横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。


展開が速くなっていきます。
ついでにギャグがまったく無くなっていく。シリアス展開に><


175話 横島と達也とリーナ!!

 

 

「横島くん、私達は今日は4体捕らえたわ」

「横島、今日は3体ね」

「タダオ、スターズと達也達で5体捕らえたわ」

真由美、エリカ、リーナが横島の元に報告に来る。

 

「真由美さんお疲れ様です。エリカとリーナもお疲れさん。大分と手馴れてきたんじゃない?」

 

「そうね。これも横島くんのおかげだわ……でも、こんなに悪霊が蔓延っていたなんて……」

 

「2週間もやってればなれるわよ。……にしても、多いわね。これで150体ぐらい捕らえたわよね」

 

「結構多いけど、地道にやっていけばなんとかなるんじゃない?」

横島は今のままではまずい事を理解しながらも皆にはこう言った。

 

「タダオ、USNAで悪霊に取付かれ行方不明になった容疑者を日本で捕らえることが出来たのは5人。残りは2人。その他の日本への渡航者も一人一人、この霊視ゴーグルで確認作業も行ったわ。悪霊に取り憑かれていたのはリストの201人中4人、そして未だに所在不明の人間が13人居るわ。この13人は悪霊に取りつかれていた可能性が高いわね。こちらの捜索は今も日中、他のスターズのメンバーが取り仕切っているわ」

リーナがUSNA側の近況報告をする。

USNAは夜の悪霊退治以外でも、日本への渡航者の追跡調査を行っていたようだ。

 

 

「たははははっ、みんなのおかげで俺は楽が出来る」

 

横島は笑顔とは裏腹に焦っていた。

未だ姿を現さない魔神ダンタリオンがこの世界に送り込んだハズの悪霊。

現在、対峙している金色の目をした悪霊と悪魔の主が何者なのかも判明しない。

そして、その行動原理が一切分からないことだ。

既に四勢力の協力体制を整えてから本格的な討伐を行い2週間が過ぎようとしていたのだ。

その間、捕縛した悪霊の数、150を超え、悪魔化した人間とは8体も遭遇したのだ。

 

はっきり言って、流れが悪い。

 

魔神ダンタリオンを唆した金色の目の悪魔の主が何を目的とし、この世界に侵入し、何をなそうとしているのか、使い走りもいいところの、自らが生み出した悪霊共を多量に増やし、まるで見せ付けるように派手に動き回っているのかが分からない。

なぜ、舞台をUSNAから日本に移したのかも分からない。

 

横島は悪魔、それも魔神との戦いをよく知っている。

悪魔との戦いで、先手を打たれるほど痛いものは無い。

しかも現状では何をしでかしてくるのかも、予想さえ立てられない。

特に魔神との戦いは、圧倒的不利をこうむる。

魔神とは……その名の通り、魔の神的存在という意味も含まれるが……

まさに、神と同じ世界の理を行使できるのだ。

 

横島の前に現れた魔神ネビロス、圧倒的な力を持つだけでなく。未来視という破格的な能力を持っている。

いわば、世界の理そのものを支配している力だ。

その特性を知らなければ、戦う前に負けることもある。

 

横島が特に注視するのは、圧倒的な霊力・魔力を内包していないのに、魔神として君臨している悪魔である。

他の力がある魔神が手出しが出来ないほどの、何か特殊な力を持っていると見てまずは間違いないだろう。

横島はダンタリオンがそれに当たると判断をしているからこそ、師匠である斉天大聖老師に情報収集をお願いしていたのだ。

しかし、それもうまくいっていない。ダンタリオンの情報はあまりにも少なすぎる。

 

そして、金色の目をした悪霊の主でダンタリオンを裏で操っている悪魔だ。

斉天大聖老師からはそれらしき悪魔をピックアップしてもらっていたのだが、横島はそのリストを見ても、ピンとこない。

横島の経験と勘では、リストには居ないと感じていた。

 

 

そして、横島は皆に内緒で独自に捜査を行っていたが、それでも尻尾を掴むことが出来ない。

捕らえた悪霊から情報を引き出そうにも、悪霊自身は元は意思を持たない生存本能だけで動いているような低級な存在だ。何か知っていようも無かった。

無理やりサイコメトリーなどで調べようものならば、存在そのものが消滅してしまう。この金色の目をした悪霊の主は相当したたかな悪魔のようだ。

 

 

 

 

 

深雪がエリカ達と話している間、達也はスターズと共に帰還しようとしていたリーナを呼び止める。

「リーナ、話がある」

 

「何?達也」

この悪霊退治の協力体制を始めてから、リーナと達也は大分打ち解けてきたようだ。

リーナ達スターズと司波兄妹は、お互いが使う霊具の相性がいいため、組む事が多かったのが幸いだったのか、当初の敵対心丸出しだったリーナも、今は軟化し普通に会話をしている。

お互いマリアから知らされた横島の本当の現状を知る者としての仲間認識もあるのだろう。リーナ自身、既に遺恨は無くなっていた。

 

「横島のことだ」

 

リーナは達也からのその返事に、スターズのメンバーには先に帰るように言い。達也と二人で話せる位置まで移動する。

 

「タダオがどうかしたの?」

 

「あいつは今もかなり無茶をしている……このまま行くと、マリアさんが言っていたことが現実になる」

 

「ど、どういうこと?」

 

 

…………

 

 

 

 

 

 

 

 

翌々日夜半、七草家関連施設の敷地内、悪霊退治に向かう前に、お互い顔を合わせ軽く打ち合わせをする。

こうすることで、元々バラバラであった四組織、少なくともこの場に出席しているメンバーは共通の目的、同じ敵を打ち倒すためと、お互いを認め打ち解けてきていた。

 

達也からの提案で、今日は横島と達也、リーナが組むことになる。

他のメンバーは……

シルヴィ率いるスターズと、千葉家から千葉寿和とその相棒、稲垣警部補。七草家からは孝次郎、ボディーガードの名倉氏のチーム

真由美、十文字克人、エリカ、レオ、幹比古と深雪のチーム

年長組みと学生組みとで分かれた。

捜索範囲は三鷹、武蔵境、調布、府中と都心から少し離れた場所である。

 

 

 

 

「横島……ちょっとこい」

 

「なんだよ。やぶからぼうに」

 

「いいから、付いて来い」

達也は横島にそう言って、魔法を使って移動する。

その後に、文句も言わずにリーナも付いて行っている。

しかし、どうもリーナの顔色が悪い。

 

「わーかったよ」

横島もしぶしぶ付いて行く。

 

 

 

そこは大きな公園の広場だ。

調布市の北部にある。広大な植物園の中だが、今は閉園時間で人は居ない。

 

「なんだよ。こんなところに何の用事だ?……おまえ様子が変だぞ?」

 

達也は横島に対峙するように正面に立つ。

リーナはいつもとは違い、達也の横に立ち、うつむき加減で苦しそうな表情をしている。

 

「横島、俺達に隠していることがあるな」

達也の目はいつもにまして鋭い。

 

「何のことだ?」

 

「言う気が無いか……お前、この護符は何だ!……この護符を通して、俺達が受けたダメージを全部お前が背負っていたな!」

達也は懐から護符を取り出し、横島に突きつけた。

 

「………」

横島は沈黙する。

 

 

達也は六道芽衣子の来襲の折、それに気がつき、マリアに連絡をしたのだ。

そのようなことが可能なのかということを確認するためだ。

マリアの返答はこうだ。

「横島さん・ならば・可能です・呪いの・一種を・利用した・オリジナル・呪札でしょう・・・やはり、横島さんは……マリアが・横島さんを・説得に・行きます」

マリアはすぐにでも横島の元に行こうとしたのだが、こう言って達也はマリアを止める。

「あいつは言って聞く奴じゃない。俺が何とかして見せます」

 

達也は自分の身を切るような行動をとる横島を許せなかった。

達也自身も今まで似たような事(傷ついた仲間への再成魔法による修復に伴う副作用としての受けたダメージの苦痛)を軍の命令で、効率を考え納得した上でやってきた。

しかし、横島のこれは何かが違う。うまく考えがまとめる事が出来なかったが……

ただ、達也は感情で横島のこの行動を受け入れる事は到底出来なかったのだ。

 

そもそも、再成魔法による苦痛と、横島のダメージ転化は似て非なるもの、まったく別物だ。

達也の再成魔法は、相手が受けたダメージを回復させる際に、エイドスを読み込む際に、相手の痛みの感覚をも一緒に読み込んでしまうがために起きる現象だ。肉体的にダメージを受ける事はないが、それでも相当の苦痛を伴うのは間違いない。

横島の場合は、相手が受けたダメージそのものをその身に直接受けるのだ。

横島自身が受けても霊的防御等でダメージにならないものも、同じ攻撃をその転化される相手が霊的防御もなしにまともに喰らって深いダメージを受けた場合。その深いダメージをそのまま横島が受けてしまうのだ。

横島自身だったらなんとも無い攻撃も、深いダメージとして受けてしまっていたのだ。横島の超人的な回復力が無ければ、すぐにでも身を滅ぼすような行動であった。

……六道芽衣子が来襲し、式神暴走で皆が受けたダメージをそのまま、横島は受けていたのだ。いくら横島でも、あれをまともに喰らえばただじゃすまない。

実際横島は、表情を変えていなかったが、相当なダメージを蓄積し、服の下……肉体には凄まじい傷を何度も受けていたのだ。

 

「タダオ……どうして!どうしてそんな事を!!私は知らなかった……また、知らなかった。タダオがこんな事をしていた事を!苦しんでいた事を!!………もう、やめて…お願い……もうこんな事はやめて……」

リーナは苦しみを吐き出すように叫び……そして、涙が頬を一度、二度と伝い、消え入る声で懇願する。

リーナは一昨日の悪霊退治後、達也に呼び止められ、この事実を聞かされたのだ。

リーナはショックでしばらくその場から動く事が出来なかった。横島がそのような事をしていたなどとはまったく思っていなかったのだ。

リーナは悪霊や悪魔、そして、六道芽衣子の式神攻撃を受けても、自分やスターズのメンバーがまったくダメージを受けていなかった事を思い出す……そのダメージがすべて横島に向かっていたという事実に今日まで思い悩んでいた。

 

 

「……悪霊を。悪魔と対峙するには、皆は余りにも経験が少ない。相手よりこちらが戦力や力でいくら優位に立っていても、奇襲を受け、もしくは特殊能力(呪い等)に翻弄され、一瞬で命を落とす事なんて事はざらにある。……悪魔退治…ゴーストスイープとはそう言うものだ。だから……保険を掛けていた。その護符で……」

横島は苦笑しながらゆっくりと語りだし、そしてその事を認めた。

横島の護符は護符の耐久を超える攻撃や特殊な霊的攻撃事象を受けた際、横島が一定範囲内にいた場合にダメージ転化するような呪いが仕掛けられていたのだ。

 

「俺達はそれを覚悟の上で悪魔退治を行っている!なにか?俺達がそんな覚悟も無い臆病者だとでも思ったか!」

達也は威圧感を高め、横島に食い付く。

 

「……悪魔に取付かれた人間がまともな死を迎えられない……俺は何度もそれを見てきている。お前らにそうなってほしくない。………そもそもこれは俺が一人で片付けるハズだった!!……俺はお前らを巻き込んでしまった………その償いだと思ってくれ……俺ならば耐えられる」

 

「ふざけるな!!加害者意識もたいがいにしろ!!お前がUSNAにいた頃から、日本で起こっていた事だ。お前が関わる前に、既に俺達はこの件に首を突っ込んでいたんだ!!」

 

「俺は陰陽師だ。悪魔退治は俺の使命だ」

 

「やはり、言ってわかる奴じゃないか……」

達也は腰のホルスターからシルバーホーンを抜き横島に構える。

 

「……どうするつもりだ」

 

「横島!勝負だ!……いや、殴ってわからせる!お前流で言う喧嘩だ!」

あの達也が啖呵を切った。

 

「達也……やめて…………私は……タダオとは戦いたくない……」

リーナは達也に弱弱しく訴える。

 

「戦いじゃない!喧嘩だ。こいつを今、わからせるチャンスだ」

 

「……タダオ……、私にはこうする事しか……戦う事でしか、タダオを救えないの……」

達也の叱咤でリーナは苦渋に満ちた顔をしながらも、戦闘態勢をとろうとする。

背中に背負っていた長い布地のケースから、なにやら金属性の杖を取り出した。

どうやら、達也とリーナは事前にこうなる事を想定し、準備をしていたようだ。

先ほどまで思い悩んでいたが、リーナもようやく決心が付いたようだ。

 

 

「……リーナまで…どうして今、戦わなければいけない……」

 

「戦いじゃない!喧嘩だ!喧嘩に時も場所も関係ない!」

達也が吼える。

 

 

 

 

 

 






横島くんはこじらせ気味ですね。
仲間が傷付いてほしくないという。
……ダメージ転化は、悪霊程度の攻撃では護符の力で防げますが……悪魔の不意打ちや、芽衣子の式神暴走はそのまま、ダメージ転化しちゃったようですねって……
ほとんど、式神のダメージじゃん……

悪いのは全部芽衣子さん。六道家はこれだからたまったもんじゃありません。しかも、当の芽衣子本人、これに気が付いているし><
とんでもない。

ということで、次回は久々に、横島VS達也……そしてリーナが参加!

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