横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想の返答今しばらくお待ちください。
誤字脱字報告ありがとうございます。

できるだけ、スパート掛けたいですね。
年末までにはと思っていましたけど……もう、無理です。すみません。

前回の続きです。




178話 悪魔の謀略!!②悪魔の罠

「レオ、幹いる?」

「エリカも無事か?」

「僕も居るよ」

「みんな無事のようね」

暗がりのなかエリカ、レオ、幹比古、真由美は声を頼りにお互いの無事を確認する。

 

「深雪は!?」

エリカは、深雪の声が聞こえないことに気が付く。

 

「深雪さんは居ないみたいね……無事だといいけど」

 

「それよりも自分達の心配したほうがいいのでは……これ、抜けないし」

 

「くそ、こんな縄!!うおーーー!!ダメだ。切れねーーー」

 

この4人は重厚感あふれる木製の椅子に座らせられた状態で、手首を手すりに縛られ、足首は椅子の足に縛られた状態で拘束されていた。

 

徐々に暗がりに目が慣れてくると、お互いの居場所がおおよそ分かってきた。どうやら1メートル間隔ごとに、並んで椅子に拘束されているようだ。

 

 

「私達を離せーーーー!!」

「こんなことをした奴、後で覚えて居ろよ!!」

エリカとレオは大声で叫ぶ。

 

「レオ、エリカ大声はまずいよ。敵を挑発してどうするんだよ」

「そうよ。こういうときこそ冷静に」

幹比古と真由美は二人に注意をする。

 

 

「……で、冷静な幹比古君はここがどこか分かるのかな?」

エリカは皮肉げに幹比古に聞く。

 

「うーん、この建物の中、本だらけだったから……図書館?」

 

「なんで、図書館が私達を拘束するのよ!!」

 

 

 

数分前……

深雪とエリカは、少女を追いかけ、井の頭公園に入った瞬間。公園ごと霧に包まれたのだ。

少女を見失うが深雪とエリカは霧の中を探しに歩きだそうとした直ぐに、幹比古とレオと合流。さらにしばらくし、真由美とも合流できた。

最初は状況も分からず、焦っていたが、霧があるだけで特に攻撃されるわけでも、眠くなるでもなかった。

しかし、公園の外に行こうにも、霧が濃く、さらに外縁らしい場所に行くと、見えない壁に阻まれたのだ。

そして、魔法を使おうとするがうまく使えない。身体もなんとなしに重い。

 

はじめは公園内に多くの人がいたのだが、いつの間にやら姿を消し、多数の本だけが地面に残っていたのだ。

 

その本は大きさもジャンルも様々でまるで統一感が無かった。

 

 

しかし、公園中に落ちている本が一斉に勝手にパラパラとめくれ、光を出したのだ。

良く見ると、本自身が光っているのではなく、本に書かれている特定の文字が複数光っていたのだ。その光は収束しレーザービームのように放たれる。

そして、その光は何も無い空間を駆け巡り、その光が通った後には徐々に何かが映し出されるように巨大な建造物が現れたのだ。

 

中世ヨーロッパの宮殿を彷彿させる建物……

 

この建物は『全世界図書館』と呼ばれる建造物だった。

宇宙の理から、人一人の人生まで、書物として保管する図書館。

天上においては、天界図書館と呼ばれ、魔界においては大魔界図書館と呼ばれる物だった。

まさしく全世界の記録が集う図書館である。

 

 

強ち、幹比古の推測は間違いではなかった。

 

 

そして、地面の落ちていた多数の本はこの全世界図書館を召還する為の術儀だったようだ。

 

 

 

「なっ!なにこれ!」

「今まで無かったよね。こ、こんなの!」

「どど、どうなってんだ?」

「ゆ、夢…夢よね」

エリカ、幹比古、レオ、真由美が目の前のその建物と出現と次々の起こる事象に驚いている中……

 

深雪は……

「あの子、あんなところに……」

そう言って、何かを追いかけるようにその建物に走っていく。

あの子と深雪はそういったが、深雪が見ている方向に人などは居ない。

 

「深雪!どこに!」

「深雪さん皆から離れてはダメよ!」

エリカと真由美はそれを引きとめようと叫ぶが……深雪はついにその建物の大きな扉から中に入ってしまった。

 

「……深雪どうしたんだろ?様子がおかしかった」

「そうね。どことなく虚ろというか……」

エリカと真由美は深雪が建物の中に入っていった方向を見つめていた。

 

「とりあえず、探しにいこうぜ」

レオは早速、建物の方へ歩みだす。

 

「でも、これって、もしかしたら悪魔の罠かもしれないよ」

幹比古はそう言ってレオを止め様とする。

 

「そうね。なぜか魔法も使えないし……下手に動くと危険だわ。横島君たちがきっと応援に来てくれるわ。それまで待っていましょう?」

真由美も幹比古に同意する。

 

「わかったわ」

「しゃぁないか」

エリカとレオもそれに付き従うのだが……

 

 

ギョエーーーーーーーーッ!

 

 

上空でなにやら奇怪な動物の鳴き声がする。

皆は一同に上空を見上げる。

 

「なななな!!」

「ななんだ。ありゃ!!」

「き……恐竜??」

「……夢よこれはきっと夢…はっ、新手の式神かもしれない!」

エリカ、レオ、幹比古、真由美はその生き物を見て、一様に派手に驚く。

 

見た物は、体長20メートルはあろうかという。翼竜に似た生物だ。

その生物が3、4匹空をぐるぐると飛び回っているのだ。

 

「おお、おい?あいつ等、こっち見てないか?」

「た、たぶん……目つきが悪いだけよ」

「僕は美味しくないよ」

「……あれは式神、そう六道芽衣子の式神よ!」

 

そして、その翼竜はこちらに首を向け……大口をあけながら一気に降下してきた。

 

「うわーーーー!!逃げろーーーーー!!」

「目つき悪いって言ったのごめんってーーー!!」

「僕は美味しくないよ!美味しくないって!!」

「ほ、ほんもの?きゃーーーーーーーー!!」

皆は一斉にあの建物の、深雪が入っていった扉に逃げ込んだ。

 

「はぁはぁ、とんでもない目にあったな」

「な、何よあれ、ここは何億年前なのよ?」

「ふっー、タイムスリップ?でもこの建物は中世っぽいし」

「はぁ、はぁ、冷静によ冷静に、真由美」

レオ、エリカ、幹比古、真由美は何とか難を逃れたが、結局深雪が入った建物の中に入ってしまった。

 

 

「ここはどこかしら?さっきまで井の頭公園にいたはずよね」

「先輩、井の頭公園に恐竜は居ませんよ。ましてやこんな建物無かったです」

「じゃあ、どこなのよ幹~~」

「まあ、どこだっていいじゃねーか、司波妹を探さないとな」

真由美、幹比古、エリカ、レオは建物の中を見渡していた。

天井は高くに先が見えない幅広い廊下があり、扉がいくつも見える。

少々風変わりな風景に見える。それは廊下の壁には背の高い本棚がびっしり詰まっていたからだ。

皆は意外と冷静なのかもしれない。こんな状況でも、会話をすることができているのだから……レオにいたっては能天気すぎる。ある意味大物だ。

 

 

 

 

「そうするしかないわね。でもなんか、身体に力が入らないわね……」

エリカはレオに同意しつつ身体が思う様に力が入らないことに疑問しながら、廊下を歩き出す。

 

「お前もそうか……力が出ないんだよな」

レオも同様らしい。

 

「そう?私は余り変わらないけど」

真由美は余り違和感が無いようだ。

 

「うん、魔法も使えないしというか、霊気がほとんど感じられない?あれ?僕たち死んだ?」

幹比古は歩きながら、霊視をしていたが、自分たちの霊気(サイオン)が異様に少ないことに気が付いた。まるで一般人並に……

 

 

 

「おーい司波ーーーー!!どこに居るーーー!!」

レオは廊下を歩きながら、深雪を探すため大声を出したのだ。

 

「レオーー!しーーっ」

幹比古はレオの口を両手で慌ててふさぐ。

 

「むぐ、何すんだよ幹比古」

 

「何すんだよはあんたよーーー馬鹿なの?そうだったわね。あんたは大がつく馬鹿よ!」

エリカはレオに顔を近づけて、小声で罵る。

 

「西城君、ここは敵の中の可能性が高いのよ。大声はダメよ」

真由美はレオにやさしく諭すのだが………

 

 

ガシャガシャガシャガシャ

 

「ん?なんか来たわよ?………」

「騎士?西洋の騎士?フルメイル?」

「おお!かっこいいな!」

エリカと真由美、そして暢気なレオが声を上げる。

 

廊下の向こうから、西洋甲冑の騎士の団体がガシャガシャ音を立てながら走り迫ってくるのだ。

 

「言ってる場合じゃないよ!!逃げよう!!」

幹比古がそう言うが早し、皆は既に回れ右をし、逃げ出していた。

 

そして、手近な扉を開け、部屋に入る。その部屋は本棚と本でびっしりと埋め尽くされていた。

扉の向こうでは甲冑の音が過ぎ去った。どうやら、見つからずに逃げおおせたらしい。

「ふー、危なかった……レオはしゃべるの禁止だよ」

「わ、わるかった」

「あんたに巻き込まれる身にもなってよ」

「………」

エリカ達はレオの天然に巻き込まれることに慣れているが、さすがの真由美は疲れた表情をしていた。

 

 

『よう、娘っこ、大分ピンチらしいな……こりゃ、お前らの霊気や気は今、一般人と変わらんみたいだぞ。魔法は使えんし、いつものように身体が動かないわけだぁな……』

エリカの愛刀紅鮫丸が鞘に刺さったまま、話かけてきた。

 

「紅公!あんた何かわかるの?そういえばあんた、霊気(サイオン)無しでも動けるの?」

 

『はっ、こちとら機械とのハイブリットよ!緊急電力供給モードがようやく作動したところよ!……どうも、こりゃよくねーな。詳しいことはわからんがどうやら空間が捻じ曲がっているぞ。それが影響してるんだろぅ……緊急SOS通信も途絶えてらーな』

さすがはドクター・カオスの作ったAIだ。癖はものすごいあるが、ピンチには頼りになる。

 

「空間がって……まあいいわ、深雪が居るところが分かったりする?」

 

『いんや、さっぱりだ。ただ、出口まではマッピングしているから、うまくいきゃ、脱出できるってもんだ』

 

「そう、外にいったら行ったで、あの恐竜みたいのが襲ってくるし……」

「とりあえずここで、横島達を待つ?」

「そうね。敵をここでやり過ごしましょ、横島くんだったら必ず助けに来てくれる」

「しゃーーねーか」

どうやら、ここで助けを待つ事で皆の意見が一致したようだ。

 

「紅公、あの追いかけてきた鎧はなんなの?」

 

『どうやら、リビングアーマーっていう低級な悪霊や悪魔の一種らしい。マリア嬢のデータ集で確認できた』

どうやら、マリアは過去の記憶を元にいろいろなデータ集を作っていたようだ。もちろん、この世界が構築される前のデータもだ。

 

「鎧の悪魔か……まるで御伽噺だな」

レオは紅鮫丸の話を聞いてしみじみという。

 

『魔術や魔法が効き難いとある。素手ももちろんだ。耐久力が持ち味の奴だ。まあ、中身も空で、頭の中も空っぽな連中だ。命令に愚直に従うって特徴がある』

 

「ふーん。あんたと大違いね」

 

『べらんめぇ!こちとら、悪霊退治のイロハを娘っこに教育する立場なんだ!こっちの言うことを素直に聞くってのが筋じゃねーか!』

エリカの皮肉に、紅鮫丸は少々お怒りのようだ。

 

「ぐっ、なによ!」

 

「エリカ…自分の刀に言い負かされてない?……まあいいや、そのリビングアーマーに弱点とかないのかな?」

幹比古はエリカを哀愁漂う目でみてから、紅鮫丸に問いかける。

 

『あるにはあるが……おめーらには無理だな』

 

「無理って、紅公……本当は知らないんじゃないの?」

 

『今は魔法もろくすっぽ使えない状態だろ!魔法が使えない魔法師が何言ってやがる!おとなしく逃げ隠れするのが吉だってもんだ!』

またしても、エリカは言い負かされていた。

 

「そうね。その刀の言うとおりだわ」

真由美は紅鮫丸の意見に同意する。

 

『おう、ちっちゃいのにグラマーなねーちゃん。判ってるじゃねーか!』

 

「…………」

おっさん臭い……いや、人間臭い刀、紅鮫丸に、何故か呆れる思いがした。なぜ刀のくせにこんなに人間臭いのだろうか?AIにこんなわけがわからない、めんどくさい人間性が必要なのかと…………それは製作者であるドクター・カオスにしか判らない。

いや、たぶん。ただたんに面白がっているだけだろう……

 

 

『まずいな、さっきの鎧野郎共がここを囲んでやがる』

紅鮫丸は皆に警告する。

 

 

そして、エリカ達は、西洋甲冑の騎士、いや、中身が無い鎧だけで動いているリビングアーマーという悪霊、悪魔の一種に部屋に突入される。

 

エリカは剣術で、レオは素手でリビングアーマーを何体か叩きのめして抵抗していたのだが、多勢に無勢……あえなく捕まってしまったのだ。

 

 

 

 

そして今に至る。

 

「横島、早く来てくれないかな」

「きっと横島が助けにくれる」

「達也たちも居るし、きっと来てくれるさ」

「横島くん……」

皆は椅子に縛られならも横島が助けに来ることを信じていた。

 

 

 

 

しばらくし、甲冑のガシャガシャとこすれる音が近づいてきた。

同時に女性の声も聞こえてくる。

 

若い女がリビングアーマーに後ろで捕まれ連行されてきたのだ。

 

「離して、あんた達なんかタダオが全部倒してくれるんだから……」

つれてこられたのは、リーナだった。

リーナは必死に抵抗している。

 

達也とリーナは皆を探すため一緒にこの世界図書館の中に忍び込んだのだが、捕まり連れて来られたのはリーナだけであった。

どうやら、達也はまだ捕まっていないようだ。

 

「リーナさん?……なぜここに?」

「あんた、助けに来てくれたんじゃないの?」

真由美とエリカは、リビングアーマーに連れてこられたリーナに話しかける。

 

「どじ踏んでつかまったのよ。………皆無事でよかったわ。深雪の姿が見えないけれど?」

 

「深雪とは合流できてない。……この建物の中に私達より先に入ったのだけど、それからは……」

 

「そう……まだ捕まっていない可能性もあるわね」

 

「はぁ、そうなんだ。そういえば、今日は横島と達也と一緒だったはずだけど二人は?」

 

リーナは幹比古の問いに無言で首を横に振る。

そして、真由美の横に皆と同じように椅子に座らせられ、拘束される。

 

「まあ、そのうち来るだろ。あいつらのことだから」

レオはこんな時でも能天気だ。

 

 

実はリーナはただ単に捕まったわけではない。

達也とリーナは、霧の外に出られない以上、先に巻き込まれた皆と合流したほうが良いと判断し、彼らはこの建物(世界図書館)に逃げ込んだか、若しくは、捕まった可能性もあると見て、捜索のため、この怪しげな建物に忍び込んだのだ。

 

 

達也は霊気や気などを使えない状態でも、九重流の忍者が源流の体術を身につけており、気配を消し、音も立てずに忍び込むことを得意としていた。

 

一方リーナは、軍人としての基礎体術は持っていたが、このような諜報活動などのスニーキングミッションを得意とするほうではなかった。

達也の指示通りに後について行くことで、リビングアーマーが常に警備するように歩き回っている中でも見つからず捜索することができた。

そして、とある部屋で、争ったような後を発見する。

真由美が持っていた破魔札ショットガンや、古式魔法の札などが落ちていたのと、出血の跡などが無かったことから、彼らがこの建物内に入り、捕まったと判断した。

 

そこで、このだだっ広い建物内を探し回るのはリスクが大きいと判断し、リーナに囮をさせてわざと捕まるようにし、皆が連行した場所まで連れて行かれるところを達也の忍びのスキルで見つからないように後を付け、隙を突いて助ける作戦に出たのだ。

 

人間の中での戦争や紛争ではそれは正解なのかもしれない……しかし悪魔相手には悪手もいいところだ。悪魔に人間の常識は通用しない。人間を出血させずに殺すことも出来るし、捕まえて閉じ込めるなどという発想がそもそも無い可能性もあるのだ。

 

今回は、悪魔が彼らに利用価値を見出し、捕らえただけで……見つけられたその場で丸呑みされることもある。たまたま運が良かっただけなのだ。

やはり、悪魔に対しては素人同然である。

 

達也は現在、捕まったリーナの跡をつけ、気配を消し、息を潜め、皆が捕まっている部屋の中の様子を伺っていた。

(皆は無事のようだ。……深雪はどこに…)

 

 

 

そして、皆が捕まっている暗かった部屋が、天井から釣り下がっている灯篭が徐々にポゥっと灯りだす。

 

 

皆の視界が明かりと共に徐々に広がる。そこはかなり広い広間のようだ。まだ壁が見えてこない。

天井もかなり高い。

 

 

ようやく、並んでいる皆の両側の壁が見えてきたのだが、そこにも天井に届くほどの高さの本棚が壁一面にあり、びっしりと本で埋まっている。

 

 

そして、前方も視界が広がっていく。すると、皆が並んでいる場所から10メートル程離れた右斜め前に、人影が見えてきた……

 

アンティーク調の赤い布地で木製の淵で出来た大きな高級そうなソファーに一人の少女がポツンと座っていた。

ソファーが大きいために、少女の足はまったく床につかない。

 

その少女は、青い目に真っ白の顔、 真っ赤なカチューシャを頭にし、長い黒髪を後ろに垂らし、白色のフリルのついたゴシック調の黒に近い紫のワンピースを着こなし、真っ赤な靴を履き、そして、白い手袋をはめて、重厚そうな本を開き、微動だにせずに持っている本に視線を注いだままの状態である……一見、人形にも見えるが、ゆっくりと本に注がれている視線が動いている。

 

 

さらに、視界が開けると、その少女の足元右側に、大きな大きなライオンが欠伸をして寝そべっており、椅子の後ろには、執事調の服を着た背の高い人型のものが、紅茶のポットとティーカップが乗った銀の盆を手にしていた。その執事調を人型と呼んだのは、とても人間には見えなかったからだ。顔があるべきところに、目や鼻や口が無いのだ。何か木のうろのような模様がついているだけだった……

 

 

 

皆は不思議そうにその光景を見ていた。一見場違いの様相に見えるが、何故かこの広間に溶け込んでいるかのようにしっくりくるのだ。

 

 

そして、どこからか、その余韻を遮る様に、よく通る低めの渋い男性の笑い声が響き渡る。

 

「ふふふはははははっ、はははははははっーーー、今日は実に気分が良い!」

 

 

 

 

 

 

 

 

一方横島は……

霧で覆われている井の頭公園の前に来ていた。

公園から少し離れた場所で、十文字が忙しなく人々に指示を出していた。

 

「十文字先輩!」

 

「横島か!……すまん。俺以外全員この霧の中だ。司波兄とシールズも中に入ったきり戻ってこない。中の状態はまったくわからん。うかつに中に入ることは出来ないと判断した。

周辺住民の避難は進ませている。各家の応援も駆けつけてくるはずだ」

 

「さすがです。十文字先輩。助かります」

 

「横島、これはなんなのだ」

 

「……間違いなく悪魔の仕業です」

 

「やはりか………」

 

「どうする横島!」

 

「助けに行きますが……ちょっと待ってください」

 

そう言って、横島は霧の近くまで歩む。

(これは、相当やばい。中は魔界化している……なぜだ。この世界は、神の最高指導者と悪魔の最高指導者が外郭に結界を張っているはずだ。こんな大それた事を出来るはずが…………いや……一つだけある。悪霊が霊力の高い人間から血を奪う行為……あの時に似ている……盲点だった!この世界にあんなものがあるわけがないと思い込んでいた!……破壊され、機能していなかったためこの世界に残ったのか?誰かが修復したのか?くそっ、あれであれば可能だ!)

 

「くそっ!やられた!!」

横島は夜の空に叫ぶ。

 

 

 

 

 




ゴシックロリータの少女登場!!
渋い声の人登場!!

そして、GSファンの方は、最後の横島が語った「あんなもの」をピンと来る方がいると思います。
次回は「あんなもの」の説明も含め、上の人の正体が明かされます。



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