過去のつじつまが合わない部分を訂正いたします。
前回と大分開いちゃいましたが
おキヌちゃん編これで最後です。
投稿してすぐ読んでいただいた方申し訳ございません。
手紙の内容というか口調が変だったのでかなりの箇所を修正しました。
横島は今、妙神山の山頂にある岩の上に座っている。
小竜姫から、絹の手紙が入った封筒を渡された。
表には横島忠夫様と墨で書かれた達筆だが本人の優しさがにじみ出ている字であった。
裏には、絹と名前のみ書かれていた。
横島は封筒を開け、手紙を読む
大好きな横島さんへ
貴方がこれを、読んでいるという事は、私は先にあの世に旅立っている事でしょう。
私は記憶を取り戻し、横島さんが生きているのに会えないという事を知ったあの時、私の喪失感は得も言われぬものでした。しかし、貴方が生きていると言うだけでも、満足しなければならないのですが、こればかりはぬぐえません。
記憶が戻ってからの毎日は貴方の事を考えなかった時はありませんでした。
幽霊の私と一緒に過ごしていただいた日々はただ単に楽しかったのです。幽霊である事に関係ないように、振舞う横島さんに、私はその頃から恋心が芽生えたのかもしれません。
そう言えば、貴方のアパートによく勝手に入って、掃除、洗濯、炊事までやってましたね。当時は意識してませんでしたが、まるで通い妻のようだったと。
私が人として、現世に戻った時は、貴方は強くなり、何時も私を守ってくれていました。知っていましたか?あの頃の私は完全に横島さんにまいってしまっていたことに……
しかし、横島さんは私に振り向いてくれることはありませんでした。あくまでも妹のような扱いで、当時はそれが悲しくて、泣いていたこともありました。
ルシオラさんが現れ、私は平静を装うとしましたが、私の心の中にはいつも黒いものが渦巻いていました。私が一番最初に貴方を好きになったという自負がありました。貴方に告白をできずにいたあの時の私は、今にしてみれば、全ては貴方の懐に踏み込めなかったために、ルシオラさんに先を越されたのです。
当時の私を叱りつけてやりたい思いでした。
アシュタロスとの死闘でルシオラさんを亡くし、心に傷を負った貴方に私は何もできませんでした。
私は怖かったのです。貴方はルシオラさんの事を諦めていなかった。私だけでなく、美神さんもわかっていました。しかしながら、そんなあなたに何かを言って拒絶されるのが怖かったのです。
あの頃から貴方は余り笑わなくなり、
そして、私たちの前から突如いなくなりました。
当時の私は後悔と自責の念で押しつぶされそうでした。
私はあの組織に捕まり、真実を知りました。貴方がアシュタロスとの闘いの後、人知れず戦っていた事を、知りませんでした。美神さんも知らなかったことだと思います。
あの組織から、貴方の事を聞かれましたが、一切言いませんでした。数々の辛い事をされましたが、きっと貴方が助けに来てくれると信じていました。
貴方は助けに来てくれました。そして、泣きながら私を抱きしめてくれました。
その後、貴方と氷室の家で過ごすことになり、毎日が幸せでした。
貴方が近くに居る。そして、私に微笑みかけてくれる。最上の喜びです。
その間も、私に隠して一人で戦っている事は、分かっていました。
それでも、貴方が私の元に帰ってくる。そして、一緒に居られる。
過ごした時間は短かったのかもしれませんが、私は幸せでした。
心残りは私が貴方の心を助けて差し上げられなかった事です。
私は貴方が自分の命を投げ打って世界を分離し救った事を小竜姫様から聞き、心が割けるような思いがしました。貴方は世界を救いました。
しかし、貴方自身は救われてはいないのです。
私自身でこの手で貴方を救って差し上げたかった。
最後に、横島さんにお願いがあります。
一切のしがらみが無くなったこの世界で、学校に行って友達や恋人を作ってください。
私は、バカやって、騒ぎを起こし、少しエッチで、優しく、それでいつも笑っているあなたが大好きでした。
貴方は、アシュタロスの戦いでいろいろ失くし過ぎました。
あの時をもう一度取り戻し、自分の為の人生を楽しんでいいはずです。
私は貴方と過ごした時間は多くはありませんでしたが幸せでした。
次は貴方が幸せになってください。
私が唯一愛した貴方に幸せが来るように、来世から祈っております。
氷室絹
読み終わった手紙は横島の涙で濡れていた。
横島は妙神山にて、斉天大聖老師の元修行を再開する。
精神世界で、体感時間を約半年。実質は1週間程度。
元の霊力には到底及ばないが、不測の事態に対処できる程度は霊力は戻っていた。
そして、老師と小竜姫に頭を下げ、下界に下りる。
老師は、口惜しそうにしていた。横島が必ず戻ると約束をしたため、しぶしぶ了承したのだ。
横島は真っ先に氷室家の戸を叩く。
氷室家では横島なる少年が来ることを、13代目氷室絹から伝え聞いていたが、半信半疑ではあった。身なりから、名前に至るまで、伝え聞いた通りの人間が本当に現れた事に驚いていた。
15代目氷室蓮は絹の遺言に従い、横島を家族として迎える。
蓮には夫と、中学生と小学生の二人の娘がいる。14代目も隠居したとはいえ、離れで暮らしている。家人も多数いる。
横島は何不自由なく暮らすことが出来た。
横島は、絹の手紙通り、高校に通う事を決心する。
蓮も遺言に従い、横島が高校に通えるよう手配を進めていた。
この頃、日本はここ数年、他国からの、侵略行為を受けたり、小競り合いが絶えない状態であった。
氷室家にも、再三要請が来る。
しかし、国は強硬手段を取ろうとはしない、絹が存命の際、強硬手段を取り、一個大隊を送り込んだのだが、結界に阻まれ、さらに、絹の術で全員捉えられ、正座で延々と説教をされた苦い経験がある。その当時説教された人物の中で、今は軍の中枢を担っている者が何人も残っている。
要請も、蓮の娘を国立魔法大学付属学校に通わせるようにと緩やかなものである。
横島にとって、学校はどこでもよかったため、代わりに行くことを蓮に伝える。
蓮は横島に頭を下げる。
そして、横島は国立魔法大学付属第一高校に入学することになった。
「どうするかな、前の俺はどんなだったんだっけな?」
横島は実質、現在20歳。容姿は18歳のままだが、精神だけを言えば、120歳はとうに超えている。
18歳未満の横島と言えば、とんでもない性格の横島だ。
今の横島は、誰が接しても、好青年然とした人物だ。それだけ苦労してきたのだろう。
絹の遺言を守るため、18歳未満の時の自分を再現しようとしていた。
横島は思い起こす。
「うわっ、こんなだっけ?酷いな。おキヌちゃんはこの時の俺のどこが良かったんだろう?」
頭の中の記憶を術でそのまま、読み起こし、脳内で再生させていた。
「おキヌちゃん……俺はやり直せるかな…………にしても昔の俺は酷いな。これはないよな、しかし」
横島は葛藤するが、17歳前後の精神状態になる自己暗示をかける様にする。発動条件は、氷室村の結界の外及び妙神山以外の場所。そして何れは自己暗示無しでも、横島は青春を取り戻せるのだろうか?
そして……横島は東京に出る。
(……横島さん頑張って……)
おキヌちゃん編終わりですが、九校戦編の後、夏休み中に妙神山に里帰りします。