横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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風紀委員仕事始めですが……まあ、そこは横島なんで


8話 横島、風紀委員の仕事をこなす!!

「諸君、今日から新入生部活動勧誘週間だ。部活勧誘のデモンストレーションの為に各クラブはCADの貸し出し許可を得られている。また、毎年の事だが、どこの部も新入部員獲得のために必死である。必ず、荒事が起きる。もし危険行為が行われた場合速やかに対処しろ。危険な状況になる可能性があると判断した場合は注意喚起を行え、以上だ」

 

 

風紀委員長、渡辺摩利は風紀委員会本部で全風紀委員を集め、そう告知した。

 

 

摩利は続けて。

「今期の新入生からの新戦力を紹介しておく。1年A組森崎駿 1年E組司波達也、そしてもう一人は、私が特別枠で取り付けた見習い枠。1年E組横島忠夫だ」

 

 

上級生の風紀委員のメンバーはざわめく

 

「いいすか?」

 

「辰巳、発言を許可する」

摩利は同じ同級生のがたいがいい男子風紀委員に言う。

 

「そこの二人は、紋無しだ」

3年の辰巳鋼太郎は紋無しとは、達也と横島を指したのだ。

2科生の制服の肩には校章のエンブレムが入っていない。その為、2科生の俗称として使われている事が多いのだ。

 

 

摩利は自慢そうに辰巳に言う。

「そんな料簡では足元を掬われるぞ、実際昨日、そこの司波に、正式な模擬戦で服部が足元を掬われたところだ」

 

 

「まじか、あの服部が…そりゃ期待できそうだ。悪かったな司波」

辰巳は司波を評価し、謝罪した。

 

 

「もう一人は……ああ、雑用係とでも思ってくれ、近くに置いておいた方が面倒がない」

摩利は横島を見てそう言った。

 

 

風紀委員の上級生は、横島を見て、それぞれため息を付く。

なんぱ、チカン、変態野郎だと間違いなく思っている事だろう。

 

 

摩利は宣言する。

「それでは、各人出動!!」

 

 

そして、各人は風紀委員の腕章を付け、部屋を後に出て行くのだ。

しかし、横島だけ残っていた。横島も一応風紀委員の腕章は付けているが。手書きで見習いと書きなぐった紙切れをセロハンテープで張っていた。

 

 

「はー、めちゃくちゃだー……俺は何をすりゃいいんすか?」

無理矢理に風紀委員見習いという。わけわからない役職を付けられた横島はうんざりした表情で摩利に問うた。

 

 

実は見習いなどと言う制度はこの学校は無い。

摩利が生徒会に対し、仮試験中として申請したのだ。

正式に実施には、生徒会の承認と校内投票の過半数が必要だからだ。

よって、正式な風紀委員ではないため、CADの携行も認められないのだ。

まあ、ろくにCADも使えない横島には全く関係ない話だが……

 

 

 

「フフフっ 丁度お前にいい仕事がある……」

摩利は横島に不敵な笑みを湛えながら意味ありげな事を言ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから3日後の放課後。

 

風紀委員本部には風紀委員メンバーの3年生辰巳鋼太郎と2年生沢木碧が一足先に、巡回から戻り、風紀委員長の渡辺摩利に本日の活動報告に来ていた。

 

 

 

「辰巳鋼太郎、報告します。注意喚起3件、逮捕者0 以上」

 

 

「了承した」

摩利はそう言う。

 

 

辰巳は続けて

「あの1年……逸材だな、剣術部の桐原を取り押さえただけでなく、剣術部の連中全員を手玉に取ったらしいじゃないか。あれで2科生とは何もんだ?」

 

 

摩利は自慢そうに言う。

「だから言っただろ」

 

 

「最初は、あの服部を倒すなど半信半疑だったが、納得だ」

そう言って、辰巳は摩利の前から一歩下がる。

 

 

 

 

 

続いて2年生の沢木が摩利の前に立つ。

「沢木碧、報告します。注意喚起3件、逮捕者1名、すでに連行し、CADは没収しました」

 

 

「了承した。その件、懲罰委員会に掛け合うかはこちらで検討する」

摩利はそう返答する。

 

 

沢木も摩利に言う。

「あの1年、何者ですか?」

 

 

「司波の事か?まあ、みな驚くだろう。あれが奴の真の実力だ」

 

 

「いえ、あのナンパ野郎……横島です」

 

 

「何かやったのか?」

摩利は険しい表情になる

 

 

「いえ、水道管の修理、家庭科室のガスコンロの修理、茶道室の障子の張替え、第2武道室の床の修繕。さらにハチの巣の除去まで、すべて完璧に難なくこなしております」

 

 

「……なんだそれは?奴からそんな報告を受けていないぞ。そんな仕事を奴には回していない。ただ奴には、クレームが上がったところに行き、その内容を庶務課に報告に上げろと雑用を言いつけただけなのだが……」

 

 

「どうやら、クレームがあったところに行って自分で直してしまうようで、庶務課事務員からかなり喜ばれ、受けもいいそうです」

 

 

「その庶務課の受け付けは……美人なのか?」

 

 

「はい、学内でもファンがいるそうです」

 

 

「…………」

摩利は額に手を当てて、ため息を付く。

 

 

「いや、そこじゃないんです。奴はCADの携帯を許可されてません。その噂を聞き、CADを不正に使用し魔法での修繕をしたのだろうと思い。確認に行ったのですが、普通に工具を持って、器用にプロ顔負けのスピードで直していくのです……あいつは本当に魔法師なのですか?」

沢木はその時の様子を思い出したのだろう。感心した様にそう言った。

 

 

「……わたしにもわからん。ただ器用な奴ではある。はぁ、そうか分かった」

摩利は頭を抱えながら、そう言って沢木を下がらせる。

 

 

 

そこへ、風紀委員会本部にノックして、事務員姿の美人が入って来た。

「緊急事態なんです」

 

 

「何か?」

摩利が答える。

 

 

「実はたった今、部活棟の、女子シャワールームの温水管が破裂して、騒ぎになっているの、だから、横島くんがこちらにいないか……」

 

 

タイミング悪く横島が戻ってくる。

「横島ーーもどりました」

めちゃくちゃだるそうに、そう言って入って来た。

 

 

その美人事務員が横島に駆け寄って、横島の手を握り

「横島くんいた!部活棟の女子シャワールームの温水管が破裂して……」

とそこまで言ったところで

 

 

「愛子さん!!女子シャワーーールーーーーム!!……この横島、超得意分野です!!必ずやなんとかしてみせましょう!!」

横島は目をキラキラさせながらその美人事務員に言い切った。

 

 

「ふはははははははっーーーーー待っててね!!おねえちゃーーーーーんたちーーー!!」

横島は顔を上気させ、興奮した様子で叫びながら、脱兎のごとく、部屋を出て行った。

 

 

「待て、横島!!」

摩利がそう叫んだ時には、もう部屋から出て行っていた後だった。

 

 

「いかん!!貴様ら追うぞ」

摩利は、辰巳と沢木にそう言って、勢いよく部屋から出て、横島に追いつこうとする。

 

 

「くそ、もう見えない。なんて早い奴だ!!」

摩利たちは加速術式魔法を使って追いすがったが横島の姿は見えない。

 

 

女子部室棟の前までくると

「キャーーーーーーーーーーチカン!!」

「へんたーーーーーーーーい!!」

「死ねーーーーー!!」

 

女子生徒の叫び声やら怒声やら、爆発音やら、魔法による作動音などが聞こえてきた。

 

 

 

「……遅かったか…お前たちはここで待ってろ」

摩利はそう言って、辰巳と沢木をその場で待たせ、女子部室棟に入っていった。

 

 

 

しばらくすると、摩利が女子部室棟から出てきた。

プスプスと煙が上がった物体を引きずって………

 

 

その物体……横島はところどころ凍っていたり、焦げていたりしている。頭であろう場所は煙が上がっていた。

 

「辰巳、沢木こいつを保健室に連れて行ってやってくれ、此方の監督不行き届きでもあり、一概にこいつだけが悪いわけではないしな……」

摩利は二人にそう言って、横島を地面に置く。

 

 

 

しかし、横島は

「くそーーーーー!!何にも見れなかったのに!!それなのにこの仕打ち!!」

 

ビヨーーンと撥ねる様に上半身を起こした。ボロボロだが復活したようだ。

 

「温水管を修理に来ただけなのに!!何て凶暴なんだ!!シャワールームに入っただけで!!しかも、あいつら全員服着てんのに!!何がキャーーーだ!!こんちくしょーーーーーー!!」

横島は雄たけびをあげていた。

 

 

その様子に辰巳と沢木は驚いていたが。

 

 

「貴様は、何をやってるか!!」

摩利は横島に拳骨を脳天に突き刺した。

 

 

「ぐぼっ」

横島はその場に倒れ、結局、辰巳と沢木に風紀委員会本部まで連行されていった。

 

 

 

 

その後はやはり、摩利による説教フルコースを浴びる。

 

横島の女子シャワールームへの侵入について、横島が温水管の修理の依頼を受けたことから、双方行き違いによる突発的な事故という事で処理をされ、罪は不問となった。

 

もちろん横島は、皆が居なくなった後の女子シャワールームの温水管修理を、摩利の監督の下で行ったのは言うまでもない。

 

 

 


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