横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。


今回は、真夜さんの出番ですが……
結構横島は真面目モードです。

今回、前回に比べさらに文が長くなっております。
最初は二つに分けようかと思ったのですが、いい具合に切り離せそうなところがないため、そのまま投稿いたしました。
まあ、長々と書いちゃって上手くまとめられなかったという事が原因ですが><

またもや、真夜の口調に自信がありません。特に先生呼びはどうなのだろうと


横島、真夜と会う!!

現在、京都国際会議場の警備状況は、何のトラブルもなく順調そのものだった。

 

横島と香取小鳥の警備班は、14:00~15:30に休憩時間を設けられている。

 

「もう少ししたら私たちも休憩時間ね。横島くんお昼一緒にしましょ、私たちもこの会場のレストランを利用してもいいらしいよ」

小鳥はそう言って、昼食に横島を誘う。

 

「たはははははっ、そっすね」

横島は照れ笑いをしながら返事をする。

 

香取小鳥は、第一高校で横島と接する上級生女子では居ないタイプだった。

お嬢様風でも無し、気がやたら強いわけでもない。畏まった口調でもない。気さくで接しやすく、一言で言うと、大人し目だが何処にでもいそうな普通の女子高生なのだ。

エリートやお嬢様が集まる魔法科高校では珍しいタイプと言えよう。

 

 

 

しかし、そこで小鳥の携帯端末に呼び出しが掛かり、内容を確認していた。

「私だけなんだか呼び出しがかかったみたい、要件は分からないけど、ちょっと行ってくるね。長引くかも知れないし、休憩時間が始まったら、レストランに先に行っててね」

小鳥はそう言って横島に手を振り、小走りで駆けて行く。

 

「急がなくてもいいっすよ」

横島はそんな小鳥を見て返事をし、取り合えず、今いる会場のロビーで待つことにした。

 

 

 

そこに、二人の妙齢の女性が横島の前に現れる。

一人は真っ赤なドレスをゴージャスに着こなし、ウェーブのかかった長い髪をふわふわとたなびかせている。色白で妖艶な笑みを湛える美女だ。

もう一人は、カーキ色のブランドスーツに身を固め、ショートカットでキャリアウーマン風の美女だった。

 

もちろんこの二人は、横島に声を掛けられるために現れた十師族の長、前者が四葉真夜、後者が六塚温子である。

十師族の長がこんな人が多いところに出て混乱を招くのではと思われるかもしれないが、秘匿性を重視し一般的に露出しない。それでも企業関係者や軍事関係者からは顔が知られているが、この二人に至っては殆ど知られていない。六塚温子は近年に長になったばかりであり、さらにオーナーをしている会社でも、対外的に接触する機会がない。四葉真夜に至っては、全くと言っても過言ではないほど表の世に関わっていない。半分世捨て人の様でもある。

まあ、軍関係者の上層部には流石に知られているのだが……

あと、もちろんではあるが、彼女らにはガーディアンと言われる彼女らの為の護衛が密かについている。

 

 

横島はその二人の女性を食い入る様にジッと見るが……それ以上のアクションを起こさない!!

 

 

妙齢の美女二人は、そんな横島の周りを何度も何度も意味もなくうろうろする。

周りから見れば怪しいことこの上ない。

四葉真夜は笑みを湛えながら思う。

(アピール度が足りないのかしら?)

どうやらかなりズレた感性をお持ちの様だ。

六塚温子は内心、この羞恥プレイの様な状況に赤面する思いであった。

(は、恥ずかしい、早く終わらせて帰りたい)

 

 

 

その様子を魔法師協会京都本部で見ていた他の十師族の長たちは、憐れんだ目で彼女らをディスプレイ越しに見ていた。

(この結果は当然なのだが……)

 

余りにも憐れな二人の姿に、同性の二木舞衣はハンカチを取り出し、目じりを拭いていた。

(あなたたちは頑張ったわ、もういいわ、戻ってきなさい)

 

男性陣も2人の憐れな姿が流石に見るに堪えなくなり、それぞれディスプレイから目を逸らす。

(見るに堪えん。流石にこれは……早く何とかしなければ)

 

 

そんな矢先、横島は何故かホッとしたような表情をして、一度下を向いてから、あの二人に近づき……

 

 

「ボク横島!!綺麗なおねえさん、カッコイイおねえさん!!ここで何をしてるんですか!?よかったらボクとあのレストランでお茶しませんか!!」

 

 

ついに何時もの調子で声を掛けたのだ!!

 

 

真夜は嬉しそうに微笑みそれに答えた。

「まあ、わたくしたちも丁度、どこかで休憩をしたいと思っていましたの」

 

六塚温子も肩の荷が下りた様にホッとした表情をして答えた。

「そうですね。せっかくだからご一緒させて下さい」

 

ちょっと無理がある返答だが仕方がない。二人共お嬢様で世間知らずなのだ。

 

 

 

 

それをモニターしていた十師族の面々はその様子にホッとすると同時に何故今のタイミングなのか訝し気に思う。

真夜と温子が横島の前に現れてから、ゆうに10分は立っていたからだ。その間横島は何もアクションを起こさず、真夜達に目をやっていただけなのだ。

 

 

 

 

会場に併設しているレストランに入り、横島は美女2人を席に促す。

 

「ボク横島、東京の第一高校から来て、会場の警備担当しているんです!!あれ?綺麗なお姉さんの方は昨日どこかであったような?」

横島は着ている制服を指さして、自己紹介をするが、真夜について昨日すれ違った事を思い出した様だ。

 

「ウフフフフッ、そうかもしれませんわ。わたくしは…真夜、此方はお友達の温子さん、横島さんとおっしゃるのですね。第一高校からとは魔法の腕も覚えがあるのですね」

真夜はそうとぼける様な言い回しをしていたが、横島と話す時は何故か嬉しそうにほほ笑みを絶やさなかった。

 

「その、警備担当と言ってたけど、私たちと居て大丈夫なの?」

温子の方は、真面目にそんな事を言ってしまっていた。

 

「綺麗なおねえさんが真夜さんで、カッコイイおねえさんが温子さん!!ちょうど休憩時間になったんで大丈夫っす!!」

横島は元気よく答える。

 

「綺麗だなんてありがとう横島さん。わたくし、あまりこういうところに来ないので、迷ってしまっていたの、だから声を掛けていただいて助かりましたわ」

真夜は終始微笑んでいた。

 

「こんな綺麗なおねえさん達が、こんな面白くもなんともなさそうな所にどんな用事できたんですか?」

横島も楽し気な雰囲気を醸し出しながら、美女二人に聞いた。

 

「え?面白くないって、これは魔法科高校にとって大事なイベントよ。私も卒業生だからその事はよく知っているわ」

温子は横島の言動に訝し気に思いながら真面目に答えた。

 

「温子さん折角のお話なのに、そんなつまらないお話はよしましょう」

真夜は温子にやんわりとその話題を止める様に言う。

 

 

 

 

「そこまでだ、二人共」

そんな話の間に不意に声が掛けた人物がいた。

九島烈が横島たちの席の前に現れたのだ。

 

真夜は、一瞬の不快な顔をするが直ぐに元の微笑んだ顔に戻る。

 

温子は明らかに狼狽していた。

 

「なんだよ、じいさん、せっかく美女二人と楽しいお話をしようと思ったのに!!」

横島はそんな九島烈に軽口を叩く。

 

「ふむ、横島くんも気がついておろう……ここでは人の目があり過ぎる、別室についてきたまえ」

そう言って、横島たちを席に立つよう促す。

 

「あら、先生。若者同士でお話をさせていただけないのですか?」

真夜はおどけた様に言いながら九島烈を見上げる。

真夜はその昔、九島烈に師事していたことがあるのだ。

 

「若いか……まあいい、君たちも来たまえ」

 

「強引だな、じいさん」

横島は愚痴をこぼす。

 

「あら、仕方ないですね」

真夜もそう言って席を立ち九島烈について行く。

温子もそれに習い真夜の後について行った。

 

 

京都本部の十師族の方々は、九島烈の登場で九島真言を苦々しく見るが、真言は首を横に振るだけだった。

 

 

そうして、国際会議場内にあるVIPの応接間に通され、高級そうなソファーにそれぞれ座る。

この時既に、魔法協会京都本部の十師族に横島の映像を送り届けることが出来なくなっている。

 

「で、じいさん、なんだよ話って、この綺麗なおねえさん達と知り合いみたいだけど」

 

「横島くん、彼女らは十師族の長だ」

 

「あら、先生、そんな事を言ってしまっていいのですか?」

真夜はワザとらしく驚いたような顔をして九島烈に言う。

 

「私は既に隠居の身だ……横島くんとは対等でいたいのでな」

九島烈は真夜にそう返答する。

 

「ごめんなさいね。だますような事をして、改めまして、わたくしは四葉家当主をしています四葉真夜よ。横島さん」

真夜はそう謝りつつ、自己紹介を改めて行う。その間も微笑を絶やさない。

 

「私は六塚温子、六塚家の当主よ」

温子はさっきの態度とは違い若干ツンとした態度をとる。

 

「へ~、こんな綺麗なおねえさんたちが、当主なんだ!!俺、てっきりじいさんみたいな奴ばっかりだと思ってた!」

横島はいつも通り平然と軽口を叩く。

彼女らが十師族の長を名乗ってもいつも通りなのだ。

普通気後れなどするのが当たり前なのだが……

 

「君は驚かないの?私たちは十師族の長なのだけど」

驚きもしない横島に温子はそう尋ねた。

 

「十師族だからって、取って食われるわけじゃないでしょ……むしろ、おねえさん達にだったら喜んで食べられたい!!」

相変わらずの横島節だ。

 

「あら、まあ」

真夜は一瞬驚いた顔をし、その後は終始嬉しそうにしていた。

 

「あなたねー」

温子は呆れた顔をする。

 

 

「……帰って、十師族の面々に言うが良い、横島くんに小細工は通用しないと」

九島烈は珍しく語気を強くして、厳しく二人に言う。

 

「先生、小細工ではないわ、わたくしは純粋に横島くんと話したかっただけ」

 

「君は気づいていただろ」

九島烈はそんな真夜の言葉を無視し横島に問う。

 

「流石におねえさん達が十師族の長とは知らなかったけど、大きな霊気が会場に接近すりゃ警戒せざるを得ないと言いますか……これでも一応この会場の警備を任されていたんで」

横島は九島烈の言葉に答える。

横島は真夜と温子がこの会場に来る頃からマークしていた様だ。

テロなどを警戒しての事なのだが、横島は京都に入ってからずっと何者かに監視されていた事からも、今回は何時もに増して警戒を密にしていた。

流石十師族の長、霊気(エイドス)の内包している量がやはり通常の魔法師に比べ段違いに高いため、それがあだとなり横島に気付かれていたのだ。

しかし、霊気の雰囲気で殺意や敵意が感じられず、会場に入り、目の前に現れてからも、それは変わらなかった。一応殺意や敵意の偽装を警戒し、密かに詳しく霊視して調べていたのだが、彼女らが害する者では無いと判断。もしや目的は自分ではないかと、声を掛けたのだ。

もちろん真夜や温子のある程度の年齢はこの時に把握済みであった。

 

「わたくしたちの事、気づいておられたのですね」

真夜はワザとらしく驚く表情をする。

 

「最初っから……」

温子は横島にそんな初期から気付かれていた事に驚きを隠せない。

 

「京都に入ってからずっと監視されっぱなしだったし、さっきまでもね。

まあ、迷惑なんでやめて欲しいんですが、他の十師族の方々にも言ってくれませんか?監視されるのはどうも……それと氷室家が狙いなら、俺に当たっても、意味ないですよ。そう言うことは当主通さないと」

横島は途中から口調を変え真夜達に、監視している事をやめるよう言い、そして、氷室家に取り入るのに自分にアプローチしても意味がない事を伝えた。

この手の事は横島に簡単に見破られてしまい逆効果になってしまうのだ。

 

「監視されているって分かっていても、あんな行動が出来るのね」

温子はムスッとした顔で、京都木屋町でのナンパなど数々の行動の事を指して横島にこう言った。

 

「他の方々はどうか知りませんが、わたくしはあなたに会いに来たのですよ」

真夜は微笑みながらそう言った。

真夜の真の目的は横島に会う事にある。どんな形にしろ横島と顔を合わせる事だった。

十師族に情報を伝える云々は方便である。十師族の総意の前で堂々と横島と顔合わせが出来る様にする。これで、今後真夜自身が横島と堂々と会える土壌を作り、一度、認めてしまった以上十師族はそれを公に止めにくくなるのだ。

ナンパをされるなどと無茶もいいリスキーな提案をし、十師族を混乱させつつ、正常な判断が鈍っているうちに実行したのだ。まんまと、十師族全員が真夜の画策に嵌ったのだ。

今頃、弘一辺りはそれに気づき、悔しがっている頃だろう。

しかし、真夜はそれ以外にも理由がありそうなのだが、今は分かりようもない。

 

「綺麗なおねえさん達だったら、個人的なお付き合いならいつでも大歓迎っすよ!!」

横島は先ほどの軽い口調に戻していた。

 

「まあ、お言葉に甘えようかしら、横島さんはわたくしの事をまだ、おねえさんと呼んでいただけるのですね」

真夜は嬉しそうに声を上げる。

 

「今後は横島くんにこのような行いは慎みたまえ、友人に手を出されるのは気分がいいものではない」

九島烈は二人を批判しそう言い放った。

 

「はい、でもわたくしも、先生のように親しみを持って、おねえさんと呼ばれる仲になりたいですわ。横島さんにおねえさんって呼ばれるのはとても新鮮で嬉しかったのです」

真夜は九島烈の言葉に懲りもせずそう言い、色白の顔にはほんのり赤みがさしていた。

 

温子は横島に最初から自分たちの存在に気付かれていた事と、京都から監視者を付けていた事がばれていた事、そしてここまで九島烈に信頼されている事に警戒心を持つのであった。

 

 

「すんません人待たせているんで。昼ごはん一緒に取る約束していたんですよって、うわ!!休憩時間もう終わっちゃう」

横島は思い出したように、香取小鳥と昼食を一緒に摂る事を約束した事を言う。

 

「フフフフフッ、それなら大丈夫よ、お詫びに横島くんの休憩時間を延ばしてもらうわ、もちろん、香取さんもね。わたくしもその席にご一緒させてもらっていいかしら?」

真夜は横島に休憩時間延期引き換えに昼食に同席させる様に言う。

 

「うーん、休憩時間延ばしてもらえるし、おねえさんならいいか」

横島は少し考えたが、了承の返事をする。

 

「私も、同席させてもらおうか」

九島烈は真夜を見やりながら横島にそう言う。

真夜を警戒しての事なのだろう。

 

「さすがにじいさん有名人だから、小鳥さんがびびっちゃうよ。また今度で」

九島烈は一般的に顔も知られている超有名人だ。流石にまずいだろう。

 

「ならば、今晩どうかね」

 

「ああ、いいぜ」

 

「先生ばかりズルいですわ」

真夜は拗ねた様な表情をする。真夜がやると何故か可愛らしい様に見えるから不思議だ。

 

「君は今から行くのではないのかね」

九島烈は呆れた様に言った。

 

 

そして、この後、真夜と横島、小鳥、なぜか温子まで一緒に食事をすることになる。

 

 

会議室の十師族の面々は、真夜から簡単に状況の知らせを聞き、横島に監視がばれていた事と今回の作戦についてもある程度バレていた事に驚き、その事で決定的な亀裂が生じなかった事に一同は一応はホッと肩を撫でおろす。

だが、弘一だけはその報告を聞き憮然とした顔をしていたのだった。

 




結局今回は実質真夜さんの一人勝ちの様な展開です。

真夜さんの態度には含みを持たせていますが、それは何時か展開されるハズ?

ようやくです。ようやく長かった伏線が終了!!

横浜騒乱編、いえ、横浜事変が始まります。

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