誤字脱字報告ありがとうございます。
今回のお話は、フェイ兄弟との戦闘事後処理です。
なので、つなぎ要素しかないお話です。
Yクラフトコーポレーションでのフェイ兄弟との戦いは終息した。
戦闘力皆無の美月はその場を見ていることしかできなかった。
しかし、霊子放射光過敏症、幹比古らは水晶眼と言われている場の霊気や人が内包している霊気が見える特殊な目を持つ美月は今回の戦闘全体を把握し見ることが出来た。
美月はその中でも要の戦闘には目を奪われていた。
今まで見て来た魔法師は霊気を体内からの出し入れし魔法を行使しているだけに見え、幹比古は古式魔法を使用する際、霊気は札を通して伝達し行使しているように見えていた。
美月が見た要の霊気の在りようは今まで見てきた魔法師とは一線を画していた。霊気自体を自由に操り、一体となり、攻撃や防御、術を行使しているように見えた。
どれも一分のズレも無く、まるで霊気と一緒に舞を踊っているように見え、その美しさに感銘を受け、これが本来の霊気と術者の本当の在りようではないかと思った位である。
ただ単に憧れているだけだった氷室家に対し考え方が変わっていく分岐点となった。
しかしその後見た横島の霊気は、美月の常識から逸脱するようなものであった。
間近で横島の戦闘を見たのはこれが初めてだったのだが、
場に漂う霊気は横島がとる行動に一切干渉していないように見え、横島が動こうが、術を発動しようが、霊気に動きが無い。まるで横島がその場の霊気に溶け込んでいるかのようであった。
さらに、美月はもう一つの事実に頭の中で消化できないでいた。普段の横島は楽し気な雰囲気で霊気もそれとならい暖かに纏っているように見えていたのだが、戦闘中の横島の霊気が霞んで見え、良く見えなかったのだ。これまではそんな事は一度も無かったのに。
普段の横島は霊気を抑え調整している。調整をやめた本来の横島の霊気は余りに巨大なため美月にはよく見えなかったようだ。しかしこれでも封印状態である。
美月は戦闘が終わった後もしばらくボーっとその場を立ち尽くしてるのであった。
「おーーい美月ちゃん大丈夫?」
横島は美月に遠くから声を掛ける。
美月はコクコクとうなずくことしかできない。
すぐ横にいた雫にも声を掛ける
「雫ちゃんも大丈夫?」
雫も頷く、さっきから黙って横島の袖をずっと握ったままである。
「みんな強くて助かった」
横島はそう言って皆を労い、慣れた手つきでフェイ兄弟と黒服全員何処から拾ってきたロープでぐるぐる巻きにしだし、一人一人、霊力が発揮しない様、要と共に札を額に貼っていった。
「彩芽ちゃん頑張ったね!!」
横島の作業の手伝おうと近づいてきた彩芽の頭を撫でる。
「フフーーン!!彩芽も頑張ったでしょう!!ビリビリは得意なんだ!!」
彩芽は胸を張り嬉しそうに言う。
幹比古は横島の横まで来て、要が起こした戦闘の跡と、店員に拘束術を解き、睡眠を促す術を行使している姿を見やり、
「よ……横島、要ちゃんって凄いね…………なんか、魔法科高校とか行かなくてもいいんじゃない?あの術は何?札無しで?あのパワーは何?……なんなの?あんな凄いの見たことないんだけど……」
呆けた様に横島に言う。
「たはははははっ、まあ、氷室次期当主だしな」
「彩芽ちゃんって、もしかして僕たちより強くない?術起動早くない?札使ってないよね?なんなのさ?なんなんの?……氷室ってめちゃくちゃだ!!」
幹比古は目を白黒させ段々興奮しだして横島の襟首をつかんで前後に揺すりだした。
「く……苦しい…幹比古、やめ…」
またもや暴走する幹比古。
要が店員を安静にさせた後、横島の所に来た。
「横島くん終わったわよ」
それに気が付き幹比古は横島を解放する。
「ご、ご苦労さん。やっぱ要ちゃんは凄いね!あんだけの事がもう出来るなんて!!」
横島は要を笑顔でほめる。
「そ、そうかしら」
要は顔を赤くしていた。横島に褒められ照れている様である。
横島は皆に聞こえる様に話す。
「取り合えずしばらくみんな待機で、このまま出て行くとやばいしね。ビル全体に結界も張ってあるから、外からはこの異変には気が付かないはずだし……この事態を何とかしてくれる人に連絡するから」
そう言って、横島は携帯端末を出し電話をしだした。
「もしもし、じいさん?横島だけど、今大丈夫か?」
「横島君か、良い」
九島烈が電話越しに答える。
「あのさ、なんか犯罪者っぽいのを捕まえたんだけど、どうしたものかと思って」
「うむ?どういうことかね」
「いや、なんか大陸系の奴ららしいんだけど、フェイ兄弟って奴なんだ。結構激しい戦闘になっちゃって、ビル壊しちゃったし、あっ……死人とか重傷者は出てない」
「今なんと言ったか、フェイ(飛)兄弟と聞こえたのだが」
珍しく九島烈は驚きの声を上げてた。
「なんかそうらしい」
「大亜連合の工作員だ。我々軍も奴らの諜報活動に手を焼いていたのだが……まさかこんな形で捕らえることになるとは……腕の立つ名の知れた本職のプロだったのだが……横島君ならさもあらん」
九島烈はフェイ兄弟を知っていた。そして彼を横島が捕まえた事に納得する。
「そこでさ、友達とか側にいて、そろそろここを離れなくっちゃならないんだが、事情聴取とか面倒だから、何とかならない?」
横島はそう言って、今まであったあらましを説明する。
「わたしの手の者を直ぐに遣わす。少々待機していてくれたまえ……まさか、氷室の令嬢が関わったとは……」
「その事は内密にお願いだ!!なんか余計な事に巻き込まれそうだし!!なんていってもまだ子供だし……」
「了承した。此方で後は対処するが、君には詳しく事情を聴くかもしれんが良いか?」
今回の事は九島烈にとって、この場の対処は軍や公安、警察の縄張りの問題で困難ではあるが、それは些細な事であった。何もせずに問題となっていたフェイ兄弟を拘束出来た事は大きい。軍内や十師族内での発言力が高める絶好の功績でもあるからだ。横島との良好な関係を築くメリットはかなり大きく、横島の願いは無下にはできない。
「ああ、ありがとな、じいさん!!」
「良い」
そう言ってお互い通話を切る。
「もうちょっとしたら人が来るからそれまで、俺が残ってるから、さっきのプリンの喫茶店でも行って待っててくれる?」
横島はそう皆に言う。
「ふーーーん、私は子供じゃないのだけど……」
要は横島を一睨みしておもいっきり足を踏む。どうやらさっきの会話を聞いていた様だ。
「……横島さんと居る」
雫は相変わらず、横島の袖を引っ張ったまま項垂れている。
「あっ、私もお兄ちゃんと一緒に居るーー!!」
彩芽はいつでも元気いっぱいだ。
「うーーん、幹比古と美月ちゃんはどうする?」
「ああ、僕も、最後まで見届けるよ。まだ今日の事、頭の中で整理できてないし、色々いっぱいいっぱいだしね」
幹比古もなんだかんだ言って残るようだ。
「……私も残ります」
美月は先ほどから何やら考え事しているような感じだ。
結局全員、この場に残る事になった。
もろつなぎ回でした。
次回もこの続きです。