2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第343話 恩の押し売りセール

 

「お邪魔しまーす!」

 

 私は白ひげ海賊団の拠点に来ていた。

 

 海軍本部大将(仮)が四皇の本拠店に単身で乗り込んだ上に、今いる白ひげ海賊団の幹部を全員呼び出した。

 

 私の眼前にはほとんどの白ひげ幹部と、その奥に床に伏せる白ひげがいる。

 

 

「…………グラララ……本当にいい度胸をしてるなぁ、リィン」

 

 ちなみにローさんとシーナは外で子供たちの相手をしてもらっている。流石にね、私だけならともかく、部外者はすぐに入れられないから。

 

 私が弱いということは皆さんよーくご存知なので、私一人がここで暴れても速攻取り押さえられるというか。

 流石に無策で殺そうとなんてしないよ。せいぜい内部崩壊が関の山だね。

 

「最近の様子はどうだ?」

「ん〜〜……まぁ、ぼちぼち、ですね」

「魚人島からパンクハザードでは、うちのが世話になったな」

「私こそ。お二人にはお世話になりますた」

 

 あの二人が目撃されたお陰でドフィさんに『白ひげが出向く可能性が高い』と誤認させることが出来た。視界の外側の強敵を無視出来るほど余裕のある盤面では無いため、ドフィさんは無理矢理にでもその外敵に備えざるを得ない。

 おかげで、ローさんを使った『精神入れ替え』の作戦が上手いこと出来たし麦わらの一味の戦力が削れることもなかった。

 

「悪いな、魚人島任せちまってよ」

「いえ、元々交流ぞある国でしたし、しらほし様とも幼なじみですたから!ルフィへの信頼も早くて、麦わらの一味の航海技術は高いです、ご安心ください」

「グララララ……!」

 

 

 

「……それでリィン、今日は何の用だ」

 

 白ひげさんの中で私は娘息子では無い。

 それなりに好印象はあるし何かあれば守ってくれる程度の関係値は築けているだろう。

 

 

 だけど今日ばかりは、その関係値が崩れても仕方ないと思っているんだよねぇ。

 

 

 

 私はニコニコとした笑顔を消し、真剣な顔に変えた。

 

 

 

 とにかく穏便に、とにかく敵対しないように。

 

「本日は、白ひげ海賊団と交渉にまいりました」

 

 必ず優位を保ったまま。

 

 ……我ながら最高難易度の交渉してると思うよ。

 

 

 

「交渉?」

 

 白ひげさんの視線が鋭くなる。

 

 

「はい。端的に言います。……四皇をやめて七武海に入ってください。こちらは私からの推薦状です」

 

 

 しっかりきっちり(騙して)作成して上の許可を貰った勧誘の書状を出すと、マルコさんがギョっとした顔をして私から書状を奪い取った。

 

 ビリッと袋を破り中身を見るマルコさん。そのサイドにいる隊長格も眺めていた。

 

「それは……」

「親父、ちょっと待ってくれねぇかよい」

 

 マルコさんが仰天した顔で私の方を見る。

 

「リィンこれ、()()()()()()宛じゃないかよい!?」

 

 その場から警戒心が高まる。

 この文面から読み取れることは……『白ひげの元から離し不死鳥マルコを独立させ、七武海にしろ』と言っているようなものだ。

 

「……、誤解のないように言っておきます。あくまでも、七武海になるのは『白ひげ』さんです」

「どういうことだァ?」

 

「私の目的は、海軍本部内に信頼できる女狐派閥の海賊を増やすことです。個人的に親しくでき、信頼できる海賊団はここしか無いです」

「ゆっくり順番に聞こう。……なぜ、女狐派閥を増やす必要がある?それは──頂上戦争で現れた女狐と関係があるのか?」

 

 欲しかった問い掛けに私は笑顔を浮かべたを

 

「はい。頂上戦争時、私はくまさんの手によって飛ばされていました。そのためあの場にいた女狐を暫定的に『真女狐』と呼びますね。真女狐は、なんと言いますか……本当の女狐なんですよ。私が生まれる前から存在して、私はあくまでも繋ぎの影武者です」

「……っ!」

「故に、海軍では『偽女狐』の味方が少ないです。だから確実に……──あぁいえ、嘘です。『女狐』を白ひげさん達に守って欲しいだけです。両方」

 

 私の言葉に白ひげさんは眉間に皺を寄せた。

 

「私は海軍に切り捨てられました。ですが、未だに女狐のポストに着いています。だから海軍ではないけれど影響力のある人が女狐の傍に居てくれれば、私は安心して海軍で過ごせます」

「なんで両方だっつった?」

「偽女狐は私です。無論私は私が大事なので守って欲しいです。でも真女狐は……」

 

 真女狐(かれ)は、白ひげ海賊団に縁があるから。

 

「元白ひげ海賊団二番隊隊長の兄」

「エースの……」

「いえ、もうちょっと前の方。光月おでんの兄です」

 

「「「「!!??」」」」

 

 ほぼ全員が驚く。

 特に最も驚いているのはイゾウさんだった。

 

「正確に言うと、光月おでんの奥さんの兄、らしく。間柄をはっきり言うと義理の兄ですね」

「トキのか?」

「あ、奥さんも知り合いでした?お名前までは存じ上げなかったのですが……。兎にも角にも、真女狐は、その、最初目を疑ったというか耳を疑ったというか」

 

 気まずそうに目をそらすと、白ひげさんが笑顔を浮かべた。

 

「──エースだろう。ロジャーのところにいた」

「はい……」

 

 パンパカパーン、大正解!

 

「あの、本当にエースって名前なんです?」

「グララララ!そうさ、最後に姿を見せたって話が出たのは、ロジャーが死ぬ前だからな。リィンが知らないのも混乱するのも無理はない」

 

 だよねぇ。

 そうなんですよ、驚くのも無理はないでしょ?

 

「真女狐は私と同じポジションで座りあっています、敵対するかと思っていたのですが、なんか、私の立場を保護するというか、サポートの形跡が見受けられるんです」

 

 あくまでもエースくんもリィンちゃんも敵対していないよ、可能なら同時に守ってね、そんな感じ。

 

「よって、白ひげさん達には女狐を海賊という立場から守って欲しいです。今まで非合法的に、さりげなく守っていただきましたが。今後荒れる海に、合法的にがっちり協力関係を築きたいと考えています」

「……で、リィンのことだ。宛先がマルコになっているのには理由があるんだろうなぁ?」

「もちろんです」

 

 私はひとつ頷いてマルコさんを見た。

 

「白ひげの看板はたぶん皆さんが想像しているより大きいです。白ひげという重鎮を海軍に気軽に呼び寄せることは──正直無理です。海軍への影響も、頂上戦争の遺恨も、全て。そのため、白ひげの代理人として確実に分かりやすいマルコさんに七武海の会合等に出席していただきたいです」

 

 私の回答にマルコさんは目を丸くしたけれど、白ひげさんは思案顔をしていた。

 

「……。なるほど、なぁ」

 

 すると白ひげさんは豪快に笑い始めた。

 

「グララララッ!!!リィン、お前よく考えたな」

 

 お褒めの言葉なのに私は冷や汗しか流れない。何故ならば──。

 

「──俺が死んでも、マルコがそのまま白ひげの影響力を持ったまま、海軍に座するからか」

「ッ!」

「親父!」

「リィンお前本当に…」

 

 バレるとは、思っていたよ。9割くらい。

 

「……その通り、です…………」

 

 胃がキリキリと悲鳴を上げる。

 白ひげさんの老い先は短い。しかし影響力は計り知れない。

 

 そうなった場合、何が良いかって。最初から白ひげの権力を持ったマルコさんが、白ひげの死後も変わらず影響力を持ったまま私の味方になってくれることだ。

 

 そうすれば死にかけの四皇が海軍の戦力に、ひいては女狐の戦力になるも同然。

 

「問題点がいくつかある。一番デケェ問題点はな、俺の寿命がもうすぐ尽きることだ」

「白ひげさん……」

「お前のその計画に、っ、俺の体がついていけねぇ。地元で療養する他ねぇ俺には、リィンに庇護を与えるまで耐えられん」

 

 白ひげさんは私に微笑んだ。

 

「俺たちにも利益がある。リィンが白ひげの庇護を受けると同様に、遺された白ひげ海賊団の連中や傘下は女狐の庇護を受ける。正直、俺の寿命がもっと長けりゃ考える余地のある提案だ」

 

 

 幹部は、辛そうに、苦しそうに目を閉じている。現実から目を背けたいけれど、背けることも出来ないほど決定的に弱り果てた親父の姿がそこにあるから。

 

 

 生きていて欲しいだろう。

 死なないで欲しいだろう。

 

 終活なんてせずに、ずっとそばにいて欲しいだろう。

 

 頂上戦争で白ひげさんは命を落とさなかった。

 すると世界はどうなる?

 

 苛烈になる?

 白ひげが名前を馳せる時代になる?

 

 現実は静かに終わらせる準備ができるだけだ。

 

 穏やかに、静かに、隔離された世界で息を引き取る為の準備が整っただけ。

 

 

 

 

 

「──以上が、私の求める条件でございます」

 

 

 私は彼らに向かって笑顔を浮かべた。

 

 

 

「私からあなた方白ひげ海賊団に提示する条件はただ1つ」

 

 でもこれは白ひげ海賊団が一番求めている条件だと、私は確信出来た。

 

「寿命です」

 

「──!!!」

 

 白ひげ海賊団の幹部達の顔がバッと上がった。全員が私を見る。

 

「私持ちうる限り最高峰の外科、そして頓服、治療、技術。全て、全てただひとりのために用います」

「それは……」

 

「──リィン!!!」

 

 驚いた白ひげさんを押し退けて、マルコさんが私に近寄り肩をがしりと掴んだ。

 

「病名を理解しているのか!?」

「癌、ですよね」

「ッ!」

 

 込められた力が強くて痛いけれど、痛みを我慢してマルコさんをまっすぐ見る

 

 

 

 私の交渉相手は白ひげさんではない。

 白ひげ海賊団だ。

 

「お願いです、白ひげさん。生きてください。まだ貴方は死ぬ人じゃない。生きて、ください、お願いします……」

 

 情に縋る作戦だ。小さな女の子に泣きそうな顔で生きてと願われて、死ぬと言えるほど冷酷な人ではないだろう。

 

「私と白ひげさんは、夢の先を一緒に見ないといけないんです」

「夢の先……?」

 

「ロジャーの空けた王を、貴方の駒(エース)私の駒(ルフィ)、どちらが取るか。それを見届けないといけないんです!」

 

「生きてください、生きなきゃいけないんです」

 

 貴方が私のおかげで生きれば、白ひげ海賊団は私にずっと感謝をすることになるのだから。

 

 

 あくまでも私の目的は──白ひげ海賊団のクルー。白ひげさんが釣れればラッキーだけど、今後利用できるのは次の世代だ。

 

 だから白ひげさんを勝手に救う。

 エースに知られないようにこっそりこっそり、勝手にしんでいく人を。

 

 私が救ってしまえば勝手に恩を感じるでしょう。

 

()()()に、白ひげさんの命を繋ぎ止めます。……貴方が死にたいと願うなら、話は別ですが」

 

「親父!」

 

 マルコさん達が白ひげさんに詰め寄った。懇願するように。

 

「俺たちからも頼む!船医として情けねぇ話だが、リィンなら可能性はある!俺はまだ、あんたを失いたくねぇよい!」

「頼むよ親父、死なねぇでくれ」

「ちょっとでも、少しでも可能性があるなら縋らせてくれよ!」

「治療を受けてくれ!」

 

「リィンちゃんお願いだ、親父を、親父を助けてくれ」

 

 交渉人の私や白ひげさんを差し置いて、大事な人を喪うものかと幹部たちが説得にかかる。

 

 分かってるよ、少しでも可能性があったのに、白ひげさんの一声で可能性が自ら引いてしまうなら、縋るしかないよね。

 大丈夫大丈夫、分かってるよ、私は白ひげ海賊団の味方だよ。白ひげさんに言われたら仕方ないけど、でも出来れば頷かせたいもの。味方だよ。

 

 

「──可愛い息子に、そこまで請われて、頷けねぇ父親はいねぇなぁ」

 

 

 私はこの交渉に、無事打ち勝った。

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

「あ、リィンおかえり」

「妹屋、どれだけ待たせるつもりだ」

 

 子供たちにまとわりつかれたシーナとローさんがそこにいた。

 

「首尾は?」

「完璧〜」

「さっすが」

 

 同情と不安を煽った上で救いの糸を垂らしているからね。そりゃ勝てるよ。

 

 私の交渉相手は何人もいるけど、白ひげ海賊団の交渉相手は私以外あまりいないだろうし。

 

 それを加味すれば自ずと結果は確定したもの。

 

「海賊の意地が出ればキツかったですけど、幹部の感情を揺らしまくりますたので、揺らぎもあって後押しになりました、完璧です」

 

 懸念点はそこだったんだよね。

 

 

「というわけでローさん、今すぐにオペです」

「は!!!???」

「なんのために医者連れてきたと思ってるんですか?事前に交渉したでしょ」

「──俺には妹屋に恩があるから、代わりに四皇白ひげの病気を治して欲しい、だったよな」

 

 イグザクトリー。よく覚えていらっしゃって。

 

「サクッと治しますよ」

「治せるか治せないかは医者が決める」

「はいはい」

「それに恩があるっていうのも、そりゃドフラミンゴのことは助かってるが、妹屋に恩を受けた覚えは──」

 

 私は驚いて思わず振り返った。

 

「え、ローさん。まだ気付いてない?」

 

 貴方そんなに鈍い?

 嘘でしょ?

 

 そう思いながら振り返れば、驚いたというか図星をつかれたのかローさんは目を見開いた。

 

「…………確信が、持てないだけだ」

「なら聞けば良かったのに。別に、私は何も止めてないですよ」

 

「……。いや、いい」

 

 ローさんは首を横に振った。

 

「その返事だけで、ほぼ答えは出たようなものだ。今は患者の所へ行く。──あの時の話は後で細かく聞くからな!コラさん!」

 

 ビシッ!とシーナに指さしたローさんの姿に、シーナは仮面を外して微笑んだ。

 

「おう、行ってこい。待ってるから」

「妹屋!いくぞ!」

 

 

 ==========

 

 

 

「──癌ってのは基本的に手術で癌を取り除くことが基本の治療方法だ」

「はい」

「浸潤と転移、これを防ぐには早期治療がマストだが、普通なら患者の体力や免疫機能から、手術に限りがある。その点妹屋が俺に目をつけたのは幸いだ。俺なら例えどれだけ切り刻もうと問題ない。ただ、あくまでも目に見える範囲の癌を取り除いていく。漏らしはあるだろう。ここまで転移してるとな」

 

 ローさんがザクザクと癌に犯された細胞や部位、内臓を切除していく。

 

「メモ」

「もちろん」

 

 私は治療経過と処置をメモしていっていた。

 

「外科に関してはローさんの右に出る人はいません。貴方なら後遺症無く手術が可能。放射線だったり手術薬品での後遺症だったりを防ぐだけでも、白ひげさんには大いに役立つと思います」

「あと必要なのは切除から来る合併症の対策とチェック、それから免疫療法の2つ」

「そこに感じては私にツテがあるので」

 

 私はカルテだ。

 ローさんがした手術の情報を元に、次の治療、薬剤処方、全てに繋げる。

 

 私は携帯を取り出していた。

 

 カッカッカッと文字を打ち込みベガパンクへと連絡を繋げる。

 

──という訳です

 

──承知した、定期的な健康診断は行おう。それにしても移植出来る臓器と言われて何事かと思ったがそういう事か

 

 臓器には替えのきかないものもある、そこは人工人間を作成したベガパンクの力を借りる。実は臓器作成の装置を借りている。小難しいことはわからない。

 ベガパンクの脳みそであれば私のメモカルテをきちんと正確に読み解けるはず。そうすれば合併症のリスクはぐんと下がるだろう。

 

 私はベガパンクの指示通り機械を用いて白ひげさんに合う臓器を作成し続けている。

 

 悪魔の実って最高だけど、本当に自然に反している。

 

「ふぅ……………。あと半分」

 

 思い込んでしまえばがん細胞だって私なら何とかなるのかもしれないけれど、そのためには知識が必要だ。

 下手な手は打てないため、切除された肉片を用いて上手いことできないかやってみる。がん細胞だけ抽出出来ないものか……。

 

「妹屋、集中しろ」

「うっす」

「次、内臓の処置。妹屋浮かばせる事が出来るな?集中するから今から切り分ける無事な肉片をお前のところで形を崩さず集めておけ」

「やってみるです」

 

 小さな小さなパズルをやっている気分だ。

 

 私はローさんに指示されるがまま、カルテと手術台と銀トレイと臓器作成役に徹した。

 

──そこで数値を白ひげの血液のデータとして入力すれば、一致率99.9%になるから

 

──0.1はリスクとして大きくないですか

 

──体から拒否反応が出て不適合になったら諦めて。それ以上は技術が追い付いてないから

 

 本当に頭のいい人達って凄すぎる。凄いけど、何とか食らいついてやる。

 

 

 

 

 

 そして当然──

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