誤字脱字報告ありがとうございます。
新人戦モノリス・コードはさくっと終わらせちゃいました。
ギャグ要素が少ないです。
7日目の夜、明日の新人戦モノリス・コード作戦会議を終えた後。
達也と横島は宿泊施設の外、人気のいない林の縁にいる。
しばらく、沈黙を守っていたが、横島から話しかけた。
「達也……摩利さんの事故の件何かわかったか?」
「すまない。現状ではどういう現象が起きたかしかわからない」
達也は美月や幹比古の意見を聞きながら、いろいろと動き回っていたのだが、事象は分かったがどういう方法で妨害したのかがわからなかったのだ。
「妨害工作が色々と打たれている様だが。誰が犯人なのかわかるか?」
横島は第一高校に対する数々の妨害を行ったのは同一犯だと考えていた。
「…………」
「軍事機密か?」
「…………」
達也は横島の問いに内心驚いてはいたが、平然を装う。
「拘束中に、風間さんと響子さんに会った。多分お前のお仲間だろ?別に誰かに言うつもりはない」
「……ああ」
達也はゆっくりと返事をする。達也は自分が軍の関係者であることを認めた。
「お前、いいのか?あの人たちに俺の事詳しく話していないだろう。陰陽術が使えるとか」
風間少佐や響子の口ぶりから、横島が陰陽術を駆使して戦えることを知らないようだったからだ。
「特に必要とは思われなかったからだ」
「そんなことは無いだろう。あの人たち氷室家に興味深々だったぞ。まあ、お前がそう言うならいいんだが……」
横島は達也を見やって呆れたように言う。本来横島の情報を達也は上司である風間少佐に報告しなければならないはずなのだ。
「……ノー・ヘッド・ドラゴン……大陸系のシンジケートだ。今回の一連の事件の黒幕と目されている」
達也は、ゆっくりとした調子でその名前を言う。
「おい、ばらしても大丈夫なのか?」
「お前が知っていても、特に何も問題ないだろう」
達也は平然とした顔でそう言った。
しばらくの沈黙の後、横島から話を再開した。
「俺は現代魔法の事はよく分からないが、俺にはあの二人が自分で自分自身に不利な様に魔法を発動させた若しくは発動が失敗した様に見えたんだ。CADに細工なんてされてないだろうか?」
「CADは基本的に各学校で管理している……まてよ、競技前に短い時間だが一度チェックされるな」
達也は競技前に、CADの安全チェックを行う過程を思い出す。
「ならチェックされた後に再度、確認できるか?」
「自分自身で組んだプログラムならわかるのだがな、再チェックする時間もほとんどない」
「となると、達也が分かるのは深雪ちゃんのCADだけか……じゃあ、元のプログラムと変更された箇所が分かる魔法みたいなものはないのか?」
「巧妙に隠されたらわかりかねるな」
「仕方ないか、判断が付かなかった場合、俺が悪意あるかないかで判断するしかなさそうだな。まあ、多少厄介だがやってみるか」
「そんなことが可能なのか?」
「まあ、見せられたものじゃないがな、最終手段だと思っていてくれ」
横島はそう言いながら、苦笑いをする。
「じゃあ明日は頑張れよ」
「ああ」
2人は宿舎に戻っていく。
九校戦8日目新人戦
モノリス・コード
3対3で行う競技だ。相手陣地にある石碑に隠された512桁のコードを読み取る。または、相手の選手を魔法で全員行動不能にすると勝利である。競技場所は林、廃町、草原ステージの設定があり、ランダムで場所は決まる。但し、殺傷力の高い魔法は禁止である。
達也、レオ、幹比古たちは順調に勝ち進む。
その中でも、幹比古の活躍は目覚ましい。多様な古式魔法を駆使して勝利に導いていく。
横島はエリカや美月と観戦していた。途中で雫とほのか、深雪が合流する。
横島は幹比古の幼馴染のエリカに話しかける。
「幹比古やるなーーー!!あいつすごくない?なんで2科生なんだ?」
「うーーん。幹はね。自分に自信がないだけで、実力はあるはずなのよ」
エリカはためらいがちにそう言った。
「ふーん、しっかし達也の動きも、他の連中とは段違いなんだが!!」
横島は今度は達也を褒める。
すると深雪が嬉しそうに答える。
「そうなんです。お兄様は九重八雲先生に師事しているので、体術も凄いんです!!」
「レオは……まだ、活躍の場はなさそうだな、これって正式メンバーの奴より凄いんじゃない?」
「そうかもしれないですね。なんていうか連携が整っていて、効率がいいというか」
ほのかが横島の問いに答えてくれた。
「うん、全然いいと思う」
雫もそう答える。
そして、第一高校対第三高校の決勝戦開始前
横島は第三高校の一条将輝を見て
「なんだあのイケメン!!あんなに女の子の黄色い声援がーーーー!!イケメン死すべし!!死すべし!!……お前ら!!あんな奴に負けんじゃねーぞ!!」
「一条さんって、十師族の次期当主ですよ。負け知らずとか、勝ってほしいけど、勝つのは難しいかも……」
美月が横島に説明してくれる。
「クリムゾンプリンスとか呼ばれてるしね」
エリカが美月の説明に補足する。
「プリンスだとーーーー!!イケメンなくせに強くて、権力まであるのか!!卑怯じゃ!!男の敵ーーー!!」
「お兄様の方がかっこいいです!!」
深雪は誰とでもなくそう言った。
「いや、何て言うか達也って、地味目なんだよな、あの一条って奴は派手なイケメンオーラバリバリなんだよ!!同じイケメンでもそこが違う!!」
横島は間違った事は言っていないのだが、それはブラコンを患っている深雪には危険な言動である。
「お兄様が地味…お兄様が地味…お兄様が地味」
深雪の周りから冷気が流れ何故か同じ言葉を繰り返している。はっきり言って怖いのである。
「深雪落ち着いて、横島さんが言っている地味って言うのは誠実って意味だから」
ほのかがすかさずフォローを入れてくれた。
「そうよねほのか!!お兄様は誠実なの!!」
深雪はさっきと表情は打って変わって明るくなる。
横島はほのかに感謝するべきである。一つ間違えば氷漬けにされただろう。
そして、決勝が開始された。
一条と達也が一対一で対峙、後は2対2で対峙している。
「おおっ、なんだアレ、達也の奴、魔法起動前に、魔法式を壊しているのか?あの一条ってイケメンもどんだけオールレンジで魔法展開できるんだよ!!」
「横島さんは、あの起動式の展開が全部見えるんですか?」
美月は横島に質問する。
「へ?一応見えるけど」
「横島、目はいいみたいね」
エリカがそう横島に言った。
高速に展開する魔法の攻防を把握できていることを二人は指していた。
一条と達也の攻防が佳境に入る。
達也は一条に向かって走りながら、魔法式を壊していくが、追い付かなくなっていた。
幾つかの魔法は体術で避けながら、それでも進んでいく。
しかし、一条将輝は殺傷能力の高い攻撃を発動してしまった。
達也はギリギリ避けるが、その衝撃で体ごと吹っ飛ぶ。
それを見た横島は一瞬、助けに行く体勢を取ろうとしたが止めた。達也の体が明らかに内臓まで損傷していたレベルではあったが、一瞬で修復したのを見たのだ。
横島はこの状況を、ブランシュ日本支部を襲撃する際に確認していた。あの時は他人の体ではあったのだが。
横島はこれは、回復ではなく、修復だと感じた。
そして、修復した達也は一気に距離を詰め、一条の耳元で指を鳴らす。
衝撃波が生まれ、一条はそのまま脳震盪で倒れる。その衝撃波は観客席にも届いた。
達也自身も耳から血を流していた事から、自身にも影響が出た様だ。
後は残りの2対2で対峙している戦闘域。
第三高校の一人は吉祥寺真紅郎。基本コードを発見した天才魔法師。
しかし、幹比古は古式魔法を縦横無尽に展開し、天才に土を付けた。
残りの一人は、レオが倒し、試合終了。
第一高校、即席チームの勝利である。
そして、3人は肩を寄せ合い、観客席の方へ戻ってきたのだった。
今回もつなぎ要素が高かったです。
横島の活躍はもう少し後です。