横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。


今回は折角盛り上がったフェイ兄弟との戦闘は意外な結末
そして、達也の隊の活躍です。

つなぎのお話です。


最後の文の間にスペースが空きすぎてましたので訂正いたします。


横島、つかの間の安堵!!横浜事変その6

独立魔装大隊が擁する達也を含む飛行部隊は2部隊に分かれ敵襲撃者の迎撃に向かう。

 

達也は侵攻する直立戦車を含む機甲部隊と対峙していた。達也は躊躇なく、分解魔法『雲散霧消』で直立戦車を次々と霧に変えていき、残りのメンバーは随伴する機甲化歩兵をライフル及び魔法で駆逐していく。

 

中隊規模2部隊による挟撃、集中砲火を受け、大隊のメンバーが傷つくも達也は再成魔法を使い一瞬で元の状態に戻す。まるで、死兵の様に、撃たれても撃たれても、達也の再成魔法で次々と復活していくのだ。

 

そして、敵兵士に情け容赦なく、分解魔法『雲散霧消』で消滅させていく。

 

再成により死ぬことは無い兵士。分解により、敵兵士・兵器が次々と音もなく消されていく。達也がいるだけで、一個魔法師団に匹敵するかもしれない。

 

 

遠方で、退避組だったはずの花音、五十里、桐原、紗耶香は敵と対峙し傷ついていた。五十里に至っては、致命傷であったが、達也はそれを確認し、降り立ち、致命傷の五十里の重傷を再成魔法で復活させた。

 

この再成魔法、リスクが無いわけではない、サイオンが切れると使えないのは当たり前なのだが、再成する際、対象者の受けた傷による痛みや苦しみ続けた時間分を一瞬に凝縮してその痛みを味わうのだ。普通の精神ではとても耐えられる代物ではない。

しかし、達也はそれを平然とやってのけていた。まるで痛みなど感じないかのように……。

 

 

 

 

 

一方フェイ兄弟との戦闘。

 

美月は焦っていた。

どう考えても、分が悪いのだ。

 

フェイ兄と対峙している深雪、真由美、雫、幹比古は一見膠着状態に見えるが、フェイ兄は精神的に優位に立っており、余裕すら感じられた。

 

フェイ弟と対峙しているエリカ、レオ、摩利、ほのかは、明らかにエリカたちの疲弊が目に見える。均衡が崩れるのも時間の問題であった。

 

美月は状況を見ることが出来るが、やはり実戦不足のうえ、付け焼刃の知識だ。横島の様にフェイ兄弟を出し抜けるだけの指揮が取れようはずもなかった。

 

 

そして、遂に均衡が破られた。

フェイ弟との戦闘で、レオはエリカを庇って、まともに攻撃を喰らい、吹っ飛びビルの壁に激突したのだ。意識はあるようだが、防いだ腕があらぬ方向に曲がっていた。

 

「レオ!!」

エリカは叫ぶが、その隙にフェイ弟はエリカに迫り一撃を食らわそうとする。

 

 

しかし、そこに思わぬ声が掛かった。

「撤退よ!!」

フェイ兄がフェイ弟に大声で撤退の指示を出したのだ。

 

フェイ弟はそれに反応し、エリカに喰らわせるはずの剛腕を止め、フェイ兄を見る。

「兄貴?」

 

フェイ弟は明らかに有利に立っており、フェイ兄も特にダメージも喰らっていることもなく、不利な状況にも陥っていない。それどころか、戦闘事態も優位な状況であったはずだ。

なのにこのタイミングで撤退の指示を出したのだ。

 

「お遊びはおしまいよ!!」

 

「う…分かった」

フェイ弟はしぶしぶそれに従う様だ。

 

深雪と雫はそんなフェイ兄弟に向かって

「待ちなさい、逃がさないわ」

「まだ」

そんな事を言っていた。

 

 

「はぁ、本当に何もわかっていないわね。あんた達、このままやり合っていたら、あなた達全員倒れていたわよ、こっちは命令だから撤退するだけだし。命拾いしたわね」

フェイは呆れたような顔をして言う。

フェイ兄にはこの直前に達也達飛行部隊による味方形勢不利の報告と共に撤退命令が出されていたのだ。

 

 

美月はホッとする。このままやり合っていたら、フェイ兄の言う通り、間違いなくやられていただろうことは想像できたからだ。

「深雪さん、雫さん、落ち着いて」

 

 

「まあ、精々生き残りなさいな~、特に雫ちゃんはね!!」

フェイ兄はそう言って、雫に投げキスをし、兄弟とも何人かの部下を担ぎ、加速魔法であっという間にビルの向こう側に消えて行った。

 

 

「私たち……助かったの?」

真由美はそう言って、肩を撫でおろす。

その隣で、幹比古も疲労困憊な表情だが、ホッとした顔をしていた。

深雪と雫も下を向いていた。

深雪も雫もわかっていた。このまま戦いが継続していれば負けていた事を、そして、今回は運良く助かった事も。

 

 

フェイ兄弟と入れ替わる様に達也が上空から現れた。深雪たちの元に空から降り立ち、厳ついヘルメットを取る。

「深雪……大丈夫か」

 

「ええ、お兄様、フェイ兄弟を逃がしてしまいました。……いえ、お兄様の部隊がこちらに来られたのを察知し撤退したようです。不利だったところを助けていただきありがとうございます」

深雪は俯き加減で、達也にそう言った。

 

「無事でよかった」

 

 

しかし、離れた場所では

「レオ!!しっかり!!」

エリカが重傷を負ったレオを横にさせる。

 

「痛てて……耳元で怒鳴るなよ。流石に痛いな」

意識はあるようだが、自力で立ち上がる事は出来ないでいた。

 

 

深雪はエリカとレオの様子を見てから、達也を見上げ

「……お兄様」

と目配せをする。

 

達也はそれに頷き。

レオに近づいて行く。

 

「…よお、達也、なんだその黒ずくめな格好は……」

達也に気が付いたレオは痛そうにしながらも達也の戦闘用スーツに突っ込む。

 

「た、達也くん?」

エリカは達也がレオに手をかざすの見て何をしようとしているのかわからなかった。

 

すると、レオのあらぬ方向に曲がった腕が元に戻り、傷だらけだった顔がスッカリ綺麗になっていたのだ。

 

「な?」

「え?」

その様子を見ていたエリカと摩利は驚きの声を上げる。

 

レオは立ち上がり先ほどまで重傷だった自分の体が元通りになっていた事に驚く。

「何ともないぞ?達也、これはどういうことだ」

 

達也はそんなレオの疑問に答えず。

「いま、俺たちの部隊が敵を押し返している。制空権も取っている事だ。この戦いももうすぐ終わるだろう」

そう言って、ここに集まって来ていた深雪と真由美達やレオの周りにいるエリカ達を見渡し、ヘルメットをかぶり、飛んで戦場に戻って行った。

 

深雪はそんな達也の後ろ姿を見て

「ご武運を……」

祈っていた。

 

 

 

「深雪……達也くんはレオに何をしたの?」

「そうだ、一瞬で傷が修復したように見えたのだが」

達也が去った後、エリカと摩利は深雪に達也がレオをどうやって回復させたのかを聞いた。

 

 

「再成……兄は、再成魔法を使うBS魔法師です。兄は西城くんに再成を使ったのです。24時間以内ではあれば、エイドスを読み取り、人だけでなく物質をも再成できるのです」

深雪は躊躇しながらも達也のとてつもない能力について話し始めた。

 

 

 

「それって……物凄い能力なんじゃ」

美月は目を丸くしていた。

 

「その代わり、再成に魔法演算領域を殆ど使用しているため、通常魔法能力が著しく低下しているのです」

深雪は下向き加減で話を続ける。

 

「それで、達也くんの能力はアンバランスなのね」

真由美は、達也がすべてにおいて高い能力を有しているが、魔法演算能力だけが劣っている事を指していた。

 

「でも、そんなスゴイ能力があれば、他の魔法が使えなくても……」

幹比古はそう言った。確かに、分解及び再成能力があれば、大概の事は可能であると言えるのだが……

 

「何もリスクなしに再成能力が使えるとお思いですか?兄は、西城君が傷ついてからの2~3分の痛みを再成を施す一瞬ですべて受けていたのです」

深雪は自嘲気味に話す。

 

「「「………」」」

 

その事実に、場は静まり返る。

 

 

 

「……と、とりあえず、脅威は去ったわ、みんな無事だし、一般市民の方々に被害も出なくてよかった」

しばらくして、真由美はその沈黙を破る様に、皆を見渡しそう言った。

 

 

「……しかしあの兄弟、あそこまで強いとはな」

レオはしみじみとそれと無しに口に出す。

 

「大亜連合でも名の知れたプロの工作員だ。命があっただけでも、儲けものだ」

摩利は答える。

 

「なぜ、あのタイミングで撤退したのでしょうか?」

美月はフェイ兄弟が突如撤退したことへの疑問を口にする。

 

「達也さん達の空飛ぶ部隊が来たからじゃないかな」

それにほのかが何気なしに答えるが、美月はまだ疑問がある様な顔をしていた。

 

「何にしろ、私たちもまだまだって事ね」

エリカは自分の実力不足を自覚しさらなる向上を誓い、締めくくる。

 

 

 

 

「脱出用のヘリも、もうそろそろ着くころだわ。戦闘も終息に向かっている様だし、まだ、付近に人が居ないか手分けして確認に行きましょう」

真由美のその提案に皆は頷き返事をし、それぞれ分かれて付近を捜索することにした。

既に戦闘の音はこの付近から大分と遠のいていた。

 

 

 

 

 

 

 

一路横浜に向かっている横島は横浜状況を大まかに気配で感じていた。

その中でも達也を強く感じることが出来た。それだけ達也の存在がそれだけ大きいという事だ。

 

大きな流れとして、戦線を徐々に押し返している様に感じ取り、焦りが和らぐ。

 

「このまま、戦闘が終了すればいいが……しかし、まだ何かある感じがする」

 

京都横浜間の道程3分の2を過ぎ、横浜まで大凡120キロまで迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃横浜港から300キロ離れた海域、深水200mを航行中の大型潜水艦が浮上を開始し始めていた。

その潜水艦に同乗している大亜連合、チョウ・ユンファ大佐は陰鬱な顔をし愚痴をこぼしていた。

「まだ、開発中の試作兵器の実践投入か、上も無茶を言う。試験結果報告を提出するのが早すぎたか、まあ、極めて実戦的なデータ収集が出来ると思えば気が楽になるがな……」

どうやら彼は兵器開発などを行う技術畑の将校の様だ。

 

潜水艦の艦長はチョウ大佐に声を掛けた。

「当艦は浮上開始しており、浮上後は作戦第2段階に移行します」

 

「了解だ。浮上後の他の艦とのリンク及び超高度ドローンの展開状況を確認しろ」

 

「予定では既に超高度ドローンは偽装艦から予定空域に到達しているはずですが、念のためにこちらからも、展開準備をさせます。艦内データ取り準備は整っております」

 

「沖縄の敗北からわずか3年で貴君らの努力の甲斐がありここまで来ることが出来た。しかし今からが実戦である。この艦は実験試験艦ではあるが、わが軍の最新鋭の設備と兵器が搭載され、実戦に耐えうるものと確信する。では諸君らの健闘に期待する」

チョウ大佐は、抑揚のない口調で艦内放送で激励の言葉を船員に掛ける。

 

 

 

 

 

 




次回かな次回だよね、次回からだよねという事で

ようやく、横浜事変の伏線終了。
本当の本当のクライマックスシーンに移ります。



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