横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

最終回も近づいてきました。
実は最終回は二つ考えてましたが……
こちらにしました。

まだ、最終回じゃないです。





189話 横島 皆に語る!!その先は……

横島はダンタリオンの頭にポンと手をのせ、やさしく撫でる。

「皆と話をしないといけないんだ。ちょっと本を読んで待っててくれる?」

 

「わかった……です」

ダンタリオンはライオンにまたがったまま、横島のいう事を素直に聞き部屋を出て行く。

 

次に横島は、なぜかニヤニヤとしているカオスに向き直る。

「じーさん。助かったよ」

 

「フハハハハハッ!このドクター・カオスに不可能は無い!!まあ、なかなか興味深い話であったわい。当時のおぬしの異様な焦りはこういうことじゃったか………ところでおぬし!この図書館にはわしの興味があるものだらけじゃーーーーーー!!良いかの見ても!!良いじゃろ!!せっかく来たんだし!!良いに決まっている!!話が終わったら声を掛けてくれーーーーーーー」

ドクター・カオスは返事を待たずして、高笑いしながら、どこかに走り去っていく。

 

 

横島は、そんなドクター・カオスの後姿を苦笑しながら見送った後、皆に向き直り、歩みながら皆を覆っている結界を解いた。

ちなみに、すでに魔界化の霧が消えたこの公園を再度結界を張り、誰も入らせないようにしている。

 

 

「タダオ!!」

「横島さん!!」

リーナと雫が同時に走り横島に飛びついてきた。

リーナは涙を流しながら、雫はうれしそうにと、対照的な二人であった。

 

「おお!?」

横島は二人を抱きとめる形になる。

 

 

皆はマリアを先頭にゆっくりと横島に歩み寄る。

 

横島は最初にマリアに声を掛ける。

「マリア、助けに来てくれて、皆を守ってくれてありがとう」

 

「イエス・今度は・横島さんの・役に・立ちましたか?」

 

「いつも助かっているよ。感謝しっぱなしだ」

 

「良かったです・・・ドクター・カオスが・迷子になると・いけません・探して・きます」

マリアは気を利かせて、この場を離れたのだ。

 

 

 

「みんな無事でよかった。なんか、とんでもないカルト集団だったよな!かなり真に迫っていて、さすがの俺も本物かよって焦ったぞ……」

そして、皆に向かってワザとらしく明るくふるまう横島

 

………

沈黙が流れる。

 

「ってな、訳に行かないよな……」

 

 

皆は沈黙を守ったままだ。

漸く終わった非現実から抜け出せていないのか?

それとも恐怖が終わった事への安堵か?

それとも横島とどう接すれば良いのかわからないためか?

 

 

 

「リーナと雫ちゃんちょっと離れてもらっていいかな?」

横島は真面目な顔になり…そう言ってリーナと雫をそっと離す。

 

 

「みんな、すまなかった。言い訳にしか聞こえないかもしれないが、俺は皆をだますつもりは無かった」

横島は頭を下げ、真剣な面持ちで話し始める。

 

 

「タダオ?なんで謝るの?タダオは何も悪い事してないじゃない!!」

リーナは悲壮な顔で横島に叫ぶ。

 

「そう、横島さんは悪くない」

雫だけは状況がつかめていないため、不思議そうに横島を見ていた。

 

「雫ちゃんは後から来たからわからないかもしれない。俺は皆をだましていたと変わらないんだ。俺は実際21歳だ。しかも100年前の人間だ。俺は15歳と偽って、魔法科高校に入学している。しかも自己暗示までつかってだ。皆に接していた俺は17歳以前の記憶の人格なんだよ」

 

「え?横島さんが21歳?100年前の人間?自己暗示?どういうこと?」

雫は横島を見やってから後ろの皆を見る。

 

「すまない。この通りだ。しかもこんな事に巻き込んでしまった!」

横島は再度深々と頭を下げる。

 

 

「タダオ!そんな事を言わないで!」

リーナは何かに焦り悲しげな顔で横島に迫る。

 

 

「横島くん……いえ、横島さんって呼べば……」

真由美が最初に口を開く。

 

「真由美さん。いつも通りでお願いします」

 

「その、横島くん。なんていったらいいのか、今となっては現実味が無いというか……ここもそうなのだけど……今まで起こったことも……それと、あの映像は真実なの……?」

 

「本当に起こった事です」

 

「………そうなの…か…横島」

達也は改めてあの映像を思い出す様に呟く。

 

「すべて…真実」

「本当の過去」

「………妖怪が居た世界」

「神と魔が存在した世界」

「世界改変」

皆は改めて、それが真実なのだと……思い知らされる。

 

「俺達が知らないだけで、世界の外側ではあんなとてつもない力を持った存在が…居たと言う事か……」

達也は誰ともなしに呟く。

そして思う。これが世界の真実であればこの世界の争いなど微々たる物だと…

 

 

皆は達也の言葉を聞き……改めて、先ほどまで起きた事を思い返しているのだろう。

沈黙がこの場に流れる。

 

 

 

そして……エリカがこの沈黙を破り再び言葉にする。

 

「その……横島…さんはなぜ学校に?」

 

「エリカいつも通りで頼むよ」

横島は悲しげにそう頼む。

 

「わ、わかったわ」

そんな横島を見てエリカは慌てて返事をする。

 

「お絹ちゃんの遺言だった。俺は高校中退してるから……人生をやり直してほしいと……お絹ちゃんと、マリアだけは記憶が戻っていた。カオスのじーさんは事情を知っている」

 

「横島くんは、『救済の女神』氷室絹さんと恋人同士だった……そうなのね?」

真由美は確認するように、気になっていた事を聞く。

 

「はい、そうです。俺は結局彼女と最後まで一緒に居られなかった。約束をしたのに」

横島の目は悲しみに満ちていた。

 

「タダオ……」

 

「え?どういう事?」

雫はいまだに理解が及んでいない。

 

「横島さ……横島は、氷室家の基礎術式を作り、氷室家を守った。それで……横島が氷室の術式を使えるんだ」

幹比古は氷室と横島の関係に納得していた。

 

「幹、氷室の術式とか関係ないでしょ……魔法とか術とかのレベルじゃないわよ。世界自体を作り変えれるのよ!」

エリカは幹比古にいつものように突っ込む。

 

「その氷室家は横島くんのことは?」

 

「氷室の人たちは、お絹ちゃんの遺言で、俺が現れたら家族として受け入れてほしいと書いてあったそうだ。実年齢は皆知っているが事情は知らせていない。それでも家族のように接してくれた」

 

「今の横島くんが大人っぽいのは実年齢に即しているのね。いえ…それ以上に感じるわ」

真由美は納得したような表情をする。時々見せる横島の顔が大人びて見えた理由がわかったからだ。

 

 

「横島、本当にお前がこの世界を創ったのか?」

達也は皆が確認したかった核心に迫る。

 

「創造したんじゃない。あった物を分離しただけだ。俺の独断でだ。あの時はああするしかなかった…今になっては言い訳にしかならないが……それが元で俺は天界に100年魂の牢獄という名の魂の封印を受け、昨年ようやく現世に戻ってきた」

 

「タダオが何でひどい目に合わされるの!!人間を……今も私達を救ったじゃない!!」

リーナは必死だ。

 

「100年封印か……まるで、童話の浦島太郎だな……それで、横島が入学したての頃、CADや情報端末や機器の使い方がわからなかったのか」

レオは改めて、当時のことに納得する。

 

「世界改変は……宇宙の意思に背く行為だ。自然の流れを完全に変えてしまったから……それは仕方が無い」

 

「でも、横島さんが居なかったら、私達は今こうして生きていなかったんです」

深雪も横島の行為は正しかった事を伝える。

 

「後悔はしていない。ただ、当時の知り合いを裏切ってしまったのは確かだ」

 

「マリアもカオスも、タダオの事を今も好きよ。裏切ったなんて思ってない。だから!!」

リーナは必死に訴えかける。

 

「マリアもじーさんもそう言ってくれた。俺はそれでどれだけ救われたか……」

 

「横島……って、神様みたいなものなんじゃ?エリカや柴田さんが言っていた事もまんざら嘘じゃなかったんだ」

 

「幹比古……俺は神じゃない。ちっぽけな事に悩んだりする人間だ」

 

「でも横島の、……あの映像を見る限りでは、神様より力があるみたいに見えた。後半なんて魔神を物凄い力でねじ伏せてたけど……」

エリカは幹比古の意見と同じようだ。

 

「力があるからと言って、何でも出来るわけではない。あの戦争を回避できなかった。力があるからと言って人々の心を変えることは出来ない。平和一つ守れない。大事な人をこんな形でしか守れなかった」

 

「でも、横島くんは世界改変をして、皆を救った。人間だけでなく妖魔も、神様でも出来なかった事なのでしょ?」

 

「真由美さん……世界改変は禁忌なんです。当時の俺は皆を救いたい一心で成してしまった。俺は妖怪にも友人、知り合いが沢山いたから……両方救いたかった。……でも、魂の牢獄で……自分が成した事の恐ろしさをようやく理解しました。

時空に歪みを生じさせ、宇宙全体のバランスを崩したことを……また、自然の生命の営みを根本から崩してしまったことに……そして、本来あるべき姿……人間が滅んでしまった後に生まれるかもしれない新たな命の営みの可能性をも消してしまった事に………何度も言いますが俺はそれでも後悔はしていません。それでも皆に生きていてほしかった……」

 

 

この場にまた、沈黙が流れる。

横島の嘆きは、あまりにもスケールが大きすぎる。

そして、皆に生きてほしかったという横島の優しい心が胸に響く……

 

 

「……横島、映像を見る限り、お前の力を使えば、世界改変などしなくても、力ずくで戦争を回避することはできたのではないのか?」

達也は横島に聞く。

 

「それは……」

 

「達也くん。横島くんはそれを良しとしなかったのよ。それをやってしまうと、そこの魔神ベリアルと変わらない事になるわ」

答えにくそうにする横島に代わり真由美が間に入り達也に答えた。

 

「横島は悪魔とは違う。力で世界をねじ伏せたとしても、独裁者にならないだろう」

 

「……俺はあの戦争で学んだことがある。人々の心は、一個人ではどうにもならない。俺は最初は裏で操っている魔神や過激な思想を持つ人間を倒していけば、収まると思っていた。でも違っていた。倒しても次から次へと現れる。その時代の空気やうねりはなかなか変えられない。対抗するには同じように平和を願う空気を作っていくしかないんだ。……結果失敗してしまい。どうにもならない所まで来てしまい。世界改変を行うことにはなってしまったが……」

 

「………」

達也は横島の答えに何か考え込む様に口を噤む。

 

「横島くんが命をかけて救ったこの人間の世界……でも、人間同士で今も争いを……」

真由美は悲し気な顔をし、そう呟く。

 

達也や真由美だけではない、皆も横島のその答えに考えさせられたようでしばらく沈黙が続く。

 

 

「でも、世界改変って言われても、今の自分たちには何が変わったのか全然わからないから、特に問題なかったんじゃないかな?だから……横島もそこまで悩む必要がある?」

そんな中、幹比古は軽い口調で横島に聞く。

 

「結果的にはうまく行っているだけなんだ。幹比古、下手をすると宇宙意思の強制力で元の世界に戻ろうとする力が働くことになる……幸いにこの世界はかなり安定しているそうだ」

 

 

「……たった100年前の世界には霊や妖怪、妖魔、さらには悪魔や神の存在があった。………今の世界ではどう考えてもオーパーツであるレリックが存在するのはそう言う意味だったのか」

達也は自分が関わっていたレリックの異質さはそこにあったと改めて感じた。

 

「ああ、微妙につじつまが合わない物や歴史もあるが、それは人が勝手に解釈できる誤差範囲で収まっているようだ」

 

「世界分離して人間だけの世界が今の世界って事は、別の世界に、同じような地球があって、妖怪妖魔だけの世界があるっていう事?」

幹比古は分離した先の世界について聞いてくる。

どうやら幹比古もそうだが、皆は落ち着いてきたようだ。

 

「そうなるな」

 

「横島……もう一度確認する。お前は……神でも魔神でもなく、人間なのだな?」

 

「ああ……ただ、100年前の人間だがな」

横島はようやく余裕ができたのか苦笑するかのようではあるが、笑顔を見せた。

 

 

「まあ、何でもいいんじゃないか?世界に悪魔はいなくなった?そんでもって、今は一応うまくまわっているってことなんだろ?」

レオは軽い口調でレオなりの言葉にする。

 

「……本来は入る事が出来ない強力な結界が張られているんだ。悪魔や神などが介入できないように。ベリアルは裏技を使いこんなことを仕出かした。これでこの世界の結界の欠点もわかった事だし改善されるだろう」

 

「だったらいいじゃねーか?明日からはいつもどおりでよ。横島は俺達のダチなだけだ。おおっと言い忘れてた。助けに来てくれてありがとな!」

レオはいつも通りの口調で男らしいさわやかな笑顔でそう言った。

 

「レオ……ありがとう……しかし、俺は……」

 

「タダオ!それ以上は言わないで!!」

リーナは涙目で必死に訴えかける。

 

「俺はもうここには居られない。本当はこの世界に居るべき人間ではない。過去の人間が今生きる人間と接する事自体が本来許される物ではなかった。俺は自分の我侭でここに居させてもらったに過ぎない……」

横島はそんなリーナを見やり、言葉を続けた。

 

「嫌よ!!そんなの!!なんでタダオだけが居場所を失うの!!私は嫌よ!!」

リーナが先ほどから必死だったのは、こうなるのではないかと感じていたからだ。

 

「横島さんが居なくなる?……どうしてそんな事を言うの」

雫は何となくだが、横島と皆の会話で、横島が普通の人間ではない事を理解しだしていたが…横島が居なくなることを容認できるはずがない。

 

「横島くんは今も私達とこうして過ごしている人間です!だから一緒に居てもいいじゃない!!この世界で!!」

真由美もそうなる事を薄々感じていたようで、必死に訴える。

 

「お前!また、勝手な事を言って!!」

レオは横島の言動に怒りだす。

 

「横島……」

「横島がいなくなる?」

幹比古とエリカはその言葉に現実味が無いようだ。

 

 

 

「………もしや、お前!俺たちの記憶から、お前の存在を悪魔の事件ごと消すつもりじゃないだろうな!」

達也は横島が成そうとしている事にどうやら気がついたらしい。

 

「…………」

横島は悲しい表情になり伏目がちになる。

 

「おい!どういうことだ!!横島!!俺たちからお前の記憶を消すって事か!!」

「いや!そんなのいや!!」

 

「最初からいない人間なら……何も問題ない……今なら、それほど修正する必要もない」

 

「おいこら!!本気で言っているのか!!」

「横島!僕たちの思いはどうなるんだよ!!」

「そうよ!私はなんだかんだと、あんたとみんなと一緒にいる時間が今までの人生で一番好きだったわ!!それを消すの!?」

レオに幹比古、エリカはそんな横島に猛反発をする。

 

「そんな……」

真由美はその場にしゃがみ込む。

 

 

「………私を連れて行って、……タダオが行くところに私も連れて行って!!」

リーナは泣きながら横島に縋りつく。

 

 

横島は下を向いたまま下唇をかみ締め、悲しみに顔をゆがめていた。

 

 

そして……

「みんな、ありがとう……」

横島はすがりつくリーナの頭をやさしく撫で……

右手には文珠を浮かばせる………

 

 

 

 

 

 

「横島!!そこまでじゃ!!」

小さな影が皆の後ろから現れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最後にキーになる方参上!!

後、少し……

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