横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

この話を含めて……ラスト3話予定です。


190話 横島 横島と師!!

「横島!!そこまでじゃ!!」

文珠を発動させようとした横島を止める声が皆の後ろからする。

 

そして、その声の主である小さな老人が、皆の間を縫うように歩き横島の前に立つ。

 

「し、師匠!?」

 

「ばかもの!!女を泣かせるとは何事じゃ!!」

小さな老人は横島を見上げ、叱りつけた。

 

「いえ、これは……」

 

「すまんかったの、この馬鹿弟子がふざけた事を言いおって」

その小さな老人いや、猿人……いや、猿神は泣き崩れるリーナの頭を軽く撫でる。

 

「師匠、俺はもうここには……」

 

「おまえは少し黙っておれ!!」

猿神は凄まじい威圧感で横島に凄む。

 

「しかし……」

 

「横島…その文珠をわしによこせ……それと後16個渡せ」

 

「師匠何を……」

 

「……おまえは少し頭でも冷やして出て行っておれ!!」

 

「し、師匠?」

横島は突然現れた師匠である武神斉天大聖の意図がまったくわからなかった。

 

「早くしろ!!」

 

「わ……わかりました」

横島は合計17個の文珠を斉天大聖老師に渡し、皆を一度見渡してから、視線を落としバツが悪そうに部屋を静かに出て行った。

 

 

皆は横島と現れた猿神の様子を唖然として見ている事しか出来ないでいた。

 

 

「さて、皆にはすまない事をした。……この通りじゃ」

武神、斉天大聖老師は頭を下げる。

 

「あの……横島くんのお師匠さんですか?」

真由美は頭を下げる猿神に恐る恐る質問をする。

 

「おう、これはいかん。わしは斉天大聖と申す。横島忠夫の武術の師をやらせてもらっておる。日本では孫悟空の名の方が通りが良いかのう」

 

「孫悟空?」

雫は知らないようだ。

 

「孫悟空って!!あの!?」

意外にもレオは知っていたようで驚きの声を上げる。

 

「かめはめ波と元気玉!?」

「エリカそれは違うよ。やっぱりアニメの見すぎだよ!中国歴史文学の西遊記の孫悟空だよ!!」

エリカが相当勘違いをしているのを幹比古が正す。

 

「実在していたのか……斉天大聖孫悟空」

達也はうめくように言う。

 

「かわいらしい………この方が横島くんのお師匠さん」

一見年老いたメガネをかけた猿が地味な作業服を着ているような感じなのだが、普通はかわいいと印象は受けないだろう。真由美のセンスはよくわからない。

 

「どう見てもお猿さんですよね。お兄様」

深雪は不思議そうに斉天大聖老師を見ていた。

 

「タダオの……先生?」

リーナは涙目のまま呟く。

 

 

 

「という事は……神様?」

幹比古は大いに驚く。

 

「うむ、こんな事態になり、神を名乗るのはおこがましいが、一応神の末席におるものじゃ」

老師は申し訳なさそうに答える。

 

「斉天大聖は武神……末席ではないでしょうに」

達也は唸る。

 

「横島があのような事を言った事を許してやってくれ……あやつは元来、とても人が良い奴なんじゃ、明るく、めげなく、うっとおしいぐらいにな……ただ、わしらが力及ばず、あやつをあんなふうにさせてしまったのじゃ」

 

「タダオばかり何で!いつもいつもいつも!大変な目に遭うの!?タダオがかわいそうよ!!」

 

「すまぬ。………あやつにいつも苦労をかけさせておるのは師匠であるわしの不徳のいたるところが大きい」

老師は頭を下げる。

 

「リーナさん……責める相手が違うわ」

 

「でも!!タダオは!!タダオは!!」

リーナは悔しそうに涙ぐみ下を向く。

 

「あやつの事をそこまで思ってくれておるのか………あやつは幸せ者じゃのう」

 

「その横島の師匠が俺達に何の用なんだ?横島の記憶を消そうとしたのを止めてくれたみたいだけどよ」

レオは神である斉天大聖老師に臆することなくいつもどおりの口調で尋ねる。

 

「うむ、その事でな、話があるんじゃが……あやつがぬしらの記憶を消そうとしたのは理由があるんじゃ」

 

「だいたい察しがつきます。俺達の安全を考えての事でしょう」

達也は老師の言葉に答える。

 

「達也、どういうことだ?」

レオは達也に聞きなおす。

 

「ほう、なかなか頭の回転が速いのう。そうじゃ」

老師は達也に関心する。

 

「俺達はこの世界のタブーに触れたも同然だ。知る必要が無い事を知ってしまったんだ。神や悪魔の事、この世界の成り立ちについてもだ。これはある意味、世界をひっくり返すぐらいの情報を持ったに等しいという事だ。そんなものを一個人が持っていたらどうなる?」

達也は先ほどの続きを語る。

 

「……どうなるの?」

「……わからん。達也もったいぶるなよ」

エリカとレオはその答えがわからず達也を促す。

 

「そうね。そんな情報を持っていることが少しでも広まれば、まず間違いなく、いろんな組織に狙われるわね」

思案顔をしている真由美が達也の代わりに答えた。

 

「七草先輩、でも、ここにいる僕達しか知らないから、そんな事にならないと思いますが……」

幹比古は真由美の答えに疑問を持つ。

 

「確かに、俺達しか知らない。しかし、まずこの霧の中に入り何かをしていた事は、周知の事実となった。当然霧の中の事を軍や警察、十師族等、不特定多数の組織に聞かれるだろう。そんな中、すべてを隠し通す事ができるか?」

 

「でもよ~。こんな話は与太話にしか聞こえないだろ?うっかりしゃべったとしても、笑われるだけで済むんじゃないのか?」

レオは自分の顎に手をやり達也に質問をする。

 

「中には頭がよく勘が鋭い人間もいる。ちょっとしたところから情報を集め、いくつもの想定と検証を重ね。真実に近づいてくる。……先ほどの横島がベリアルと戦った時に見せた情報戦の様にだ」

 

「だとしても、あんな話のどこに価値があるんだ?ほぼ神話だぞ?」

レオは達也の答えに納得がまだいかないようだ。

 

「……歴史の成り立ち、それ以外の高次元生命体の確認。別世界の存在。これだけでも国同士の戦争が起きてもおかしくないほどの情報量だ」

 

「そ…そんなに?」

エリカは漸く、事態の重さに気が付き始めたようだ。

 

「それはありえるよね」

幹比古も事の重大さに納得する。

 

「まじかー」

レオもエリカと同じく気が付き始めたようだ。

 

「だから、横島くんは私達の記憶を消そうとしたの……私達の安全を考えて、たとえ自分の存在が私達の記憶に残らなくなろうとも……」

真由美は悲しげな表情で語る。

 

「でも、なんで、タダオの存在自体を消そうとしたの!?」

リーナは苦しそうに達也や真由美に聞く。

 

「予想だが……横島は自分はこの世界にいる事自体が間違っていると思っているようだ。自分がいる事自体で……争いが起こるのではないかと………横島は事あるごとに俺に言っていた。力を示しすぎるなと……力を示しすぎると、自分が意図しなくとも、争いの種が向こうからやってくると……要するに権力闘争や戦争に利用されるなどという事なのだろう。

今思えば、横島の実体験なのだろう。それで奴自身がすでにその対象になったと認識しているという事だ。そんな人間の近くにいる俺達を巻き込まないようにするために、俺達の記憶、下手をすると、全世界の記憶から自分という存在を抹消しようとしたのかもしれない」

 

「そんな……タダオは何も悪くないのに」

 

「……横島さん」

 

 

「うむ、そこの真面目そうな青年よ。なかなか鋭いのう。さらにもう一つ横島は恐れているのじゃ。この世界を作り上げた反動が来るのを……自分という存在がいる事で、宇宙意思の反動が来るのではないかと……今回のベリアルが起こした騒動もその一端だと思っておるのだろう。……実際はそんな事は無いはずじゃ、わしもその辺に詳しい神に確認したが、現在のこの世界は非常に安定している。宇宙意思の反動はまず、目に見えておこらないだろうと言っておったわい。……あやつは現世に復帰してからはどうも心配性が過ぎるようじゃ……まあ、事がことであったため、いたしかたがないのじゃが」

 

「それを横島さんに説明してあげれば良いのでは?」

深雪がここで漸く、会話に入ってくる。

 

「あやつはああ見えて頑固でな、口ではわかった風に言っても、ほんの少しでもその可能性があると考えると守ろうとする心が働き、動いてしまうようなのじゃ」

 

「確かにな、あいつ異様に心配性なんだよな、過保護というかなんていうか。俺達は子供扱いしやがる。俺の親かお前はって言いたいぜ!」

 

「……でも、横島から見たらそうなのかもしれないよレオ、特にレオは……」

 

「どういう意味だ?幹比古!!」

 

「あんたのそう言うところよ…」

エリカは呆れたようにレオに言う。

 

 

「ならば、あなたはなぜ、記憶を消そうとした横島を止めたのですか?」

達也は改めて老師が横島を止めた理由を聞く。

 

「うむ、あやつは失いすぎた。あやつが起こした世界改変で誰が一番辛い思いをしたと?……横島本人じゃ……世界が分離されたが、人々は何も無かったかのように今の世界を歩んでいった。

しかし、あやつは魂の牢獄にとらわれ、100年何も無い場所で精神だけが覚醒したそんな空間じゃ、神であるわしらでさえ、気が狂うのではないかと……まさに魂そのものが囚われる場所なんじゃ……あやつはそんな中で、仲間を恋人を裏切った罪悪感をいただいたまま延々とすごしていたのじゃ……、自分自身を度外視し、自分が傷つこうが、人々を…仲間を守るためには、些細な事で気が気で仕方がないんじゃ、そして過剰な反応を見せてしまう。それは、そんな中で出来上がった心持のようじゃ………」

 

「……タダオ…」

 

「わしとあやつの姉弟子小竜姫は、ここでは、妙神竜姫と名乗っていたの……あやつの心を癒すには時間が必要じゃと……好きにさせようと人界に行かせ、今に至っておる。

そして、おぬしらに出会い。あやつは大分救われたと思う。わしや、小竜姫では、出来ない事をおぬしらがやってくれたからじゃ……」

 

「え?竜姫さんって神様なの?」

雫は驚くのも無理もない。雫が知っている小竜姫は横島が大好きで、嫉妬深いが、自分達と思いは変わらない乙女心をいだいている少女にしか見えなかったからだ。

 

「いえ、いつも助けてもらっていたのは私達の方です」

真由美は、老師の言葉を遮り先に答える。

 

「いいや、あやつが過ごせる居場所を作ってくれた。なんだかんだとあやつは楽しそうじゃった。わしらの所には月に1、2度顔を出すのじゃが、元の元気な姿が徐々に戻っていくようじゃった。……おぬしらには感謝しかない」

 

「いやーー、横島の奴は面白いし、つるんでいて楽しいし、そんな大層なことはやってないぜ」

「まあ、セクハラまがいなことはするけど、一緒にいて楽しかったし」

「そうだね。魔法科高校に入って、横島に出会ってなかったら、毎日うじうじとしていたと思うし」

レオ、エリカ、幹比古は照れたように答える。

 

「あやつは自分の場所だというのにだ。自分の事など度外視し、また、おぬしらの気持ちも考えずに、安全を重視するあまり、今回のように、記憶を消そうとしたんじゃ……確かに、神魔やこの世界の裏側や、世界の外側を知るのは極めて危険じゃ……だからといってじゃ。わしはもう、あやつ自身、身を切り捨てるような行為を黙ってみておられんじゃ……それで、止めたんじゃ」

 

「お師匠さんは横島くんの事を家族のように思ってらっしゃるのですね」

真由美は老師が横島のことを語る際、息子を心配するかのような目をしている事に気が付いていた。

 

「いずれは、わしの後継者にと考えておるからのう……」

 

「いっ?横島が神様に!?」

「まじかーー」

 

「人間が神になる事が可能なのですか?」

達也の疑問はもっともだ。

 

「今の世界では神の介入がない限り無理じゃが、前の世界ではきっかけがあれば、善行を重ねれば神に、悪行を重ねれば悪魔にもなれた」

 

「……それは嫌、そうなると、タダオと結婚できなくなる」

リーナは切実そうな顔でこんな事を言う。

 

「リーナさん?何を言っているのかしら?」

真由美はリーナのその言葉に直ぐに反応する。

 

「留学生はあつかましい。横島さんは私と結婚して、北山財閥を継ぐの」

続いて雫も、リーナに向かって抗議をするかのようにこんな事を言う。

 

「ふぉっふぉっ!あやつもなかなかすみにおけんな……まあ、いずれにせよ。わしは横島の記憶をおぬしらから消すつもりはない。ただ……この戦いや、この世界の真実に関する記憶は封印させてくれ」

 

「……妥当だと思います」

達也はほっとしたような表情をしていた。

今回ばかりは、あまりにも事が大きいため、何かの交渉カードとして使おうとは思わなかったようだ。

 

「まあ、しかたないよね」

「しゃーないか」

「まあ、過去の横島ってかなりシリアスだから……とっつきにくそうだし、しかも年上扱いも今さらってかんじだから、その方が良いかもしれないわね」

幹比古、レオ、エリカはそれで納得する。

 

「うん……タダオがいてくれるなら」

「という事は、私にもまだまだチャンスがあるのかしら……いえ、スタート地点は一緒になるのだから」

「七草先輩、横取りは良くない。横島さんは私が最初に目をつけた」

リーナと真由美、雫もどうやらそれで良いらしい。

 

「横島さんの過去についての記憶はどうなるのですか?」

深雪は老師に質問をする。

 

「そうじゃのう、あやつの過去も今しばらく忘れてくれんか?いずれ本人から話すかも知れんし。過去を知られた事はそれなりにショックだったようじゃしの」

 

「そうですか……」

深雪は何か言いたそうだが口を噤む。

 

「ああ、そこの娘3人に言い忘れておったが、神と人間の恋は普通にあるぞい。わしも昔はブイブイ言わせておったしの。横島は人間ではあるが、将来はわしの後継者じゃ、かといって恋愛は自由じゃ。神に恋愛も結婚も年齢制限も人数制限もありゃせん。自由に横島を捕まえるといい」

 

「いいのかよ。横島にそんな自由を与えて……」

「横島が本当に神様になってハーレムを?」

「でも、過去の横島って結構まじめだった。いや、今もかなり鈍感だけど……あのすけべっプリは自己暗示らしいし……」

 

「………」

達也は一瞬、最近トラウマになりかけた記憶を思い出す。

妄想の中の横島が、真夜と深雪を両脇に抱きかかえて、四葉ハーレム爆誕!と叫ぶ情景を……

 

「私が一番ね!!私以外を見えない様にしないと、過去の女性の事も忘れるぐらいに!!」

「横島さんは私が横にいないと、他の女に騙される。妻としてずっと一緒にいる」

「いえいえ、リーナさんに北山さん?横島くんには癒しが必要なの、年上が好みなのよ」

「なによ!真由美!タダオは21歳よ!!あなたも年下よ!!」

「年齢じゃないのよ!年上然とした態度で、包みこむような癒しが横島くんには必要なの!」

「癒し…私が正妻、マリアがそのサポートで……」

「マリア……一番の強敵ね。タダオがトラウマ解消されて恋愛自由とわかったら、たぶんマリアは仕掛けてくるはず!!」

「マリアが敵?うううん…マリアと一緒に横島さんと幸せになる!!それで、3人で……」

「マリアさんは確かに強敵だわ。七草家のありとあらゆるコネを使って既成事実を……」

 

このリーナと雫に真由美の3人娘は……どうやら、既に恋のライバルとして認めあったようだ。しかし3人の共通認識ではマリアが一番の強敵であるようだ。

ただ、雫はマリアも好きなので、一緒にとは思っている。

 

ここで忘れらているのは……小竜姫と、氷室要だ。この二人に関しては、家族としても付き合っているため。今の横島に対してはアドバンテージはこの3人よりも高そうだが……

 

そんな中3人が言い争っているのをじっと見ている視線がある。

深雪だ……何かを言いたそうにしているが……間に入る余地はなさそうだ。

 

 

「……なんか余計にややこしくなったような」

エリカは3人娘を見て呆れ顔だ。

 

「横島の奴どうするんだ?きっと、まだ気が付いてないぞあいつ!」

レオの指摘はもっともだ。たぶん横島は気が付いていないだろう。

 

「うん、リーナのあのアタックをスルーしてたしね。わざとじゃなかったら、相当鈍感だよね」

幹比古は苦笑気味に言う。

横島はリーナについてはある程度自覚しているとは思うが、雫と真由美に関して、特に真由美については逆であると思っているかもしれない。

 

 

 

「ふう……しかし、よくあの状況で、全員無事でいられたな……これも奴のおかげか……」

達也はそんな皆を見回し、深く息を吐きつぶやいていた。

 

 

 

 

 

一方、この部屋から追い出された横島は、廊下で小竜姫に出会う。

「小竜姫様!来て下さってありがとうございます。……霧の外はどうでしたか」

 

「横島さんもご無事で……、霧の外に魔獣や下級悪魔が飛び出そうとしましたが、すべて排除いたしました」

 

「助かりました。小竜姫様」

 

「ふふふふふっ、どういたしまして。あなたが頼ってくれて嬉しかったですし……」

 

「小竜姫様は、なぜ師匠と一緒ではなかったのですか?」

 

「老師は後でこられ、この図書館の前で会ったのです。私は待つように言われたのですが……遅いので様子を見に来たのです」

 

「そうですか……」

 

「横島さんはなぜ一人で?老師とは会ったのでしょう?」

 

「はあ、皆はベリアルのせいで、この世界の真実に触れてしまったため、記憶を消そうとしたのですが……師匠に止められて……反省しろとか怒られ、部屋を追い出されたのです」

 

「……妥当な処置だと思うのですが、老師にも何か考えがあるのでしょう……記憶を消す?………横島さん…もしかして文珠が使えるようになったのですか?」

 

「ははっ、おかげさまで……俺の精神がベリアルに追い詰められていた際に、ルシオラが心の中で現れたんです。魂は未だ融合したままなのはわかっていたのですが……叱られました。俺らしくないって……あれは間違いなくルシオラでした。……それと笛の音…お絹ちゃんの存在を感じたような……そっちは俺の気のせいですね」

 

「……そうですか。なんにしろ、良かったです」

小竜姫は一瞬ビクッとしたが、普段と同じ口調で答える。

 

「師匠は皆と何を話しているのだろうか?」

 

「……さあ、千里眼のイヤリングは老師にお貸ししたままですから……中を見る事はできないですし」

 

「小竜姫様、さすがの俺も、そんな恐れ多い事しませんよ………」

今の横島なら、文珠を使えば簡単に中の様子を見る事が出来るがそれをしなかった。

 

「そうですか?気になるじゃないですか」

小竜姫は悪戯っぽく微笑む。

 

「まあ、どちらにしろ、後で師匠にお聞きするので……」

横島は呆れたように小竜姫を見る。

 

「……無理しないでくださいね」

 

「何をですか?」

 

「皆さんとお別れするのはやはり辛いですよね」

 

「……顔に出てましたか?」

 

「わたしは横島さんのことは何でも知ってるんですよ」

そう言って小竜姫は横島の手を取り、手をつなぐ。

 

「はぁ……あいつ等、俺にはもったいないぐらい良い奴らですから……」

 

「また、自分を卑下するような言い方をする。横島さんの方が素敵ですよ」

 

「そうでしょうか……」

 

 

こうして、しばらく小竜姫と横島は廊下で斉天大聖老師を待つのであった。

 

 

 

 




本編は後ラスト2話を予定しています。



一応、不足している所を別枠番外で補うつもりです。


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