横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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誤字脱字報告ありがとうございます。

海の別荘編の続きです。
ここでは、エリカの悩みを聞く回です。
多分に私の主観が入ってます。



横島、エリカの悩みを聞く!!

ほのかのポロリ事件で、制裁を受けるレオとそれに理不尽にも巻き込まれた達也は、ほのか、雫、深雪を乗せたボートを沖からビーチまで、バタ足で押して進んでいた。

 

 

一方、エリカを乗せたボートは横島が普通にオールを漕ぎビーチに向かっている。

 

「あ~あ、達也も災難だな、深雪ちゃんって結構嫉妬深いって言うかなんていうか……エリカが言い出したんだからな」

 

「私だって、ちょっと悪ふざけが過ぎたと思っているわよ。最終的にレオだけが被るもんだと思ってたんだけどさ、深雪がね……」

そう、この件で深雪が達也を許さなかったのだ。冷気がこちらにも漏れ伝わってくるほどで、取り繕う事が出来なかったのだ。

 

「ま、これもいい経験だ、俺が何時も受けている仕打ちがどれだけ理不尽なのかわかっただろう」

横島はシレっとこんなことを言うが、ほぼ発端は横島であることが多いのだ。

 

「ほとんどあんたが原因でしょ!!」

エリカの言はもっともである。

 

 

 

 

「あのさ……さっき悩みでもあるのかって聞いたわよね」

珍しくエリカは横島に何か聞きにくそうにこんな言い方をする。

 

「なに?変なもんでも食った?」

何時もらしくないエリカに横島におどけてみせる。

 

「違うわよ!!……普段のあんた見てるとつい忘れちゃうけど、氷室家の人間なのよね」

 

「前も言ったが俺は末端だぞ。氷室と名乗っていいのかもわからんレベルだ」

 

「でも、氷室家とか、私が千葉家だったりとか、十師族の人間にも、歯牙にもかけない感じじゃない?二科生だからってなんにも感じてない様だし、なんで平然としていられるの?」

何時もの元気なエリカ口調と違いトーンが低い。

 

「何言ってんだ?」

 

「私が千葉家だって言っても動じないし、あの九島烈にだってため口だし」

 

「レオだって達也だってみんな、別に気にしてないだろう?」

 

どうやらエリカは家の事で思い悩んでいるようだ。

千葉家は剣術の大家であり、軍や警察にも指南し、政治的影響力も非常に高い。

そんな千葉家なのだが、エリカが千葉の名前を名乗りだしたのは極最近なのだ。エリカは俗に言う愛人の娘だった。

生れた時から千葉家の別邸で過ごし、複雑な家庭環境の中過ごしてきていたのだ。

 

「そうなんだけど……氷室家でのあんたはどんなかんじなの?」

 

「どうって言われてもな……親戚の人?って感じかな。自分の両親を知らないしな。特に不都合を感じたこともないし、みんな優しいしな。と言うか俺は他の家がどんなのか知らないからわからん」

 

「横島……両親知らないって……あんたってほんと肝が据わってるのね」

 

「エリカだって相当なもんだぞ。戦闘に出てもへっちゃらそうだしな」

 

「私は父親に認めてもらうために一生懸命剣術に励んできたの。だから、高校に入っても誰にも負けないつもりでいたのだけど、達也くんや深雪たちを見ていると……その自信もね。

最初はあんた見た時はただのバカだと思っていた。何時もバカの様な騒ぎを起こして、魔法も全然使えないし、氷室家って名乗っても、態度は全然変わらないし氷室家でも下っ端なんだって、だから心の中で見下して、自分自身を安心させていたんだと思う。

でも、違ってた。九校戦で見せた横島の力は本物だった。魔法が全く使えなかったのに、戦闘に使えるまで努力してた。そして、その体。一朝一夕で出来るような体じゃない。コツコツと真面目に修行を積んできて鍛えないとそうはならない。

何があっても動じない。何言われても、バカにされても本気で怒ったところなんて見たことが無い。何でいつも平然としてられるのかって、そんなに強くいられるのかって、最近の横島を見ていると特にね」

エリカは表情には影を落とし、横島に弱音を吐いていた。

同じ二科生であるレオや幹比古も九校戦で活躍し、いままで下に見ていた横島がかなりの実力者だと今はわかり、何もできていない自分自身と千葉家の中での自分の立場とで思い悩んでいる様なのだ。

 

「エリカが何に悩んでいるのかピンとこないが、エリカだって十分強いと思うぞ。実戦だったら学内でも10本の指に入るじゃないか。

あと、俺は強くないし、悩みだってそれなりにある。それを補うために体鍛えている様なもんだ。

うーん。うまく言えんが、強さにはいろいろある。エリカはエリカの強みを鍛えたらいいんじゃないか?」

 

「………」

 

「さっき、学校が楽しいって言っていたよな?」

 

「それはそうなんだけど」

 

「それだけ心に余裕が生まれているってことだ。だから悩みも出てきたんじゃないのか?」

 

「ふふっ、まさか、横島に悩みを聞いてもらう日が来るなんて、出会った時には思いもよらなかったわ。少し楽になった。ありがとう……後は自分で考えてみる」

エリカは気恥ずかしそうに横島に言う。

 

「たははははっ、全然解決になってないと思うけどな!どう見たって俺が一番悩み相談に向いてなさそうだぞ。まあ、愚痴くらい聞いてやってもいいけどな」

横島もつい、語ってしまった事に気恥ずかしさを覚えた様だ。

 

「そう言えば、あんた一度私と手合せしなさいよ!!あんたのその体、剣術か武術をやっている様な体つきよ」

エリカは思い出したように横島に言う。

 

「えーーーーいいよしなくて、エリカ一回でも負けたらめんどくさそうじゃん」

 

「何よ、あんた言うじゃない?これでも千刃流剣術印可なのよ!!」

エリカは何時もの元気が戻ってきたようだ。

 

 

 

 

 

 

別荘に戻り、それぞれシャワーを浴び着替えを済ませ、夕食の時間まで部屋で休憩していた。

 

「達也、災難だったね」

幹比古は達也にそう言った。

 

「ああ、横島の気持ちが少しわかった気がする」

達也は時に女性陣(主に深雪)が感情に任せ理不尽な行為をすることをこの時、十分理解したのだ。

 

「ほんとだぜ」

レオも同意するのだが。

 

「お前は違うだろ」

「レオは自業自得だね」

達也と幹比古は間髪入れずレオに突っ込む。

 

 

「ところで横島は?」

 

「なんか先に行くって外に行ったぞ」

レオはそう答えた。

夕食はビーチでバーべキューなのだが、まだそれまで時間がある。

 

 

 

 

 

 

横島は外に行き、島の岬の先端で夕日を眺めていた。

(ルシオラ、俺、ちゃんと生きていけそうだ)

 




次で海の別荘編終わります。

それで夏休み編も終了です。


横浜騒乱編に入ろうと思いますが、最初の頃は全く関係ない話が入ります。

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