横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

69 / 192
感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

ようやく横浜騒乱編に突入です。


横島、嵐の予感!!

何時もの面々がそろって何時もの喫茶店で放課後を過ごしていた。

 

「えーーーーっ!!達也、論文コンペティションの代表に選ばれたの!?」

幹比古の驚きの声が喫茶店にこだまする。

 

「幹、驚きすぎ……でも凄いわね達也くん」

エリカは幹比古にツッコミを入れつつ、達也にしみじみと関心する。

 

 

「本当に凄いですね」

「達也さんさすがです」

「うん、凄すぎ」

「お前、何でもありだな」

美月、ほのか、雫、レオも驚きと関心の表情を浮かべていた。

 

深雪はそんな達也を嬉しそうに見ていた。

 

 

ただその中で一人だけ、リアクションが違う奴がいた。

「……何それ?……ロンブー、コンパ!?……ずるいぞ達也!!くっ…お前一人でおねーちゃん達を独占するつもりだな!!そうはさせん。俺も参加させろ!!」

思いっきり勘違いしている横島がいた。

 

「お前は何を言っている?」

達也は冷静に横島に突っ込む。

 

「コンパだろ!!おねーちゃんと男共がイチャイチャして、くんずれほぐれつするためのパーティーだ!!旦那や恋人に黙って参加してもOK、不倫にならない!!そんな、うらやま……まったく、けしからんレッツ、パーティーだ!!」

横島の脳内ではコンパと不倫パーティーの違いはないらしい。

 

「はぁ、まーた横島の病気がはじまったわね」

エリカはこの頃横島の妄言に慣れてきて、スルーする技術が身に付いていた。

 

「ほのか、コンパって何?」

雫は純粋な疑問をもってほのかに質問する。

 

「え?そのそれは……」

ほのかは顔を赤くして答えに窮していた。

 

「お兄様、横島さんがおっしゃっているコンパとは何のことでしょうか」

その横で深雪も達也に質問していた。

 

「お前が知らなくても問題ないことだ」

達也はそう答える。

 

ほのかもそれを真似て雫に答えた。

「雫はまだ知らなくても大丈夫なことよ」

 

深雪も雫も、はてなマークが浮かぶような顔をして頷いていた。

どうやら、この二人は純粋培養されて育ったため、少し世事に疎い様だ。

 

達也はウンザリした表情で横島の為に説明しだした。

「論文コンペ…正式名称は全国高校生魔法学論文コンペティションだ。年1回、魔法学や魔法工学の分野での研究成果を発表する場だ」

 

それに幹比古が補足する。

「そうなんだ。沢山の大学や企業、研究機関などが見に来ていて、優勝すると機関誌やネイチャーなどにも大々的に載って、優勝でなくても価値ある研究成果だとわかると、いろんなとこから引っ張りだこになるんだ!!」

 

達也が再び話し出す。

「第一高校からは、3年の市原先輩の論文を軸に、2年の五十里先輩と俺とがその補助で参加する事になった。問題は毎年、その研究成果を狙う輩が出るため、今の時期から学内の監視やらが厳しくなる……おい、お前も今日風紀委員で千代田先輩が言っていたのを聞いていただろう?」

 

「へ?たはははははっ、そう言えばそんな事も言っていたような……」

横島はどうやら真面目に聞いていなかったらしい……花音が話している間、花音は美人なのにまったく色気が無いのはなぜなのかを、あーでもない、こーでもないと真剣に考えていたのだ……本人にとってはほっておいてほしい事なのだが……

 

花音から、風紀委員と部活連から、論文コンペ参加者にしばらくガードが付く事が通達されていた。

市原鈴音には、服部刑部と桐原武明。五十里啓には、もちろん恋人で風紀委員長の千代田花音一人。達也には……必要ないと判断されたのだ。

横島を達也に付けようとしたのだが、達也が断った。まあ、達也には横島を付けると、かえって邪魔されるだけにしかならないが。

 

「その論文コンペに達也が参加して、忙しくなる事は分かった。その、ガードって、たかだか高校生の論文がそんなに価値があるものなのか?」

 

「ああ、場合によっては新技術の基礎になる事もあるからな……」

 

「まじかーー、お前ら頭いいんだな!!……そんな重要な事だったら、プロの魔法師や軍が徹底的にガードすりゃぁいいのにな」

横島は何気なくそう言ったのだが……

 

「うーん、確かにそうだな」

「横島にしては正論よね」

レオとエリカは真剣な面持ちで答えた。

他の面々も何か考え込むような表情をしていた。

 

「アレ?なんか俺余計な事言っちゃった?」

 

「どうやら、そうらしいな」

達也はそんな横島を見やりながら、ため息を付いて言った。

 

そして、エリカがこんなことを言い出した。

「達也くん、私たちが自主的にガードしてもいい?」

 

「なぜそんな事を?」

 

「いいじゃない」

エリカの目は真剣そのものだ。

 

「まあ、邪魔にならないようにな」

達也はその目を見て、諦めた様に言う。

 

「わかったぜ」

レオがそれに返事をする。ガードする気満々の様だ。

 

 

結局、この論分コンペ開催までの間。レオとエリカは達也の周りをうろつき、自主的にガードをしだしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その晩

 

「いやーー悪いね。わざわざ来てもらって」

 

「いいですよ。八雲さんには、九校戦の時は助けてもらいましたし」

 

「いやいや、横島くんからもらった情報は実に良いものだったよ。ボクのクライアントも大喜びだった」

 

横島は九重八雲に呼ばれ、彼が住職を務める九重寺に訪れていた。

 

寺に併設している。茶室に二人向かい合い座っている。

「ちょっと横島くんに頼みたい事があってね」

八雲がそう切り出した。

 

「何でしょうか」

 

「まあ、先にこれを見てくれないかな」

八雲はそう言って横に置いてあった10㎝四方の木の箱を横島の前に出し中を開け、布にくるまれている中の物を見せた。

 

「……精霊石。しかも八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)……」

横島は中の物を見てそう言った。その勾玉状の石の中に何かが輝いてみえ、その物も石の様にも水晶の様にも見えた。

 

「やはり、知っていたのかい。これを見て精霊石と言ったのは、君が二人目だよ」

八雲はニヤリとしてそう言った。

 

「どうして俺にこれを?」

横島はこれを知っている。霊具として最高峰の代物だ。この勾玉は横島の見立てでは既に術式が組み込まれており、雨乞いの術儀に使用するためのものだと分かった。

 

八雲は語りだした。

「これの価値は凄まじくてね、レリック(オーパーツ)とも言われている。特にこの八尺瓊勾玉は、魔法式を保存する機能があるとされているんだ。これ一つで世界では戦争が起こった事もある代物だよ……これはこの寺の物で門外不出なんだがね。

実は、軍が最近これと同じようなものを手に入れてね。それをFLTと言う会社に解析複製依頼をしたようなんだけど、どうも警戒も警備もザルでね。全然なってないんだよ。軍の危機管理の薄さときたらどうなんだろね」

 

 

「で、それを俺に警備しろってことですか?それとも泥棒の真似事を?」

 

 

「いやいやいや、ボクは俗世にはあまり興味はないのだけど、そのFLTって会社は実は達也くんが所属しているんだよ。CAD開発者として……あ、正確には彼の実の父親の会社で、その上、上司に継母までいるんだよ……だから、多分だけど、達也くんは巻き込まれちゃうんじゃないかなーー」

 

「まあ、あいつが巻き込まれても、本気出せばたいていは大丈夫じゃないですかね」

 

「達也くんが大丈夫でも、彼の周りはそうじゃないよ。だから、横島くんに警戒してもらおうと思ってね」

 

「……なるほど、確かに。だったらその八尺瓊勾玉を破壊しますが」

横島は八雲の言葉に少し考え込んで出した答えがこれだった。

 

「えーーーーーっ!!ちょっと待って、なんでそうなるのかな?」

八雲はその言葉に慌てる。

 

「達也が巻き込まれたら、学校の連中、いや、学校の友達が首突っ込むんでね。戦争になる様な代物が近くにあるだけで迷惑なんですけど、その勾玉のせいで、友人や知り合いが傷つくのは、いやなんで」

 

「た…たしかにそうなんだけど、アレの価値分かってる?国家が奪い合う代物だよ?」

八雲は溜息を付きながら横島を見据える。

 

「国を一つ買える茶器だろうが、宝石だろうが、命には代えられない。ましてやアイツらが傷つくところなんて見たくもない」

横島の表情は真剣そのものだった。

 

「はーーっ、わかったよ。最悪それでもいいや、出来れば奪っても………それは無しで、でも、問題が無いのならば、それはやめてくれないかな」

 

「わかりました。八雲さんにまた借りが出来ましたね。情報ありがとうございます」

 

「いやいや、ボクの方も、達也くんや深雪くんが傷つくのは見たくないからね」

八雲はホッと肩を撫でおろし、そう締めくくった。

 

 

 

 

 

 

一方丁度、達也はその問題の八尺瓊勾玉を軍経由で継母司波小百合から解析依頼を受けたのだ。

しかも、すでに、継母は八尺瓊勾玉を何者かに強奪されかけ、達也が救助したのだった。

強奪した人間は全員日本人ではなく、何れも手練れ、しかも達也に一旦は致命傷を付ける程の相手だったのだ。

 

波乱の予感しかしない出来事である。




うーむ、この頃文字数が増える一方、上手く短くまとまらない今日この頃です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。