横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。


すみません。今回と次でこの過去編というかシリアス部分が終了しますので……
それまでお付き合いください。
しかも、今回はモロつなぎ回です。




183話 悪魔の謀略!!⑦横島忠夫 その2

「くくくくくっ、いいぞ、いいぞ!その苦渋に満ちた顔!!第2幕と行こうか!!」

ベリアルは実に愉快そうにギャラリーと化したエリカ達に声を上げる。

 

 

 

映像は横島が去った後の東京、横島がアルバイトしていた美神令子除霊事務所が映し出されていた。

 

『横島くん……こんな書置きをして…まったくどこいっちゃったのかしら』

美神令子は、書置きを引き出しから出して、呟くように言う。

 

『横島さん、心配ですね。この頃いろんなことが起きているから……』

おとなしそうな巫女服姿の少女がそれに答える。

この少女こそが将来、『救済の女神』として名をはせることになる氷室絹の若かりし頃の姿だった。

 

『まあ、あの横島くんよ。ゴキブリ並みの生命力があるから、きっと大丈夫よ。それよりも、仕事よ!!仕事!!全然依頼がないわ!!

軍が介入してきてから、仕事を全部掻っ攫っていくし!!

どうなってんのよ!!あいつ等、妖怪や霊を片っ端から捕まえてどうするつもりよ!!

あいつらのせいで、この辺の悪徳妖怪や迷惑霊が全部居なくなって、全然依頼が来ないじゃない!!あああーーーー!!むしゃくしゃする!!殴りたいときにあいつ(横島)が居ないし!!』

美神はかんしゃく気味に手をぶんぶん振っていた。

 

『まあまあ、でも、近所では、人間に友好的な霊や妖怪まで、軍に捕まったって聞いてます』

 

『ほんと見境ないわね。……もしや、いや、………ママが許す分けないわ。……ま、そういうわけだから!シロもタマモもなるべくこの事務所から出ないこと!』

 

『えーーー、散歩もダメでござるか?』

『近所に買い物ぐらいいいでしょ?』

二人の中学生ぐらいの少女がそんな美神の言葉に不満たらたらだった。

もちろん前者は人狼の少女シロ、後者は元大妖怪九尾の狐タマモだ。

 

『私かおキヌちゃんと一緒の時だけよ。単独は控えなさい』

 

『美神殿やおキヌ殿ですと、散歩が十分じゃないでござる。先生(横島)だったら、毎日軽く40キロ付き合ってくれるのに……先生……早く帰ってきてほしいでござる』

シロはジトッとした目で美神と絹を見据える。

 

『ランニングマシンを買ってあげたでしょ!それで我慢なさい!!私は走るとか疲れることは嫌なの!!』

『私、とろいから、シロちゃんについていけなくてごめんね』

 

丁度、横島が失踪して、3ヶ月がたった頃の様子だ。

本来、妖怪や霊については、民間組織であるゴーストスイーパー協会か、国家組織であるオカルトGメンがそれぞれ、対処していたが、横島が失踪した辺りから、日本国防軍、前自衛隊が介入しだしたのだ。

 

アシュタロスとの戦いの後、世界各国は気がついた。

あの戦いでは、軍のどんな装備より、通常兵器や核兵器よりも、霊能力や妖魔や悪魔の方が優れていることに……

 

そして、各国は競って、霊や妖怪、妖魔、悪魔などを、捕縛し実験し、そのものを兵器化又は兵器利用するために……

 

とらわれた彼らには悲惨な末路が待っている。彼らには人権などという概念が当てはまらない。

彼らの中には人間と同じように思考し、人間社会の中で生きてきた者もいる。

しかし、扱われ方は実験動物と同じなのだ。

 

霊能先進国である日本は先駆者として、大々的に行いだしていたのだ。

 

奇しくも、この流れは、この世界の魔法開発…人体を使った魔法開発につながっていったのだ。

 

 

 

 

場面は東京を後にした頃の横島に移る。

横島はとある山腹の修験場に赴いていた。

そこは人界と神界の狭間、神と人間が交わることが出来る場所『妙神山』

 

『小竜姫様!ご無沙汰してます!!相変わらずお美しい!!挨拶のキスを!ん~~~!?ひょえーーーーー!!』

鋭い斬撃が横島をかすめる。

 

『相変わらずですね。私に無礼を働くと天罰が下りますよ』

見た目15、6歳の華奢で可愛らしい容姿の少女が横島に剣を振るったのだ。

この少女こそが、後の姉弟子になる。妙神山の管理者、竜神、小竜姫だ。

 

『死ぬかと思った!……あの~もう剣を抜いてましたよね。小竜姫様~』

 

『ところで横島さん、その霊力はなんですか?アシュタロス戦の時も凄まじい成長を遂げてましたが……今のあなたは人間のそれを遥かに凌駕しております』

 

『あ……その……』

横島は言いにくそうにする。

 

『……私の内弟子になるって、おっしゃってましたが……これは、老師についてもらったほうがよさそうですね。ちょっとした神レベルまで霊力が上がっています』

横島はアシュタロス戦後に何度か小竜姫とはコンタクトを取っていたようだ。

 

『……お願いします』

 

『横島さん、悩みでも…いえ、あなたは何か隠していますね』

小竜姫は横島の表情やその口ぶりを見てそう判断した。

 

 

その後、斉天大聖老師を交えて話し合う。

小竜姫が横島に言いよどんでいたことを執拗に問い詰めていた。

 

『実は俺の中にルシオラの魂があって、それで……俺の霊体構造と拒絶反応が……』

 

『それは誰かに相談したのですか?』

 

『いやーー、せっかくアシュタロスを倒して、平和に向けて復興しているのにこんな話を持っていくのもなんだなーと思いまして』

 

『今は大丈夫なんですか?』

 

『今はこの通りピンピンしてます。3ヶ月目ぐらいから、拒絶反応は無くなりました』

 

『それで、その霊力か、それだけではないようじゃな』

ここで漸く、小柄な老人風の猿神、武神斉天大聖老師が納得したように声を出す。

 

『……その、アシュタロスを倒しちゃったのが俺だって、ばれちゃって、悪魔やら、その……どこかの組織の人間やらに狙われて、戦う羽目に』

 

『……それも誰にも相談していないのですね。それでここに身を隠しに……』

 

『す、すんません。ここだったら、悪魔もどっかの組織も狙ってこないかなーって思いまして……』

 

『まだ、あるじゃろ。おぬしの立ち振る舞いが妙に洗練されておる』

 

『その……一人で何とかしようとして、俺の前世が結構有名な陰陽師だって聞いてたんで……前世の記憶を呼び起こして、記録として知識を得たんです』

 

『なんて、無茶を!……そんなあなたの異変をあの美神さんや隊長さんが見逃すはずがない……いえ、……すみません。それは、私達は言う資格はないですね』

 

『横島忠夫……すまなんだ。おぬし一人にそんな辛い目にあわせた。この通りだ』

斉天大聖老師は深く横島に頭を下げたのだ。

 

『私達が、力が及ばなかったために、人間であるあなたに負担を…申し訳ございません』

小竜姫も横島に頭を下げる。

 

『やめてくださいよ~、そんな、俺が自分でしでかしたことなんで』

 

『いや……本来なら、もっと前におぬしをここに呼ぶべきじゃった。……気が済むまでここに居るがよかろう』

 

 

そして……

『ひぇーーーー!!』『ぐぼーーーー!』『お助けーーーー!』『もう、死ぬーーー!!』『もうあかーーーん!!』

斉天大聖老師による死と隣り合わせの激しい修行風景が繰り広げられていた。

しかし、横島は横島のままだった。

 

 

「ちっ、あの暴力猿神のところに隠れていたのか!!あの猿野郎は絶対殺す!!俺をこんな目に、こんな姿にしやがったあいつだけは!!

フヒッ ヒーーヒッヒーー!横島の身体を乗ったあとに、成りすましてだまし討ちをするのも面白い!!楽しみが増えたってことだ!!」

どうやらベリアルは斉天大聖老師にやられて、この姿になったようだ。

ベリアルの口調がさらに乱れる。

 

 

「……なんか、前半壮絶だったけど、修行風景はなんていうか……やっぱ横島だよね」

「ほっとしたというか……なに?この納得いかない感じは……」

「修行って、あれ、何回か死んでるんじゃないか?」

「武術があれだけのレベルで習得していたのも納得だな………」

「巫女姿のキヌと呼ばれた方、もしや『救済の女神』氷室絹さんでは?」

「あのお猿さんが横島くんの師匠……かわいいかも」

「タダオ………やさしすぎるわ」

幹比古とエリカとレオは何故かほっとした表情をしていた。

達也は横島の武術レベルに納得の表情。

深雪は絹のことに気がついたようだ。

真由美は何故か老師をかわいいと評価。

リーナは一連の横島の行動に、悲しみの表情を浮かべる。

まだ、この横島はアシュタロス戦前とさほど変わらない。

 

 

「ん?貴様ら……なに緩んだ顔をしている!くくくくくっ、これからだ。こいつの業の深さは!」

 

 

 

 

『ほとぼりさめたかなーーー。人の噂も49日って言うし……あれ57日だっけ?まあ、いいや、でも、美神さんめちゃくちゃ怒ってるだろうな~、勝手に出て行ったし~、あんた誰?って言われそう。新しい奴雇ったし、あんたは用無しよっ、て言われるかも~』

横島は1年半ぶりに東京に戻ってきていた。

 

『おキヌちゃんは今年大学受験か、もう決まったのかな~、まあ、卒業まで間に合ってよかった。って、おれ高校卒業してない……おかんにめちゃ怒られるーーー!はぁ~~』

横島は憂鬱そうな足取りで、とりあえず美神令子除霊事務所へと向かっていた。

 

 

『なっ!事務所がっ』

横島は事務所は事務所に近づいたのだが、様子がおかしかった。

煉瓦壁のビルの一部に破壊の後があったのだ。

 

 

横島は慌てて、事務所に入るが中に誰も居ない。

部屋の中はあらされており、いたるところに書類が散らばっている。

 

『人工幽霊壱号!いるか?何があった!!』

 

横島はこの建物に取り憑き、管理していた渋鯖人工幽霊壱号に呼びかけるが、応答がない。

 

横島は事務所を飛び出し、この事務所から程近いオカルトGメン事務所に向かう。

 

『西条!これはどうなって……』

 

『!横………ここは不味い、場所を移そう』

 

西条は横島を近所の公園まで連れて行く。

ビシッとスーツを決めているこの長身イケメン青年西条はオカルトGメン所属の凄腕霊能力者で、美神令子の母美智恵の弟子でもある。

『君は、いままでどこに行っていたんだ!』

『おい、事務所があんなことに!皆は無事か!』

西条と横島は同時に声を上げる。

 

『令子ちゃんは無事だ。2週間前令子ちゃんの留守を狙って事務所を襲撃された。シロくんもタマモくんも令子ちゃんと一緒だったためその場には居なかった。ただ、お絹ちゃんは………拉致された』

 

『拉致?どういうことだ。あの美神さんの事務所を襲撃なんて正気の沙汰ではないぞ!!それでおキヌちゃんはどうなった。美神さんが助けにいったんだよな。そんで襲撃者をとっちめて、とんでもないお仕置を……』

 

『横島くん、よく聞け!僕も今監視がついている状態だ。あまり外に居ると怪しまれる。先生(美智恵)と令子ちゃんは、今はここに居る』

そう言って西条は横島にメモを渡す。

 

そして……

メモの場所東京と山梨の県境にある別荘に行く。

『横島くん!!……あんたいままでどこほっつき歩いていたのよ!!』

美神令子は目に涙をためながら横島を殴る。

 

『すんません……』

 

『君が無事でよかったわ』

美神の母、美智恵は2歳になる娘ひのめを抱っこしていた。

 

『おキヌちゃんはどうしたんです?』

 

『……』

『おキヌちゃんはここには居ないわ……拉致されたまま…』

 

『そんな!美神さん、いつもの卑怯技でなんとかならなかったんですか?』

 

『相手が分からないのよ!……あんたが居ないから!!』

美神のいつもの強気の態度はなかった。涙目で横島に苦しそうに叫ぶ。

 

『……すみません』

 

『横島くんがどこに居たのか分からないけど……今、日本の…世界の情勢は、霊能者だけでなく、妖怪、妖魔、霊を金の卵か何かと勘違いしている連中が巨大な組織をバックに闊歩しているの……それぐらいあなただって知っているはずよね』

美智恵は横島に諭すように語る。

 

『そんなことに……知りませんでした。………俺は妙神山に篭ってました』

 

『やっぱりそう!何度も行ったのよ!小竜姫はここにはあんたは居ないって頑なに。それで門前払いよ!!』

美神は絹とシロ、タマモを率いて、横島を探しに何度から妙神山に訪れていたのだ。

 

『………懐かしい気を感じたのはそうだったんだ…』

 

 

『横島くん……これ、犯人が置いていった置手紙……』

美智恵はスッと横島に一通の封筒を渡す。

 

『な!!犯人の目的は俺……俺のせいでおキヌちゃんが……』

 

『たぶん犯人の目的は君の文珠よ………

君には連絡がとりようがなかったから、おキヌちゃん奪還のために私達で指定の場所に行ったわ。唐巣先生や六道の力を借り万全のバックアップで。でも結局誰も現れなかった』

 

『隊長(美智恵)の権力で何とかならなかったんですか!』

 

『私はICPOオカルトGメン所長の権限を半年前に剥奪された。……なんでも、アシュタロス戦で私的に部隊を動かしたからってことらしいわ。完全に裏があって探ったのだけど……先手を打たれてこのざまよ。西条君が留まって何とか内部の情報収集をしてくれてるけど、今のオカルトGメンは既に日本の軍の管轄化に置かれたも同然よ』

 

『………俺が行きます……おキヌちゃんを取り返しに行きます』

横島の霊圧が凄まじい勢いで上がっていく……

 

『よ……よ、横島くん?』

『君……その…霊圧は…』

二人は小竜姫を上回る霊力を身につけていた横島に圧倒される。

 

 

 

横島は文珠を一つ美神に手渡し……

そして、その場から文珠を使って瞬間移動で指定の場所付近まで飛んだ。

 

 

 

 

 




ベリアルは後2、3話見ていただければこんな奴なんだと分かってもらえると思います。今はまだ、猫かぶってます。徐々にそれが剥がれていく感じに徐々にしているつもりですが……加減が難しい><

次回で横島くんの過去編が終わりです。


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