聖姫絶唱セイントシンフォギア   作:BREAKERZ

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聖遺物 神獣鏡<シェンショウジン>

その日の夜、FIS<マリア達>が乗る飛行艇が夜空を飛行し、操縦するマリアは、“フィーネを演じる”ようにナスターシャ教授に命令された当時に思いを馳せていた。

 

* * *

 

その当時、マリアと切歌と調の三人がシミュレーターで夜の市街地を舞台にし、仮想敵のノイズを相手に訓練に明け暮れていた。アルバフィカはその様子を眺め、マニゴルドとカルディアは野次を飛ばす。

 

襲い来るノイズをマリアが槍でノイズを凪払い、調が丸鋸で切り裂き、切歌が大鎌でかっ切る。

 

マリアの前にノイズに紛れて仮想民間人が出てくるとマリアはその仮想民間人を避けてノイズを倒すとナスターシャ教授から通信が入る

 

《マリア、この回線は貴女にだけ繋いでます。調と切歌とアルバフィカ達にも、私達の声は届いてません》

 

調と切歌の周りをノイズが囲う。

 

「オラオラ、ヘタってんじゃねぇぞ切歌!」

 

「しっかり戦れや調!」

 

応援と呼べない野次を飛ばすマニゴルドとカルディアの声のおかげで此方の声が聞こえてないのを確認したマリアはノイズを倒しながら応じる。

 

「またあの話? 私にフィーネを“演じろ”と?」

 

《私達の計画遂行の為には、ドクターウェルの助力が不可欠。彼を此方に引き入れるには、貴女の身体にフィーネが再誕したとし、我々こそが遺端技術の先端を所有している事を示せば、彼はきっと・・・》

 

「無理よ! 確かに私達はレセプターチルドレン。フィーネの魂の宿る“器”として集められた孤児だけど・・・現実は、魂を受け止められなかったわ・・・!」

 

“レセプターチルドレン”

米国と通じていたフィーネがFISを組織し、秘密裏に自身の転生先の器として集められた孤児、それがレセプターチルドレン。

 

「今更そんな!」

 

マリアが槍から放たれたエネルギー弾が仮想民間人に当たり消滅した。

 

「あっ!!?」

 

「何をやっているマリアッ!」

 

アルバフィカの怒号に切歌と調も、マリアの方を向く。『Failed<失敗>』と表示が現れて仮想空間が消える。

 

パンパンパンパンパンパン・・・

 

すると訓練場に手拍子が聞こえ、全員が目を向けると、灰色の髪に白衣を着た科学者風の男性、ドクターウェルがいた。

 

「シンフォギアシステム、素晴らしい力だ。そして適性の薄い君たちにも授ける僕の改良したLiNKERも、この力をもってすれば、“英雄”として世界を・・・フフフ」

 

嫌らしい笑みと手つきで調と切歌の身体を撫で回すドクターウェルに調と切歌、それを見るマリアとモニター越しのナスターシャ教授も不快そうに顔を歪める。

 

「おいコラ、おっさん・・・!」

 

ドガッ!

 

「うわっ!」

 

マニゴルドがドクターウェルの脇腹を軽く蹴って調達から引き剥がし、カルディアとアルバフィカも二人を守るようにドクターウェルの前に立つ。

 

「嫁入り前の娘に気安く触ってんじゃねぇよ。一応コイツらも女の子なんだからな・・・!」

 

「理知的な男性を気取るならそれ位の配慮と気配りをして欲しいモノだな。我々の盟友にも理知的かつ理性的な男がいるが、君のように無礼な態度はしない・・・!」

 

「嫌~、それはそれは失礼しました。以後気を付けますよ、“黄金の英雄”の皆さん。それでは、僕はナスターシャ教授へ挨拶があるのでこれで」

 

脇腹を擦りながらドクターウェルは張り付けたような笑みを浮かべたまま訓練場を退出する。

 

「あれが婆さんが言っていたドクターウェルか・・・」

 

「無礼な男だ。マリア、あんなのを引き入れるのか・・・?」

 

「言いたい事はわかるけど、仕方ないのよ。あの男の作った改良LiNKERは、あの男にしか作れないから・・・」

 

「たくっムカツク野郎だぜ。切歌と調を“おもちゃ”にしていいのは、俺とカルディアだけだってのによ・・・!」

 

「全くだぜ・・・!」

 

「「そんな事誰が決めたの(デェスか)!?」」

 

マニゴルドとカルディアの言い分にツッコミをシンクロさせる調と切歌。

 

 

* * *

 

 

「(だけど、マムはこれ以上フィーネを演じ続ける必要は無いと言った・・・“神獣鏡”と“ネフェリムの心臓”・・・フロンティア起動の“鍵”が揃った今、どうしてマムはこれ以上、嘘を付く必要は無いと言ったのか・・・?)」

 

「マリア・・・」

 

「アルバフィカ・・・」

 

コックピットに入ってきたアルバフィカにマリアは視線を向ける。

 

「今、切歌と調の検査が行われている」

 

「そう・・・」

 

「ウェルが無理矢理二人にLiNKERを過剰投与した悪影響が無くなっていると良いがな・・・」

 

「・・・・・・」

 

「もうすぐ、“フロンティア”か・・・」

 

レーダーに『FRONTIER』と表示された島が表示されていた。

 

ー検査室ー

 

その頃検査室では、ドクターウェルとナスターシャ教授、調とマニゴルドとカルディア、そしてキャミソールにホットパンツとラフな格好をしている切歌がLiNKERの過剰投与による検査を受けていた。

 

「オーバードーズによる不整数値もようやく安定してきましたね」

 

「良かった、これでもう足を引っ張ったりはしない・・・」

 

「LiNKERによって奏者を生み出す事と同時に、奏者の維持と管理も貴方の仕事です。よろしくお願いしますよ」

 

「こっちの奏者を余り危険な目に合わせんなよな。只でさえ戦力はキツキツ何だからよ・・・!」

 

「分かってますって、勿論貴女の身体の事もね・・・!」

 

「・・・・・・」

 

「「(この毒蛇野郎が・・・!)」」

 

LiNKERの過剰投与をするなと遠回しに釘を刺すナスターシャ教授とカルディアに、ドクターウェルも遠回しに「ナスターシャ教授の生命を握っているのは自分だ」と嫌らしい笑みを浮かべと慇懃無礼な態度を取る、ナスターシャ教授は睨み、マニゴルドとカルディアはドクターウェルを汚物を見るような目で内心毒づく。

 

「・・・・・・・・・」

 

ただ一人、切歌は浮かない顔をして昼間の出来事を思い返していた。『自分の手から現れた障壁が、調達を守った出来事』を。

 

「(あれは・・・アタシのした事デスか・・・? あんな事、どうして・・・? あれは・・・)」

 

切歌の脳裏に、自分を冷たく見据える、巫女装束のような民族衣装のような衣服を纏う女性、“フィーネ”の姿が浮かんだ。

 

「っ!?」

 

得も知れない恐怖に切歌は戦くが・・・。

 

「オラ、いつまでンな格好してんだ。とっとと服着やがれ!」

 

「ウワッ!」

 

切歌の頭に服を投げ渡すマニゴルド。

 

「マニゴルド! 何するデスかぁ!!」

 

「うるせぇなぁ、たくっ・・・!」

 

マニゴルドが切歌に服を着させようとすると、誰にも気付かれないように切歌の耳元でソッと呟く。カルディアはドクターウェルから見えないように遮る。

 

「(ボソッ)“あの事”に付いては今は黙っておけ、下手をうって皆に、と言うよりドクターに知られたら後々ウザったい・・・!」

 

「(ボソッ)でも・・・」

 

「(ボソッ)俺らの方でも調べとくから、今の所は秘密にしておけ・・・」

 

「(・・・・・・コクン)」

 

他にやり方が無いゆえに、切歌は頷く他なかった。

 

 

 

ー二課・治療室ー

 

そして響がいる治療室では、ベッドに座る響と響の検査状況を見る為に弦十郎とレグルス、エルシドと翼、デジェルとクリスが来ていた。

 

「これは、響君の身体のスキャン画像だ」

 

そこに映っているのは、響の身体に本来は存在しない臓器が生まれていた。

 

「体内にあるガングニールが、更なる侵食と増殖を果たした結果、新たな臓器を形成している。これが響君の爆発力の源であり、生命を蝕んでいる原因だ・・・!」

 

「くっ・・・!」

 

耐えられないと謂わんばかりにクリスは目を閉じた。すると。

 

「アハハハハハ、つ、つまり、胸のガングニールを活性化させる度に、融合してしまうから、今後はギアを纏わないようにしろと・・・ハハハハ」

 

「いい加減にしろ!」

 

無理に笑う響に翼が一喝し響の胸ぐらを掴む。

 

「なるべくだと? 寝言を口にするな! 今後一切の戦闘行為を禁止すると言ってるんだ!」

 

「翼さん・・・」

 

「このままでは死ぬんだぞ! 立花・・・!」

 

目元に涙を浮かべる翼、誰よりも“仲間が死ぬ恐怖”を知っているゆえに翼は辛い思いをしている。

 

「そん位にしときな! このバカだった分かって言ってるんだ・・・!」

 

「くっ・・・!」

 

翼とエルシドは治療室を出て行く。ふとデジェルが呟く。

 

「私もレグルスもエルシドも、仲間を失う事はかなり経験しているが、翼君は一度、最悪な形で仲間を失っているからな・・・」

 

「奏さん・・・・・・」

 

翼は“片翼”を失った、だからこそ仲間を失いたくないと考えていると、デジェルは遠回しに言った。そして弦十郎が話を進める。

 

「医療班だって、無能ではない。デジェルも協力してくれているしな。目下、了子君<フィーネ>が残したデータを元に対策を進めている最中だ!」

 

「師匠・・・」

 

弦十郎が響の頭に手を置き元気付ける。

 

「治療方なんて、直ぐに見つかる。そのほんの僅かな時間、ゆっくりしてもバチ等当たるものか! だから、今は休め!」

 

「・・・わかり、ました・・・」

 

沈んだ顔で響は頷いた。

 

「(それまでFISの奴等が、大人しくしてくれてると良いけどな・・・)」

 

「・・・・・・・・・」

 

レグルスも又、不安を感じていた。デジェルは響の身体に起こった現象を真剣に見つめていた。それを見たクリスはデジェルにだけ聞こえるように呟く。

 

「(ヒソヒソ)医者志望のお兄ちゃんに取っては、興味深いの?」

 

「(ヒソヒソ)確かに、興味深くないのかと問われれば、興味深いが・・・」

 

「(ヒソヒソ)が・・・?」

 

「(ヒソヒソ)この力は危険すぎる、『人体と聖遺物の融合』、これは人間が侵してはいけない、“禁忌の領域”だ・・・!」

 

黄金聖闘士の参謀にして教皇補佐でもあったデジェルは響の身体に起こった現象を危険視していた。

 

 

 

ー二課・通路ー

 

ダンッ!

 

翼は通路の壁を殴る、それをエルシドは静かに見つめる。

 

「(涙など・・・“剣”には無用!・・・なのに、なぜ溢れて止まらぬ!・・・今の私は仲間を護る剣にも能わずと言うことか・・・!)」

 

「(奏の事を思い出したか・・・)」

 

「翼さん・・・」

 

すると通路から緒川がやって来た。翼は直ぐに涙を拭うと背を向ける。

 

「わかっています、今日は取材が幾つか入っていましたね・・・」

 

そう言って翼はマネージャーである緒川と、ボディーガードであるエルシドを置いて一人で仕事に向かう。

 

「翼さん・・・!」

 

「一人でも行けます、心配しないでください・・・」

 

「・・・・・・」

 

自分達を置いて仕事に向かう翼を緒川は静かに見つめていた。だがーーーーーーー

 

「翼、一つ言っておく」

 

「っ・・・!」

 

エルシドに声を掛けられ、翼は立ち止まる。

 

「“友の為”に、“仲間の為”に、“誰かの為”に流す涙は決して“無用なモノ”ではない、お前は“剣”であると同時に“人”なのだ。ソレを忘れるな・・・!」

 

「エルシドは・・・レグルスとデジェルが死んだら、お前は、涙を流すのか・・・?」

 

「・・・・・・俺達は戦争をしていたんでな、仲間の死を悲しむよりも、仲間の死を無駄にしないよう、自分に出来ることを考えるようにしている・・・だが・・・」

 

「だが・・・?」

 

「お前が死んだら、さすがに堪えるかもな・・・」

 

「っ!・・・・・・そうか・・・////」

 

フッとニヒルに笑うエルシドの言葉に少し顔に朱が入った翼はそのまま歩いていった。

 

「(エルシド、お見事です・・・!)」

 

緒川は心の中でエルシドに向かって親指を立てていた。

 

 

 

 

 

ーFIS sideー

 

『FRONTIER』と表示された島に到着した飛行艇は、何もない海面で滞空していた。操縦席に座るマリアとナスターシャ教授、二人の後ろにアルバフィカ達と切歌と調、嫌らしい笑みを浮かべたドクターウェルがいた。

 

「マリア、お願いします」

 

マリアがパネルを操作すると、飛行艇から“何か”が射出された。射出されたソレは空中で変形する。

 

「シャトルマーカー、展開を確認」

 

「ステルスカット、神獣鏡のエネルギーを収束!」

 

飛行艇のステルスを解除すると、“シンフォギアの結晶体”、“神獣鏡<シェンショウジン>”にエネルギーが入り光る。

 

「長野県皆神山より出土した“神獣鏡”とは、鏡の聖遺物。その特性は、光を屈折させて周囲の景色に溶け込む鏡面迷彩と、古来より伝えられる魔を払う力」

 

それを聞いていたアルバフィカは当時の詳細なデータを思い返していた。

 

「(当時、その聖遺物の調査に来ていた調査隊の中に、天羽奏の両親と妹、そして、天羽奏がいた。調査隊は櫻井了子に転生したフィーネが操るノイズによって天羽奏を残して全滅、天羽奏は当時この世界に来て間もなかったシジフォスとエルシドに守られたが、天羽奏の両親と妹もノイズによって亡くなり、そしてフィーネは聖遺物 神獣鏡を発見し、それを米国への信頼を得るための手土産として送った・・・)」

 

「聖遺物由来のエネルギーを中和する神獣鏡の力を持ってして、フロンティアの施された“封印”を解除します・・・!」

 

操作トリガーを押そうとするナスターシャの手をコックピットに入ってきたドクターウェルが掴む。

 

「フロンティアの“封印”が解けると言うことは、その存在を露にすると言うこと。全ての準備が整ってからでもおかしく無いのでは?」

 

「心配は無用です」

 

ナスターシャ教授の言葉にドクターウェルは渋々と手を離す。

 

「リブーバーレイ、ディスチャージ・・・!」

 

ナスターシャ教授がトリガーを引くと飛行艇から一筋の光が発射され、空中に佇むシャトルマーカーに当たると、光は海底深くに伸びていった。それを眺めたドクターウェルは不気味に笑いながら鼻歌でも歌うように呟く。

 

「フフフこれで、フロンティアに施された“封印”が解ける~~解け~~る~~~♪」

 

光が海底に当たると、海底から気泡が溢れ、気泡が海面から吹き出し、水蒸気を上げる。

 

「解け・・・」

 

だが、水蒸気は収まり、海面は静かに波が揺れていた。

 

「解け、ない・・・!」

 

「「・・・・・・・・・」」

 

「「「・・・・・・・・・」」」

 

愕然とするドクターウェルと呆然とする切歌と調、アルバフィカ達は静かに見据える。

 

「と、とけ、解けない・・・」

 

「出力不足です。いかな神獣鏡の力と云えど、機械的に増幅した程度では、フロンティアに施された“封印”を解く迄には至らない事・・・」

 

ナスターシャ教授が静かに言うと、ドクターウェルがヒステリックに喚く。

 

「貴女は知っていたのか!? 聖遺物の権威である貴女が、この地を調査に訪れていて何も知らない等考えられない! この実験は、今の我々ではフロンティアの封印解放に程遠いと言う事実を知らしめる為に! 違いますか!?」

 

「・・・これからの大切な話をしましょう」

 

「んーんッ! んッ! んッ!んッ!んーーーーーーーッッッ!!!(ギシギシギシギシギシギシギシギシ)」

 

ナスターシャ教授の冷めた態度にドクターウェルは歯軋りをしながら唸っていた。

 

「「「(正に、餓鬼だな・・・)」」」

 

まるで欲しかった“玩具”がお預けにされた事に癇癪を引き起こす幼稚な子供のようなドクターウェルを、アルバフィカとマニゴルドとカルディアはゴミを見るように冷めた目で見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




書いていて思ったんですけど、外道博士って身体が大きい『だけ』の“子供”に見えるんですが、シンフォギアの“OTONA”な人達と比べるとより一層そう思います。
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