるの?」

達也もリーナも同じ様に多少驚きながら、霊視ゴーグルを装着する。

 

「!!なんだ……人のシルエットにぼんやりと色が付いているように見えるぞ」

「お兄様が一番輝いて見えます!」

「本当だ。達也が一番色が濃く見えるわね」

達也、深雪、リーナは装着し霊気を見ることが出来たようだ。

 

「それが、霊気、サイオンを見ている状態だ。達也が皆と比較して濃く見えるということは、内包しているサイオン量が一番多いということだ」

 

「「!!」」

リーナとシルヴィはそのことに驚く。

元々、リーナ達は達也を『灼熱のハロウィン』を起こした戦略級魔法師ではないかと疑いを掛けていたのだ。その疑いがますます深まるのはいたし方がない。

 

「……なるほど、……横島、お前は陰陽師で霊能力者だといったな、この装置無しでそれが判別できるのか……」

 

「ああ、俺が普段行っている霊視は、内包している霊気と霊気が持つそのものの力、霊気を使って発揮できる力、霊圧と霊力もはっきりと判別が出来る。だから魔法を放つ前に俺は見ることが出来る」

 

「え?……タダオ…そんなことが…」

「……」

「そんなことが可能なんですかお兄様?」

リーナ、シルヴィ、深雪はその事に驚く。

 

「……やはりか、お前の前では、魔法師は丸裸というわけか……たまったものではないな」

 

「でも、横島さんは色が付いているようには見えませんが……」

深雪は霊視ゴーグルを装着したまま、横島を見ていた。

 

「それは故意に霊気を調整しているから………よっ、これで俺のことがくっきり見えるんじゃないかな、悪霊もこれと同じような感じに見えるはずだ」

横島はそう言って少し霊気を開放する。

 

「何をした横島、全身が青白く強く光っている。ぼやっとではなく、くっきりとだ」

 

「霊気をコントロールして、全身に均一に霊気をまわし放出しているからな」

 

「……お前、サイオンを自由に、いやプシオンさえ自由にコントロールが出来るのか?」

達也は先ほどから驚きっぱなしだ。

その達也の言葉に呼応するように、リーナ、深雪とシルヴィも驚いた表情をしている。

 

「陰陽師を名乗る人間はこれくらいのことは出来て当たり前………まあ、俺のことは後回しで、このゴーグルは霊的構造物や悪霊や悪魔に対して、その造形をはっきり映し出すように調整されていて、ターゲットマークが付くから、誰でも判別可能だ」

 

「陰陽師とはとことん規格外だな。氷室家が現在も独立した存在で居られるわけだ。……それとこれだ。……こんな物が存在していたとは……これを応用すると魔法師の戦術論が一変してしまう可能性があるな」

達也は霊視ゴーグルを外し、それを手にしながら、うなるように言う。

 

それを聞いたシルヴィは唾を飲み込む。シルヴィも達也と同じ意見だからだ。

日本にはまだ、知られていないすさまじい力を持った存在(陰陽師)が多数居ることになる。しかも、霊視ゴーグルなどというものが、日本にだけあると思うと……ますます、魔法関連について、USNAと日本では格差が生まれるのではないかと危機感を持ったのだ。

 

「いや、これカオスのじーさん作だし、貴重な物を使ってるから、渡すのはこれだけ」

 

「やはり……ドクター・カオスか、なんて物を作るんだ」

 

「まあ、今は、悪霊退治用って事で考えてくれ」

 

「………」

シルヴィは本国上層部にドクター・カオスと交渉し、この霊視ゴーグルを多量に手に入れるよう進言することを真剣に考えていた。

 

 

「これで、悪霊や悪魔が確認できるから……まずは第一段階クリアってとこだ。次は攻撃手段なんだが」

横島はそう言って、手に持っていた幾つかのケースをのひとつを取り出し、リーナに歩み寄る。

 

 

「そんじゃ、まずはリーナへこれ」

木製のケースからアンティーク調の装飾が施された短銃を一丁とりだす。

 

「私に?…大分古いタイプの銃ね」

 

「ああ、これはその昔に、対悪魔用に実際使用されていた銃だ。神々の聖なる力が宿るとされる銃で、俺も鑑定して見たが、かなりの力が宿っている。これと同じものを作れと言っても、もう無理じゃないかな。リーナは銃を扱えるから丁度いいかなと思って、大概の悪魔に効果が出る。通常弾でも効果を発揮するが、術式を刻んだ弾を数種類用意しといた。悪魔の種類によって効果が異なるため、使い分けることで、さらに効率的に倒すことが可能だ」

 

「対悪魔用銃……こんなものが存在するんですね」

シルヴィは驚きと共に感心したように言う。

「ほおぅ」

達也もシルヴィと同感だったようだ。

 

 

「これは一点ものだ。限定的ではあるけど、いわばレリックに匹敵する代物。試してみたが威力は俺が知っている限り、最上級の対魔銃だろう。しかも霊力…サイオンを込めなくとも、使えるため、この銃で撃った弾が悪魔にあたりさえすれば、一般人が撃ったとしても、絶大な効果を発揮する」

 

「そんなに貴重な物、私にいいの?」

 

「ああ、リーナに使ってほしい。リーナだったらうまく使ってくれるだろ?……知らなければただの骨董品の銃だし、どうせカオスのじーさんの倉庫に眠ってた奴だしな」

 

「ありがとう。タダオ!!」

リーナは思わず横島に抱きつく。

 

「シルヴィアさん、この弾なんですが、俺が術式を刻んだ弾なんです。通常の銃で取り扱える代物です。リーナに渡した銃で撃つよりも効果は低くなりますが、それでも、十分効果的です。これがあれば、悪霊本体を取り逃がすことなく、捕縛することも可能です。術式起動に簡易的に俺の霊気を付与しているため、長期間放置すると、霊気が抜けてしまいます。霊気が抜けても弾は発射されますが、術式は起動しないため、悪霊に効果が出なくなりますので、注意してください」

横島は、リーナに抱き着かれたまま、シルヴィに向かって説明する。

 

「……その、横島さんは錬金術師でもあるのですか?このような代物まで作れるなんて……」

シルヴィアは横島が差し出した弾を受け取りながら、驚いた顔を向ける。

 

 

「俺もこの弾を使えばいいのか?」

横で聞いていた達也はその弾を物ほしそうに見ていた。

 

「まあ、そう言うことになるが、さっきのリーナに渡した銃はあれだけだし、達也には別のものを用意した」

横島はもう一つのジェラルミンケースを開けると、近代的な形をした短銃が収納されていた。

 

「俺にも用意してくれたのか……これは短銃形状の特化型CADか?」

 

「半分正解だ、これはドクター・カオス謹製の対悪魔用最新型のCAD一体型銃だ」

 

「ド…ドクター・カオス謹製だと!!」

達也は先ほどよりさらに大きく驚きながら、銃を手にする。

 

「威力や攻撃力を重視したリーナの銃とはまったく別の使い方をする。銃という役割だけでなく、情報戦や戦略補助を重視したものだ……ただ……」

 

「ほう、俺向きだな……ただ、どうした?」

達也は珍しく興奮気味だ。

 

「扱いが非常に難しい……」

もはやカオスが関わった物は扱いが難しくなるのはいたし方がないだろう。

ここで言う難しいとは、使い方が難しいというわけではないことは、お分かりだろう。

 

「なんだ、そんな事か……使いこなして見せる」

 

「そ…そうか……」

 

「その対魔用CAD一体型の銃は、霊視ゴーグルとリンクさせる事で力を発揮する。CADで魔法式を解し、霊体や悪霊や悪魔の霊気の波長を探査するソナーを打つことが出来る。それによって術者の半径100メートルから500メートルの範囲で悪霊を見つけることが出来るらしい。俺には詳しい仕組みはわからないけどな。そのデータを下に敵をトレースしながら術式弾を選択し悪霊に放っていくという感じだな。さらに、他の霊視ゴーグルにもその情報がリンクされる。情報戦用の霊具とはよく言ったものだ」

 

「何だと!そんなことが可能なのか!!」

 

「すごいですね。そのような便利なものがあるのでしたら、私達にも提供してくれませんか?」

シルヴィもその対魔用CAD一体型銃の有用性を十分理解したようで、早速横島に分けてもらうように言う。

 

「いや、これ、カオスのじーさんが思いつきで一日で仕上げた試作品の上に達也専用に調整しているんですよ。たぶんじーさんか、達也ぐらいしか扱えない。もちろん俺もね。サイオンを多量に消費するんで……使いどころを選んじゃうんですよ。まあ、改良して汎用性を高めたら別ですが今はこれだけなんです」

 

横島はシルヴィに説明した後、じっと達也を見つめアイコンタクトをする。

 

「!……そう言うことか」

達也は小声でつぶやく。

横島の意図が分かったようだ。

この場ではいえないような事項で、カオスと自分ぐらいしか使えないような魔法式……そうなると分解・再成魔法が関わっているのだろうと……

達也は了解の意図を示すために、横島に見つめ返す。

 

 

横島と達也は短時間だけお互い見つめ合っていたのだが……

「ちょっとタダオ!達也となに見つめ合ってるのよ!」

「お兄様?……まさか!」

リーナは剥れた顔で横島に聞き、深雪はまたもやあらぬ疑いを掛けているようだ。

 

 

「まあ、あとはマリアが近日中に日本に来るらしい。細かいCADの調整はその時にするっていってたぞ」

 

「マリアさんがわざわざ来て、調整してくれるのか……ありがたいことだ。そういえば横島、この対魔用CAD一体型銃は俺専用といっていたが、俺の生体情報等はどうしたんだ?」

達也は若干うれしそうな口ぶりを見せる。

 

「ああ、この前、マリアが来たときに、帰り際、マリアが別れの挨拶と称して、抱きつかれただろ。そのときに、お前の生体情報も同時に収集していたんだよ。その後マリア自身がこのCADを調整していたから間違いない」

 

「お兄様!どういうことですか?」

深雪がブラコン嫉妬オーラを噴出させる。

 

「い、いや、あれは別れの抱擁だ。ただの挨拶に過ぎん」

達也は慌てて、言い逃れをする。

 

「いいよな~、達也は優しく抱きつかれて、俺なんて、毎回さば折だぞ……」

 

「横島!余計なことを」

 

「へ~、達也がマリアをね~」

リーナはニヤニヤしながら達也を見る。

 

「お兄様!帰ったらじっくりお話を聞かせてもらいます」

どうやら達也は今夜も、深雪の嫉妬説教を免れないようだ。

 

 

「……話を戻す……横島、扱いが難しいというのはサイオンを多量に消費するためだけか?」

達也は深雪の言葉をスルーし、話題を元に戻す。

 

「いや、そのなんだ…ま、まあ、とりあえず起動させてくれ……」

 

達也は対魔用CAD一体型銃を構え、起動させる。

「魔法式は理解した、これで探査ソナーを?いや、何か要求してきたぞ」

霊視ゴーグルから、なにやら不可解な要求をするメッセージが表示されていた。

 

「あっ……そのな、言いにくいんだが、一部サイオンを霊力に術式変換する機構になっているらしいんだ……霊気というのは感情によって大きく揺れ動く。術式変換をする際に、霊気の揺れ……が必要らしい」

 

「どういうことだ?」

 

「……達也が心に抱いている大きな感情を叫べということだ」

 

「なんだそれは?……どういうことだ?」

 

「要するに言霊だ。特に愛憎などの言葉は揺れが激しい。効果範囲もこの揺れに大きく作用する」

 

「愛憎の言葉だと?」

 

「やはり達也にはそれがネックか………そうだな、うーん…達也だったらこの言葉だな……俺が言った言葉を気合入れて叫んでくれ、それで起動する……『深雪、愛してる』……だ」

 

この対魔用CAD一体型銃に備え付けられている悪霊探査機能は、自らの大きな感情を言葉にする事で起動するのだ。そして、その感情が大きければ大きいほど、探査範囲は広がる仕組みになっている。

横島は、達也が見せる感情のほとんどが妹である深雪に対しての愛情だと感じていたからこそ、この言葉をチョイスしたのだ。

 

「な…何だと?なぜそのようなことを叫ばなければならない!」

 

「シスコンのお前だったらこれが一番だ!」

 

「まあ、横島さんったら……お兄様!是非、おやりになってください!これも悪霊退治の一環です」

深雪は顔を赤らめながらうれしそうにもじもじしていたが、はっと何かに気が付いたかのように鼻息荒く達也に迫る。

 

 

「はぁ……分かった。……『深雪、愛している』」

達也はCAD一体型銃を構えながら、あきらめた表情をし、棒読みする。

 

「!?横島、いうとおりにやったが起動しないぞ」

達也の霊視ゴーグルには、言霊レベル起動値以下と表示される。

 

「気合がたりん!!」

「そうです。そのような事では伝わりません!」

横島と何故か深雪にまでダメだしを食らう達也。

 

「くっ、次から次へと……『深雪、愛している』」

先ほどよりは声も感情も入っているようだが……

またしても、達也の霊視ゴーグルには、言霊レベル起動値以下と表示される。

 

「何をやってんだ達也、いつものシスコンぶりはどうした!!」

「そうですわ、お兄様!いつもの通り、おっしゃってください!!」

 

「………『深雪!愛しているぞ!!』

達也は、うんざりしながらも、いつもより大きな声で投げやり気味に叫ぶ。

 

すると、CAD一体型銃を解して、達也から霊気の波動(ソナー)が円状に広がる。

そして、霊視ゴーグルには起動成功と探査範囲が表示される。

今ので約半径110メートルといったところだ。

 

「おお?起動したようだな達也!!」

「さすがです。お兄様!深雪への愛を感じます!」

 

達也は、明らかに納得の行かない顔をしていた。

「横島……もしや、毎回これをしなければ探査できないのか?」

 

「まあ、慣れれば、言葉にしなくても大丈夫だと思うが、最初の方はあきらめてくれ」

 

「いいえ、お兄様!まだ、足りません。横島さんは気合や感情で探査範囲が伸びるといっておりました。お兄様であれば、もっと出来るはずです!」

 

「ドクター・カオスもとんでもないものをよこしてくれたものだ……」

達也は頭痛がするが如く頭を抑える。

ドクター・カオスの試作品やワンオフ作品には注意が必要だ。何らかの副作用は必ずといっていい程、付随してる。

 

「横島さんありがとうございます!こんなにすばらしいものを持ってきていただいて!ドクター・カオスに是非、お礼を言っておいてください。お兄様も非常に喜んでいると!本当にすばらしい発明品ですわ!さすがは天才錬金術師!!」

喜んでいるのは深雪ばかりだった。

 

シルヴィはこの一連の漫談を見て、やはりあの対魔用CAD一体型の銃は不必要だと考えを改めていた。

リーナはあきれた顔で深雪と達也を見ていた。心の中で、こんな二人にどうして負けたのだろうかと思いながら……

 

この後、上機嫌の深雪に横島は霊体ボウガンを手渡す。これは氷室家作の一品だ。

銃よりも射程が短く、威力は低いが、取り扱いが容易で汎用性が高い。地面などに矢を突き立てることによって、結界なども張る事も出来る。

今の深雪にはそこまでの技量はないが……横島の見立てでは、深雪にも霊能者の素質があるようだと感じていた。

 

 

 

この後、達也は対魔用CAD一体型銃を一人で色々と『言霊』を試してたのだが……

一番、探査範囲が広かった言葉は『癒しをありがとう。マリアさん』だった事は深雪には内緒である。

 

 




達也のは……強制シスコン宣言装置でした。
ますます、達也の精神は削られていってますね><

今後のストーリーは最終局面へと一気に加速します。
一番の危惧はギャグ成分がどんどん薄くなることです。

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