ドラえもん のび太と仮想世界   作:断空我

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今回、タグにある一つをようやく消化できる。

ちなみに、これはある漫画にあった話をベースとしているので、完全オリジナルではありません。


29:妖界大決戦(前編)

 SAOの帰還者が集まる学校。

 

 それはのび太達が通っていた小学校だった。少子化に伴い、いくつかの小学校が廃校となり、のび太達の学校もその流れに巻き込まれた。

 

 廃校になっていた学校をSAO帰還者が集まる場所として白羽の矢が当たったのだ。

 

「へぇ、学校の裏手に山があるのね」

 

「僕達は裏山と呼んでいるんだ」

 

「ドラえもんと一緒にここで遊んだりもしたんだ。あのでかい杉の木の下は昼寝のおすすめスポットなんだ」

 

 山道を明日奈、和人、のび太の三人が歩いていた。

 

 のび太と和人が通っていた学校であり、授業が始まって数日、この場所を案内しようと決めていた二人によって明日奈は裏山を進む。何より。

 

「木綿季もここを通うからね。みんなで案内できるようにしておきたいね」

 

 明日奈の言葉通り、SAOでともに駆け抜けた仲間、ユウキこと紺野木綿季がSAO帰還者の集う学校へ通うことが決まった。

 

 難病が治り、肉体の方も回復に向かってきていることから担当医師の判断で学校へ通えることが決まったとALO内でユウキは嬉しそうに話している。

 

「ね、ねぇ、キリト君」

 

 前を見た明日奈は目を見開いて指を動かす。

 

「アスナ?」

 

「あ、あれ……」

 

 震える明日奈の視線の先、

 

 茂みの中から伸びている手。

 

「「手ぇ!?」」

 

 目の前に伸びている手に二人は驚き、慌てて駆け寄る。

 

 茂みの中にいたのは十歳くらいのおかっぱの女の子。

 

「キミ!大丈夫!?」

 

「息はある。気絶しているのか」

 

「救急車を呼ぶ!」

 

「待って、僕の家が近いからそこに行こう。ドラえもんならなんとかできるから」

 

「そうだな、のび太、背負えるか?」

 

「任せて!」

 

 少女を背負い、彼らは裏山を駆け下りていく。

 

 そんな三人の姿を闇に包まれている木々の隙間から覗いている不気味な目があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 幸いにもドラえもんは家にいた。

 

 のび太の部屋へ連れていき、気絶している少女を布団に寝かせる。

 

「今時、こんな服を着ているなんて珍しいわね」

 

 明日奈は布団で死んだように寝ている少女をみた。

 

「うーん、変だ」

 

「どうしたんだ?ドラえもん」

 

 困ったような声を上げるドラえもんに和人が尋ねる。

 

「お医者さんカバン、万能薬、万能治療薬、どれも効かないんだ」

 

「え!?」

 

「人間の病気なら治せるはずなのに」

 

「ドラえもんでも、治せないとなるとお手上げだな。病院へ連れていっても期待できないかもな」

 

「僕じゃ手に負えない、助っ人を呼ぼう」

 

「何それ?」

 

 ドラえもんはポケットから金色の輝きを放つカードを取り出す。

 

 見たことのない道具にのび太は尋ねる。

 

「親友テレカさ」

 

「親友テレカ?」

 

「テレカって、テレホンカードか?」

 

「ウソ、あのすたれてもうないって言われている?」

 

「テレホンカードでもあるけれど、これはテレパシーカードの方が強いかな?これはね。不滅の友情を誓い合った者だけが使える特別な秘密道具さ。こうやって電話でもできるけどね」

 

 ポケットから出した電話機に親友テレカを入れる。

 

「どうせだから、他の皆にも声をかけてやれ」

 

「……誰を呼ぶんだ」

 

「さぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ザ・ドラえもんズ!集合!」

 

 数分してのび太の机から六人のネコ型ロボットが現れる。

 

 ドラ・ザ・キッド。空気大砲を持ち、百発百中の腕前を持つ。

 

 エル・マタドーラ。スペインの闘牛士、昼寝が大好き。

 

 ドラリーニョ。ブラジルの若きストライカー、三歩歩くと忘れてしまう。

 

 王ドラ。中国の格闘家、女性に弱い。

 

 ドラニコフ。ロシアの旅人、無口で何があっても喋らない。

 

 ドラメッド三世。エジプトで活動する魔術師。水が大の苦手。

 

「えっと、ドラえもんさん、この人たちは?」

 

「僕が通っていたロボット養成学校の大親友さ」

 

「元気にしていたか?」

 

「懐かしいなぁ~」

 

「それで、王ドラ、この子なんだけど」

 

「ふむ」

 

 中国服をきたネコ型ロボット。王ドラは眠っている少女を観察して。

 

「私の調合した薬を使いましょう。これで、元気になるはずです」

 

 少女に飲ませた後、のび太が尋ねる。

 

「そういえば、ドラえもんズって言っていたけど」

 

「なんだ、ドラえもんは話してねぇのか。俺達の友情伝説を」

 

「友情伝説?」

 

「未来に存在していた古代遺跡。そこに存在した不滅の友情を誓い合った者だけが使える道具。それを手に入れた大冒険。友情伝説だ」

 

 キッドが説明する。

 

「素敵だね。それ」

 

 明日奈はドラえもんズの友情伝説を羨ましいと感じた。

 

 優等生で常に成績ばかりを意識していた明日奈にとって親友とはまぶしいものだと思う。

 

 他愛のない話をしていると寝ていた少女が目を覚ます。

 

「あ、目を覚ましたみたいだね」

 

「ここは?」

 

「のび太の家だ。キミは街の裏山に倒れていたんだ」

 

「あなた達が助けてくれたのね?ありがとう」

 

「いやぁ、ところで、君の名前は?」

 

「話しても信じてくれないわ」

 

「……話してみないとわからないぜ?」

 

 和人の言葉で少女は少し考えるようなそぶりを見せて。

 

「実は私……座敷童なの」

 

「座敷童って……なに?」

 

「まったく、のび太君は!」

 

「すまん、俺も知らない」

 

「あら!?」

 

 のび太と和人にドラえもんは呆れてしまう。

 

「座敷童は妖怪ね。日本の屋敷の中に紛れ込んで住む妖怪で。座敷童が住むとその家は裕福になるといわれているわ」

 

 明日奈の説明で二人は理解する。

 

「それにしても、座敷童って」

 

「頭がおかしんじゃねーか?」

 

「おいおい」

 

 キッドとマタドーラの言葉にドラえもんが止めに入る。

 

「ごめん。気にしないでね。それより、どうして、あんなところにいたの?」

 

「実は半年ほど前から」

 

 座敷童が話した内容は想像を絶するものだった。

 

 妖怪達は妖界といわれる世界に移り住んでいたのだが、半年前から百目王という妖怪がその世界を支配する。

 

 強力な妖怪軍隊を率いて人間世界を支配しようとするということらしい。

 

 座敷童はそれを阻止するために特殊な力を宿していたという“魔鏡”を手にして人間世界にやってきたという。しかし、途中で追手に襲われて。

 

「やっぱり、信じてくれないのね!?」

 

 キッドとマタドーラが険しい顔で座敷童をみる。

 

「座敷童は人間界に住んでいるんだろう?なんで妖界にいるんだよ」

 

「もともとは人間世界にいたわ……でも、今は私の存在を知っている人がいなくなって、妖界に住むしかなくなったの」

 

 座敷童の言葉にのび太と和人はなんともいえない表情を浮かべる。

 

 知っていた明日奈と違い、自分達は座敷童の存在を知らなかった。

 

「どう思う?」

 

「座敷童ねぇ~」

 

 首を傾げていた時、ドシンと巨大な揺れが起こる。

 

「え、地震?」

 

「いや、違うぞ!」

 

 みんなが揺れに驚いていた時、座敷童が外を見る。

 

「しまった、もう夜なのね!?」

 

 直後。

 

「見つけたぞ!」

 

 部屋の窓ガラスをぶち壊して巨大な斧を構えた鬼のような怪物が現れた。

 

 緑色の皮膚に赤い髪、額から伸びている一本の角。

 

「見つけた!今度こそ、逃がさん!」

 

「なんてことするんだ!ママに叱られる!!」

 

「そんな心配している場合か!」

 

「……こいつが妖怪!?」

 

「マジかよ」

 

「とにかく追い払え!!」

 

 ドラえもんの指示でドラリーニョがサッカーボールを、キッドが空気大砲を繰り出す。

 

 攻撃を受けた妖怪、一角大王は平然とした様子で部屋の中を突き進む。

 

「明日奈!こっちに」

 

 和人が明日奈を自分のもとへ引き寄せようとすると一角大王が巨大な腕で明日奈を捕まえる。

 

「この!明日奈を離せ!」

 

「ハチョー!!」

 

 和人を飛び越えて王ドラがキックを繰り出すも一角大王に投げ飛ばされてしまう。

 

「和人、これを!」

 

 のび太は机に置かれている照明スタンドを投げる。

 

 和人はそれを受け取り、一角大王の頭に振り下ろす。

 

 バリンと音を立てて照明スタンドが壊れる。

 

 大したダメージはないようだが、視界がふさがれた。

 

 衝撃で一角大王は明日奈を落としてしまう。

 

 明日奈は地面へ落下する直前、ドラニコフに抱えられて離れる。

 

 痛みを感じないのか一角大王は巨大な斧を振り下ろす。

 

「スィッチ!」

 

 キリトの叫びと共にノビタニアンが前に出て椅子を振るう。

 

 ベキャッと歪んで椅子が壊れた。

 

「無駄よ!一角大王にどんな武器も通用しないの!!」

 

「弱点とかないの?」

 

 座敷童に明日奈が尋ねる。

 

「太陽の光が弱点なんだけど」

 

「光って、今は夜だぜ!?」

 

 空を見てキッドは叫ぶ。

 

「全員で力を合わせて頑張るしかない!」

 

「ドラえもんさん、何か武器はない?」

 

 目の前では和人とのび太が壊れた道具で一角大王の気を引いていた。

 

 それをみて、明日奈はドラえもんへ頼み込む。

 

「怖い!」

 

 戦いを見ていたドラリーニョが叫ぶ。

 

「どうしたんだ、ドラリーニョ!」

 

「ブラジルに帰る!!」

 

 マタドーラが尋ねるもドラリーニョは去っていく。

 

「見損なったぜ!」

 

「一人で逃げるなんて」

 

 ドラえもんが信じられないという中、全員で総攻撃を仕掛ける。

 

 ドラえもんズと和人、明日奈、のび太の攻撃を受けても一角大王は平然としていた。

 

「こんちくしょう!」

 

 使えなくなった空気大砲をキッドが投げる。

 

 滅茶苦茶にドラえもんがポケットの中の道具を放り投げていた。

 

「だ、ダメだ、動けない」

 

「くそっ、VRと違いすぎる……」

 

「ゲハハハ!皆殺しにしてやる!!」

 

 一角大王が巨大な斧を振り上げる。

 

 誰もが自らの死を覚悟した。

 

 その時、一角大王の足元に丸いものが現れる。

 

 噴き出した光を浴びた途端、一角大王の体が溶け始めた。

 

「な、なんだ?」

 

「大成功~」

 

 どこでもドアが現れて、そこから姿を見せたのはドラリーニョだった。

 

「日本の裏側のブラジルは今、昼!通りぬけフープでブラジルの太陽の光を持ってきた」

 

「凄いであーる!」

 

 ドラリーニョの言葉にドラメッドが驚く。

 

「すまん、俺はてっきり……」

 

「気にしていないよ。僕こそごめんね~?」

 

 マタドーラが謝罪する。

 

「た、たすかったよぉ」

 

 ぺたんとのび太が座り込む。

 

「ヤバイ、俺も限界だ」

 

 同じく和人ものび太の横へ倒れこんだ。

 

「もう、キリト君……」

 

 明日奈が呆れていた時、ほとんど、体が溶けていた一角大王が頭の角をへし折る。

 

 そして、角を投げる。

 

 狙いの先は座敷童。

 

「危ない!」

 

 気付いたのび太が座敷童を突き飛ばす。

 

 もし、VRだったら持っていた道具ではじくことも出来ただろう。

 

 しかし、のび太の体は肉体、VRと異なり、万全ではない。

 

「ぐっ!?」

 

「のび太!ドカン!!」

 

 落ちていた空気大砲でキッドが撃つ。

 

 攻撃を受けた一角大王の残りの体が吹き飛ぶ。

 

 腕に刺さった角を引き抜いて、のび太は倒れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「王ドラ、どうなんだ?」

 

「こっ、この傷は」

 

 倒れたのび太を抱えて家へ戻った一同。

 

 眠っているのび太の腕を見ていた王ドラは言葉を失う。

 

 角で貫かれた腕。

 

 そこにはどす黒い模様のようなものがあった。

 

「なんだよ。これ」

 

「まるで――」

 

「一角大王の呪いだわ」

 

 座敷童が驚愕の表情を浮かべる。

 

「呪い……それは一体」

 

「徐々に体が妖怪になっていくの」

 

「のび太君が妖怪に!?」

 

「どうすれば助かる!?どうすればいい!」

 

 和人が座敷童へ尋ねる。

 

「百目王の居城にある……いやしの泉の水を飲めば治るんだけど……三日以内に飲まないと二度と太陽の光を浴びれない体になってしまうわ」

 

「案内してくれ!」

 

「キリト君!落ち着いて、私達はただの人なのよ?今のままじゃ」

 

「わかっている!でも、親友を見捨てるなんてできない!俺は何が何でも行く!……確かにここはVRじゃない、現実の世界だ。今の俺達じゃ、どうすることもできないかもしれない。でも、のび太は親友だ」

 

 和人の目を見て、王ドラがポンと手を叩く。

 

「なんとかなるかもしれません」

 

「え?」

 

 驚く和人たちの前に王ドラがある道具を取り出す。

 

 巨大な機械だ。

 

「これは?」

 

「ヒーローマシンです」

 

「ヒーローマシン?」

 

 首を傾げる明日奈の前にキッドが思い出したように叫ぶ。

 

「これは二十二世紀のゲームマシンだよな?なんで、こんなものを出したんだ?王ドラ」

 

「忘れたのですか?和人君達はSAOをプレイしていたのですよ」

 

「そうであーるか!二十二世紀のヒーローマシンにおいても、SAOをプレイできるようにと、当時の情報でヒーローが設定されていたであーるな!」

 

 ドラメッドの言葉に和人は驚く。

 

「もしかして、この中に入れば、SAOの俺達の力が」

 

「使えるはずです」

 

「明日奈……俺は行く、君は」

 

「バカなこといわないで、のび太君は大事な仲間よ。私も行くわ。それにキリト君、一人に無茶させられない」

 

「……明日奈」

 

「けっ、熱いこって……早く行ってこい!」

 

 キッドにせかされて二人はヒーローマシンの中へ入る。

 

 しばらくして、

 

 黒衣にエリュシデータ、ダークリパルサーの二つの剣を背中に背負った和人こと、黒の剣士キリト。

 

 純白の衣装、細剣を腰に下げている明日奈こと、閃光のアスナ。

 

 SAOを攻略した二人の嘗ての姿だった。

 

「体がウソみたいに軽い」

 

「ゲームのスーツですが、VR世界で戦っていたというスペックが使えるはずです」

 

 皆の姿を見て、座敷童が尋ねる。

 

「妖界に入ると、二度とかえってこれないかもしれないわ……それでも、行くの?」

 

「行くとも!」

 

「のび太君は僕達、ドラえもんズが助けて見せる!」

 

 彼らの決意を見て座敷童が頷く。

 

「のび太君、大丈夫?」

 

「安心しろ、お前を絶対に妖怪にはさせねぇぜ」

 

 のび太を背負っているキッドの言葉に小さく頷く。

 

 座敷童の誘導に従ってやってきたのは裏山だった。

 

「ここが入り口よ!」

 

 目の前に渦巻く門に彼らは飛び込む。

 

 

 

 




基本的にSAOと関係ないドラえもんエピソードは前編、中編、後編の三部作、もしくは二部作方式でいきます。


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