第342話 周囲巻き込み型の企み
──海軍本部
「と、言うことで、速達便で届けられたリィンからの報告書がここにあるんだが、ボルサリーノ、一緒に読んでくれ」
「嫌だよぉ!!ちゃんとした報告書を一夜で書き上げたってことでしょう?しかも公式記録として残そうってんでしょお?嫌な予感しかしないよぉ」
「儂だって嫌じゃわい!!!!!(大声)」
元帥サカズキの魂からの巻き込みアタックに大将ボルサリーノが盛大に巻き込まれた。
「大目付も他の大将も諸々出払って巻き込める男がお前以外おらん!」
「冗談じゃないよねぇ〜!?(迫真)」
「マジじゃわい!!」
彼らの手元にあるのは、ドレスローザでドフラミンゴ遊びをしたその夜中に書き上げられ、そのまま送られたもの。
と、言う設定ではあるが──その実、内容はほぼ事前に書かれていた。現地の海賊という手札箇所のページだけ記載せず、ドレスローザに到着する前に既に書き上げられていたものだった。
つまり、最初から結末など決まっていたもの。
「『ドレスローザにおける戦術運用および人的被害抑制に関する報告』」
「タイトルがまともだ……」
「まともすぎて本当に怖い」
──
■目的
本報告書は、ドレスローザ王国において発生した一連の事案について、『広域能力者への対抗戦術確立』および『民間人被害──死者ゼロ名』を達成した避難誘導の実例を基礎として策定するものである。
当該事案は、元王下七武海ドンキホーテ・ドフラミンゴによる長期的支配体制の崩壊に端を発し、『ドフラミンゴの稚拙な統治手法および判断の偏向が、結果として自壊を招いた典型例』として取り上げるため、あくまでも一例としての記録とすること。
──
「ドフラミンゴが馬鹿だから上手くいったんだから鵜呑みにするなよって書いてある……」
「絶対に馬鹿にしようと言う気概を感じる」
──
■詳細
ドフラミンゴは大規模能力による制圧および恐怖統治を実施していた。しかし実戦では『環境要因への対応不足』『優先順位の混乱』『異状性癖』『子供への執着』が確認された。そのため足元をすくわれた虚弱な点が、今回の『ドフラミンゴ失脚』に大きな影響を及ぼしたであろう。(本件は別紙『ドンキホーテ・ドフラミンゴによる統治国ドレスローザ王国崩壊に関しての報告書』にて)
これに対し、海軍は海水運用および小隊単位での分散行動を実施。死者ゼロ名を達成した。
・海水鉄砲による能力干渉
・能力被災者を海水区域へ誘導
・スリーマンセルによる継続的な警戒
・シェルターへの民間人避難
ドフラミンゴは広域能力を展開していたが、局地的対応への反応が遅く、能力規模に対し処理能力が追いついていない様子が確認された。
──
「そっちの報告も怖いんだけど」
「今、ゆっくり書き上げているそうだ………」
「怖いよぉ」
──
■成果
・民間人死者数ゼロ名
・大規模能力への干渉成功
・広域支配下での避難誘導成功
・小規模戦術による継続的優位確保
加えて、強力な能力者であっても、既知の弱点と基本戦術への対処を怠った場合、十分対抗可能であることが確認された。今回のドフラミンゴは愚かにも思考回路の脆弱性が──
……
…………
──
そこから以下は具体的な演習の資料や課題に関してズラズラ書かれている。
「これの何が嫌かって、ここまでの偉業を成し遂げたことで永遠と『海軍の戦術資料』として残るのかほんっっっっとうに嫌じゃ」
サカズキが死ぬほど、否、殺すほど嫌そうな顔をして汚いものを触るように書類を摘む。
「節々からドフラミンゴに対する恨みというか、これ何かしらの呪物とかになっちゃってないかねぇ〜?」
「……この報告書を元に、海軍本部では正式に、大規模能力者戦法である海水戦術を取り入れることになる」
「げぇ」
「つまり、教科書に載るということだ!おそらく、ドフラミンゴへの嘲笑と共にな!」
そこの根回しをしないわけが無い。
「……歴史的偉業だよぉ?そりゃ、偉業だから、政府にも報告するし、世界的な資料になるだろうねぇ。そこにドフラミンゴをバカにする文章が無ければ、喜んでいたよぉ」
「この資料を見て、『ドフラミンゴってどんなことしたんだろう』と調べないわけがない。もちろん国単位で使える戦術だ、自動的に世界政府加盟国への情報伝達は免れんだろう。敵に知られても防ぎようのない、完全策だからな」
「つまり、世界中に知られるってわけだね〜〜……」
しゃぼんで海水を防ぐ、という手は実は世界的に使える手ではない。
シャボンディ諸島の海域を中心とした手段でしかないのだ。つまりほぼほぼの海域で有効打になりうる。
有能なだけに、本当に、有能なだけに腹が立つ。
本当に使えるのだ。
手としては、万能と言っていい程各所で役に立つ戦術だし、今後この海水戦術を改良して戦術を組むことになりそうな予感しかしない。
革新的で、今まで手付かずだった『戦い方』なのに。
「ドフラミンゴの影がチラつく…!」
──ぷるぷるぷるぷる……
突如かかってきた電伝虫。
嫌な予感がするが、立場上出ない訳にもいかず、サカズキはイラつく気持ちのまま電伝虫を取った。
「なんじゃあ!」
『…………サカズキさん』
「む、イッショウか。そっちでなにかトラブルでもあったか?」
『………………麦わらの一味の、堕天使に会いやした』
ドレスローザでの後始末をしていた大将、藤虎から告げられた一言にサカズキもボルサリーノも天を仰いだ。
「知らなんだか」
『えぇ……』
女狐の正体を下手に知らなかった分、そして気配に聡い分、イッショウの衝撃は強かっただろう。
『本来であれば、麦わらの一味やコロシアムの連中に攻撃しなければならなかった場面で、思わず体が動かなくなってしまい…』
わざととも言い訳とも取られそうな弁明を口に出すイッショウに対し、サカズキは極力優しい声で言った。
「ようこそ、海軍へ」
『………………(辞めようかな)』
余談ではあるが、数日後。
海軍にドフラミンゴミームが流行り始めた直後、イッショウは辞表を提出したがマグマに溶かされ無かったことにされた。
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──バルトクラブ海賊団 船上
「酷い…………」
私の反対意見をガン無視で行われた麦わら大船団(わりと全員自由に好き勝手やる方針)が結成されてしまった。
「お前がやってることも大分酷いけどな」
「そんな……!?」
ルフィを海賊王にすると決めて早数年。
ロジャーの存在の大きさを知って早一年。
海賊王にするとは言ったが私の管理が大変になる傘下は、無いものだと、無ければよかったと……!
「うえぇぇぇえんっ!!」
「絶望してるわ……」
「リィンちゃん大丈夫?」
「一味の中で傘下管理が可能な人材私以外全然当てはまらなくて辛き〜〜〜〜っ!!!」
「それはそうね」
「あはは……ごめん頑張って」
「その中でも出来そうな二人がこれなんだもんーーッッッ!!!」
ロビンさんとビビ様は完全拒否の姿勢。
酷いよ、酷いよ。
七武海に最悪の世代にロジャー世代に四皇にって、もう役満なんだよ!私には限界の人数なんだよぉ!
「でもお前、イヤイヤ言っときながら取り仕切ってたじゃねぇか」
ゾロさんの指摘に思わず私はキッと睨みつける。
麦わら大船団の結成直後、私はこのままで自由に解散されるのだけはとてもまずいと考えた。
具体的には、後で海軍に怒らるって意味で。
定期的な連絡、海賊同士の衝突、ナワバリ報告、最低限のルール。幸いなことに、倫理観ぶっ飛び海賊が居なかったので、そこら辺の管理は助かった。あまり雁字搦めにしても守られない管理できないというオチになりそうなので、本当に必要最低限。
『1ヶ月に1回は連絡してくること』
『どこかの海賊、特に億超えと争う時は報告すること。事前の方がありがたいけど、出来ればすぐに』
『ナワバリの報告は必ず。ここは定期的で大丈夫』
『海軍や一般人相手に迷惑をかけないこと』
『……それはそれとして倫理的にやばい海軍がいたら積極的に潰してヨシ。その際は報告』
「前職の職業病が…っ!」
最低限そこら辺しっかりしてくれてたら助かるから、お願いした。
ご管理能力不足で荒れるのは私の胃と世界なんだよぉ!
世界中に私のお目目が出来る、という意味ではすごくとても良いのだけど、その分厄介事を運んでくる気配しかしなくて怖いよ。
このルフィセンパイ号だとか言うちゃんちゃらおかしい船に乗ってるルフィ大ファンの海賊なら嫌がることはしないかもしれ……いやこの海賊も一般人への被害をめちゃくちゃ出す輩だったな。ダメだ何も安心要素がない。
「はぁ……………………」
私の仕事が増える。
私はね、麦わらの一味で雑用やってる以外にも仕事があるんですよ。情報屋
だからせめて、本能に麦わらの一味だけは大人しくして欲しいのに。私の目の前にいるからこそまだ管理出来ているのに。目の前から離れる部隊が出てくるってだけでもう本当に本当に胃が痛い。
「もーーーーーー!!やだぁーーー!!!」
「リーがめっちゃ嫌がってて嬉しい」
「ルフィのいじめっ子!!!!」
私が嫌がれば嫌がるほど嬉々としているお兄ちゃんなんかお兄ちゃんじゃありません。クソ兄貴です。
「………………家出します」
「えっ」
「──家出ぞ!するです!!!」
私の宣言に皆焦っていた。
「まてまてまてまて!リィン!お前が居なくなればこの船はどうやって後半の海を渡るんだよぉ!」
ウソップさんが私にしがみついて泣き叫ぶ。
私は素知らぬ顔をして、アイテムボックスから特大の箒を取り出した。
「うおっ、でかっ!」
「私、箒2本持ちすることにすたです。こちら特注の放棄、『クソデカスミス』くんです」
「名前もうちょっと何とかならなかった?」
ネーミングセンスに関してゴタゴタ言わないで欲しい。
私の取り出した箒は、私が普段使っている箒の3倍はある、本当に大きな大きな箒。
普段の箒が脇差くらいの大きさだとすると、クソデカスミスくんは私の身に余る大太刀サイズだ。持つのもちょっと苦労するサイズだぞぉ。
「ゾウに向かうですよね?」
「え」
私はルフィのビブルカードを引っ掴んでビリッと欠片を破いた。
「あっ、えっと、リー、もしかして……………めちゃおこ、ってやつか?」
「ううんルフィ」
私はニコッと微笑んで首を横に振った。
「──激おこ、ぞり♡」
私は箒に跨った。
「ご、ごめんなさーーーーい!!!!リー!俺が悪かった!!!ごめんなさい!!!」
「シーナ」
「ほーい」
小舟とかじゃなくて誰かの船に乗って行けるんだから、ゾウまで無事に辿り着くことを願っているよ。
私が乗った箒の後ろにシーナが跨り、そして私とシーナの間に──
「は????」
「ではゾウで合流ということで!」
「ちょっと待て妹屋なぜ俺を連れて行く!?」
シーナが引っ捕まえたローさんを載せた。
ドーナドーナ、青い空、そよぐ風、儚いね。
「なぜって、借り?」
「は……っ」
「特大級の借り、ローさん存在する故に。働くすていただきます」
返してもらうよドナドナ。
とりあえず、私はローさんの力が欲しかったので、一旦この移動時間を使って借りを返してもらうこととする。
事前に約束していたからね。うふふ。
私はね、制御出来る範囲の手駒が欲しいんですよ。
「リー!?」
「ではでは、しゅっぱーつ!」
「進行!」
私はクソデカスミスくんに乗って、シーナとローさんと共に海へ飛び出た。
向かう先は──
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「カチコミぞりぃ!患者だせぇ!」
「お前…………速度を…………考えろ………」
「気軽に来て欲しくないんだけどねい!!??」
白ひげ海賊団船長、エドワード・ニューゲートの出身地。スフィンクスだ。
幕間ですね、