横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

すみません。前回海の別荘編と言ってましたが、氷室家編を先にさせていただきます。


今回は全くギャグがありません。
しかも好青年版横島のまんまです。

氷室家の設定を述べているだけの様な回です。
飛ばしても問題ありませんレベルです。




横島、氷室家に帰省する!!

横島は妙神山を後にし、直接、電車とバスを乗り継いで氷室家本家のある氷室村を目指した。

 

 

氷室村は山間の村ではあるが、比較的大きな湖が真ん中にあり、その周囲に集落を形成している。

主な産業は農業と林業その加工業である、その他に人骨温泉というマイナーだが天然温泉があるのみ。産業としては発展しにくいものの多分に氷室家の恩恵を受けているため、村自体は質素な田舎の村だが財政は大いに潤っており、インフラ設備は整っている。村を周回する無料バスなども回っている。

 

氷室家は村の4分の1の土地を擁し、湖の畔にある氷室神社から山を4つと開けた盆地を擁している。

観光地の一つとして、湖の畔にある氷室神社(通称下氷室神社)は参拝客が見られる。しかし、本来の氷室神社は山の中腹付近に建っており、通称として奥氷室神社と言われている。こちらは氷室家の人間しか立ち入ることが出来ない。

 

横島は湖畔の下氷室神社と奥氷室神社の丁度中間にある蓮が住んでいる母屋に向かってバスを降り向かって歩きたどり着く。横島は下界に下りてから、高校に入るまでこの地で2ヶ月過ごしたのだ。

 

氷室家の敷地は湖側では、塀が設けられており、門を通って入らなければならない。門番が数人滞在しており、敷地警護をしている。横島は既に家人として認められているため、顔パスなのだ。

 

 

「ただいま、戻りました」

横島は玄関をガラリと開ける。

 

「あれ、お兄ちゃん?帰って来たんだ!!お父さん!!横島のお兄ちゃんだよ!!」

氷室家現当主、氷室蓮の次女、彩芽がアイスを片手に奥から出てきた。

現在地元の小学校に通う6年生12歳。ショートカットの元気いっぱいの少女だ。

 

「彩芽ちゃんは相変わらず元気だね」

横島がそう言うと、二ヒヒという笑顔で返してきた。

 

彩芽の声に、続いて、片手に扇子を持ち、眼鏡をかけた知的なイケメンが出てくる。

蓮の夫で、氷室敦信。年は蓮の一つ上現在37歳だ。元々は東京出身なのだが、恋愛の末、婿養子となり氷室家に上がったのだ。ペンネーム速見信彦の名で歴史小説家として著名人である。

ちなみに霊能力はない。

 

その風貌と相まった落ち着いた渋い声色で、横島に家に上がるように促す。

「横島くん、お帰り、さあ上がりなさい。部屋はそのままにしているよ」

 

「ただいま、敦信さん。これお土産です。ところで蓮さんは?」

 

「彼女は今奥院(奥氷室神社)に行っているよ。夕方には戻ってくるはずだ」

 

「でしたら、まずは13代目の墓参りにいって、その足で奥院に行きます。14代目にも挨拶したいので、早速行ってきます」

横島はそう言って、そのまま奥院へ登って行く事にした。

14代目氷室恭子は蓮の実の母だ。現在は隠居して奥院の母屋に夫ともに住んでいる。

氷室恭子は、最初っから当主になるべく修行をした人間ではない。普通に高校に通っており、17歳まで霊能力の修行をしたことが無かった。絹が一族の中で霊能力が高く、適正だと思われた彼女に修行を付け、当主にしたのだ。そのためだろうか、他の一族の巫女さんと違い随分とあか抜けている。

 

「あたしも行くーーー!!」

彩芽は横島について行こうとするのだが。

 

敦信がそれを止める。

「彩芽、あそこは危ないから、また今度にしなさい」

 

「大丈夫だよ!!あたしだって修行してるんだからそれぐらい……」

 

「宿題は済ませたのだろうね?」

敦信は眼鏡を一瞬光らせ、彩芽にそう言った。

 

「ギクッ、いやー、アレ!?ちょっとお腹がいたくなっちゃった」

そう言って彩芽はしずしずと自室に戻ろうとする。

 

「ごめんね。彩芽ちゃん今度一緒に行こう」

横島は自室に戻ろうとする彩芽に声を掛けた。

彩芽は振り向かず手をスッと上にあげる。了解の意味だろう。

 

 

 

横島は早速、13代目当主、100年前に自分の恋人だった氷室絹の墓参りに行く。

墓は、奥院からさらに二つ山を越えた所の崖に中頃にある。こんな、人が普通に来れない危険な場所にあるのだ。

そう、ここは絹が350年前、厄災を封印するために人柱となり氷漬けになった場所だ。

そして、約100年前に横島が幽霊だった絹を氷漬けとなっていた肉体に戻し、復活した場所でもある。

 

 

横島は墓前に手を合わす。

「おキヌちゃん戻ったよ。いろいろあるけど、学校は楽しく通っているよ」

 

 

 

しばらく手を合わせたのち、横島はここを後にして奥院へ向かった。

 

 

 

 

 

氷室蓮は、氷室恭子と他の一族を含む巫女数人と、奥院にある離れでとある作業をしていた。

護符や無印の札を作成していた。

氷室家は全国の古式魔法師に対し強力な護符や霊符や札等の霊具を製造販売しており、大事な収入源となっているのだ。

 

 

氷室家の一族が霊木を育て、墨を作り、紙を鋤いて和紙を作成。そして、仕上げに巫女自ら霊力を込めて術式を書くのだ。特に蓮や恭子が作成した札や護符は効果が高いのだ。

そうして作成された護符などの霊具は質も高く、高い効果を発現できるとして一種のブランド化しているのだ。

 

 

蓮は霊符等の札の作成の手を止め、横で同じく作業をする恭子に声を掛ける。

「お母さん、どうやら忠夫さんが帰って来たようです。絹様のお墓からこちらに向かっているようです」

 

「蓮ちゃん、わたしも忠夫ちゃんの霊力を感じたよ」

恭子は蓮に同意する。

親子は氷室村の結界に横島が入った段階で感じ取っていた。

 

 

氷室家15代目現当主氷室蓮、36歳

お淑やかな印象の和風美人であり、年齢は10は若く見える。視界に入ったら思わず振り返ってみてしまうぐらい色気も多分にある。おっとりした柔らかい口調が特徴で、何時も笑みを絶やさない。

 

14代目元当主氷室恭子 59歳 

可愛らしい印象のある女性で、蓮同様におっとりとした喋り方をするのだが、口調は子供っぽいため全体的に若い印象を受ける。ちなみに彼女が氷室絹最後の直弟子である。

 

 

「忠夫ちゃんの為に、料理をいっぱい作ってもらおうかな~。おーい麻弥ちゃーん、夕飯は豪華にお願い!!」

現在、恭子の元には一族や村から、巫女修行に来ている門下生が20人ほど、また、恭子の身の回りの世話をする人間が常時5~6人母屋に居る。麻弥はそのうちの一人だ。もちろん、麻弥自身恭子から手ほどきを受けている霊能力者だ。元々、代々当主が住んでいたのはこの奥院の母屋で、本家宅となる。平屋だが大邸宅となっていた。

 

蓮は、現在は家族だけで新たに建てた家で過ごしている。横島は始めの頃は本家宅で生活していたが、後半は蓮の家で生活していた。今では娘二人いる家に横島が入っても不都合がないと判断されている。

 

「蓮ちゃん、敦信くんや、要ちゃん、彩芽ちゃんも来るように言っておいて」

恭子は蓮にそう言う。どうやら、横島の帰省を理由に宴会でもするようだ。

 

 

 

 

 

横島は奥院に顔を出す。

巫女さんの一人が離れまで案内をしてくれた。

 

しかし、離れの作業場から、先に恭子と蓮が出てくる。

 

「恭子さん、蓮さんご無沙汰しております。ただいま戻りました」

横島は頭を下げ挨拶をする。

 

「忠夫ちゃんお帰り~」

「忠夫さん、お帰りなさい」

 

「忠夫ちゃん母屋に行こうか、蓮ちゃんも……」

 

 

 

本家宅の居間で、大きなアンティーク調の座卓を挟み、それぞれ座る。

家人がお茶と菓子を出す。

 

恭子から話を切り出した。

「忠夫ちゃん、魔法科高校ってどうだった?」

 

横島は恭子の質問の意味を汲み正確に答えて行く。

「そうですね。魔法師育成の学校という名目通り魔法訓練に特化した高校ですね。やはり、戦闘を意識した魔法がメインでしたね」

 

「ふーーん、やっぱそうなんだ」

 

「で、どうなの?その霊能力レベルって言うか、魔法の力って」

 

「学校のトップクラスや十師族の家系の方々の霊力は強かったですね」

 

「わたしや蓮ちゃんと比べればどう?」

 

「うーーん、一人とんでもないのが居ますが、それを除けば戦闘において遅れをとる事は無いと思います。まだまだ実戦未経験な人間ばっかりですからこれからどうなるか分かりませんが」

 

「軍とかは見てきたの?」

 

「一部、接触は在りました。独立魔装大隊という部隊です」

 

「あーーー佐伯広海少将のとこか、でどんな感じ?」

 

「練度は高いですね。霊力レベルだけで言うと、恭子さんや蓮さんの方が高いですが、戦闘になると分かりません」

 

「そうなるよねーーー、絹様がいたから前はどうにかなったけど、私たちだけでどうなるかは心配だよね。そうならないように政治的な駆け引きで何とかするしかないか」

 

 

今まで、沈黙を守っていた蓮が口を開く。

「もし、要が魔法科高校に入るとどういう不都合が出そうですか?」

 

「まずは、CADを扱わないといけない事ですかね。俺はそれに結構手間取りました。まあ、要ちゃんの霊力と資質だと、まずトップクラスの実力になるのは間違いないですが、問題はその校風ですね。俺が行っている第一高校は能力や家系の差別意識が非常に高い学校です。要するに昔の貴族社会を見ているみたいな感じです。要ちゃんの性格だと反発しちゃいそうです」

 

「そうですか」

蓮は目を一度瞑って返事する。

 

「あと、政治の世界と一緒で学生のうちから自分の派閥に取り込もうとする動きとかもあります。それは高校内だけでなく、軍等からもあるようです」

 

「忠夫さん、本当にありがとうございます。本来なら要を行かせなければならないのに代わりにいっていただきまして、感謝のしようがありません」

蓮は横島に頭を深々と下げるのだった。

 

「いえ、見ず知らずの俺を信じていただいているのに、これくらいの事は」

横島は照れたように返事をする。

 

「はいはい、難しい話はこれでお終い!今日は宴会だね」

そう言って恭子はこの話を締めくくった。

 

 

 

 




設定一覧

氷室恭子 氷室家14代当主59歳 夫と修行中の巫女20名他家人6名と
     本家で同居中
     氷室家で働いている正式な巫女や警備担当官または親戚一族を含めると
     100人単位で霊能力者がいる。

氷室蓮、恭子の実の一人娘 氷室家15代当主36歳 和風美女

氷室敦信 連の婿養子 37歳小説家 超インテリイケメン眼鏡

氷室要 連の娘、長女 中学3年生 14歳 未登場

氷室彩芽 連の娘 次女 小学6年生 12歳

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