横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうござます。

前回の続きですが内容がちょっとアレです。




横島、悩む仲間を知る!!美月そして雫…

横島たち一行は九島烈の使いの者なる人物が来るまで、半壊したYクラフトコーポレーションで待つことになった。

 

 

横島はフェイ兄に気絶させられた厄珍に霊気を送って起こした。

大した怪我はなさそうだ。

「厄珍、大丈夫か?」

 

「はっ……何事アルか?……あああああああ!!わたしの店がーーーーーー!!」

厄珍は目を覚ましあたりを見渡すと、店舗はボロボロで見る影もなくなっていた。

 

「まあ、どうせこの店は接収されるだろうし、いいんじゃないか?それより、今からいい弁護士探した方がいいぞ」

横島は厄珍に血も涙もない現実を突きつけた。

 

「どどどど……どういう事アルか?」

 

「ああ、お前……知らないうちに、あの兄弟に国家犯罪の片棒を担がされてたみたいだぞ」

 

「あわわわわわっ」

厄珍は腰砕けになりながらも逃げようとする。

 

「ちょっと待て……まあ、洗いざらい話せば、見逃してくれるかもしれんぞ……逃げたら、もう日本の地を踏めんしな、あっちの店がまだあるじゃねーか、だから大人しくしとけよ」

そう言って横島は厄珍の襟首をつかみ大人しくさせる。

 

厄珍はあきらめた様に項垂れ座り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

美月は疲れたような表情をして、その辺の椅子に座っていた。

幹比古はそんな美月に近づき

「柴田さん大丈夫?」

 

「うん、吉田君、守ってくれてありがとう」

美月は笑顔で答える。

 

「いいよ、そのくらい」

幹比古は照れながらそう言う。

 

「吉田君、私、皆に守ってもらってばっかりで情けないよ」

美月は真剣な面持ちで幹比古を見る。

 

「柴田さんは仕方ないじゃない。元々魔法師の家系じゃないし、戦うためにこの学校に来たわけじゃないでしょ?」

 

「それでも、私は何もできない自分が情けない。皆と一緒に居たいのに……」

 

「柴田さんにはその目があるじゃないか……僕の練習にも付き合ってくれるし」

 

「でもそれだけではダメな気がするの……私にも何かできることないかな?」

美月は真剣だった。今日の戦闘に巻き込まれた事で再度自覚したのだ。このままだと自分一人がお荷物になる。何れ皆に迷惑が掛かるかもしれないと思ったのだ。

 

 

そこに横島達が美月たちの元に来る。

美月の声がいつもより大きく出ていた事で、その内容を聞いていた様だ。

 

「あなた、その目、高度な霊視が出来る精霊の目ね」

要は美月にそう言った。どうやら氷室家では水晶眼の事を精霊の目というようだ。

 

「霊視?」

美月は霊視という言葉を初めて聞くようだった。

 

「うーーん、美月ちゃん。その目の事、なんか自分で病気みたいに言っていたけど、それって個性的な能力だよ。霊能者はみんなその霊視を出来るようになるまで、訓練するんだけど、美月ちゃんは最初っから見えるなんてそれだけで十分凄いから自信もっていいんじゃないかな。何を隠そう俺だって最初は霊視すらできなかったんだから」

横島は美月が思い悩んでいる事に対し励ましている様だ。

横島自身、最初は霊視すらおぼつかなかったのだ。

 

「えっ?訓練で見えるようになるの?」

幹比古は驚きの表情をする。

幹比古は霊気の流れ(吉田家では精霊の動き)を霊気の繋がりで体感的に感じているが、見ることはできないようなのだ。

 

「何言ってるんだ?霊能力者の必須スキルだぞ。まあ、古式魔法師は違うのかもしれんが、ある程度訓練すると見えるようになるな。素質とかもあるかもしれないが……」

 

「ほんと!!という事は横島も要ちゃんも彩芽ちゃんも見えたりするのかな!?普通の目をしている様だけど!!」

幹比古が興奮したように横島に迫る。

 

「うん、見える様になったよ!!」

彩芽は元気よく答える。

 

「そうね。私は最初から見えてたけど……。修行次第で性能は随分ちがうものよ」

要も答える。

 

「えええっーーー本当に!!……横島!!訓練の仕方教えてくれないかな!!」

幹比古はまたもや暴走して横島の襟首をつかみ前後に揺する。

 

「く……苦しい、これで……何度……目だ」

 

「ごめん」

幹比古はパッと横島を離す。

 

「ふーー、まあ、暇なときにでも、修練に付きあってやるよ」

 

「本当!!ありがとう横島!!」

幹比古は感極まって横島に抱き着いてしまった。

 

「あーーずるいんだ!!」

彩芽は声を上げる。

 

「離せ!!幹比古!!男に抱き着かれて喜ぶ趣味はないわーーー!!」

横島は無理矢理幹比古をひっぺがした。

 

「はぁ、はぁ、ったく。美月ちゃんも、一緒に、ね?」

横島は息苦しくしながらもそう言って美月を見やる。

 

「その、私なんかも一緒にいいんですか?」

美月は申し訳なさそうに言う。

 

「あなた、もっと自信をもったら?」

要は美月に呆れた様に言う。年下が言う言葉じゃないのだがそこは次期当主という事で許してあげたい。

 

「まあ、時間が空いている時だけど、美月ちゃんにはいざという時のその目の活用方法もね」

 

「ありがとうございます!!私は元々この目をどうにかしたくて、この学校に入ったのですが、それを活用するなんて思ってもみませんでした。目から鱗が落ちる思いです!!」

美月は先ほど悩んでいたことが嘘の様に心が晴れ晴れしていた。

 

「横島!!ついでに、さっきの彩芽ちゃんとかの術教えてくれないかな!?」

幹比古は調子に乗ってこんなことを言った。

 

「幹比古ーそれはさすがに無理だ。あれは氷室の秘術の一つだぞ」

横島は幹比古呆れた様に言う。

 

「別にいいわよ」

要はそう言った。

 

「え!!本当!!」

幹比古はキラキラと目を輝かせる。

 

「ただし、一生氷室家の門下の家人として過ごすと約束してくれるならと条件はつくかしら」

 

「あっ……それは……」

幹比古は吉田家当主の次男で、状況次第では当主となりうる人物なのだ。それは不可能である。

 

「はぁ、幹比古諦めろ、お前も吉田家の術を他に漏らせないだろ?」

 

「うん、ごめん。そうだった」

幹比古は素直に謝る。

 

「あのー、氷室家の家人というか、門人とか巫女になる事ってできるのでしょうか?」

美月は先ほどの幹比古に対しての要の答えを聞いて、質問をする。

 

「私も詳しくは知らないけど、多分可能だわ。但し、適性審査とかは必要になると思うけど……。あなたのその目があれば大丈夫かもしれないわね」

 

「本当ですか!!」

美月は顔をぱぁっと花開いたような笑顔で、要の手を取り上下に振る。

 

「わ…私では詳しくは分からないと言っているのだけど、本当にその気があれば一度氷室に来てみるといいわ」

要は美月の行動に戸惑いながらそう言ってから、プイと顔を横を向ける。どうやらこの行動は要の照れ隠しの様だ。

 

 

 

そうこうしているうちに、背広姿の男数人と軍服姿の人間が20人ほどビルの前まで来ていた。

どうやら、九島烈が言っていた。使いの者とここを収拾する軍人なのだろう。

横島はビル全体に張った結界を解除し、中に招き入れる。

 

 

横島は背広姿の男達と簡単に話をして、この場を引き継いだ。

九島烈に言い含められているのだろう。他のメンバーには一切質問等をしなかった。

 

 

横島たちはビルを出て、そのまま氷室家のアンテナショップがある六道家が経営する店舗に戻っていくのである。

 

 

「要ちゃん、彩芽ちゃんごめんね。こんな事に巻き込んじゃって……。折角東京観光が出来る時間があったのに」

横島はそう言って、隣を歩く要と彩芽に謝った。

 

「元々私たちが勝手についてきたんだし、その、私の失敗のせいでああなってしまったのだから、横島くんが謝る事じゃないわ」

要はそう言って、またもやプイっと視線を外し横を向く。

 

「そうそう、お姉ちゃんが全部悪いから!!」

無邪気に笑いながら答える彩芽。

 

「彩芽、後でじっくり話し合う必要があるようね」

そう言って、要は彩芽の頭を掴む。

 

「痛い、痛いって、お姉ちゃんのはシャレにならないから!!」

彩芽は泣きそうな顔をして、姉に訴えかける。

 

「たはははははっ、ありがとう二人共」

横島はそう言って二人にお礼を言う。

 

 

 

氷室家のアンテナショップに戻ると、敦信と麻耶は先に帰ってきていた。

横島は、二人に今回の事件に巻き込まれたことについて、あらましを説明し、謝罪した。

 

「そうか……二人共怪我はなかったかい?」

敦信は二人の娘を見て優しく問うた。

 

「大丈夫よ」

「うん、平気!!」

 

「敦信さん、すみませんでした」

横島は再び敦信に謝る。

 

「横島くん、何もなかったからいいじゃないか。まあ、君が居ればなんとでも出来たんだろうしね」

敦信はそう言って、横島を慰める。

 

「それでは、私たちはこれで氷室に帰るとする。……横島くん時間があったらいつでも帰ってきなさい。蓮も、お義母さんも喜ぶ。もちろん娘たちもね」

敦信はそう言って、別れの挨拶をする

 

「バイバイお兄ちゃんまたねーー!!あっ皆もまたねーーー!!」

「さようなら。横島くんは……そうね、今度はちゃんと東京案内してもらいたいわね」

彩芽と要もそうやって、皆と横島に挨拶をし帰って行った。

 

 

 

そして、横島一行も帰路につく。

「今日はなんか大変だったね」

「そうですね。でも氷室家の人にあえて感激です」

幹比古と美月である。

 

「たはははははっ、なんか巻き込んじゃってごめん!!」

横島は皆に軽く謝った。

 

「いや、いい経験が出来たし、訓練の指針も出来たから充実していたよ」

幹比古は満足そうに言う。

 

「私もです。もやもやが晴れた気分です」

美月もそう感じている様だ。

 

 

 

そんな美月と幹比古と駅で別れた後。

ようやく雫が口を開き小さな声を発した。

「私は、何もできなかった」

 

雫はあのYコーポレーションの事件の事後処理から一言も発せず、後ろから俯きかげんで横島の袖をずっと掴んだままだったのだ。

 

「雫ちゃんだってちゃんとやれてたよ」

 

「そんなことない!!」

雫は語気を強くして横島を見上げる。瞳には涙が溜まっていた。

 

「……でも……」

横島はそんな様子の雫にハッとし、どうしていいかわからず何か声を掛けなければとするが……。

 

「私は結局横島さんに助けられた!!役に立ちたかった!!でも……あの子の様にできなかった……」

雫は涙目で横島を見上げ語気を強くし訴えかける様に言っていたが、最後は消え入るような声になり、地面に涙を落とした。

 

横島が敵の大凡半分を要一人に任せる指示を出し、要がその信頼に見事答え、強敵相手に圧倒して打ち勝った。

しかし自分(雫)は何もできずに横島にただ助けられるだけ……。

 

そして、戦いが終わった後、横島が掛けた言葉……。

 

自分(雫)には「大丈夫?」だった。

 

そして要には「ご苦労さん」だったのだ。

 

雫にはそれが信頼の違いの様に思えてならなかった。

横島の横に立つことが出来るのは、自分ではなく要に思えてならなかったのだ。

それが悲しくて悔しくて、こうして横島に感情を爆発させてしまったのだ。

 

 

横島はそんな雫にどう声を掛ければいいのかわからない様子でしばらく沈黙が続いた。

 

 

やがて雫に迎えの車がやって来る。

 

そして雫は、

「私は強くなりたい……。堂々と横に並んで歩けるぐらいに……」

横島にその内容が聞こえない位小さく震えるような声でそう言って、車に乗り走り去った。

 

 

横島は雫を乗せた車を呆然と見送るしかできなかった。

 

 





うむ、どうしよう?
自分で苦手な展開に持って行ってしまった><



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