横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

修羅場は終了、次のステージにステップアップします。
その為の、つなぎ回です。


横島、怪しいおっさんと会う!!

プリンのおいしい喫茶店を後にし、Yクラフトコーポレーションにたどり着いた一行。

その間も、横島をめぐり沈黙のポジション争いを雫と要は繰り広げていたが、彩芽はそんな事お構いなく、横島の右側を占拠している。

そもそもそのポジション争いは、ナンバー2を決めるもので、ナンバー1を決めるものではない。

既に彩芽がナンバー1の座は最初っから得ていたように鎮座しているのだから……

結局最後まで2番手争いは決着はつかず、彩芽の一人勝ちになるのだった。

 

 

 

横島一行はYクラフトコーポレーションの前に立つ、6F建てのビルの1・2階が店舗の様だ。

 

「結構大きな店だな……なーーんかいやな感じがするな」

横島はその店の前で感想を漏らす。

 

「そうね」

「そうですね」

それに要と美月が同意する。

美月は霊子放射光過敏症という現代では病気みたいな扱いだが、場に漂う霊気を見ることが出来るのだ。昔で言う霊能力者が霊気を見るのと同じである。

どうやら、横島同様霊気の動きでそう感じたようだ。

要は高い素養を持つ霊能力者であるため、感じることが出来る。

 

 

横島は取り合えず店舗内で問題の粗悪品札の確認のみをするつもりでいた。

後は、学内でこの店から商品を購入しない様。メールで学内の端末機に配信。または放送や掲示板で告知するように算段をしていた。

 

店内に入ると、内装は宝石商の様な様相で、カウンターショーケースが沢山並んでおり、それぞれに店員が付いていた。

 

「いらっしゃいませ、オープニングセールといたしまして、年内まで特別価格でご提供している商品が多数ございます。また、学生限定の特別企画としまして、多数の商品を大特価でご提供しております」

女性定員はにこやかに一行に挨拶をし、お買い得品などの情報を提供した。

 

一行は取り合えず、学生限定特価商品とやらが販売されているコーナーに行くと、大きなワゴンの中に無造作に20枚ずつ位の束で各種札や呪符などが置かれていた。

 

横島はその束を一目見て、これが問題の札だと分かった。しかし問題はそれだけではなさそうなのだ。

横島が手に取って確認していると、この問題の札、の中には明らかに故意に無印の札に見せかけた他の目的で使用する札が混ざっていたのだ。

 

いつの間にか横にいた要もその札を見て……

「横島くん、この中の数枚に何か別の術式が刻印されているように感じるわ」

要も横島と同じ事を感じていたようだ。

 

「そんな感じかな、ちょっと様子を見とく」

横島は要にそっと答える。

 

にこやかな笑顔で店員が近づいて来て

「その制服は第一高校の学生さんですか、この札は品質は少々悪いですが大特価品となっておりまして、通常の札の10分の1から20分の1の価格で提供させていただいております。練習にはもって来いと人気を博しておりまして、学生さんはこぞって購入されます」

聞きもしないが、丁寧に説明をしてくれた。

 

確かに安い。20枚で無印札が1万円だ。ごく通常品質の物で1枚5千円~1万円ほどする代物だ。

ちなみに氷室製の札は1枚5万円からの値段が付く。得意とする護符などは効力もあって1枚100万円以上するものもあるのだ。

 

横島は取り合えず、学生特価品の20枚束1万円の札を買ってみることにした。

一応確認のため、他も見ることにしたのだが、店の奥の方から何やら説明している大きな声が聞こえてきた。

 

「そこのボインボインのお嬢さん!!第一高校の学生さんアルね!!この護符はかの安倍晴明が鍛えたものアル!!もうどこにも手に入らない代物よ!!効果は抜群アル。呪詛はおろか、物理的な攻撃もロケットランチャー程度なら軽くはじき返すね!!今なら大特価2000万円アル!!お得よ!!」

背の低い大きなサングラスに、二本の長いひげを伸ばした銀髪のおっさんが怪しい中国人ポイ怪しい日本語を操り、美月の手を掴んでひと際高級そうな壁にかかっているガラスケースに入った護符について、セクハラまがいな事をしながら勢い良く説明していた。

 

「あの……その……」

美月は戸惑いを隠せずたじろいでいた。

 

横島はその様子を見て、スタスタとその怪しいおっさんに近づき、頭を叩く。

「何やってんじゃ、このセクハラおやじ!!」

 

「何するアルか!!あっ!……札の小僧!!」

 

美月は怪しいおっさんから解放され、ホッとした表情をする。

 

横島は無言で、この怪しいおっさんの首根っこを掴んでひょいっと持ち上げて、勝手に店のバックヤードに入って行く。

「離すね!!」

 

横島は怪しいおっさんを掴み上げたまま怒鳴る。

「やい、厄珍なんでお前がこの店にいる!!」

 

そう、この怪しいおっさんは5代目厄珍堂店主であった。風貌は双子かと見間違うほど初代厄珍とそっくりなのだ。

「どこに居ようと勝手ね。ここはわたしの店アル!!」

 

「前にあったあの古い骨董品屋みたいな店はどうした!!」

 

「あそこは買い取り専門ね!!いい加減に離すね!!」

 

「おまえあのガラスケースに入った札は俺が売った護符だよな!!なーーにが安倍晴明の護符だ!!」

 

「そうだった様な気もするが、気にすることないアル」

五代目厄珍はシレっとそんな事を言う。

 

「俺がお前に売った価格は覚えているか?販売価格の50パーセントで買い取るって言ったよな!!俺が売ったのは一枚10万円だ!!なーーーにが特別特価2000万円だ!!」

横島は東京に来てから、生計を立てるため札を買い取ってくれるところを探そうとしたのだが、厄珍堂を思い出し訪れたのだがところ、初代厄珍と同じ風貌の怪しいおっさんが元気に商売をしていた。その時から数回厄珍堂に護符を下ろしていた。攻撃用の火炎や氷結などは悪用されるかもしれないため。護符だけを売ったのだ。

当初、横島は自分の札の価値がわからず、厄珍の言い値で売っていたのだ。

 

「そんな昔の事は忘れたね!」

五代目厄珍は平気でそんな事を言う。

 

「もう、札は売ってやらんからな!!」

横島はそう言ったのだが……

 

「フン、もう小僧から仕入れなくとも十分儲かるアル」

厄珍は余裕の笑みを浮かべる。

 

「……厄珍のおっさん、特売セール品の札とか、一階に飾っている他の商品もだが、あれどこから仕入れてきたんだ」

 

「企業秘密ね!」

 

「おっさんあれはまずいぞ。……おっさんなんか騙されてないか?」

 

「なな……何の事ね!」

 

「あの商品の中に結構まずいものが入っているぞ。……命狙われても知らんからな」

 

「……な、何の事アルか!」

厄珍は横島にそう言われて、少し不安に思ってきた様だ。

 

「精々、夜逃げの準備でもしておくんだな!!」

そう言って横島は売り場に戻って行く。

 

 

横島と要が見つけた特価セールの札の中に混ざっていた問題の札には、明らかに別の用途で使用する札が混ざっていた。一見、無印の札の様に見えるが、符水(術儀に使用する水)か何かで、術式が刻印されており、しかも常時術が発動している様だった。普通の術者であらば見破る事が出来ないように工夫がされていた。

術式の内容は盗聴……しかも、人が発する声のみを拾うようなものだった。

明らかに何らかの情報を得るためのものだ。

市場に出回らせ、多くの術者がそれと知らずに携帯する。そこから欲しい情報だけ抜き取るのだろう。

 

学校でその札が使われ暴走したのは、最初っから術式が刻印されていた札に、それと知らずに新たな術を上書きしてしまい術が発現しなかったり暴走したりしたのだ。これが問題を起こす粗悪品の正体だった。

 

学生限定で販売させたのは、学生程度では見破られないだろうとの事なのだろうか?

若しくは、学生の中でほしい情報があるのかもしれない。

 

 

 

横島が売り場に戻ると、要があの問題の札に術式を入れ込んでいた。

 

「要ちゃんダメだ!!」

横島は要を止めようと叫ぶ。

 

要は問題の札に探知系の術式を掛けたのだ。

この札を常時発動させている術者をその術式を利用して見つけるための術、いわゆる逆探知する術なのだ。

術が見破られた事が分かった術者は、何をしでかすか分かったものじゃない。しかも要が行った術は、術者の位置まで特定できる代物だ。

これだけの仕込みが出来るという事は、複数人以上いる組織の可能性が高い。それこそこの前のブランシュの様なテロリストや他国の諜報員の可能性もある。

慎重に事に当たらなければ、まずいのだ。

 

 

本来横島はこのまま店に出て、とりあえず花音や学校には、販売店の特定をした事と、ここから商品を買わないように全生徒に徹底してもらうようにした後で、八雲か九島烈に相談したうえで調べるつもりでいたのだ。

 

要は正義感からなのか純粋にこのいかがわしい札の状況を調べ、店に文句でも言うつもりでいたようなのだ。

 

横島が気づいた時には既に術は発動してしまっていた。

 

 

すると、この販売店全体から人避けの結界が発動したのだ!!

 




次は久々の戦闘シーン?
20話分ぶりぐらいかな?

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