横浜騒乱編開始なのですが、最初の方は全然関係ない話がしばらく続きます。
一応、2学期最初の登校日について書いてます。
横島、二学期が始まる!!
夏休みが終わり、2学期初登校日
横島は教室に入ると何時もの光景と違い、人だかりが出来ていた。人数からする他のクラスからも来ているのだろう。
「ウィーースって、なんだか人がいっぱいだな」
横島はそんな感想を漏らしながら席に付こうとする。
「あっ!」
「横島だ!」
「横島くん、おはよう」
普段あまり話さないクラスメイトや他クラスの生徒が横島が教室に入ったのに気づき、声をかけられる。
「おう!って何これ?なんかあんの?」
横島は返事をしつつ、教室にあふれんばかりの生徒がいる事に疑問の声を誰と無しに上げる。
人だかりの一部が横島の周りに来て、まくしたてる様に、それぞれ一斉に色々話かけてくる。
「九校戦見たぞ!!」
「おまえ、強かったんだな!」
「感動したぞ!!」
「二科生でも、九校戦でも戦えるってことをお前ら4人が証明してくれた」
「一年の一科生男子は全然活躍してなかったからな、鼻っ柱折れただろう!!」
「爽快だぜ!!」
「たははははっ」
状況がいまいちつかめない横島は愛想笑いをしながらキョロキョロと周囲を見渡し、疑問に答えてくれる人を探す。
「エリカ、何これ?どいう事?」
人だかりの隙間からエリカを見つけ、説明を求める。
「どうもこうもないわよ、九校戦であんたたちが活躍したから、二科生の間で朝からお祭り騒ぎなのよ、こっちの人だかりの中に達也くんや幹、レオが居るわよ」
エリカも若干ウンザリしたような顔をして横島に答える。
「なーるほど!!それ程でもある!!ふはははははっ!!」
横島は直ぐに調子に乗る癖がある。
直ぐにホームルームが始まり、集まった生徒達はそれぞれの教室、それぞれの席に付く。
各授業の合間の休み時間も、彼ら4人には人だかりが出来、昼休みさえも人が集まって来て、一日中バタバタとし、お互い話もできない状況であった。
放課後、達也と横島は風紀委員会へ、深雪は生徒会、他の面々は部活等に行き、それぞれの活動が終わった後、学校近くの行きつけの喫茶店で集まる事になっていた。
喫茶店には横島と達也が最後に到着し何時ものメンバーが全員そろった。
「たははははっ、ごめん、まった?」
「すまん。遅くなった」
「今日はなんだか大変だったね」
「クラスは九校戦の話題でもちきりだった」
「そうね」
ほのかと雫、深雪もどうやら、クラスで九校戦の話で、いろいろと聞かれたりと大変だったようだ。
「深雪たちもなんだ。うちのクラスも酷かったわよ、ひっきりなしに人が来て騒ぐもんだからいい迷惑だったわよ」
エリカはウンザリした顔をしていた。
「仕方ないよエリカちゃん。うちのクラスは4人も九校戦優勝者がいるし、しかも、二科生で初めてらしいから余計に」
美月は苦笑いをしながらそう答える。
「まあね。でもほぼお祭り騒ぎだったわね」
エリカはジュースの氷をかき混ぜながら言う。
「うーん、私たちはそこまでじゃないかしら」
深雪はエリカ達にそう言った。
まあ、深雪の場合は、一科生という事もあるが、美人ぞろいの深雪たちのグループには気軽に話しかけにくいという事もあるだろう。
「あんたさっきから浮かない顔して、さすがの横島もウンザリってわけ?」
エリカはさっきから黙っている横島に話を振る。
「……一つ疑問がある」
「何?」
雫が相づちを打つ
「なーーーんで、達也やレオや幹比古たちは女の子ばっかりに囲まれていたんだ?なーーーんんで俺だけ男ばっかりなんだ?」
横島は純粋に疑問に思った事を口にした。
そう、達也、レオ、幹比古達は、スマートな勝ち方をし、新人戦モノリス・コード優勝をしている。
しかも彼らのビジュアルもある。達也は地味目だがイケメンだ。レオは快活なイケメン。幹比古は草食系イケメンなのだ!!そんな彼らが、二科生でしかも、第一高校として絶体絶命のピンチに急遽出場することになり、サクセスストーリーさながらに九校戦に勝ち進み強豪を破って優勝までしたのだ!!同学年の二科生女子だけでなく、一科生女子もこの手の話に騒がない訳がない。昼休みには一年生だけでなく、上級生からも声を掛けられる始末。
一方横島と言うと、話しかけてくるのはほぼ男。横島は不細工とまではいかないが、彼らに比べればビジュアル的に劣る。しかし、そこではない、横島の戦い方に問題があるのだ。笑いを誘ったり、無様だったり、卑怯だったりと(本人は至って真面目にしていたのだが)泥臭く、とても女の子受けするものではない。逆に言うと玄人好みをする戦い方なのだ。
同学年の二科生男子からは圧倒的な支持を受けるが、女子からはほぼ声を掛けてもらえない状況だ。
昼休みや、放課後に至っては、運動系の部活のゴツイ先輩方から引っ切り無しに勧誘され、さらに悪いことに、一部の一科生からは魔法師らしくないと絡まれる始末。
横島はさらに続けていう。
「風紀委員で俺と達也が一緒に巡回してるってのに、達也は上級生のお姉さま方に囲まれて、キャピキャピした甘い空間を……俺にはゴツイ、マッチョメンなお兄さま方に、囲まれ、もわっとした空間になる………なぜだ!!同じ九校戦優勝者なのにこの違い!!顔か?顔なのか?イケメン優遇なのか!!何が実力主義だーーー!!不公平だ!!」
最後には何時もの雄たけびに変わっていた!!
魔法の実力主義であって、色恋沙汰とは無関係であるが、横島にとっては一緒の様だ。
「へぇー、お兄様はお仕事をなさらずに、女性の方々と過ごされていたのですか……」
深雪は抑揚のない声で達也にそう言う。そして、ひんやりとした冷気が深雪から放たれた。
「横島!……違うぞ深雪、九校戦について聞かれただけだ」
達也は横島にひと睨みしてから、深雪に言い訳じみた説明をする。
「まあ、横島だからしかたないんじゃない?と言うか幹もレオもずーーっと鼻の下伸ばしてたしね。全くいいご身分よね」
エリカは横島にそう言いながらも、幹比古とレオに皮肉を言う。
「誰が鼻の下伸ばしたって?」
「そ…そうだよ!!」
レオと幹比古は反論するが、幹比古は思い当たる節があるようだ。
「横島さんの事は私が分かっているから……見る目が無い人が多い」
雫はそう言ってフォローをする。
「ありがと。雫ちゃん」
横島はわざとらしい涙目でそう言った。
「今日はマジ、バタバタだったからな。これ渡したかったんだ。海の時言っていた土産。ほれ」
そう言って、女性陣には氷室神社の色違いのお守りを全員に配った。中には水晶の欠片が入っており、実は横島は多少の治癒回復効果を付与させていたのだが本人たちは知らない。
女性陣はそれぞれ礼を言う。
「あーー、美月ちゃんにはこれね。速水先生サイン入り氷室絹さんの本」
美月は目をキラキラさせて、受け取った本を頬でスリスリしていた。
「ありがとうございますぅ!一生の宝ものにします」
口元が緩みよだれが垂れかけている。
「お前らはこれだ」
どうやら、よくあるお土産のお菓子の様だが
そこには『人骨饅頭』とでかでかと書かれていた。
「物騒な名前のお土産だな、おい」
「えーーー氷室家の護符とか札とかないの?」
「……」
レオ、幹比古はお気に召さない様だった。
「言うと思った。まあ、騙されたと思って食ってみろ旨いから」
男性陣はそれを受け取り礼を言う。
こうして、横島たちの魔法科高校での2学期が始まったのである。
横浜騒乱編始まったのですが、次も本編関係無い話です。