誤字脱字報告ありがとうございます。
横島が居ない横浜事変その3です。
ついにあの方が登場です。
真由美達と横島の友人一行は、横浜国際会議場に避難してきた一般市民を引き連れ陸路から、町中のシェルターに向かう事にした。
独立魔装大隊からは藤林少尉と後二人の隊員が護衛として同行してくれることになった。
途中で敵歩兵隊と遭遇戦を何度か行ったが、美月による霊視で事前に敵の居場所が特定できるため、深雪や真由美、雫、ほのかの遠距離魔法で悉く先制攻撃で撃退でき、順調に行軍することが出来たのだ。
「あともう少しでシェルターです。皆さん頑張ってください!」
真由美は一般市民に声を掛け、安堵の声が広がった。
その様子を藤林響子は見て
「さすがですね。真由美さん」
真由美を称賛する。
しかし、角を曲がればシェルターの入口というところまで来たのだが、
「待ってください」
美月は先頭を歩く摩利とレオを呼び止める。
美月は集中し霊気を感じ状況を確認するが少し自信がなさそうだ。
「これ、多分直立戦車だと思います、その角に2機います」
美月はまだ、生物以外のものに対しての察知は十分にはできないでいた。
今回も近距離で更に人が乗っていた事でようやく判断できたのだ。
直立戦車、全高3.5メートルの不格好な二足歩行ロボットの様なシルエットをしている対人用兵器だ。
摩利と真由美は先行して確認。
直立戦車は目的のシェルター群の入口を攻撃していた!!
真由美は深雪と共に、氷結魔法を遠距離から繰り出し、直立戦車を氷の礫で穴ぼこだらけにし、あっさり撃破。流石は高レベルの魔法師である。
シェルターに到達したものの、肝心のシェルターは直立戦車が攻撃した際に入口が破壊され、入る事が出来なくなっていた。
美月は真由美に状況を説明する。
「この周りの建物に大勢の人が隠れ潜んでいます」
あの直立戦車が来たため、シェルターに入る事が出来ず、周りのビルに隠れていたのだろう。
真由美はそれを聞いて、美月に確認をする。
「柴田さん?周りに敵はいませんか?」
美月ははっきりとした口調で断言した。
「はい、敵意は見られません。隠れ潜んでいる人の中に敵はいません」
「凄いですね。その能力は、その目のおかげですか?」
「いえ、それだけじゃないんです。横島さんが鍛えてくれたんです。私の力を伸ばせるようにと」
「よ、横島くんかぁ。ここに居てくれたらどんなに心強かったか……」
真由美はまだあの時の事を引きずっている様だが、今だけはそう思わずにいられなかった。
普段はアレだが、有事の際、どれほど横島が頼りになることかと……
「そうですね」
「よし、そうは言ってられないわね」
そして真由美は覚悟を決めたような顔をして、
「皆さん、聞いてください!!歩ける方は、ここから、横浜市街からの退避を行います!!それに耐えられない方々はここに残り、救援を待ちましょう!!私たちが護衛いたします!!」
ビルに隠れている市民と、一緒に行軍してきた市民と生徒達に大きな声で叫ぶように呼び掛けた。
すると周囲のビルのあちらこちらから一般市民が出て真由美の周りに集まって来たのだ。
そして、藤林響子と摩利や花音、その他生徒と何時もの面々に向かって、
「私はここで待機します。皆さんは歩ける人達を連れて、市外に退避してください。道中は敵に遭遇するかもしれませんから、くれぐれもお願いします」
そう言ったのだ。
それに摩利は噛みつくように真由美に言う。
「真由美!!いくらお前でもひとりでは無理だ!!」
「私は、十師族なの。これは私の義務よ」
そう言ってのけたのだ。
「先輩、私も残るわ」
「ああ、俺もな」
「僕も残ります」
「まだ残っている人が居るかもしれないので私も残ります」
「北山家の輸送ヘリもここに下ろします」
「私も皆と残ります」
「私も残ります」
エリカを筆頭に、レオ、幹比古、美月、雫、ほのか、深雪は真由美に残る事を宣言した。
「当然私も残るぞ!!お前ひとりだとポカするかもしれんからな」
摩利は真由美に微笑みながらそう言った。
「みんな………わかったわ頑張りましょう!!」
真由美は皆の意思が固いことが分かり、そう言った。
「藤林少尉、それでは、退避する方々をよろしくお願いします」
真由美は響子に頭を下げる。
「わかりました。やはりあなたは素晴らしい方ですね。健闘を祈ります」
響子は敬礼して、行軍可能な一般市民をまとめ始めた。
「花音、五十里、桐原、壬生……お前達、そっちの方は任せたぞ」
摩利は退避組のメンバーをそう言って激励する。
「任せて下さい!!」
花音は元気よく返事をする。
「五十里、そいつの暴走はお前が止めてやってくれ」
摩利は花音を見やって笑いながら五十里に言う。
「わかりました。渡辺先輩」
五十里もそう言って笑顔で返事をした。
退避組は横浜市外へ徒歩で脱出するため出発する。
そして、残ったメンバーは
「まだ、周囲に残った市民がいるかもしれないわね。柴田さん確認とれる?」
真由美は美月に尋ねる。
「いえ、私の知覚の有効範囲はそれほど広くありません。明らかに敵意や殺意があれば、かなり広く確認できますが、隠れている人を精密に感知しようとすると半径50m程度です。少し移動できれば何か引っかかるかもしれせん。それと生物以外の探知はまだ苦手でして……」
美月は今自分が出来る事できない事を真由美に説明する。
「わかったわ、今のところこちらに敵が来る気配もないから、柴田さんと数人で周りを見てきてくれない?」
真由美は美月に残された市民の近隣捜索をお願いした。
「わかりました」
美月は快く了解する。
「じゃあ、深雪さんと摩利は残って、後は周囲に気を配りながら皆で捜索してくださいね。くれぐれも無理しない様に」
真由美はそう言って深雪以外の一年生メンバーに探索を任せた。
「じゃ行きますか」
エリカがそう言って、司波兄弟以外の何時ものメンバーがぞろぞろとついて行く。
「美月、凄いわねその能力。たった3週間でそんな事が出来るようになるなんて」
歩きながらエリカは美月に霊視による探査能力について聞いた。
「横島さん、本当に教えるのが上手いのよ。横島さんが言うには、私は現代魔法よりこちらの方が相性がいいみたいなの」
横島が言うには美月は霊能力者寄りの力があるとの事だった。
「私も習おうかしら?」
エリカは軽くそんな事を言う。
「無理無理。お前、ガサツだし、横島だって教えるのきっと大変だぜ」
レオは何時もの様にエリカに軽口を言う。
「何よ!!あんただって、私が教えた奴、なかなか習得できなかったじゃない!!」
エリカもそれに反応して言い返す。もはやこの二人の罵り合いは日常化していた。
「雫はどうなの」
ほのかは雫に横島の修練の結果を聞いた。
「うん、今日戦ってみて、相手の動きが前より良く見えて先読みが出来るようになってたから、大分違う」
雫は手ごたえを感じていた様だ。
「みんな!!七草先輩たちの方に大きな敵意が速いスピードで向かってます。早く戻らないと……これは、まさか!?」
美月は大きな敵意を持った霊気を察知し早口で皆に敵の存在を伝える。
そんな美月の警告に皆、臨戦態勢を取りながら、駆け足で真由美達が居る場所に戻る。幸い、それほど離れていなかったため敵より先に戻れそうだ。
駆け足で戻った一行は迎撃態勢を取り、
エリカが真由美、摩利、深雪に早口で敵襲がある事を伝えた。
「美月がこっちに来る敵をみつけた。一般の人は北側の方に退避して!!」
すると、南側のビルの屋上から、
「あ~ら、直立戦車がやられたから、見に来たら、ウフフフフフッ、あなた達だったの……
あああーーーーーん!!マイラブリー彩芽ちゅーーーわんはどうしたのよん!!会いたいわ~!!
でも、あなた達不幸よね~。こんなところで私たちに会うなんて、あの憎き横島と、ゴリラ女要はいないみたいだし~見たことない顔もいるみたいだけど、雑魚がいくらいようと変わらないし~、ここであったが100年目って奴よ~。華麗な私の魔法を喰らって、まとめて死んじゃって~!!あっ、でもぅ、雫ちゃんはべ・つ・よ!あなたはわ・た・しと、刺激を与え続けるあつーーい夜を毎日楽しみましょう!!」
そう言って、とんでもない変態がクネクネしながら雫に向かって投げキスをする!!
「ななななななによアレ!!」
「ななななななんだアレ!!」
エリカとレオは変態の様子に鳥肌を立たせ、混乱しながらも同時に思わず叫んでしまった。
「なに?そこのニューフェイスは、奇声なんて上げちゃって私の美しさにまいっちゃった?でもダメよあんた達趣味じゃないの!!この醜い肉だるまどもが!!」
その変態はエリカとレオの反応を見てクネクネしながら言い返す。
「兄貴、やっぱあの抱きしめがいがある、あれ?眼鏡してないけど優しそうな子と、あの気弱そうな男もらっていいか?……ん?あの子もいいな、胸の大きくて、かよわそうなお下げの子もついでにもらっていいか?」
その隣でゴツイ体の男が美月、幹比古を見て、相変わらずなことを言う。そして、ほのかを見て、新たなターゲットにしたようだ。
幹比古は身震いし思わず片手で尻の穴を抑える。
「な?なに?なんなのアレ?雫、ねーって?」
ほのかはその両刀使いのマッチョ変態を見て狼狽する。
「あれは何なんだ!!」
珍しく摩利も狼狽していた。
「うーん、なんかおかしな人達ね」
「はい、何かのサーカスの途中で抜け出したのでしょうか?」
真由美と深雪、お嬢様の世間知らず2人組は若干の違和感を感じたのみだった。
雫は一言で答える。
「フェイ兄弟」
そうあの大亜連合の凄腕工作員フェイ兄弟が華麗に復活して舞い戻ってきたのだ。
そして、さらにパワーアップしている様だった……変態性が……
「あれが大亜連合の凄腕工作員?ただの変態じゃないの?」
エリカは明らかに疑いの目を向けていた。
「何だってあんなのが!!」
摩利も雫の一言に驚く。
「フェイ兄弟、絶対許さない。そして今回は勝つ!!」
雫は前回の事を思い出し、燃えていた。
美月はそんな雫をおさえ、皆に指示を出す。横島が前回フェイ兄弟とやり合った時の様に。
「雫さん落ち着いて……、吉田君は横島さんにもらった護符で一般の方々に結界を!!雫さん、吉田くんとフェイ兄を、渡辺先輩とエリカちゃんと西城君、フェイ弟、ほのかさんはそのバックアップで、続いてくる戦闘員の対処と一般の方々の護衛と各員のバックアップを七草先輩と深雪さんでお願いします!!」
「うん」
雫と返事をしフェイ兄を見据える。
「わかった」
幹比古は一般市民が集まっている場所に横島からもらった4枚の護符の内の1枚を飛ばし、広範囲の結界を張り、雫の隣に行きフェイ兄の方を見上げる。
「まかせろ」「了解よ」「任せておけ」
摩利とエリカとレオもそう返事をしてフェイ弟を見上げる。
「わかったわ」
ほのかは丁度美月の前辺りで待機した。
「了解したわ」「美月、まかせて」
真由美と深雪も返事をし一般市民の前に立つ。
そして、
「みなさーーん!!行くわよーーーーん、と――――う!!」
「むん!!」
フェイ兄弟がビルの上から飛び降りてきた。
それに続いて来ていた黒服の戦闘員が8名もワンテンポ遅れて飛び降りてくる。
戦闘開始だ。
そして、一路横浜に高速移動している横島は……
シュゥゥーーーーーーーゥゥーーーーーー
「くっ、俺の個人的な感情で京都を選んだばっかりに…………みんな無事でいてくれ」
自身の神にも勝る霊力が現世に与える影響を出来る限り抑えつつ、横島は木々の間を縫う様に風となり進んでいく。
その進む様子はまるで風の精霊のような印象だ。
優雅にもみえるが、山野山林の中で進むスピードは大凡時速400キロ近くは出ていよう。
す、すみません。シリアス一本ですと言ったのですが、存在自体がシリアスじゃない人がでちゃったので><
横島は現在、文珠が使えない状態です。
過去に自己の都合だけで世界改変(正確には世界分離)を行ってしまった罪の意識、文珠を使う事で並みの神では到底成しえない世界改変までも行えてしまうその恐怖により、意識的に生成できない状態に陥っております。
この辺の所は何れ書ければいいなと思ってます。
美月の霊視、霊力感知について
通常大凡半径50m 巨大な存在や敵意や殺意についてはかなり有効範囲が広くなります。
現在生物以外は感知が苦手です。