フェイ兄弟と戦闘シーンです。
ほんと久々の戦闘シーンです。九校戦以来ですね。
いつもよりチョイ長めです。
「やっておしまい!!」
フェイ兄の命令で黒服8人と操られている店員が横島たちに攻撃を仕掛けるために動いた。
「許さない…」
涙ぐみながら雫は小さな声で言い、腕をフェイ兄の方向に伸ばし、装着している汎用型CADを操作する。
「あなた達、後悔させてあげるわ」
要はフェイ兄弟両方を見据えていた。
もはや、二人の暴発は止められないと考えた横島は
「雫ちゃんはあの兄の方をけん制、レーザー魔法(フォノンメーザー)とか大規模魔法はやめて!!要ちゃんと彩芽ちゃん、幹比古は黒服連中を!!要ちゃんはその後、弟の方だ!!」
皆に一息で戦闘指示をする。
「…もう許さない」
「フフフフフッ、分かったわ」
「はーーーい!!」
「了解、横島!!」
雫、要、彩芽、幹比古はそれぞれ返事をし行動に移した。
横島は全体のフォローに徹することにした。しかし、雫一人ではフェイ兄は荷が重そうなため、雫のフォローも頭に入れ行動に移す。
札を出しその場に投げ捨て、雫、幹比古、美月、彩芽を囲う結界を張る。
黒服連中は接近戦を行うようだ。もともと接近戦が得意なのかもしれないが、この狭い空間ではヘタに魔法を放つよりも有効な判断だろう。
それぞれが、加速魔法と身体強化魔法を付加したようだ。
操られている店員たちは、此方に向かって空気砲や火炎魔法など小規模な魔法を放つ、けん制の意図が見える。
しかし、すべて横島の結界に阻まれるためけん制の意味をなさない。
フェイ兄弟は取り合えず高みの見物を決め込む様だ。
前に出る要に黒服は3人がかりで攻撃をしてきた。先ほどの要の破壊力を目の当たりにし危険であろうと判断し真っ先に襲ってきたのだ。無手で迫っているところを見ると、武術の心得があるようだ。
要に対し一人目の男が鋭い右ストレート気味の拳打を放つ、要は少し前かがみになりそれを避け、その体勢のまま、相手の両肩の下方に両腕を伸ばし手のひらでトンと触れる様に押す。すると一人目の男は勢いよく吹っ飛び壁に激突した。一種の呼吸投げのようなものであろう。
二人目の男が要の横から鋭い回し蹴りを胴のあたりに放つが、要は先ほどの体勢から相手の近い方を軸足にして横回転し、相手に密着するように後ろを取り、肩を掴み相手の蹴りの遠心力を使い。次に迫ってきている三人目黒服に投げつけ、倒れたところを霊気を纏った当て身を足で放ち二人を気絶させた。
要は合気術のような体術を使い、流れる様に相手を次々と無効化していったのである。
「要ちゃん、右前方の店員たちに、拘束術を!!」
横島は要の右前方が空いたことで、店員たちの拘束の指示をだす。
要はジャンプし右前方の4人の店員たちの魔法攻撃を避けながら前まで近づき地面に右手を付き霊力を発する。
「ハの八二式、束縛術式改弐」
そう唱えると、要の右手を起点に4人の足元に大きな術式が現れ、紫色のロープが術式から勢いよく飛び出し、店員たちを捉え地面に張り付けにした。
この術は氷室家独自の術体系だ。イ・ロ・ハに分かれた体系にそれぞれの系統術が振り分けられ、言霊として昇華させ、詠唱を簡略化させたものだ。
元は100年前、横島が絹の為に、元々あった古氷室家の術式を復活させ手を加えたものだった。それを100年の間、詠唱文の省略、術の性能向上などの改良を重ね練りに練ったものがこれだ。
要は次期当主として、これらの術の基礎体系をすべてマスターしていた。
ちなみに絹はこれをすべて、無詠唱でさらに一部は術式展開無しで行っていた。
要はその後、残りの店員も拘束しようとしたが、フェイ弟がその光景をみて、要に襲い掛かって来る。
一方、雫はフェイ兄に氷結魔法の氷の礫を放っていたが、ことごとく相手が無造作に放り投げる札に阻まれていた。
フェイ兄は古式魔法師として優秀な事がこれだけでもうかがえる。
雫はもどかしく感じていた。雫が得意としている振動系魔法は建物内や狭い空間での使用は適していない。雫の振動魔法は広範囲または高威力の物が多く建物自体を破壊しかねないからである。人を殺めず拘束するなどという細やかで、正確性が求められる戦闘は、雫自身細やかな調整を苦手としているだけに、現状の様な戦いははっきり言って不得意なのである。
黒服連中が加速術式と身体強化を自身に掛けつつ、雫たちに襲い掛かって来た。
幹比古はまずは黒服連中に札を放ち小規模な雷光を走らせて2人に膝を付かせるが、無効化まで至らなかった。2人は直ぐに立ち上がり、此方に向かってくる。
幹比古は故意に威力を落としていたが、予想以上に黒服連中の耐久力が高かったようだ。
黒服の連中は一人一人がかなりの練度を持った接近戦に特化した戦士、耐久力も一級品だ。
幹比古の攻撃を受けなかった黒服連中を、雫は広範囲で氷結魔法を放ちけん制する。3人に命中したが、耐えしのぎ行動が遅くなる程度である。
雫もそうだが、幹比古も近接戦闘が苦手である。相手に懐に入られる前に勝負を付けたかったのだが、現状は上手く行っていない。
「ロの三三式、電光石火改参!!ビリビリしちゃえーーー!!」
彩芽は雫がけん制した3人に追い打ちをかけるべく、右手を前に掲げそう詠唱すると、手のひらから術式を展開し前方広範囲に放射状に電撃がスパークしながら放出される。
3人は彩芽の電撃をまともに喰らい1人はノックダウン。2人は明らかに行動が鈍くなり、立ち上がるのがやっとだ。
幹比古はすかさず、その2人に札を放ち、先ほどより威力を上げた電光を放ち今度はノックダウンさせた。
その間、後方から2人が一気に雫の前まで迫っていたが、横島が割って入り、2人の顔に触れ霊気を送り気絶させる。
「横島さんありがとう」
雫は礼を言うが、横島はとっさに雫を抱きかかえ後方に飛び下がった。
フェイ兄がいつの間にか現れ偃月刀を振りぬき、横島が張った結界ごと斬ろうとしたのだ。
その偃月刀には術式が刻み込まれているのが見てとれ、振り切った場所の結界から解除されていった。
「さっきから、精神制御魔法を放っているのだけど、効果が無いと思ったら、結界を張っていたのね……なかなかやるじゃない。
でも、その結界も無い。これで司令塔のあんたが居なければこれでおしまいね。はいーーーはぁっ!!」
そう言って、額に右手をやって、体をくねらせ悩ましいポーズを取り術を横島に向けて発動させた。
フェイ兄は横島に術が届いたと確信し
「ふふふふふっ、これであんたは私の物……さあ、横島その子を渡しなさい」
こう言った。どうやら精神コントロールの類の術だったようだ。
「……」
横島は無言で、雫を抱えたままフェイ兄に近づく
お姫様抱っこ状態の雫はギュッと横島の腕を掴み目を瞑る。
それを見た幹比古と彩芽は叫ぶ。
「ダメだ横島!!」
「お兄ちゃん!!」
横島がフェイ兄の前まで来る。
「ありがとう、横島。ス・テ・キよ」
フェイ兄は余裕の笑みを浮かべていた。
「フン!!」
ゴス!!
横島は雫を抱き上げたままフェイ兄に思いっきり頭突きをかましたのだ!!
フェイ兄はそのまま崩れる様に倒れるが、意識はあるようだ。
「な……なんで私の術が効かないの?」
横島はそっと雫を下ろし、フェイ兄に怒鳴る。
「知るか――――!!よくも雫ちゃんを泣かせてくれたな!!」
横島の内包している霊力とその高い精神力に精神魔法など効果が出るわけもない。
そして、倒れたフェイ兄の両足を持って
「お仕置きじゃーーー!!こうしてこうだ!!電気アンマの刑!!フハハハハーーー!!」
ズダダダダダダダ!!
フェイ兄の股間をマシンガンの様に連続で踏みつけたのだ。
「あうっ……あうっ……もう、やめて!!…………あっ、なんかこれいいかも!?」
フェイ兄は最初は苦悶な表情を浮かべていたが、途中から顔を赤らめていた。どうやら快楽に変わったようだ。
それを横で雫は冷たい目でフェイを睨み
「変態」
そう言って、氷結魔法を至近距離で放ち、フェイ兄に氷の礫を容赦なく次々とぶつけていく。
「いい!!いいわ!!とってもいいーーーーぃ!!」
フェイ兄はそう言いながら白目をむき、最後は気絶したようだ。
どうやら、横島と雫のせいで新たな扉を開いてしまったようだ。
フェイ兄が気絶すると同時に、残った店員たちも倒れる。
一方、フェイ弟と対峙している要は……
フェイ弟はその大きな体の通り、身体能力を極限に高めた近接攻撃が得意なパワーファイター型のようだ。厄介な事に防御も硬く、加速魔法でかなりのスピードが出て、武術の腕も相当立つ様だ。
「フン、お前の様な凶暴な女は嫌いだ」
フェイ弟はそう言いながら、要に数々の打撃系の体術を放つ。
「奇遇ね。私もあなたの事が嫌いだわ」
要はそう言いながら、フェイ弟の技を両腕で相手の力を逃がすようにさばいていた。
そんな攻防のなか
「使いたくないのだけど、あなたならいいわよね」
要はフェイ弟にそう言った。
ズドーン!!
要は霊力を高め、拳を作り思いっきりフェイ弟を殴りつけた。
フェイ弟は危険を察知し腕で十字にブロックをするがそれごと吹っ飛んだのだ。
フェイ弟の防御魔法を相乗させた防御力は、マシンガンはおろか対戦車ミサイルさえ耐えれるものだ。
フェイ弟は壁に激突、それでも衝撃が吸収できずにコンクリート壁がへこむ。
その衝撃で前のめりになったところを要が追いすがり、顎に拳を放つ。
フェイ弟は上に吹っ飛び天井に頭が突き刺さりそこで気絶。頭だけ天井にめり込み、体はプラプラと中空で揺れていた。
「ふん」
動かなくなったフェイ弟を一瞥して、要は戦闘態勢と解く。
要のとんでもない剛力は氷室家の技ではなく、前世の女華姫のあの剛力を引き継いだようなのだ。
この力が発現した際は戸惑い、いろいろと失敗をしていたが、この頃ようやく自分でコントロールできるようになっていた。
氷室家でも稀に見る近接パワー攻撃も可能な術者として成長していたのだ。
こうして、要たちの活躍で札を使って悪巧みをした連中を全員拘束することが出来た。
ただ、店は見る影もなくボロボロになっていたのだが……
フェイ兄弟撃沈。
横島の活躍は無かったですね。
氷室家次期当主とあって要ちゃんはかなり強いです。
どんな戦闘シーンでも苦にならない。近接よりの万能型です。
彩芽ちゃんもまだまだですが、氷室家、独自の術式をある程度マスターしているようです。
雫ちゃんは大きなフィールドであれば、かなり強いはずなのですが……今回の様な繊細な戦闘を要求するシーンでは、ちょっと出遅れるようです。