誤字脱字報告ありがとうございます。
漸く、ここでシリアス部分が終わります。
ギャグに戻れます^^
九校戦9日目深夜1:00、横島が宿泊している部屋に風間少佐と響子が訪れた。
外では独立魔装大隊のメンバーが、他の学生にわからないよう待機している。
「横島くんいるかね?」
風間は扉の外からノックをし、横島に呼びかける。
「……深夜になんすか?」
しばらくして、眠そうな横島が扉を開け返事をした。
「ちょっといいかね」
「なんすか?怖い顔して、明日試合があるんで寝たいんですけど」
横島は不満そうな顔をして答えたのだが、風間と響子は強引に横島の部屋に入ってきた。
横島はしぶしぶ、空いているベットに座るよう風間と響子に促した。
「横島くん。尋ねたい事がある。今日の20:00~21:00頃君は何をしていたかね」
「……え?なんでそんな事を」
横島は答えることを躊躇する。
「いいから答えなさい」
強い語調で風間は横島に言う。
「……飲み物買いに行って………なんか一年生女子が大浴場がどうのこうのって言ってたのを聞いて後をついて行ったら、深雪ちゃんと雫ちゃんに氷漬けにされました」
「……少尉?」
風間は横島の言動について、響子に確認した。
「間違いありません」
響子は目を伏せて答える。
宿泊内の監視カメラではその様子が一部始終映し出されていたのだ。
「何なんすか?2人して人の恥をそんなに晒したいんすか!!」
横島は目に涙を溜めながら憤った様に言う。
「……単刀直入に言う。我々の部隊は、昨日20:00から、とある作戦を実行していた。その作戦現場で君を見たという人間がいるのだよ。あろうことか作戦の妨害をしたというのだ」
風間は鋭い目つきで横島を見据えて言う。
「何それ?俺、居たっすよ、雫ちゃんだって深雪ちゃんだって知ってるはずなんですが、見間違いじゃないっすか?」
「見たのは……ここにいる響子君だ」
「やっぱ見間違いじゃないっすか?風間さんが響子さんを夜遅くまで仕事させるから疲れてるんすよ。ブラックもいいところっすよ……だから、彼氏も……」
横島はウンザリした表情でそう言った。
「コホン」
響子は横島が余計な事を言いそうになったので、咳払いをしてそれを止める。
「はあ、また、証拠もなく、俺を冤罪で拘束するつもりなんすか?」
横島は拗ねた様に言うが、前回拘束されたのは過剰だったかもしれないが、冤罪ではない。
「……君を見たっていう人間はもう一人いる。君を良く知る人物だ」
「軍属に知り合いなんていないんですが?誰っすか?」
「それは機密事項だ」
達也の事なのだが、戦略級魔法師として軍に所属している事は、国家機密扱いなのだ。
「まあ、どっちにしろ、俺じゃないっすよ。人の目なんて、あんまりあてになんないっすからね。どうしても俺だっていうんなら、証拠とかあるんすかね?」
横島はウンザリした表情をしてそう言った。
実際、風間達には確たる証拠がないのだ。
作戦時の宿泊施設監視カメラには横島が確実に映っている。しかも証人付きでだ。
更に、響子がノー・ヘッド・ドラゴンの会議場をモニタリングしていたデータには横島の音声はおろか映像にも一切写っていない、逆に横島が関与していない証拠しかないのだ。
それで、直接横島に尋問しに来たのだが……話が平行線のまま。
「違うと言うのだね」
「だから何度も言っているじゃないですか?俺、明日っていうか、今日試合なんですが、もしかして嫌がらせですか?これも第一高校への妨害工作の一環?」
横島は痛烈な皮肉を風間に浴びせたのだ。
「……深夜にすまない事をした。明日の試合頑張ってくれたまえ」
そう言って風間と響子は横島の部屋を後にする。
横島は、布団を被って床に就く。
ニヤリ
作戦時にここに宿泊施設に居た横島は、横島の分身だ。
斉天大聖老師、孫悟空の弟子、老師の得意技は髪の毛で意思のある分身体を多数つくる事。横島はまさしくその技を行ったのだ。横島の場合、数体作るのがやっと。加えて、まれに綺麗な横島や、スライムみたいな横島が出来上がる事もある始末。今回はちゃんとした横島だったのだが、ちゃんとしたものだけに女子が行く風呂について行ってしまい、深雪たちに氷漬けにされるアクシデントに見舞われる。何とか耐久値内で収まったようで、分身体が元の髪の毛に戻ることもなく、横島も内心ホッとしていたのだ。
捕まえたノー・ヘッド・ドラゴンの幹部連中は警視庁の前にコソっと放置。丁寧に自分で書かせた罪状付きで、もちろん認識阻害の術で横島に対しては印象が非常に薄い状況になっている。
横島の部屋を後にした風間少佐は、横島の監視体制の強化を図るように指示するが、翌日九島烈にしこたまその件で説教を受けることになる。横島がコソっと事のあらましを密告したのだ。
横島は九島烈と九重八雲には情報という手土産を忘れず持って行っていた。
ノー・ヘッド・ドラゴンの総裁やら重要人物の名前についてである。両名共、いい手土産だったと言っていた。
翌日の早朝、朝のトレーニングをしている達也を横島が捕まえ、人気のいない場所に行く。
横島から達也に話を切り出す。
「達也……お前、なんで軍なんているんだ?お前利用されているとわかっているだろ?」
「お前には関係ない……昨日なんで邪魔をした?」
「何のことだ?って言いたいが……邪魔するつもりはなかった、その、お前が人を殺るのを見るのが嫌だなって」
「なんで俺にかまう?」
「わからん……逆になぜ俺の事を洗いざらい軍に話さない?」
「深雪がお前の事を気に入っているからな」
「とことんシスコンだな、お前」
「……俺には力が必要だ。だから、軍に入った。ある程度の事は織り込み済みだ」
「おまえ、十分に強いだろ?この前、俺と戦った時も、なんか力が出し切れていないようだったし、封印か?なんかそんな感じがした」
「いや、足りん」
「はぁ、俺の余計なお節介ってことか、悪かったな……詳しいことは聞かんが、協力できることがあれば言ってくれ……」
「………後で俺の所に来い、CADの最終調整をしてやる」
「ああ、助かる」
この二人、性格は合わなそうなのだが、なぜだか奇妙な信頼関係はあるようなのだ。
そして、九校戦10日目を迎える。
今日、もう一発投稿します。
もちろんギャグ回です。