『勝ち抜きステージ』でチャンピオンになったクリスに挑むのは、“fine<フィーネ>”と呼ばれるテロ組織のシンフォギア奏者、切歌と調だった。
「チャンピオンに・・・!」
「挑戦デス!」
「・・・っ!!・・・」
ステージの上で二人を睨むクリス。そして二階席で二人を見ていた響達も。
「翼さん、あの子達は・・・!」
「ああ、だがなんのつもりで・・・」
「あの二人だけではない」
「あの子達の両隣を見てみなよ」
切歌の隣の席にマニゴルドが、調の隣の席にカルディアが座席にふんぞり返っていた。
「あの人達は・・・!」
「どうやら、あの二人も来ていたようだな・・・」
「響、あの子達を知ってるの?」
「えっ・・・うん・・・あのね未来・・・」
未だに調達とマニゴルド達を敵だと割り切れない響に変わって翼が立ち上がって説明する。
「彼女達は世界に向けて宣戦布告をし、私達と敵対するシンフォギア奏者だ。そして両隣にいる無頼漢共は、彼女達に協力する蟹座と蠍座の黄金聖闘士・・・!」
「じゃ、マリアさんの仲間なの?ライブ会場でノイズを操って見せた・・・!」
「そう、なんだけど・・・・・・」
歯切れの悪い響を見てレグルス達はアイコンタクトで会話する。
「(響はまだ割り切れない、か・・・)」
「(立花君は優しいからな、未だに割り切れないのだろう・・・)」
「(違うな、立花は“現実”を受け入れたくないだけだ・・・!)」
気づかおうとするレグルスやデジェルと違って、エルシドは響の考えを否定していた。
ーとある埠頭ー
都心から離れた工業地帯にある埠頭、その埠頭に大型倉庫に“fine<フィーネ>の飛行艇が潜伏していた。そしてその倉庫の前に武装した集団が迫ってきた。
倉庫の中に隠してある飛行艇の中に、マリア・カデンツァヴナ・イヴとナスターシャ教授がいた。マリアは自分の為にリディアンに潜入した調と切歌の身を案じていた。
「・・・・・・・・・」
「後悔しているのですか?」
顔を上げたマリアはナスターシャ教授の言葉を否定するように首を横に振る。
「大丈夫よマム。私は私の与えられた“使命”をまっとうして見せる」
ビーッビーッビーッビーッビーッ・・・
「っ!!」
「・・・・・・」
突然警報が鳴り響き驚くマリア、ナスターシャ教授は冷静にモニターを起動させると、監視モニターに特殊部隊の姿が映った。
「今度は本国からの追っ手・・・!」
「もうここが嗅ぎ付けられたの!?」
「“異端技術”を手にしたと言っても、私達は素人の集団、アルバフィカ達ですらこの“情報化の時代”ではほぼ素人と言えます。訓練されたプロを相手に立ち回れる等と思い上がるのは虫が良すぎます・・・!」
「どうするの?アルバフィカは今・・・!」
「こういうが手合いが相手ならばアルバフィカやマニゴルド達の方が扱い方を心得ていますが。仕方ありません、踏み込まれる前に攻めの枕を抑えにいきましょう。マリア、背撃をお願いします」
ナスターシャ教授の言葉にマリアは反抗する。
「っ!!・・・背撃って・・・相手はただの人間、ガングニールの一撃を食らえば!」
「そうしなさいと言っているのです」
「っ・・・!!」
マリアは胸元のペンダントを握りやりきれないと言わんばかりに顔を俯かせる。
「ライブ会場占拠の際もそうでした。マリア、その手を血に染める事を恐れているのですか?アルバフィカ達ならば例え手を血に染めても戦い抜く“覚悟”があります。彼等と、“黄金の英雄”達と対等になりたいならば血に染まる事を恐れてはなりません・・・!」
「・・・マム・・・私は・・・!」
「・・・・・・」
「っ!・・・・・・」
無言に見つめるナスターシャ教授の瞳をマリアは目を反らす事しかできなかった。
ーリディアン音楽院 講堂ー
そして切歌と調から挑戦を受けたクリスは警戒していた。
「・・・・・・」
ゆっくりとステージに向かってくる二人。
「ベー!」
「!・・・っ!!・・・」
クリスに向かってあっかんべーする切歌の挑発ににクリスはムカッとした顔になる。が、クリスの頭に冷たい風が吹いた。
「!?(お兄ちゃん・・・?)」
クリスがデジェルのいる観客席の方を見ると「落ち着いて」と言わんばかりにクリスを見つめているデジェルと目が合う。
「・・・スーーー、フーーー・・・」
デジェルからのメッセージが届いたのか静かに深呼吸して心を静める。そして再び二人の方に目を向ける。
「ベー!」
「切ちゃん、私達の目的は・・・」
クリスにあっかんべーを続ける切歌に調が嗜める。切歌はわかってると言いたげな態度で。
「聖遺物の欠片から作られたペンダントを奪い取ることデース!」
「だったらこんなやり方しなくても・・・」
「聞けばこのステージを勝ち抜けると、望みを一つ叶えてくれるとか、このチャンス逃す訳には」
「おもしれぇ!やり合おうってんならこちとら準備は出来ている!」
切歌の言葉を遮ってクリスが挑発する。調はため息をつくと。
「特別に付き合ってあげる。でも忘れないでこれは」
「分かってる、首尾よく果たして見せるデス!」
「良いぞ!切歌!!」
「やったれ調!チャンピオンの座奪ってやれ!!」
意気込む切歌と調にすっかり客席で観戦モード全開のマニゴルドとカルディアの声援が飛び、切歌は二人に向かって手を振る。
二階席にいた響達は観客がいるので身動きがとれなかった。
「どうしよう、レグルス君・・・」
「ここで動くと周りの被害が出るからな・・・」
「嫌ある意味では、観客を人質に取られている・・・」
「どういう事だエルシド?」
「マニゴルドだ。奴が“その気”になれば観客全員を始末することが出来る」
「っ!話に聞いていた『積尸気冥界波』か!?」
「『せきしきめいかいは』?」
「何ですかソレ?」
響と未来の問にデジェルが説明する。
「蟹座<キャンサー>の黄金聖闘士の特殊技だ、簡単に言うと人間の魂と肉体を“強制的に分離”させてしまう技だ」
「魂と肉体を・・・?」
「強制的に分離・・・?」
「つまり、強制的に魂と肉体を分離させ殺すと言う事だよ」
「一滴も血を流させる事なく相手を殺す蟹座<キャンサー>の恐ろしい技だ」
「「・・・・・・!?」」
レグルスとエルシドの捕捉で意味が分かった二人に戦慄が走った。つまり、マニゴルドがその気になれば観客全員を殺す事が出来ると言うことなのだ。
「分離された魂はどうなるのだ?」
「“あの世とこの世をつなぐ死界への入口”、『黄泉比良坂』へと送られ、死者の世界へ送られてしまう」
響と翼とレグルス達が目を向けるとマニゴルドとカルディアは不遜な笑みを浮かべ、マニゴルドは“人差し指を立てた”拳をヒラヒラと見せびらかしていた。
『下手な真似すんなよ・・・』
マニゴルドの無言のメッセージに響と翼は歯痒そうに下唇を噛み、レグルス達は無言で睨んでいた。
ーマリア達のアジトー
その頃、マリアとナスターシャ教授は。
「“覚悟”を決めなさい、マリア!」
「・・・・・・!!」
未だにマリアは“覚悟”を決めかねていた。
ーリディアン講堂ー
そして切歌と調のステージが始まる。
「それでは、歌っていただきましょう!・・・え~と」
司会者の子を無視して自己紹介をする二人。
「“月詠 調”と・・・」
「“暁 切歌”デス!」
「OK!二人が歌う“オービタルビート”、勿論ツヴァイウィングのナンバーだ!」
それはかつて“天羽 奏”と“風鳴 翼”が組んでいたデュオ、“ツヴァイウィング”の曲だった。音楽が流れ、ステップを刻む二人。
「っ!?この歌!」
「翼さんと奏さんの!」
「なんのつもりの当て擦り・・・!」
“片翼との絆”である曲を歌いだそうとする調と切歌を翼は探るように見つめていた。
ーマリア達のアジトー
講堂でミュージックが流れ切歌と調が歌い出すと同時に、マリア達の潜伏していた倉庫の壁が爆破される。
「っ!!」
「・・・!?」
二人がモニターを見ると特殊部隊が突撃しようとする姿が映った。
「始まりましたね。さぁ!マリア!」
「・・・・・・(どうすれば良いの・・・アルバフィカ・・・!)」
この場にいない、自分がいなくなるようにした相棒にマリアは助けを求めた。
ーリディアン講堂ステージー
「「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」」
息の合った歌とダンスを披露し楽しそうに歌う切歌と調、その息の合ったステップと歌声は本物のツヴァイウィングにも勝るとも劣らない。二階席にいる響達もステージ脇にいるクリスもじっと見つめる程。
「やっぱアイツらは・・・」
「ああしてる方が似合うな・・・」
ステージで歌う切歌と調にマニゴルドとカルディアは生暖かい視線で見つめていた。
ーマリア達のアジトー
炎に包まれた倉庫、特殊部隊はマリア達のいる飛行艇に向かってくる。訓練されているとは言え、普通の人間と戦う事に躊躇うマリア。
「・・・・・・・・・あっ!」
だが突然、特殊部隊が炭化していった。
「炭素分解、だと・・・」
呆然とするマリアをよそに突入してきた部隊をノイズが襲いかかり炭素分解させて行く。こんな事が出来るのはただ一人。
悲鳴を上げて分解されて行く人間達を“ソロモンの杖”を携えた“ドクターウェル”が燃え盛る炎の中で不気味に微笑んでいた。
「ドクターウェル・・・!」
「でしゃばりすぎとは思いますが、この程度の相手に“新生フィーネ”のガングニールを使わせるまでもありません。僕がやらせてもらいますよ!」
“ソロモンの杖”からノイズを射出する。応戦する部隊の弾丸をノイズ達がドクターウェルの楯になり防ぐ。
「っ!?」
驚く部隊の前に更にノイズの生み出してけしかける。
「うわぁ!・・・」
「ぎゃあ・・・!」
「があ・・・!」
悲鳴を上げて分解してゆく人間達を無視し、更にノイズを生み出して次々と炭素分解させて行く。その光景をよそに、ドクターウェルはまるで子供が玩具を使って遊ぶように無邪気で、残酷で、しかしウェル博士のそれは、更に“悪意”を滲ませた残忍な笑みを浮かべていた。
「・・・・・・・・・」
モニター越しから聞こえてくる人間達の悲鳴をマリアは、悔しそうに睨みながら聴く事しかできなかった。
「・・・!」
「・・・・・・」
そんなマリアをナスターシャ教授は見つめるが、直ぐにモニターに視線を移した。
ーリディアン講堂ー
そんな事をつゆ知らず、切歌と調は歌が終わり、決めのポーズも決まった二人に拍手喝采が上がる。
パチパチパチパチパチパチパチパチ!
わああああああああああああああ!!
「ブラボー!おお、ブラボー!!」
「クライマックスだぜ二人共!!」
特にすっかり観戦モード全開のチンピラコンビはステージ上の二人を囃し立てる。切歌はにこやかに観客達に手を振り、調は戸惑い混じりに拍手喝采を送る観客達を見ていた。それを見た響達はーーー
「翼さん・・・・・・」
「何故、歌を歌う者同士が戦わねばいけないのか・・・!」
見事なステージを披露し、楽しそうに歌う切歌と調と戦わねばならない現実に翼はやるせないと言わんばかりに見つめていた。
ーマリア達のアジトー
煙が上がった廃倉庫に自転車に乗った野球少年達が近づく。
「凄い音がしてたのここじゃない?」
「どうせ何かの工事だろう?」
「早く練習に行かないと監督に怒られるってば・・・」
「うわああああああああああっっ!!」
少年達の目の前に現れた軍人がノイズに襲われ消滅した光景が広がった。
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
少年達は目の前に起こった現実を理解できず何が起こったのか分からず呆然とする。そんな少年達にふらふらと近づく男、ドクターウェル。
「おや~~~♪」
いやらしい笑みを浮かべながら少年達に近づくドクターウェルにマリアの通信が入る。
「やめろウェル!その子達は関係無い!やめろーーーーーー!!!」
マリアの静止を聞かずウェルは“ソロモンの杖”を少年達に向けてノイズをけしかける。
「うわああああああああああああああああああああっっ!!」
何の関係も無い、何の罪もない子供達の命が奪われた現実にマリアの慟哭が木霊するがーーーーー。
「何の積もりですか、アルバフィカさん・・・?」
「・・・えっ、アルバフィカ・・・?」
ウェルの苛立ち混じりが聞こえ、マリアがモニターを見ると、切歌と調、マニゴルドとカルディアを影から護衛している筈の“アルバフィカ”が子供達を襲おうとしたノイズを消滅させていた。
「・・・・・・・・・・・・」
ロングコートを着用し、水色のウェーブが掛かった長髪を靡かせながら黒薔薇を構えたアルバフィカが子供達の前に現れた。
「「「・・・・・・キレイ・・・・・・」」」
子供達はアルバフィカの容姿に見惚れていた。
「アルバフィカ・・・・・・!」
「・・・・・・・・・」
マリアは涙混じりにホッとした笑みを浮かべ、ナスターシャ教授も人知れずホッとしたため息を溢すが、ウェルだけは不愉快そうにアルバフィカを睨んだ。まるで“楽しい遊び”を邪魔された子供のように。
「少年達・・・すまないが、眠ってもらうぞ・・・」
アルバフィカは毒素をかなり抑えたデモンローズの香気を少年達に嗅がせた。デモンローズは毒素を抑える事で相手の身体を麻痺させたり、相手を眠らせる事ができる。
「くー、くー、くー、くー・・・」
「すー、すー、すー、すー・・・」
「かー、かー、かー、かー・・・」
少年達はまるで安らかに眠るように瞳を閉じ、穏やかな寝息を立てていた。
「どういう積もりだと聞いているのですが・・・?!」
自分を完全に無視しているアルバフィカにウェルは苛立たしげに話しかける。
しかしウェルなど眼中に無いと言わんばかりにアルバフィカは少年達の額に人差し指を立てる。するとアルバフィカの指先が淡く光り、指を離すと通信機でマリアに連絡を取る。
「・・・・・・これでこの少年達から今の“記憶”を消滅させた、目が覚める頃には何でここにいるのかも忘れているだろう。安心しろマリア」
「《そう、良かった・・・》」
「それとマリア、この子達を運ぶのに手を貸してくれ。私は彼等に触れるわけにはいかないのでな・・・」
「《ええ、直ぐに向かうわ!》」
通信越しからマリアの弾んだ声が響くが、直ぐにウェルの癇癪声がアルバフィカの耳に入ってきた。
「どういう積もりだと聞いているのですよ僕は!」
「(ギロッ!)」
「ひいぃっ!?」
詰め寄ろうとするウェルがアルバフィカの一睨みで黙り後退る。
「どういう積もりはこっちの言葉だウェル、嫌な予感がしたから引き返して見れば、なんだこの惨状は・・・!!」
返答次第では殺すとアルバフィカの目が言っていた。
「ぼ、僕はただ、本国からの追っ手を排除していただけですよ・・・“新生フィーネ”に余計な仕事をさせるわけにはいかなかったので・・・!」
アルバフィカの殺気に充てられ、先ほどまでの嫌らしい笑みが完全に消え失せ、まるで悪さをしているのがバレた幼稚な子供のように見苦しい言い訳を始めた。
「追っ手を始末したのは仕方ない事だと納得しよう。だが、無関係な子供達を始末する道理があるのか?」
「そ、それは・・・この場所が知られる可能性を少しでも排除しようと・・・」
バキッ!
「ゲバアァッ!!!」
更に言い訳しようとするウェルは、横っ面をアルバフィカにぶん殴られ地べたに倒れ無様に這いつくばる。
「あっ!・・・あぁっ!・・・ああぁっ!!」
「良いかウェル、追っ手ならばある程度の殺生は容認しよう、彼等も命を落とす事は“覚悟”して任務に赴いているのだからな。だが、次に我々と無関係な人間に危害を加えようものなら、今度は顔面が潰れる程に殴ってやる・・・!」
殴られた頬を抑え、顔に広がる激痛に惨めにもがくウェルをアルバフィカは虫けらを見るような侮蔑の目で見下ろした。
「アルバフィカ!」
するとマリアが倉庫から出てきた。マリアも這いつくばるウェルとすれ違う際に一瞬アルバフィカと同じ侮蔑の目で見下ろすが、ウェルから離れると直ぐに優しい眼差しになり。
「マリアすまない。切歌と調の護衛とマニゴルドとカルディアが暴走した時の為に付いていったのだが・・・」
「いいわ、元々もしもの時に備えての処置だったから。それよりもこの子達を安全な所に運びましょう」
「ならば、私は自転車を運ぼう」
マリアが少年達を一人ずつ抱き抱え、近くの倉庫の壁に寄りかかるように座らせる。アルバフィカは子供達の自転車を近くに置く。
「この格好だと草野球に行く途中だったらしいな」
「悪い事しちゃったわね」
「だがまぁ、許して貰うしかないな・・・」
「そうね・・・」
少年達に申し訳ないと言わんばかりの笑みを浮かべ、アルバフィカとマリアは少年達を優しく見つめていた。
「~~~~!!~~~~!!~~~~!!」
「・・・・・・・・・」
だが、アルバフィカとマリアをウェルは鼻息荒く歯軋りしながら忌々しいと云わんばかりの瞳で睨み、ナスターシャ教授は久しぶりに見るマリアの笑顔を優しく見つめるが、直ぐに顔を引き締め、切歌と調、マニゴルドとカルディアに連絡を送る。
ーリディアン講堂ー
「チャンピオンとてウカウカしてられない素晴らしい歌声でした!これは得点が気になるところです!」
司会者の女子生徒が審査員席に目を向け、クリスと切歌と調も審査員席を見るが。
「二人がかりとはやってくれる!」
憤然とするクリスだが、切歌と調、マニゴルドとカルディアの耳の通信機からナスターシャ教授からの連絡が入る。
「《アジトが特定されました》」
「「っ!?」」
「《襲撃者を退ける事は出来ましたが、場所を知られた以上、長居はできません。私達も移動しますのでマニゴルド、『黄泉比良坂』を通ってこちらの指示するポイントに移動してください》」
「《了解・・・》」
「《尾行されないようにしねぇとな・・・》」
マニゴルドとカルディアは了承したが、切歌と調はーーーーー
「そんな!あと少しでペンダントが手に入るかもしれないデスよ!」
「《緊急事態です、命令に従いなさい》」
そう言ってナスターシャ教授は通信を切った。
「・・・」
「・・・」
切歌は歯痒そうに顔を俯かせるが調が手を引き、直ぐにステージから立ち去る。
「さあ!採点結果が出た模様です・・・あれ?」
「お、おい!ケツを撒くのか!?」
調に引っ張られながら切歌は。
「調!」
「マリアやアルバフィカがいるから大丈夫だと思う。でも、心配だから・・・!」
「・・・・・・」
調の心境を理解する切歌は黙ってしまった。そしてそのまま出口でマニゴルド達と合流し、その場を離れるのを確認したレグルス達と翼は立ち上がり。
「追うぞ、立花・・・!」
響も立ち上がり未来に目を向け。
「未来はここにいて、もしかすると戦う事になるかもしれない・・・!」
「う、うん・・・」
立ち去る響を見送りながら、未来は祈るように手を合わせ。
「響・・・やっぱりこんなのって・・・アスミタさん・・・私、どうしたら・・・」
この場にいない“神に最も近い黄金”に未来は問いかけていた。
ーリディアン露店路ー
露店から離れる調達の赤と青の大きな鯨の模型が横切る。
「クソ!どうしたものかデス!」
「焦んなっつの・・・」
悪態付く切歌の頭をマニゴルドがポンポン叩く。鯨の模型がいなくなり直ぐに走り出そうとする一同の前に翼とエルシドが立ち塞がった。
「「「「っ!?」」」」
後ろを振り向くとクリスとデジェル、響とレグルスが挟み撃ちにした。
「切歌ちゃんと調ちゃん、だよね?」
「マニゴルド、カルディア、通さないよ」
「!・・・」
「六対四、数の上ではそっちに分がある。だけど、ここで戦う事で、貴女達が失う物の事を考えて・・・」
「こっちはいつでもOKだけどな・・・!」
調とカルディアは一般生徒や来訪客の方に目を向ける。
「お前ら!そんな汚いこと言うのかよ!さっきあんなに楽しそうに歌ったばかりで!」
一瞬顔を俯かせる切歌は前に出て。
「ここで今戦いたくないだけ、そうデス!決闘デス!然るべき決闘を申し込むのデス!」
ゴバ!
「あだっ!」
「アホぬかすな」
決闘を申し込もうとする切歌の頭に肘鉄をするマニゴルド。
「痛ったいデス~」
「どうして・・・どうして!?会えば戦わなくっちゃいけないって訳でも無いわけでしょう・・・」
「「どっちなんだよ!?/どっちなんデス!?・・・///////」」
「「ハモったな♪」」
響のどっち付かずな発言にツッコミを入れるクリスと切歌はお互いを見て顔を赤らめる。レグルスとマニゴルドもの茶化しもハモった。
「決闘の時はこちらが告げる・・・だから・・・!」
「これ以上は、お互い干渉せずにと行こうや」
マニゴルドが指を立てるとマニゴルド達の後ろに小さな“黒い渦”が現れる。渦の向こうには、暗闇の空と荒涼とした大地が広がっていた。響達は唖然とし、レグルス達は目を鋭くする。
「・・・何、アレ・・・?」
「『黄泉比良坂』、あの世とこの世の境いにある死界の世界だ・・・!」
唖然とする響にレグルスが説明する。
「じゃあな・・・!」
「また次の戦場で会おうぜ・・・!」
マニゴルドが切歌を抱え、カルディアが調を抱えて渦の中に消えた。
「『黄泉比良坂』から合流地点に向かったのか」
「積尸気使いであるマニゴルドだからこそ出来る芸当だな」
四人が消えた箇所を見つめる一同に弦十郎からの通信が入る。
「《全員揃っているか?ノイズの出現パターンを検知した。程なくして反応は消失したが、念のために周辺の調査を行う!》」
『承知/はいっ!/分かりました/あぁ!/了解♪/・・・はい・・・』
“戦わなければならない現実”に響は顔を俯かせていた。
ミロとカルディアって実は共演した事あるんですよね、特撮で。