誤字脱字報告ありがとうございます。
前回の続きですが、今回もつなぎ要素が高いお話です。
「あれ?彩芽ちゃんに要ちゃん?」
横島は私服姿の氷室姉妹に声を掛けた。
「お兄ちゃん、おひさーー!!」
氷室彩芽は横島に手を上げて挨拶をしてから、駆けつけて横島の横に並ぶ。
「あら、横島くんなんでここに?」
氷室要は驚いた顔をしたが、ツンとした表情に戻し横島に話しかける。
「いやー、学校の友達とちょっと調べものにね」
横島は雫と幹比古と美月を見やってそう言う。
「ふーーん」
要はそう言って、幹比古、美月を一瞥してから横島のすぐ横にいる雫を見やる。
「誰?」
雫は横島の裾を引っ張りながらボソっと聞く。
「要ちゃん達はどうしてここに?」
横島がそう問いかけようとすると
「彩芽、何を騒いでいるのかね?」
商談室から、インテリメガネイケメンが登場する。姉妹2人の実の父で、氷室15代当主の夫にして小説家の氷室敦信だ。
その後ろには、氷室家の家人、向井麻弥が付き添っていた。
「敦信さんと麻弥さん、こんにちは。こんなところで会うなんて」
横島が先に挨拶をする。
「おや、偶然だね横島くん」
「どうしてこちらに?」
「私は出版社に行く用事が出来てね。それに、要と彩芽が付いてきてね。お義母さんからも頼まれ事あって、ここのお店に届け物をしにきたのだよ」
敦信はどうやら本業の小説家としての仕事のために上京しに来たらしいのだが、それに娘姉妹が付いてきて、護衛として麻弥が同行しているようだ。
「ご学友かい?」
敦信は幹比古たちを見て横島に質問した。
「そうです」
「!!……あ……あの……も、もしや、速水信彦先生で…しょうか?」
美月は敦信の顔をまじまじと見て、急に顔を真っ赤にさせてしどろもどろに質問をした。
「いかにも、そうです。お若いのに私の事を知ってらっしゃるとは……」
「!?はぁ、はぁ、%#@””ふみゅあぁーーー」
美月は敦信があの小説家速水信彦と知り、手が震え、息づかいが荒くなり意味不明な言葉を発し、興奮のあまり目を回して座り込んでしまった。
「柴田さん!!」
「これはいかん、ご学友の方々を奥の商談室にお連れしよう」
敦信がそう言って、商談室を案内する。
横島と幹比古が美月に肩を貸そうとしたが、麻弥さんが軽く持ち上げ、商談室に連れて行った。
奥の商談室はちょっとした会議室の様になっていた。計8人いてもまだ十分余裕がある。
横島と幹比古と雫が、対面には氷室家、敦信たちが座っている。
美月を横のソファーに寝かそうとしたが、大丈夫と言って幹比古の横に最後に座った。
「横島くんのクラスメイトの吉田幹比古です」
幹比古から自己紹介をしていった。
「し、柴田美月です。横島さんのクラスメイトで、い、何時も仲良くさせてもらってます!!」
美月は興奮冷めやまぬようで、しどろもどろになっていた。
「横島さんと同級生の北山雫です」
雫が何時もの無表情でそれに続く。
「私は、横島くんの家族を名乗らせてもらっている氷室敦信です。そちらのお嬢さんのおっしゃる通り、速水信彦と名乗り少々物書きの仕事をしております」
敦信は自己紹介を行った。
敦信の自己紹介の間。美月は目をキラキラさせて、顔を赤くし両手を頬に当て敦信を熱い視線で見つめ、はぁ、ふぅやら溜息を付きながら、クネクネしていた。
「氷室敦信って……現氷室家当主の夫!!」
幹比古は立ち上がって驚きをあらわにして言う。
「幹比古落ち着けって」
横島はそう言って幹比古の腕を引っ張る
「あっ、す…すみません。」
「ははっ、君は精霊魔法の吉田家の現当主のご子息だね。君の家も結構有名だとおもうのだがね。……横に座っているのは娘たちです」
敦信は軽く笑って幹比古の家に付いて言い当てた後、娘たちを紹介する。
「長女の氷室要です」
要はすました顔で名乗る。
「次女の氷室彩芽でーーす!小学6年生でーす!!」
彩芽は元気いっぱいに名乗った。
「#%&$!!!!?」
美月はまたわけがわからない言葉を発した後、顔を真っ赤にして鼻を抑えていた。どうやら興奮のあまり鼻血が出たようなのだ。
「えええ!それって直系の次期当主じゃないの!?」
幹比古は暴走しっぱなしである。
幹比古と美月の態度に要は明らかに不機嫌な顔になり、それを隠そうともしていなかった。
どうやら、こういう事はちょくちょくあるようだ。
「落ち着けって、幹比古、なんかすみません。こいつ普段こんなんじゃないんですが、ちょっとまいあがっちゃって、……お前も謝れよ。」
幹比古を強制的に座らせ敦信に謝る。
「重ね重ね、すみません」
最後に麻弥さんが自己紹介をする。
「向井麻弥です。氷室家家人を務めております」
自己紹介を終えたのだが、
「すまないね。横島くん私はそろそろ、出版社の方へ行かないといけないんだよ。何か調べものがあると言っていたね。ここのアンテナショップの工藤詩織くんは氷室家の関係者だから、いろいろ聞いてみるといい」
「すみません。引き留めちゃって」
「お父さん、お兄ちゃんと一緒がいい!!」
彩芽は急に横島と一緒に居たいと言い出した。
「彩芽、父さんが戻ってくるまでここにいるようにと……」
「いいですよ。どうせこの辺をうろうろするつもりでしたから」
「いいのかい?ご学友が居るのに……」
「僕はいいよ!」
「うん、横島さんがいいなら」
幹比古と雫が了承してくれた。
美月は鼻を抑え首を上下に思いっきり振り頷いていた。
どうやら今も言葉が出ないのと、鼻血が絶賛流出中らしい。
「助かる」
横島は一言皆に言う。
「やったーー!!」
彩芽はそう言って喜びをあらわにし、横島が座っている椅子の後ろまでくる。
「彩芽、横島くんに迷惑かけないように、要も一緒に行って彩芽を見ててあげなさい。では失礼する」
そう言って、敦信と麻弥は商談室を出て、出版社に向かっていった。
横島は早速、幹比古と共にアンテナショップの工藤詩織に話を聞いた。
すぐに答えが出た。本来他店のうわさ程度の話は客には言わないのだが、横島も氷室家の為話してくれた。
2か月前にで出来たばかりの古式魔法の道具を扱いつつCADも扱っている店が怪しいと言うのだ。
そのショップは、Yクラフトワークス言う名前で、ここから徒歩で行ける程度の場所にあるとの事だ。
その間、彩芽が雫に横島の学校での生活を聞いていたのだが、どうやら当たり障りのない事を言ってくれていた様だ。
まあ、雫の横島評価は高いため、元々そんなに問題ないはずである。これがエリカあたりになるとぼろくそになる。
要は相変わらず不機嫌そうに座っていた。
美月は胸にお祈りのポーズの様に手を当て、要と彩芽を言葉も発しないでキラキラとした目で眺めていた。やはり、口元はかなり緩んでだらしなくなっている。
横島は要の所にまでくると、彩芽もついてきた。
「要ちゃん、彩芽ちゃん、この近くの店に行かなくっちゃならないんだ。直ぐ終わると思うからここで待っててくれる?そのあと、どっか行こうか」
「お兄ちゃんについて行くー!」
「私も行くわ。他のお店にも興味があるし……」
彩芽も要もついて行くようだ。
「じゃあ行こっか」
横島はそう言って、商談室から出る。
横島が歩き出すと、彩芽はすかさず横島の右隣に行き、自然と手をつないだのだ。
「お兄ちゃんその制服に合ってるよ、なんかコスプレみたいだけどかっこいいね!!」
「たはははははっ、コスプレか、確かにね!!」
その様子を無表情だがジトッとした目で見ていた雫は横島の左の位置を取ろうとするが下行エスカレーターに阻まれる。
その横で要も同じような行動をしていた。
そして、両者は互いを見るが、要の方が身長が頭半分高く見下げる形になっていた。
「ん」
「……」
そして、無言のままお互い視線を外し横島の後ろにスタスタとついて行った。
その後ろに幹比古と美月が続いていた。
「ああ見ていると、仲のいい兄妹みたいだね。あの氷室敦信さんが横島の事、家族だって言っていたし、養子とかなのかな?」
幹比古は横島たちを後ろから見て、敦信の自己紹介を思い出し、美月に何気なしに聞いたのだが……
「!?家族!!という事は!!横島さんと結婚したら氷室家の家族に……15代当主蓮様と嫁姑関係!?ああぁ~、なんて魅力的なお話なんでしょう!!」
美月は暴走したままだった。
頬に両手を当てながら、顔を赤く染め目をキラキラと中空に漂わせ、体をクネクネさせながらとんでもない事を口走っていた。しかも結構大きな声でだ。
「えーーーーーーーーー!?」
幹比古は店内で思わず大声を出してしまった。
思わぬところからのライバル出現だった!!
雫と要は美月の言葉で同時に後ろを振り向き、目を細めキュピンと光らせていた。
美月は知らない。二人のメヒョウを本気にさせてしまった事を……
うむ、雫ちゃんと要ちゃんが並ぶとどっちが中学生か高校生なのかわからなくなりますね。身長的にもスタイル的にも。