誤字脱字報告ありがとうございます。
では、前回の続きにして‥…………
超超、久々のまともな横島活躍シーンがあるかも?
八王子特殊鑑別所内で緊急警報が鳴り響く。
関本が勾留されている部屋の前で待機していた鑑別官が真由美と達也がいる小部屋に慌てて入り
「侵入者警報です。誤報かもしれませんが、念のため直ぐに避難してください。私が誘導します」
真由美達に警報の経緯を知らせる。
鑑別官は同じく関本が勾留されている部屋の摩利にも知らせる。
真由美、達也、摩利が廊下に出ると、遠くで悲鳴が聞こえていた。
鑑別官はそれぞれの部屋をロックし、先頭に立ち彼らを誘導しようとした。
廊下の先から、大男が現れる。この長い廊下には出入り口は大男が居る方向にしかない。
廊下突き当り付近に現在、達也はいる。
「な……手配書のルゥ・ガンフゥ」
鑑別官はその大男を見てそう声を漏らす。
大亜連合の人喰い虎の異名を持つ凄腕工作員だ。
先日、一人で軍の小隊を壊滅させ、護送中のフェイ兄弟を奪還したのは彼だ。
「……逃げられる状況ではないな」
そう言って達也は真由美と摩利の前に出る。
ルゥ・ガンフゥは魔法を発動させ、自身の体に暴風を纏わせる。
鋼気功。何重ものサイオン膜で体を覆い、対魔法、対物理攻撃をはじく。
猛烈な加速で一気に達也達に迫る。
鑑別官はその達也の前に出て、携行ライフルをルゥに向かって放つが、全てはじかれる。
そして、鑑別官はルゥが放った拳打で吹っ飛び、壁に激突し気絶。
その間、達也は右手を掲げ、CAD無しで術式解体をルゥに放つ、ルゥの纏った暴風が収まり、鋼気功は解体された。
術を解体されたと分かり、ルゥは一度後ろに飛び退き再び鋼気功を発動するが、その術は見るからに先ほどより強化されていた。
「デーモン・ライト………幾多の同胞の恨み、ここで晴らさせてもらう」
今の術式解体で達也が沖縄海戦の分解・再生魔法で修羅の如く、大亜連合の兵士を悉く屠ったあの悪魔だと感づいたようだ。
「先輩方少々下がっていてください……」
達也はそう言って、真由美と摩利を下がらせる。
ルゥ・ガンフゥは達也に的を絞らせないように、左右に独特の歩法で移動しながら、加速し再度突撃してきた。
達也は構えて迎撃する形をとる。
ルゥはその体に似合わず、細かい拳打を達也に叩きつける。達也はそれを九重流の体術でさばくが、ルゥの拳打に触れるたびに、腕の皮が切り裂かれ、骨は軋みダメージを受けて行く。しかし、それも一定の間隔で自己修復術式で回復していく。
ルゥ・ガンフゥ、大亜連合特殊部隊のエースにして、白兵戦では大亜連合随一の使い手である。
中国武術と魔法を組み合わせたその攻撃は、凄まじい威力である。
打撃の応酬では、終始達也は押され気味となっている。自己修復術式が無ければ、直ぐに決着がついていただろう。
達也は一度下がり、術式解体を発動させるが、今度は無効化できなかった。
ルゥの鋼気功が勝ったのか、達也のCADが無いための威力調整が出来なかったのかは不明ではあるが……
いずれにしろ、CADが無い達也にとって非常に不利な状況である。
達也一人ならば、この場の撤退も可能だっただろうが、今はCADを持たない魔法師が二人後ろにいる。
達也は他者がいる前では人体分解は躊躇していたが、意を決して、分解魔法を右手に展開させ、直接手刀をルゥに振るったのだが、円を描くような動きで避けられ、手刀を繰り出した際の隙に、魔法を展開した蹴りを左腹に受けて奥の壁まで約20m吹っ飛ばされる。
蹴りを受けた左腹は内臓がグチャグチャになっていたが、達也は吹っ飛ばされる間も、自己回復術式で、一瞬で回復させる。中空で体勢を整えるも、威力を消すことが出来ずそのまま奥の壁まで激突する。
「達也くん!!」
真由美は叫ぶ。
その隙に達也に猛然と突っ込もうとするルゥ・ガンフゥに摩利が鑑別官が持っていた警棒を振るい立ちふさがる。摩利はこれでもエリカの実家である千刃流剣術の使い手なのだが何せ実力の差が大きすぎた。一太刀を防がれそのまま警棒をへし折られ、首根っこを掴まれたのだ。
中空で摩利が何とか逃れようともがくが首は絞まっていく一方であった。
「くっ」
激突から達也は体勢を整えるのがやっとの状態だ。
「摩利ーーーーー!!」
真由美の叫びが廊下に響き渡る。
「まてーーーーーーい!!」
その声でルゥ・ガンフゥは摩利の首根っこを掴んだまま、後ろに振り向き一瞬動きが止まる。
その声の人物は廊下の向こうから猛スピードで走り込み、そのまま壁伝いに走り、ついには天井を走った。
そして逆さまの状態で摩利を掴んでいるルゥの腕を蹴り飛ばし、その勢いで摩利が空中に放たれたところをキャッチし抱きかかえ、1回転しながら真由美の前にカッコ良く着地したのだ。
そう、横島が助けに来たのだ!!
それは一瞬の出来事、まさにピンチに現れる80年代ヒーローものの様な登場だ!!
横島は抱きかかえている摩利に回復のための霊気を送りながら真由美の前に下ろす。
「摩利!!」
真由美は直ぐに摩利に縋りつく。
「…よ…こし……にげ……ろ」
意識朦朧とした摩利は横島の手を弱弱しくつかんでいた。気道も潰され声も上手く出ない様だ。
その間も、横島はルゥ・ガンフゥを睨み付け、眼力でけん制しながら霊気を送って摩利を回復し続けている。
「大丈夫ですよ」
その間に体勢を整えた達也が横島の後ろまでようやくやって来た。
「CAD無いのによく持ったな、摩利さんと真由美さんを頼む」
横島はシリアス顔で達也にそう言った。
「……横島」
「ん?なんだ達也?」
今の横島はシリアス時の横島。キリッとした顔で達也に聞きかえす。
「なんでパンツ一丁なんだ?」
「…………お前のせいじゃーーーーーー!!」
横島は肩をプルプルと震わせ、涙をチョチョぎらせながら叫ぶ!!
そう、今の横島は達也にもらったパンツ(トランクス)一丁なのだ!!
折角カッコ良く決めてもすべてが台無しになった!!
先ほどマッチョ鑑別官ズにパンツ一丁にさせられ、それさえも脱がされそうになった。
なにもかもが達也が横島のパンツにシスコンセンサーを忍び込ませたせいだったのだ。
そして、達也がパンツに仕込みをしていたことが発覚したと同時に施設全体に緊急警報が鳴り、横島はそのままの格好で、達也達を探す羽目になったのだ。
真由美はぐったりしている摩利を抱きしめる様にしていたが、達也の一言でパンツ一丁の横島を改めて見て顔が真っ赤になっていた。
「摩利さんと転がってる鑑別官を俺が作る術式陣に運んで、真由美さんと摩利さんを守れ。そんでもって後で覚えてろよ!!」
横島が達也にそう言って下がらせる。地面に手を付き(イの一式、回復術式)と心で唱えると、廊下の突き当り付近床に直径2m程度の回復術式が展開された。
「……わかった」
達也は摩利を抱き上げ、術式が展開された場所まで下がる。
摩利の完全回復まで、敵は待ってくれないための処置だ。
そして、ルゥ・ガンフゥの方から横島めがけて暴風を纏い真正面から突っ込んできた。
「貴様が、フェイ兄弟が言っていた横島か」
「おっさん!よくも摩利さんをいたぶってくれたな!!」
右手を前に突き出し半身になりルゥ・ガンフゥを見据え、迎撃態勢を取る横島。まさに主人公然とした雰囲気を醸し出していてカッコイイのだ!!
……パンツ一丁じゃなきゃ。
第2ラウンド開始だ!!
横島カッコイイハズなのに……
なぜか、こんな事に……
次回は多分決着かな?
ちゃんと戦闘シーン次回は在ります。