横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

57 / 192
感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

氷室家編終わりです。

ギャグが無いのはつらかった。
次は海の別荘編です。
ギャグ復活です。



横島、氷室家に帰省する!!その3

氷室恭子と蓮は本家の玄関前で要を連れもどってくると言っていた横島の帰りを待っていた。

この騒ぎに家人も気づき、本家には明かりがともり、恭子の後ろにも数人控えていた。

 

 

横島が出て行って10分、暗闇から本家玄関前に人影が上から降ってくるように現れる。

 

「よっと」

横島が、要を前に抱きかかえ現れたのだ。

 

 

蓮はぐったりと目を瞑ったままの要を確認すると駆けつける。

「要!!」

 

 

「蓮さん大丈夫です。気を失っている様ですが、容体には問題ないです」

横島は蓮に要を見せる様に中腰の体勢になる。

要は規則正しい息づかいで眠っているように見える。

 

 

「忠夫ちゃん、ありがとう。取りあえず要ちゃんを寝かせないと……麻弥ちゃん、客間に布団を用意して、それと桶に水も、足が汚れている様だから」

恭子は横島に礼を言って、家人に要を寝かせる用意をさせた。

 

 

「……横島さん、ありがとうございます」

蓮は横島に礼を言いながら、要の額を撫でる。

 

「ええ、とりあえず、連れて行きますね」

横島はそのまま、本家の客間に要を運び布団の上に優しく下ろす。

後は蓮や家人が見てくれるだろう。横島はそのまま客間を後にする。

 

 

恭子はその横島を奥氷室神社の祭壇の間へ、誘い話をする。

「忠夫ちゃん、要ちゃんの事、本当にありがとう」

 

「いや、少しでもお役に立てて良かった」

 

「実はこんなことが去年もあったの」

 

「そうですか。俺が要ちゃんを見つけた時には特に何者かも居ませんでしたし、要ちゃん以外誰か居た形跡もありませんでした。自身で行った可能性が高いです」

 

「そう、私も去年その事があって、いろいろ調べたのだけど、よくわからなかったの。ただ、去年の事が起きるちょっと前から要ちゃんの霊力が急激に上昇しだしたのが原因で、その影響で何かの記憶混濁、または霊力の残滓に無意識に寄せられたものだと思っていたの。その後1年間何も起こらなかったしね」

恭子は横島に去年、要に起きた事を話した。

 

「そうかもしれませんね。ここは霊脈が集まっている場所でもありますし、霊気も程よく濃いです」

横島は恭子に同意した。

 

 

恭子は改めて横島を見据える。

「晩年、絹様はよく昔の話をして下さったの。自分は結婚はできなかったけど、好きな人がいたと、のろけ話を聞かされたわ。その人ともう一度会いたいっておっしゃってた」

 

横島は恭子が急に絹の話題を出し、その内容に顔を伏せてしまった。

 

「忠夫ちゃん……さっき、あなたが解放した霊気、この氷室村を覆っている結界と似ていたわ、ううん。同じと言っていい程よ」

 

「……俺は……」

横島は言い淀む。

 

「絹様が語ってくれた好きな人にちょっと似てるかなって。気にしないで、恭子おばあちゃんの戯言よ……はいはい、この話はお終い」

そんな横島を見て、恭子は何時もの笑顔で話を終わらせた。

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

要はまだ目を覚まさない。

昨夜から蓮は要につきっきりで見守っていた。

 

 

その日の夜

蓮と朝から見舞いに来ていた敦信、彩芽が心配そうに見守る中、要は息づかいが荒くなり苦しみ出したのだ。

 

「お母さん!!要が!!」

蓮は要が何かの霊障なのではないかと、色々と霊気を操り、調べたのだが答えが出なかった。その矢先に起こったのだ。

 

恭子は要に手をかざす。

治癒の力で収めようとしたが、治る気配がない。

 

 

そこで、横島が客間に呼ばれる。

家族だけの、しかもこんな緊急事態に、横島が呼ばれたことに、彩芽はいい顔をしていなかった。

「なんで、その人を呼んだの?」

 

「彩芽、そんな言い方はよしなさい」

敦信は彩芽を諫める。

 

 

「忠夫ちゃん、貴方なら何かわかるのでは?」

恭子はそう言って横島に要の枕元の場所を譲る。

 

「すみません。蓮さん、敦信さん。ごめんね彩芽ちゃん、ちょっとお姉ちゃんに触れるね」

そう言って横島は、右手で要の額に触れる。

 

 

横島は静かに霊気を解放し、要の記憶を探ろうとした。

「??」

 

しかし、横島の頭に入って来たイメージは明らかに要の物ではなかった。

そして、ポツポツと横島は語りだす。

「過去世……前世の記憶」

 

「350年前……」

 

「引き寄せられる、霊気の残滓」

 

そして、横島は、恭子と蓮、敦信、彩芽に向かい語る。

「要ちゃんは前世の記憶に引きずられています。このままだと、要ちゃんの精神が持たないどころか、崩壊すら有り得ます。要ちゃんの霊気が高まり、前世の記憶が流れ込んでいるようです」

 

蓮はフッと気を失うかの様に敦信に倒れかける。彩芽は涙目になり敦信にしがみ付く。

 

「……忠夫ちゃん、何とかならない?」

 

「何とかしてみます。近い事は経験があるので」

横島はアシュタロス戦後、能力アップを図るため、自分の前世の記憶を記録として、手に入れたのだ。しかし、あの時は文珠があった。

 

横島が見た要の前世とは、この地に、氷室神社を立てた氷室家初代当主の奥方だ。

最初は初代当主かと思った。初代は当時、名の知れた陰陽術師だったからだ。だが違っていた。

奥方とは350年前この近辺一帯を支配していた城主の姫君だ。顔面凶器姫、岩をも簡単に砕く腕力はゴリラ以上、意思の力と行動力はランボーも真っ青だ。しかし、心が非常に優しい姫で、絹の親友でもあった。しかし、自分の代わりに絹が自ら人柱にかって出て帰らぬ人となってしまったため、(実際は肉体は残ったのだが)その後悔の念は凄まじいであろう。そんな思いと、要の霊力が呼応した可能性が高い。

 

「うーん」

方法としては二つある。

一つは、横島同様、過去の記憶を記録として自分の中に収める。これは凄まじい精神力が無いと過去の記憶に支配されかねない。

もう一つは、その記憶……過去世を呼び戻さない様に封印だ。しかし、要も霊能力者である。霊力の成長と共に、その封印の効果が薄れる事もある。

 

「封印しかないか……」

横島は、封印を行うための陰陽術式を頭に描いて、構築していく。

 

「札と墨をお願いします」

恭子にそう言って、無印の札と書くための墨を用意してもらった。

 

 

横島は指を噛み、墨に自分の血を混ぜ、すらすらと札に術式を書いて行く。

 

 

札を手のひらに乗せる。札は自分の意思を持った様に光だし、手のひらから飛び出し、部屋の四隅の柱に張り付いた。

 

「結界」

横島は小声で唱え、部屋全体に結界が効果発現する。

100年ぶりに陰陽術を使用し、成功したことにホッとし安堵した表情する。

 

「眠れし過去の荒ぶる記憶よ戻りたまえ」

要の額に手をやり、長々と術式を唱えた後、そう締めくくった。

 

最後に、額に一枚の札を張る。

 

 

しばらくすると、要の息づかいが戻っていた。

 

 

横島の術儀の見事さに驚愕の目で見ていた恭子。その行動を心配そうに見ていた蓮、ジッと見据えていた敦信、父親にしがみ付く彩芽。

 

彼女らに横島は向き直る。

「上手く行ったようです。今は流れ込んだ記憶を元に戻すためにしばらく時間がかかります。4時間……明日の朝には終わるでしょう」

 

 

横島は恭子、涙目の蓮、敦信に感謝の言葉を何度も受けるが

「いやーー、俺みたいな奴を受け入れてもらってるんで、俺の方が感謝したいですよ」

そう言って、照れたように笑っていた。

 

翌日、術後もよく、要はケロッとした顔で目を覚ます。

 

その後、要の事もあり、蓮の家族に受け入れられていったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今は、氷室家大広間で宴会が繰り広げられている。

 

横島は、隣に座っている要の右手にビー玉サイズの丸い水晶が一個はまっているブレスレットを見やり、声を掛ける

「封印は解けていない様だね」

 

「うん」

要は恥ずかしそうに返事をする。

その水晶はもし封印が解けた場合に緊急的に術式が展開し、記憶の混濁を防ぐ役割をする。

 

「いいなー、私もそれ欲しいな、お兄ちゃん私にも作ってよ!!」

横で彩芽が横島にものほしそうに言う。

 

「彩芽は必要ないでしょ」

横島の代わりに要が答える。

 

「えーーー!!お姉ちゃんばっかりずるい!!」

彩芽は頬を膨らます。

 

「いやー、そう言えばお土産買ってきたんだった。後で渡すね」

横島は二人にも土産を買ってきていた様だ。

 

 

そうして、宴会も終わる。

 

 

 

 

氷室家に滞在していた間。横島は畑仕事を手伝ったり、霊符や札作成の手伝いをしながら、要や彩芽に陰陽術の手ほどきを少々行っていた。

 

 

 

 

そして、横島は東京に帰る日。

「お世話になりました」

 

「忠夫ちゃん、仕送りはいらないって言ったけど、お札とか作ってもらってるからその代金だけでももらって行ってよ」

恭子は横島にそう言った。

 

「いや、大丈夫ですよ。一週間もお世話になっていたし」

横島は、自分で生計を立てていた。お札を作成して月に何枚か売っていたのだ。

しかし、それが後に騒動の種になるのだが……

 

「あのね。忠夫ちゃんの護符なんて、ものすごい能力だから、高――――く売れるの!!だから、その分はちゃんと渡すから、振り込むから番号教えて」

 

「……分かりました。ありがとうございます」

 

 

蓮は横島が次に帰ってくる時期を聞く。

「忠夫さん、次は冬休みかしら?」

 

「はい、そのつもりです」

 

敦信は横島にそう言う。

「秋に一度戻ってきたらどうだね。ここら辺は紅葉が綺麗だ」

 

「お兄ちゃん、今度のお土産は六本木の甘ーいスイーツよろしく!!」

彩芽である。

 

「別に居ても居なくてもいいけど、秋に帰ってきてもいいんじゃない」

要は何故かツンとした雰囲気で言う。

 

彩芽は横島の耳元まで顔を寄せ。

「ツンデレだね」

そう言った。

 

「聞こえたわよ。彩芽」

 

「お姉ちゃんが怒ったーー!!」

 

 

 

 

横島はそうして、東京に帰るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 




ちょっと長かったかもです。

次は海の別荘編

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。