横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

今回は修羅場じゃない?
彩芽ちゃん回?


横島、喫茶店で休憩する!!

 

六道家が経営する販売店を出て、氷室姉妹と横島一行は問題の粗悪品札を販売しているだろうYクラフトコーポレーションなる店に向かう。

 

先頭は横島とその右隣で手をつないで歩く彩芽。

その後ろから、横島の左側ポジションを狙う雫と要。

そして、幹比古と美月と続く。

 

 

 

「お兄ちゃん凄いね、体育大会みたいな所で優勝したって、ちっちゃいお姉さんが言ってた!」

彩芽は雫から、横島が九校戦の競技で優勝したことを聞いていたらしい。

 

「たははははっ、たまたま、たまたまだよ!」

横島は照れたように言う。

 

傍から見ると横島と彩芽は実に仲のいい兄妹に見える。

しかし、その後ろでは熾烈なポジション争いが繰り広げられていた。

 

 

横島の右隣は既に彩芽に制されており右手も奪われている。

残りは横島の左側と残った左手だ。

この争いに勝った方がこのポジションが手に入り、横島との会話と左腕の感触を味わえる栄誉が、

負けた方は、その光景を後ろから嫉妬と悔しさをかみしめながら見る事しかできないのだ。

 

雫と要は黙々と歩き横島の左を狙うが、通行人やら看板などが邪魔で攻めあぐんでいる。

しかも、雫と要は歩きながら相手より一歩前に出ようとし交互に前後する。すれ違う際にお互いの肩をぶつけ、顔を見合わせれば視線で火花散らしけん制し合う。雫は無表情、要はツンとした表情で一言もしゃべらず、まさに沈黙のデッドヒートを繰り広げていた。この二人の周りには黒々としたオーラが見えるようだ。

 

 

「な……なんか怖いね」

その様子を後ろから見ていた幹比古は黒々としたオーラを目の当たりにし冷や汗が出る思いをしながら、美月に話しかけるが……

 

「はぁ~、蓮様と嫁姑関係……蓮様に怒られたい!!」

美月は幹比古の言葉などまるで聞いていなかった。クネクネしながら妄言を口走り、まだ妄想暴走特急から抜け出していない様なのだ。

 

「はぁ~」

そんな美月の様子を見て深くため息をつき、肩を落とす幹比古。

 

 

そんな後ろの状況を知らない横島と彩芽は楽しそうに歩いている。

「あっ!プリンがおいしいって!」

彩芽は喫茶店を指さし横島に食べたいアピールする。

 

「じゃあ、ここで休憩しよっか」

 

「やたっ!」

 

「ちょっとここで休憩……し…しよう……しませんか?」

後ろを振り返った横島は、その異様な空気にたじろいでいた。

 

「いいよ、横島さん」

雫は無表情ながら爛々とした目で横島を見つめる。

 

「横島くんが決めていいわよ」

要は口元は少し笑みをこぼしながら、鋭いナイフのような視線を横島に送る。

 

「ああっ、どうしましょう!?お義母様(おかあさま)とお呼びすれば、それとも御義母上様(おははうえさま)とお呼びすればいいのか、迷っちゃいます~」

妄想暴走特急が終着駅まで行きそうな美月。既に横島と結婚が前提となって、姑である15代目蓮の呼び方をどうしようか悩んでいる様だ。

 

「はぁ~、休憩しよう。何もしてないけど疲れたよ」

幹比古は溜息を付きそんな事を言った。なぜか疲労の色が濃い様相だ。

 

 

「そ……そうか」

横島は理由は分からないが寒気がする。

 

 

 

一行はプリンが美味しいらしい喫茶店に入り

「買ってくるから、席で待っててくれ、何がいい?」

横島は皆にオーダーを聞く。

 

「私も行くー」

「横島くんと同じもので」

「…私も」

「美月って呼んでください」

「…コーヒーブラック、濃いので」

彩芽、要、雫、美月、幹比古はそう言ってそれぞれ返事をした。

 

彩芽は横島について行き、レジの列に一緒に並ぶ。

要と雫はお互い視線を合わせ、火花を散らしていた。

美月はまだ妄想暴走特急に乗車したままの様だ。

幹比古は疲れ果てた顔をするも席を確保し、女性陣3人を誘導する。

 

 

横島と彩芽がレジに並び飲み物やらを買いに行っている間。

 

要は相変わらず不機嫌そうにし、幹比古、美月、雫を一通り見やってから、キツイ言葉を発した。

「あなたたち、横島くんが氷室家の関係者だからって近づいたのだったら、やめてほしいのだけど、……迷惑だわ」

 

雫はその言葉にいち早く反論し、要を目を細め見据える。

「私は、横島さんが氷室だろうが、どこの家だろうが関係ない。横島さんは横島さん。そうじゃないと一緒に居ない」

口調はいつも通り抑揚が少ない平坦な言い方だが、語気が徐々に強くなっていった。

 

「そう」

要は雫を見てそう一言返す。

要は雫が氷室家の事で驚いたり、騒いだりしていなかった事を見ており、その点については認めている様だ。

 

「ごめん。敦信さんや要さんや彩芽ちゃんに会って、氷室家の人だって舞い上がっていたのは事実。僕も吉田家という事で、僕自身を見てくれなくて、いやな思いをしてきたのに……それが分かっていながら、君たちに不快な思いをさせちゃったね。本当にごめん。……だけど、横島とは氷室家の家人だと知る前からの付き合いなんだ。すでに仲良くなった後だったんだ。でもね横島ってアレじゃない。偉ぶらないし、いつも自然体だし、そんな事は言われないと忘れちゃうぐらいなんだ。横島も吉田家とか家格の事なんて、全く気にもしないし、だから、横島との付き合いは家柄の事を忘れて付き合える大事な友達なんだ」

幹比古は要に謝りつつも、横島に関してはそうじゃないと否定した。

 

「ごめんなさい。要さん、皆さんの迷惑も考えなくて騒いじゃって、私は要さんのお父さんが書いた氷室絹さんの伝記小説に憧れていて、ついその、抑えられなくなっちゃって……でも……横島さんとのお付き合いは、横島さんが氷室家の人って教えてくれる前にもう仲良くなっていたし、吉田君が言うように、横島さんって普段アレな感じだけど、内向的な私にも気を使ってくれる。この学校で気軽に話しかけれる一番最初の男の子の友達だったの」

続いて美月も畏まって要に頭を下げたのだが、幹比古同様にその事に関しては否定する。

 

要は二人の話を聞いて、一度俯き、顔を上げ3人に謝った。

「……わたしの方こそごめんなさい。横島くんとあなた達の事を良く知りもしないのに、余計な口を出して……その横島くんといつも……」

不機嫌そうな顔は鳴りを顰める。どうやら、氷室家の事もあるのだが、横島と一緒に居られる同級生に嫉妬心が入っていた様だ。その言葉を言い切る前に横島たちが戻って来た。

 

 

 

「じゃーーん!!プリンだよ!!みんなの分もあるんだ!!」

彩芽はそう言って、プリンの乗ったトレイを長方形テーブルの端に置く。

 

横島がテーブルに戻ってくるとさっきの変な空気が今は薄れていたため、ホッとし、飲み物が乗ったトレーを6人掛けの長方形テーブルの真中に置く。

 

「まった?」

横島はそう言って幹比古の横に座ろうとすると、

「横島くんはここ」「横島さんはこっち」

要と雫はすかさず横島の袖やら服を持ち横島が座る場所を指定する

その場所は要と雫の間の席だった。

 

席順は対面6人掛けテーブルに右美月と真中幹比古と並んで座り、左が空き状態。

美月の対面は雫が座り、真中を空けて、左に要が座っていたのだ。

 

 

雫空要

テーブル

美幹空

 

 

そして、横島はその二人からプレッシャーを感じ素直に従い、雫と要の間に座る。

「は、はぃ」

 

「えーー、わたしもお兄ちゃんの横がいいな。お姉ちゃん代わって」

彩芽は要に席を代わってくれるように言う。

 

「彩芽は私の前に座りなさい」

要は彩芽に冷たい視線を向けそう言った。

 

「お姉ちゃん怖っ!……ふふーーん、でもいいんだもん」

彩芽はそう言って、横島と要の間に割って入り、さらにそこから横島の膝の上に座ったのだ!!

 

雫は無言でその様子を羨ましそうに見てから、横島を冷ややかな目で見ていた。

 

「彩芽、横島くんの邪魔になるからどきなさい!」

要はさらに冷え切った視線を彩芽に送るが、当の彩芽はどこ吹く風か気にしていない。

 

「いいじゃんねーー」

彩芽は横島に答えを求めない同意を得る言動を軽い言葉でサラッと言ってのけた。

小学6年生ながら末恐ろしい。

 

「たはははははっは~~ぁ」

横島はその冷たい空気を肌に感じ、苦笑いとため息を同時に付いていた。

 

 

 

更に、彩芽の快進撃が続く。

「はい、あーん」

 

パク

 

横島はつられて、彩芽がスプーンですくったプリンを食べてしまった。

「おお、ここのプリン美味しいな!」

 

「うん、おいしいね。お兄ちゃん」

彩芽は笑顔で答える。彩芽は自然な形であの定番の「アーン」をやったのだ。

 

 

雫はその様子を見てスプーンを持ったまま固まる。

要は冷たい笑みを浮かべていた。

 

そして、あろうことか彩芽はその二人を見やり、どうだと言わんばかりの顔をしていた。

 

 

「ん……」

雫は無表情だった顔が一瞬ムッとする。

 

「フフフフフッ」

要は底冷えするような笑顔で小さく声を発し微笑む。

 

 

「横島さん、こっちのプリンもきっとおいしい。……はい」

雫はそう言って横島にプリンが乗ったスプーンを目の前に掲げる。

 

「横島くん、私食欲がないから代わりにたべてくれないかしら……どうぞ」

要もそう言って横島にプリンが乗ったスプーンを目の前に掲げる。

 

雫と要は同じことをし、互いに視線がかち合う。

 

「たはったはははっ、大丈夫自分のもあるから」

横島はそうやって断ったのだが……

 

「……おいしいのに」

雫は悲しそうな目で横島を見つめる。

 

「彩芽のが食べれて、どうして私のは食べれないのかしら?」

要はツンとしながらそう言った。

 

 

「……頂きます」

横島はその空気に耐え切れず、二人が掲げたスプーンからプリンを直接食べる。

 

 

雫はその様子に満足そうに頷く。

要はその様子を見てからプイっと視線を逸らし、少し顔を赤らめる。

 

 

彩芽はそんな二人の様子を見て……

「うーん、二人共ダメダメだね」

ボソッとそう言った。

 

 

対面の幹比古は羨ましそうに、美月は顔を赤らめてその様子を見ていたのだった。




修羅場ではなく、彩芽の一人勝ちッポイ感じになっちゃいました。
雫も要も恋愛事にはかなり不器用なようです。

次こそはYクラフトコーポレーション行きと主題に戻っていきたいです。


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