一話で収まり切りませんでした。
更に、17話はいじるかもしれません。これは検討中です。
魔法大学付属第一高校のテロリストによる襲撃事件は、ブランシュ日本支部壊滅をもって解決をした。
事後、警察の事情聴取や軍の介入などはあったが、生徒独力で解決に至っている。
幸いにも生徒側に死亡者及び重度のケガ人は出なかった。(横島が重傷者を治したのだが)
テロに加担した生徒は、ブランシュ日本支部の支部長。司甲の洗脳魔法によるものと結論になり、1週間の謹慎処分で事が済んだ。
構内、校舎はいたるところで戦闘の跡が見受けられるが、既に工事業者が入り、徐々に復旧していっている。
あれから1週間。ようやく校内も落ち着きを取り戻し、授業も通常通り再開される。
横島というと、相も変わらず風紀委員の仕事の一環として、構内の修繕やらをやらされていた。
学校内での横島の立ち位置は以前と変わらず、なんぱ、変態、チカンの横島、2科生より下の扱いレッテルはそのままだが。本人はまったく気にしていないのだ。
そんな横島の周りでも変化したことがある。
横島の腕の風紀委員の腕章に、見習いと書いた紙がなくなった事。
これは、ブランシュ本部壊滅戦に参加した事による功績が認められ、生徒会、部活連、風紀委員会一致で決定された。また、学校の事務職員からの強い推薦があったとも。
事件以降、雫とほのかが横島と一緒にいることが多くなった。
どちらかというと、横島の後ろに雫とほのかがついて行っている感じである。
真由美や十文字からもよく声をかけられるようになった。
1年E組の連中とは相も変わらずだ。
少なからず横島を認めている人間が増えているのだろう。
しかし、そんな中、達也はますます横島に疑いの目を向けていた。
あの学校襲撃事件後達也は、構内の状況と事件の考察を行っていた。
不可解な点が出てきたのだ。
一つは、テロリストが携行していた銃火器がすべて、使用不能にされていたこと、その上ほとんどが、真っ二つに切られていた。その切り口は鋭く、金属同士の摩擦跡などは一切見られない。
警察の調書をハッキングした達也は、テロリストの証言から、銃火器が急に割れたと……
達也が警察の調書をハッキングして分かったことだが、傭兵が混ざっていたということが判明する。
しかし、その傭兵は誰にやられたのかが、当の本人が覚えてないなど、あやふやな証言しか書かれていない。
もし、練度の高い傭兵であれば、学内でも対応できるのはほんの一握りの生徒だけだろう事と達也は考察するが、そのような事があれば、話に上がっているはずだった。
食堂の被害状況についても達也は疑いの目を向けていた。
窓は、外から爆破したような跡はあったが、中は全く無傷だ。どのようにしたらあのような現象になるのかが今のところ達也にも見当がついていない。
さらに、床にめり込んでいた弾丸だ。ある特定の場所だけ100発近い弾が床にめり込んでいた。
しかも、弾丸の先からめり込んでいるのではない、いろいろな角度でめり込んでいたのだ。
報告ではほのかと雫が撃退したとあるのだが、彼女らの能力で可能なのか達也は疑いの目を向けていた。
そして、その場に横島がいたとの証言もあったが、横島が何かをしたという証言や報告は全く見当たらない。
達也は考察する。
通常の判断なら上記だけの情報から、横島が何かしたという確証は全く持てない。
そもそも、横島が何かしたという前提が間違っているのではないかと思うほどだ。
しかし、横島の言動、そして、ほのかの魔法を止めた動き、神通棍を難なく起動できること。これらが、達也の頭から離れないのだ。
さらに、かなりの重傷者がいたと証言があったが、実際には重傷者無し、死亡者無しだ。
横島が治癒魔法を使った可能性が高い。
達也は、真由美や摩利の態度から、これはほぼ確定だと判断していた。
どのような、治癒魔法かは達也にも現状では判断はできていない。
これだけだと、横島は氷室家の治癒魔法師とだけしかわからない。
確かに、横島の行動を見る限り、危険人物ではないのかもしれない。
しかし、得体のしれなさは益々、増すばかりだった。
達也は思う。
達也と深雪の生活空間で、不安要素はできるだけ取り除きたい。
ならば……
横島は学校を後にし、一人暮らしをしている。マンションに帰らずに、山岸の殆ど人が立ち入らない公園に入っていく。
「で、何の用だ。達也?一人とは珍しいな」
横島後方の暗がりから達也が現れる。
「尾行に気付いていたのか?」
「お前、わざとわかりやすくしただろう」
「………」
「で、話を戻すが何の用だ?男にストーキングされる趣味は無いぞ」
達也の顔は真剣そのものだ。いつもに増して迫力がある。
「単刀直入に言う。横島……お前は何者だ?」
「自己紹介はとっくに済んだはずだが?」
「……何の目的であの学校にいる?」
「俺は、ただ学校生活を普通に過ごしたいだけだ」
「……テロリスト襲撃の際、お前は何をした。テロリストの銃火器の破壊、アレが無ければ、学校や生徒は多大な被害が出ていた。しかし、そうはならなかった……お前がやったんだな?」
「知らないな」
「もう一度言う。お前は何者だ」
「じゃあ、逆に聞くぞ。お前こそ何もんだ?お前だって色々隠しだてしてそうだが?」
横島は若干ムッとした感じで達也に言い返す。
達也の視線に殺気がよぎる。
「……横島、俺と勝負しろ。俺が勝ったらすべて話してもらう」
「はぁ、なんでそうなるんだ?本当に戦うの好きなんだな……まぁいいや、じゃあ俺が勝ったら、お前も教えろ」
「……いいだろう」
「……そこの木の上のおっさん、審判頼んでいいか?」
横島は不意に後方の木の上に向かって声をかける。
「あれ?バレてたの」
すると、木の上から、スッと人が下りてきた。
「ああ、何回かつけていたのは知っていた。で、どうなんだ?おっさん」
「知っていたのなら、もっと早く言ってくれよ。恥ずかしいじゃないか……審判の件はOKだ。達也君もそれでいいね」
木から下りてきた人物、作務衣姿の剃髪。忍術使い、九重八雲は達也に向かって軽い調子でそう言った。
「ん?グルかよ」
「いや、俺は先生に頼んだ覚えはない」
達也は一瞬驚いた表情をしたが直ぐに元の冷静な顔に戻る。
「いやー、僕の方は個人的な興味で君を付けていただけなんだ」
九重八雲は答える。
「まあ、いいや、達也、ルールは服部副会長との方式でいいか?」
「いや、どちらかが倒れるまでだ」
「おい、冗談はよせよ」
「回復は可能だ」
「そうかよ」
横島は呆れた様にいう。
「危なそうだったら僕が止めるよ。まあ、実際止めれるかは分からないけどね。場所は提供しよう」
軽い口調で九重八雲は言う。
「めんどうだから、ここでいいや」
横島はそう言って、札を4枚出す。
それに反応して達也は自前のCADシルバーホーンを構える。
横島は手を前にやり達也を制する。
「いや、周りに迷惑かからない様にする術だ」
そして、半円を描くように腕を振って札を投げる。
札は四方の木に水平に飛び木の幹に張り付き、一瞬光る。
「結界」
横島は呟く。
結界によって、内部からの攻撃が外に影響に出ないようにしたのだ。
それを見た九重八雲は表向きは平静を保っていたが、内心は驚愕していた。
「うーーーん、ルール変更しない?体術での勝負ってことで」
「先生、ルールの変更は無しです」
達也は八雲にそう言ったのだが、八雲はやれやれといったふうな表情を浮かべる。
「横島いいか?」
達也はシルバーホーンを構える。
「ああいいぞ」
横島は右手に札を構えた。
八雲はしぶしぶ勝負開始の合図をする。
「仕方ないか。じゃあ、両者礼…………仕合開始!!」
と言うわけで、次は横島と達也の戦闘です。