誤字脱字報告ありがとうございます。
では、「横島、敵の巣に現れる!!」の続きをどうぞ。
小さなギャグは少しは出来たと思います。
「結界!!」
横島は声を大きくして唱えた。
達也は、会議室とつながっていた通信が遮断され、会議室の窓から中の様子が見れなくなった。まるで、霧がかかっているかの様だ。
達也の近くで、会議室内をモニターしていた響子は困惑しながら達也に言った。
「会議室内の映像ロスト……復旧できないわ。完全に切り離された。どういう事?」
藤林響子少尉、『電子の魔女』の二つ名で呼ばれる電子・電波魔法を駆使して、高度なハッキングや情報収集、かく乱を得意とする強力な魔法師だ。
その、響子を持ってしても、横島の結界の中を探る事は出来ないのだ。
達也の術式解体『グラム・デモリッション』では距離が足りず、術式解散『グラム・ディスパージョン』では、横島の結界が読めないため、発動が出来ない。
事実上、今の達也には手出しが出来なくなっていた。
しばらくすると、会議室から青白い光が漏れると同時に圧倒的な存在感が達也と響子に襲ってきた。
横島の圧倒的な高濃度の霊気が漏れ出したのだ。
達也は何とか踏ん張り、立っていた。
「くっ……何が起きている」
達也の隣で直接内部をモニターしようとしていた響子は座り込み震えだしていた。
「な……なに…これ」
一方会議室の中では、
「これで邪魔は入らない」
横島は高レベルな結界を張り、会議室とその外とを完全に遮断した。
幹部達は達也の恐怖から脱してはいなかったが、虚勢を張り横島に怒鳴る。
「……貴様は何者だ!!」
「正義の味方かな?あんたらに聞きたい事があるんだけど?」
「14号殺れ!!」
残ったジェネレーターに幹部の一人が命令する。
ジェネレーターは日本刀を構え、魔法を起動、刀身に『高周波ブレード』を展開し、横島に迫る。
「人の話聞けって。俺、一応あんたらを助けたんだけど」
横島は高周波ブレードが振り下ろされる前にハンズ・オブ・グローリーを発動させ、ジェネレーターを神速で横薙ぎにする。
ジェネレーターはそのまま倒れるが傷一ついていない。横島は霊気のみを切り、行動不能にしたのだ。
それを見た幹部連中は一斉に横島に向かってマシンガンなどを放つ、中には魔法で貫通力を高めた弾や破砕の魔法が付与さらたものも混じっていた。
「話しに来たんだって!!」
横島は霊圧を一段上昇させ、弾丸が横島の前に迫ると、その場所だけ一瞬サイキックソーサーと同じような盾が展開し弾丸を次々と防いでいく、横島の前の床には多量の弾が落ちて行った。
それでも、幹部連中は次々と弾丸を横島に浴びせて行く。
「ほんま、アホやな!!」
横島は霊気を一気に解放し、さらに霊圧を高めた!!
横島の周囲から青白い光が漏れ出している。どうやら、外部遮断の結界の外まで影響が出ていた様だ。
幹部連中は横島の圧倒的な霊圧を目の当たりにし、マシンガンのなどの銃器を床に落とし、恐怖で体が震え、次々に膝をついて行き、完全に戦意喪失状態になった。
横島は高めた霊気を納め話し出す。
「俺は話を聞きに来たんだ。それとも、さっきの奴に霧みたいに消されたい?」
幹部たちは全員項垂れていた。
それを肯定と取った横島は……
「全員正座!!それと、九校戦に関与した理由を洗いざらいしゃべってもらおうか!!」
幹部たちはもはや横島に逆らうつもりは毛頭なく、素直に従い正座をしていき、今回の関わったすべての事を話し出した。何故か全員敬語になっていた。
幹部たちが話した内容は、横島がとらえたジェネレーターから得た情報と横島の推測した通りだった。
九校戦を賭け事に利用し、その胴元になっていたのだ。自分たちが利益を存分に得るため、第一高校の妨害を行っていたのだ。ジェネレーター以外にも内部協力者を得たり、構成員を何人も送っていたらしい。
「で、第一高校の優勝がほぼ確定したから、ジェネレーターとやらに命令して観客虐殺、そんで大会中止にして、チャラにしようとしたんだな……お前らほんとアホだな。そんなんだから、商売敵にいいようにやられるんじゃないのか?……あーーそれと虐殺命令した奴はだーーれだ?」
横島は、呆れた様に幹部を見やりながら、確認を取り、最後にはニヤリとして、そう聞いた。
5人の幹部の内4人が1人を見やる。
「おい……お前らも同意したじゃないか」
「俺は嫌だったんだ。足が付く可能性が高いと言ったじゃないか」
幹部同士が言い争いになっていた。
「全員同罪じゃ!!」
横島は、幹部5人に拳骨をかましていく。
最早いままで威張りくさっていた幹部の貫禄は横島の前ではなくなり、しゅんとなり父親に怒られる子供の様になっていた。
「おかしいと思わないのか?なんで九校戦を元に掛けをした?誰が言い出した?」
横島は溜息を付きながら質問をしていく。
5人の幹部はお互いの顔を見回しだした。
「お前じゃないのか」
「いや、お前だよな」
「そう言えば、お前だったはずだ」
「違う、誰だったか」
お互い犯人を擦り付け合っている。
横島は呆れた顔をして
「あのなぁ、お前らの誰かが入れ知恵されたんじゃないのか?客とか同業者の知り合いとか?」
幹部連中はお互い顔を見合わせ、思い出したように喋りだす。
「そう言えば、あのブローカーだっけか」
「ああ、最近顧客になった奴だ」
「そうだったな」
横島は呆れを通り越して、憐れみの目で幹部連中を見る。
「お前ら……それって、敵対組織の奴か国の公安や軍の連中じゃねーーのか?」
幹部連中は憤り始めた。
「くそ!!騙しやがって!!」
「舐めた真似を!!」
「バカにしやがって!!」
「バカなのはお前らだ!!騙される方が悪い!!はぁーーーーー」
横島は幹部連中に怒鳴りつけ、深いため息を付く。
怒鳴りつけられた幹部連中はまたもや、しゅんとなる。
最早、何の威厳もない幹部連中は道化もいいところだ。
横島はある可能性を考えている。
軍が関与していた事は確定している。しかし、このシナリオを描いた奴が他に居て、軍の上層部がそれに乗った可能性もあるという事だ。
そいつは相当頭が切れ、さらに軍の内情にも詳しいという事だ。
現状では横島はそれが誰なのかも見当もつかない。
「で、お前らどうする?このまま開放すると、軍のさっきの奴に消されるし。それとも警察に突き出した方がいい?」
幹部の一人がそんな事言った。
「金ならある!!だから助けてくれ!!」
「ここから突き落とされたい?その方がいいかもな?俺なんか何回やられたか……よく生きてたな俺」
横島は遠い目をしてそう言った。横島は色々な高所から美神に突き落とされた事を思い出していた。
美神は関係ないが一番高いところでは宇宙から落下した経験があるのだ。
「まあ、悪事がばれたんだ、警察行って、罪でも償ってくれ」
横島はそう言って、幹部連中にこの後二三情報を聞き出し、何かを書かせる。そして、幹部連中とジェネレーターを何処から出したかわからない長い紐でひとくくりに縛りあげ、吸引札を取り出し「影吸引」と唱え、幹部連中を札に封印する。
「さて、脱出か……クッククー」
横島は悪い顔して笑う。
達也は遠距離魔法はあきらめ、先行していた独立魔装大隊のメンバーと合流して幹部達が会議をしていた部屋の前に到着した。
その時、横島が張った結界がスッと消え、中に入る事が出来たが、中はもぬけの殻になっていた。
幹部連中も横島も残っていたジェネレーターも綺麗さっぱりいなくなっていた。
しかし、小さなメモ用紙が一枚残っていた。
そこには二文字 「スカ」と書かれていた。
横島が悪い顔をした時ってろくでもない事をかんがえてそう。
ノー・ヘッド・ドラゴンの所はこれで終わりです。
次はこの後始末と九校戦再会かな