横島はレオの誘いで、達也たち一行と共に下校することになった。
黒髪ロングヘアの美少女が廊下で待っていた。
「お兄様、お待ちしておりました」
「待っててくれたのか、深雪」
「あら、お兄様こちらの方は」
「こいつはクラスメイトの……」
達也は妹の深雪に横島を紹介しようとしたのだが、達也と深雪の間に素早く入り込んだ。
「ボク、横島!可愛らしいお嬢さん!!」
横島の目はキラキラと輝いて、深雪に自己紹介をする。
「横島さんとおっしゃるのですか?私は司波深雪、こちらのお兄様の妹です」
深雪はそんな横島に動じることなしに自己紹介に入った。
深雪が達也の妹と知り。横島は達也の両手を取ってぶんぶんと振り、もちろん目はキラキラと輝いている。
「お兄様と呼ばせてください!!妹さんの事はこの不肖横島忠夫にお任せを!!」
「やると思った」
エリカは呆れたように首を振る。
「落ち着け横島」
達也はそういうと、横島の手を振りほどき、頭にチョップをかます。
「へべ」
横島は頭を押さえ悶絶する。
「面白い方ですね」
深雪は微笑みながら横島をそう評した。
「深雪、面白いんじゃなくて、ただのアホよ」
エリカは深雪にうんざりした顔で言う。
隣で美月が「たはは」と苦笑する。
レオはその光景をみて、大きく笑っていた。
深雪と合流した一行はそのまま学校の校門を抜けようとしたところ声がかかった。
「司波さん、僕らと一緒に行こう」
男女7人のグループが近づき、一番前の男子生徒が深雪にそう声を掛けた。
肩の校章から1科生と分かる。
深雪は戸惑った表情をしていた。
そんな深雪に達也は尋ねる。
「深雪、クラスの友人かい?」
「はい」
声を掛けた男子は、達也を睨んだ後、深雪に言う。
「司波さんは、ぼくらと一緒にいるべきだ。彼らと一緒にいるべきじゃない。ウィードなんかと」
それを聞いたエリカは憤慨した様子で、その男子生徒の前に出て強い口調で言う。
「なによ、あんたたち、深雪は私たちと帰っているの!!邪魔するつもり!?」
大人しそうな美月も前に出て
「そうです。兄妹仲良くしているのを、あなたたちは何のいわれがあって、裂くんですか!」
レオも続き、男子生徒にガンを飛ばしている。
その後ろで、横島は平然としている達也に質問した。
「これ、なんでケンカになってんだ?ウィードって何?」
達也は珍しく呆れたような顔をして、横島を見て説明をする。
「ああ、お前も俺も2科生だな。彼らと深雪は1科生だ。この学校では1科生と2科生では差別意識がある。2科生は補欠、劣った存在だと。ある意味、魔法科高校は魔法の強さが優劣をきめるからな」
「ふーーーん。でなんで2科生が劣ってるんだ?」
達也は横島が意味をよく理解ができていないのだろうと思い、説明を続ける。
「入試で魔法の実技試験があっただろう。あれでこの学校における魔法の力の優劣が決まったんだ。例えペーパーテストが優秀でも魔法の力が弱いものが2科生になる」
「あんなんでねーーー、お前の方がよっぽどあいつらより強いのにな」
その横島の言葉に達也は驚きと共に警戒心を高めた。
そんな達也をよそに横島は平然と眼前の出来事について、指摘した。
「達也ー、なんか小競り合いが始まったぞ、許可なく魔法使うと、厳しい罰則とかあるんじゃなかったっけ?」
エリカとレオがこちらに突っかかってきた男子生徒と何やら、小競り合いをしていたが……
相手側の数人が魔法を使おうとしていたのだ。
達也は魔法を使おうとしている連中の魔法展開式を読み取り、それを反転ジャミングし起動式を潰す。一見簡単そうに見えるが、まず数万ワードはあるだろう展開式を瞬時に読み取ることはほぼ不可能な代物なのだ。それだけでも達也の優秀さが分かる。
相手側の奥で、女の子が魔法式を起動展開させようとしているのが分かったが間に合わない。
達也は、展開後の対処を瞬時に思考する。
しかし、魔法は起動しなかった。
奥の女の子の前にいつの間にか横島がいたのだ。
「ボク、横島!!可愛らしい君!!今からお茶でもどう!?」
横島は魔法を発動しようとしていた女の子の手を取り大きな声でそう言って、ナンパを始めたのだ。
小競り合いをしていたエリカとレオは毒気が抜かれたように、膝をかくっと落とし、呆れた表情で横島を見る。
エリカたちと対峙していた。1科生の生徒達も、振り返り横島を驚愕の表情で見ていた。
エリカが場の変な空気を崩すように叫ぶ。
「横島ーーーー!!こんな時に何やってるの!!」
達也は最大限の警戒をした。
さっきまで横にいた横島が、達也が気づかないうちに、向こうの、しかも魔法を発動しようとした女の子の所にいたからだ。達也は九重道場で体術や気配察知を高レベルで取得している。その達也が横島の行動を感じ取れなかったのだ。
横島にナンパされた女の子は混乱していた。
魔法を発動しようとしたら、急に眼前に男子生徒が現れて、自分にナンパをしだすのだから。まだ混乱から覚めていない様子だ。
横島の行動で、小競り合いその物が止まった。
その間に、騒動を嗅ぎ付け、あの風紀委員長、渡辺摩利がやってきたのだ。
「お前たち!!そこで何をやっている!!」
その後ろに、小柄な美少女がついて来ていた。
彼女はこの学校の生徒会長、七草真由美だ。
「魔法を使おうとしたのではないか?」
摩利は小競り合いをしていた1年生たちにそう質問したが……
摩利はいまだ、ナンパを続けている横島を見つけて、歩み寄り腕を取る。
「また、貴様かー!!入学初日に横島、貴様は校内でのナンパは禁止にしたはずだぞ!!」
「あれ?摩利さん?なんでここに?」
摩利に、横島は無様なうめき声と共に地面に叩きつけられる。
「ふべっ」
「おい、こいつを拘束して風紀委員室に連れていけ!!」
摩利が後ろに向かってそう叫ぶと、後ろから同じく風紀委員の腕章をした。男子生徒が来て、倒れている横島を拘束して、この場から連れ出していた。
横島はなんだか騒がしく叫んでいた。
「いややーー、説教はもういややーー!! どうせ連れていかれるんやったら、柔らかい腕がいいんやーーー!!ごつごつした男の腕なんかいややーーー!!」
その様子を呆然と、小競り合いを起こした1年生連中は見ていた。……達也以外はだが
摩利は連れていかれる横島を一瞥してから、振り返って1科生達を見据える。
「で、お前たちはどうなんだ?」
達也はとっさの言い訳を放った。
「森崎家のクイック・ドロウの教えを乞うていたのですが、真に迫っていたもので、つい白熱してしまっただけです。」
森崎とは、一番最初に突っかかってきた男子生徒である。
後ろにいた生徒会長の真由美が摩利に不問にするように言う。
「摩利、実際に魔法を発動していないのだからいいじゃない?」
「……まあ、いいだろう………お前たち、自衛目的以外で許可なく魔法起動させることは、校則違反だ。気を付ける様に、解散!!」
摩利は、1年生達にそう言って、事を終息させる。
生徒会長の真由美は達也と深雪に近づき話しかける。
「また、会いましたね。生徒会のことで、深雪さん、達也さんも今度、生徒会室に来てもらえませんか」
深雪は戸惑った表情をして達也を見るが
達也が代わりに答えた。
「お伺いさせていただきます」
摩利はさっきの出来事にまだ、納得がいってない用で、司波たちに説明を求める
「しかし、実際、起動展開式を確認していた。これはどういうことだ?」
達也が簡潔に答える。
「起動式を発動前に潰したんです」
「どうやってだ?」
摩利は疑問を口にする
それに対し深雪が達也の代わりに自慢げに答えた。
「お兄様は、相手が発動する起動式が読めるんです。読み込んだ起動式を反転させ、相手にぶつけることにより、魔法が発動しないのです」
摩利と真由美は驚愕な表情を浮かべた。
「起動式が読める?……本当にそんなことができるのか……まあいい」
「それはすごいわね……」
「はい!」
深雪は達也の代わりに笑顔で答えた。
この騒動は終息したのだが……
しかし、達也の中で、横島に対する見方が変わった。
行動は突拍子もなく、バカのように見えるが、あの奥で魔法を発動しようとした女子を止めたのだ。
あれは偶然ではないと達也は判断した。
あそこに移動する経緯も達也には見えなかった。少なくとも魔法を発動した形跡はなかった。
言動も気になっていた。「お前の方がよっぽど強いのにな」
俺の事を知っている奴かそれとも何らかの組織の監視役か?など、横島に関する疑問は次々とわいてくるのだった。
一方、横島というと、縄でぐるぐる巻きにされたまま。正座をさせられ、摩利からだけでなく、2年生の風紀委員からもくどくどと説教を受ける羽目になった。
「うぉーーーーーん。なんで俺だけなんじゃーーーー不公平だーーーーー!!」
横島の涙ながらの叫びは誰にも届かなかった。
今回ちょっと長かったです。
魔法理論こんなんでよかったかなーー