誤字脱字報告ありがとうございます。
今回は飛ばしても全然問題ないお話です。
何となく、妙神山での風景的な感じです。
横島は斉天大聖老師と精神加速世界で2ヶ月間、現実換算で約3日。主には魂の力を高める修練と霊力の強化の修行を行った。
肉体的な修練は横島は人知れず日常生活で行っているが、久々に小竜姫と剣の手合せ及び型合わせを行っている。横島は、自らの体術と剣術の型を確かめる様に次々と技を放ち、小竜姫もそれに合わせ、剣技で相殺して行く。傍から見ると、街が一つ廃墟になる勢いで戦いが繰り広げられているように見える。体術の切れ、剣技一振り一振りが鋭く凄まじい威力なのだが本人たちは、演武の様な感覚で行っている。
次の手を阿吽の呼吸で、お互い読み切り対処していっているのだ。
「霊力も大分戻って来たようですね。技の切れはやはり、流石です」
「いえ、小竜姫様こそ、100年前に比べ、鋭さが増している感じです」
「弟弟子に、抜かれっぱなしというのも、癪ですからね」
小竜姫は微笑みながらそう言って修練を終了し、深く息を吐いた後、お互い礼をする。
剣技では小竜姫がまだ上を行くが、総合力では横島が圧倒的に有利となる。
技の数だけでなく、横島には数々の陰陽術を駆使して戦う事が出来るからだ。
ちなみに、全盛期の横島は霊力や魂の力が斉天大聖老師と同格まで上り詰め、小竜姫の手の届かない存在とまでなっていた。
「お昼にしましょう、何か食べたいものはありますか?」
「俺も手伝います」
傍から見れば、仲の良い姉弟に見えるのかもしれない光景だ。
昼食を済ませ、老師、小竜姫、横島はちゃぶ台を囲み、お茶をすすっている。
横島は急に真剣な顔をして、話を切り出した。
「実は、お二人に聞いて頂きたい事がありまして」
「なんじゃ?」
「俺が今通っている、高校は魔法……いや、霊能力を科学体系化し、活用する学校なのです。下界では、霊能力者という呼び名は捨て、今は魔法師と呼ばれています」
横島はそう語りだし、現在の世界情勢や、魔法師の役割などを説明する。
「お主の話を聞くと、魔法師とは戦闘、戦争に特化した霊能力者のように聞こえるが……」
「はい、その印象は拭えません」
「お主が望んだような世界にはなかなかたどり着けんな……、そして、攻撃対象が妖怪妖魔から、同族になったわけか」
「元々、戦争は昔からありましたから、そこまでは思っておりませんが」
「まあ、お主からすれば、複雑な気分であろう。人間は有史以来戦いの歴史でもある。形が変わろうとも、争いは収まらんだろうな」
老師はしみじみとそう言った。
小竜姫は口を挟まず、それに同意するかのように頷く。
「こちらが本題なのですが」
横島は少し話づらそうにする。
「俺が通っている高校が、この短期間で、2度も争いに巻き込まれました。今までこのような事は無かったらしいのです」
「ほう」
老師は相づちをうつ
「俺があそこにいる事で、戦いの渦を呼び込んでしまったのかと……、それは無理矢理世界を作り替えた俺への宇宙意思の反動ではないかと……」
横島は話ながら、声のトーンが低くなり、最後には俯き加減になっていた。
「あなたの所為ではないです!!」
間髪入れず小竜姫はそう力強く言った。
「ふむ、お主がそう考えても無理もないが、最高指導者が宇宙意思の反発はほぼないと言っておる。あったとしても、数万年単位での長いスパンで緩やかなものだろうと。それ程、この世界は安定しているのじゃ。主も霊力を抑えて下界に下りておる。問題ないはずじゃ」
老師は、ゆっくりとした口調で諭すように横島に話した。
「そうですか、ならいいのですが」
横島は、それを聞いて少しは安心したのか、声のトーンは戻っていた。しかし、疑念は拭えないでいる様だ。
「まだ、お主が下界に下りて、半年じゃ。こう言う事は、世界中で起こっているかもしれんし、何かの予兆でそのような事が起こっているやもしれん。何でも自分のせいにするのはお主の悪い癖じゃ、お主はどんと構えておれば良い、もしそうじゃったら、此方に帰ってくれば良いだけの話じゃ」
老師の言葉は暖かい。
「そうですよ。下界に居る必要はないのですから、あなたは、ここにいつでも帰ってくればいいのです」
小竜姫は横島には帰ってきてほしいという思いが強い様だ。
「……ありがとうございます」
暖かい二人の言葉に横島は涙が出る思いであった。
しばらくの沈黙の後、横島はさっきとは打って変わって、明るい声で言う。
「そう言えば、師匠にお土産をお渡しするのを忘れてました」
そう言って、居間を後にし、与えられた自室に、老師のお土産を取りに行った。
横島がここに帰ってきたとたんに小竜姫の騒動に巻き込まれ、渡すタイミングを逸し、そのまま、日にちが過ぎてしまった様だ。
「師匠、お土産です。開けてみてください」
老師は箱を開け、それを取り出す。
「何じゃこれは、変わったサングラスじゃの?」
「いえ、師匠の好きなゲーム機です」
横島が持ってきたのは、今巷ではやっている。フルダイブ型のゲーム機だ。
脊髄から脳のパルス信号を交換することで、ゲームの中に入ったかのような体験ができる代物だ。
「ほう!!これがゲームとな!!どうやってやるんじゃ?」
老師はゲームと聞き、目をキラキラさせている。
この老師、ゲームには目が無い、放っておくと、三日三晩サルの様にゲームをし続けるのだ。まあ、実際猿神なのだが。
「これをサングラスと同じようにかけると、ゲームの中に入ったようになるんです」
「真か!!ではさっそく……ん?本体をコンセントに……これは何処に挿すんじゃ?」
サングラス状の端末は本体と無線通信でつながっているため、煩わしいコードなどないのだが、本体は……
老師がコンセントの他に通信コードを触っているのを見て
「……しまった!!師匠すみません。ここってネット環境無いですよね」
「ネットとはなんじゃ?」
「ですよねーー、すみません。それネットがつながらないと動かないです」
横島は、やってしまったというような顔をして、老師に謝る。
ネットの存在自体無い世界なのだ。電気は辛うじて自家発電がある様なのだが……
「小竜姫!!ネットとやらは無いのか?」
「ねっとですか?横島さんねっとって何ですか?」
横島は、ネット環境の事やら、情報化社会の話しやらを二人に説明する。
「ほう、そのような面白きことになっておるのか、便利な世の中よの……ふむ、霊能力など、もはや必要ないのかもしれないの」
老師は文明の発展と共に霊力の存在が希薄になって行く様を感じ、しみじみと言う。
「そのネットやらがつながれば、いつでも、横島さんと顔を見て連絡がつけられるのですね」
小竜姫は、ネット社会についてよりも、その利便性について気づいたようである。
「すみません。今度来る時までに、何らかの対策を考えてきます」
横島は陰陽術式を駆使して何とかできないものか、頭を回していたが、直ぐには思いつかなかった為、来月までにじっくり考えることにした。
「頼んだぞ!!横島」
「横島さん、是非に!!」
老師はゲームがしたいがため、小竜姫は横島といつでも連絡を付けたいがために、ネット環境の導入に積極的なようだ。
下手にこの神々にIT革命をもたらすと、とんでもない事になる可能性があることに、この時の横島は気づかないでいた。
横島はこの後は、陰陽術や分身の術を駆使し、修験場の修復、残りの一日はゆっくりと体を休め老師と小竜姫にしばしの別れに惜しまれながら、下界へと戻っていった。
次回は海の別荘編です。
老師はSA●に閉じ込められて、猿人ハヌマンの名で活躍するなんてどうでしょう?
老師がSA●に入ったら、めちゃ強そうですよね。キリト君も真っ青なスピードで戦いそうです。
小竜姫様がスマホみたいな情報端末を持っちゃうと、毎日横島に連絡してそう!!
意外にも使いこなしているなんてどうでしょう?