ようやく、本戦モノリス・コード終了です。
この話で、九校戦編終わりにするつもりだったのですが、あと一話、締めくくりを入れたいかなと、閉会式ですかね。
横島は、モノリスを制圧しようとした選手が躓いているところをすかさず接着魔法で拘束し、人質に取ったのだ。
そして、残りの選手に、魔法攻撃の停止を訴えた。
「やーーーい!!魔法を撃てるものなら撃って見ろ!!お仲間も巻き添えを喰うぞ!!」
残りの第三高校の選手は口々に抗議をする。
「人質など卑怯だぞ!!」
「卑劣な、正々堂々と戦え!!」
「卑怯で、結構、メリケン粉!!人質に取られる方が悪いんじゃ!!」
横島はそう言い切った!!
殆どの観客も、その行為を見て、卑怯だと考えていた。
しかし肝心なところを皆見逃している。どうして、モノリスを制圧しようとした選手が躓いたのかを……
横島は、攻撃を避けながらCADを発動させ、接着魔法を荒地に生えているわずかな草と草を繋げ足罠(輪っかを作り足を取る罠)を作成、わずかに露出している岩にたいして、ホイホイ魔法(条件発動型の接着魔法)を仕掛けていたのだ。
派手に避けたり、土埃を立てたのはそれを偽装するためでもあった。
しばらく沈黙していた第三高校の人質に取られた選手は叫んだ!!
「俺の事はいい!!こいつを倒せ!!」
それに呼応した残った第三高校の生徒は
「くっ、分かった!!お前の骨は後で拾ってやるぞ……この悪党め覚悟しろ!!」
最早、横島は悪役となっていた。
オールレンジ攻撃魔法が横島と人質に放たれる。
「え?まってーーー、ほげーーっ!!」
横島は寸での所で避けたが、人質はまともに喰らいノックアウト。
「お前ら!!血も涙もないのかーーーーーー!!」
横島は残りの二人に叫ぶ。
「お前が言うなーーーーー!!」
オールレンジ攻撃魔法を放った第三高校の生徒は怒鳴り返し、横島に向けた魔法を放つ。
最早この駆け引きに入った段階で横島のペースに完全になっていた。
横島はそのまま猛ダッシュで、怒鳴り返した選手に迫り、魔法を回避。
相手選手は近距離用の魔法に変更しようとするが既に手遅れ、横島の接着魔法の範囲内に入っていた。まずは、腕にはめたCADと操作する手を固定、その後、左右のブーツを固定し、転ばしてから、各所接着固定し拘束する。
もう一人の選手は横島と仲間の位置が近かったこともあり、魔法攻撃をすることが出来なかった。
横島はその選手に振り返り見据えるが、ホッとした表情をし、肩を撫でおろし、戦闘態勢を解いた。
「横島、よくやった!!」
十文字克人がその選手の真後ろに居たのだ。
そして、ファランクスを展開して、タックル。
憐れ、その選手は一番のダメージを受け空中に飛んで行った。
これで相手選手全員行動不能となる。
「ふーーー、遅かったっすよ!!」
横島はわざとらしく疲れたようなしぐさをして、十文字に不満を言う。
「すまなかった」
十文字は素直に横島にお詫びの言葉を言う。
「たはははははっ」
横島は照れ隠しで笑った。
ウウウウ――――――――――ウ
そして、試合終了のサイレンがなる。
第一高校の勝利、そして本戦モノリス・コードの優勝だ!!
ヒュ――――、ボスン!!
「ふぎゃ!!」
しかし、ここで終わらないのが横島である。十文字が吹っ飛ばした選手が空中から落下し横島に直撃したのだ。
カエルが押しつぶされたように倒れ、横島は試合終了後にノックアウト!!
その様子を見て十文字は一言
「……すまん」
横島は、十文字に背負われ、途中で辰巳と合流し、観客席の下にある控室へと連れていかれる。
観客席からは他校の生徒や一般観客から横島に向け、心ないヤジが多数飛ぶ。
「卑怯者!!」
「魔法師の面汚し!!」
「とっとと帰れ!!」
観客席にいた何時もの面々は、顔を顰めていた。
「何よ!!横島はよくやったじゃない!!」
エリカは憤り、ヤジを飛ばす観客に噛みつく勢いだったが、レオが珍しく制していた。
「言わせたい奴には言わせておけ」
雫は静かに怒りをあらわにし、視線で人を殺す勢いだ。
ほのかもプリプリと怒っていた。
他のメンバーも同じ思いの様だ。
横島はヤジで気が付き、十文字の背から下り、下を向きながら十文字と辰巳に向かって謝る。
「すみません。俺ってこんな戦い方しかできないんすよ」
辰巳はそんな横島を見て、観客に向かって憤り何か噛みつこうとしたが、十文字が腕で制す。
そして……
「観客の皆さんに問う!!我々の試合で、何か言いたいようだが!!個人に向け大勢が一斉に物を言うのはどうかと思う!!この者はルールに従って、試合を有効に進め勝利に導いたのだ!!賞賛こそされるのが道理!!何か言いたいものは十師族次期当主、十文字克人が受ける!!」
普段寡黙な十文字が大声で観客に向かいこう言い切ったのだ!!
観客は静まり返る。
そこで、パチンと指を鳴らす音があたり一帯鳴り響いた。
そして、指を鳴らしたと思われる人物に全員が注目する。
「いまの試合は、今までになく高度かつ実戦的な試合だった。観客の皆様には理解が及ばなかったのは当然な事です。少々私から説明しよう」
九島烈はマイクを受け取り、そう言ってVIP席から立ち上がり説明しだした。
あの指を鳴らし、注目を浴びるのも何らかの魔法なのだろう。
まずは、初手の第三高校の目くらましを褒め、第一高校が油断していた事を指摘した。
横島がモノリスの前で見せた回避行動は不格好だったが、モノリスや土煙を盾にし、最小の防御範囲で避けていた事を称賛。そして、その間に罠を仕掛けていた事も説明する。焦れて出てきた第三高校の生徒が罠にかかり、人質をとった下りからは……
「彼は実に実践的であり安全かつ人道的な行為を行った。もし、これが実戦であらば彼は味方が不利な状態でも、相手を殺さずに捉え、人質という交渉カードを手に入れたことになる。しかも、ルールの違反をせずにだ。実践ではこのまま、交渉に入り、お互い傷つけあわずに、休戦になる可能性もある。
この試合、途中からは、第一高校側から見れば、自陣を防衛にいかに援軍が来るまで持ちこたえるかの試合様相になっていた。人質はそのための時間稼ぎでもあった。彼が、相手の選手と話せば話すほど、時間が稼げる。これほど、有効な時間稼ぎはないだろう。
そして、それを実践し、実現できる能力が彼にはあったという事だ。その事が今回の大きな勝利の要因でしょう」
九島烈はそう言って締めくくり席に付いた。
その後、会場からは、パラパラと拍手が沸き上がり出し、最終的には大きな拍手と変わった。
十文字、辰巳、横島は居たたまれなくなり、そそくさと、観客席下の控室に入っていった。
「十文字先輩、助けてくれて、ありがとうございます」
「辰巳先輩も、かばってくれようとしてくれて、ありがとうございます」
横島は控室に入ると同時に、十文字、辰巳にそれぞれ、深々とお辞儀をしお礼を言う。
その横島の右目には涙が溜まっていた。
横島は、過去、このようにして、誰かにかばってもらった経験がほとんどない。
大概は自分で解決するか、諦めてきたからだ。
「当然の事だ。試合ではお前に迷惑をかけた」
「実際よくやったよ、お前は」
十文字は表情を変えずに答え、辰巳はイケメンスマイルで横島の肩をポンと叩き答えた。
横島はこの学校に来てよかったと実感したのだった。
十文字先輩かっこいいっす!!
なんか書いてて、十文字先輩、辰巳先輩がかっこいいと思ってきました。
最後は少しシンミリしちゃいましたが、次回九校戦最終話になります。