バカとナイトと有頂天 作:俊海
ちょっとだけ、次回のネタバレもありますが、本当に少しなので気にしなくていいレベルです。
戦争中に負けたやつらはどんな会話をするのか、という妄想から作り上げたものなので、細けえこたぁいいんだよ!って人だけ読んでください。
「あー畜生、やられちまったか」
あいつ強すぎるだろ。なんで初心者であんな動きができんだよ。
……まぁ、そのほうが俺としちゃ燃えるから問題ねえけどな。
今度やるときは絶対に負けねえぞ。
「で、補習室がここか。……にしても鉄人の奴、どうやって補習をしながら生徒を教室にぶち込んでんだ?」
俺は自主的に教室に来たからいいけど、他の逃げ出そうとする生徒の相手をしてるとなると、そんな時間がないように思えるんだが。
そんなことはいいか、負けた戦士はおとなしくしておきますかね。
「よーす。悪いな、負けちまったぜ」
「うにゅう……」
教室に入ってすぐに目に入ったのが、机にうずくまって呻いている女生徒だった。
ありゃあ同じクラスの霊烏路だったか?
そういえば、こいつ俺らのクラスの中でも頭が悪い方だ。
それで課題ができなくて悩んでんのか?
「あ、ランサーだ……うにゅー……」
「どうしたんだ霊烏路、そんなに難しいのか?」
「……課題自体は化学が多いしそうでもないよ」
「じゃあなんでそんなに暗い顔してんだよ」
「さっきすっごくムカつく奴に負けたの!それが悔しくて……あーもう!今度会ったらギャフンと言わせてやる!」
……いまどき古い言葉使うなぁ。
しかし、ムカつくやつって言っても、どういう風に負けたんだ?
「つーか、お前理科得意だったんだな」
「化学は得意だよ。むしろなんかこう、暗記が苦手かも」
「……だろうな」
こいつ、鳥頭だし。
さっき言ってた恨みとやらも、どうせ一日もしたら忘れるんだろうさ。
「おのれあの豚野郎!今度会ったらR-18指定みたいにしてくれる!」
「……で、清水はあの病気が再発中ってか。いい加減あきらめたらいいのになぁ」
清水も、もう少し自重してくんねえかな。
あいつの言動に振り回されるのも疲れるんだよ。
つーか、どうしてあいつはあんなに男嫌いになってんだ。
自分から言いたかねえけど、俺がいなかったらこのクラス女尊男卑になってたぞ。
「落ち着けよ清水。補習室でそんなに騒いでたら鉄人に鉄拳くらわされんぞ」
「男子風情が私に意見するおつもりですか!?」
「いや、人間として注意してんだよ。もう少し常識をわきまえろ」
「この吉井とかいう豚野郎への恨みを晴らさずして落ちついてなんていられますか!?」
……明久、お前こいつに何したんだ。
というか、Fクラスに恨みを持つ人間が多すぎないか?
それとも、俺達Dクラスが過激なだけなのか?
…………どう考えても後者だな。
なんというか、変な奴らが集結してる気がするし。
清水然り、内藤然り、宣戦布告されて明久たちに殴り掛かっていった奴ら然り。
まあ、宣戦布告されたときは、俺喧嘩してたからよく分かってねえけど。
「どうせ、清水がいらん事でもしたんだろうな。……ああ、胃が痛え」
すごい勢いでストレスが溜まってきた。
俺も相当変な人間だって自覚はあるが、それでも、こいつらと比べたらはるかにマシだ。
というか、こいつら以上に変とか認めたくない。
そいつらを何とか纏めていかないといけないなんて……ああ、骨が折れる。
「どったのランサーwwwww腹なんか抱えてwwwww」
「ん?内藤か。お前もやられたんだな」
「なんかwwwww頭に剣が飛んできてwwwwwオーモーイーガーされちったwwwww」
「どういうことだ!?なんで剣が飛んできた!?」
こいつは、ふざけてるように見えて運動神経は相当高かったはずだ。
そいつの目をもってしても避けられなかったなんて、どんな手練れなんだそいつは。
「そwれwよwりw本当にどうしたのランサーwwwww戦争中よりも疲れてる顔してるぜいwwwww」
「いや……俺たちのクラスの異常さを思い知ってただけだ」
「まw俺様がいるからねwwwww俺様は思わないけどwwwww周りからウザいって言われてるしwwwwwでもwwwww俺様この生き方変えるつもりないからwwwwwあきらめて頂戴wwwww」
「……なんというか、お前って俺のクラスでマシなほうだったんだな……」
自覚症状あるだけマシ……というか、こいついっつもニヤニヤしてるからウザく思えるけど、それ以外じゃまともなんだよなぁ。
案外カリスマ性があるし、いくら叩きのめされてもへこたれないあたり、そんじょそこらの奴よりかは根性あるんじゃねえか?
空気読めないやつだけど、あえて読んでないような気がするし、こいつがいるだけで沈んだ空気が吹き飛んじまうしな。
「いい加減そのうっとうしい喋り方やめてもらえません!?いちいち癇に障って仕方ないんですけど!?」
「無理wwwwwサポシwwwww」
「きいいいいいい!!イラつきます!本当にイラつきますわ!!どうして男というのはこんなにも私をイラつかせるんでしょう!!」
「美春たんwwwwwそんなに怒らないでwwwwwスマイルスマイルwwwww」
「『たん』とかつけないでください!!ああもう鳥肌が立って仕方ないです!!家畜は隅っこでみっともなく鳴いてなさい!!」
「そのドSっぷりwwwww俺様マゾだからwwwwwたwまwらwねwえwwwwwもっと罵ってくださいwwwww俺達の業界ではwwwwwご褒美ですwwwww」
「ひいいぃぃぃ!!き、気持ち悪い!それ以上近寄らないでください!!近づいたら蹴り飛ばしますよ!?」
「罵ってもらえるうえにwwwww蹴ってもらえるとかwwwwwそれなんて天国wwwwwよっしゃwwwwwのりこめー^^wwwww」
「ぎゃあああああああ!!!なんで逆効果になるんですかぁぁぁぁぁ!?」
あの清水が、何もできずにいるだと……?
やべえ、内藤っていろんな意味で最強だ。
あいつを口げんかで倒せる人間なんているのか?
もしかして、クラスでの男女の勢力差って、意外と男のほうが有利なのか?
内藤が清水を完全に打ち負かしてるし。
『校内放送なんだが?お前らは注意して聞くべき、死にたくないなら全力で聞くべき』
聞き覚えのある声と、聞き覚えがありすぎる特徴的な話し方が校内放送で流れ出した。
この放送、ブロントさんか。
放送まで使うなんて、Fクラスの奴ら相当本気だな。
『上白沢先生は、校舎裏で銀髪のメガネが『はやくきてーはやくきてー』と叫んでいるので何が何でもカカッっときょうきょ早く会いに行っテ!何かあるのかもじもじしだしてるので俺が思うに重大なことでも伝えるのではないか?男がたまたま気合入れてる時そういうことが事が結構あるらしい』
……今、なんて言った?
なんか、上白沢先生が呼ばれたっつうのは分かったけど、それ以外の部分がなんて言ってんのか分からねえ。
あの堅物の教師だから、生半可な用事じゃなければ戦争を投げ出してでも移動するとは思えないんだが。
それにしても、あいつって本当に何言ってんのか分からない日本語を喋るよな。
「うはwwwww上白沢先生もwwwww女だったんだねwwwww通りでwwwww俺様が口説いてもwwwwwなびかないわけだwwwww」
「内藤、お前今の放送分かったのか?」
「今のはwwwww『上白沢先生、校舎裏で銀髪でメガネをかけた男性が用事があるそうなので大至急向かってください。何やら重要な話をするつもりみたいです』って感じかなwwwww」
「お、おう。なんか、お前がまともにしゃべってると違和感しかないな」
「俺様wwwwwいつでも大真面目wwwwwランサーひどいwwwww」
そういっても、ニヤけながら喋らないってだけでだいぶ印象変わるな。
こいつももう少しまともにしたら、こいつの望み通り女にモテモテとやらになれんのによ。
……こっちのほうが、内藤らしいけどな。
「う、うわぁぁぁぁぁぁああん!!内藤さぁぁぁぁん!!!!」
「オウフwwwww」
ありのまま、今起こった事を話すぜ。
『女の泣き声が聞こえたと思ったら、内藤が背中から吹っ飛ばされていた』
内藤には何が起こったのか、わからねーと思うが、俺は何をされたのか普通に分かった。
内藤の背中がどうにかなりそうだった。
催眠術だとか超スピードだとかそんな高尚なもんじゃあ断じてねえ。
もっと茶番の匂いがする片鱗を味わったぜ。
「いきなり抱きつくなんてwwwww妖夢たんってばwwwww情熱的wwwww俺様のモテ期到来wwwwwうはwwwwwおkwwwww」
「あんまりです!あんな終わり方なんてあんまりです!!内藤さんにあれほど助けてもらったのに!!私は自分が情けないですぅぅぅぅ!!」
「ちょwwwwwガチ泣き?wwwwwどうしよう、俺様のボケスルーされちゃったwwwww」
「なんなんですかあれ!どうしてこんなについてないんですか!?あんなのひどいです!!うえーーん!!」
「お、落ち着きたまへ^^wwwww何があったのかよく分かんにゃいんだけどwwwww」
「ひっぐ、ひっぐ……どうしてこううまく行かないんですかぁ……うっぐ、えっぐ……」
「あ、えっとwwwwwよーしよしwwwww大丈夫だからwwwww俺様なんとも思ってないからwwwww泣きたいなら胸くらい貸すよwwwww」
泣きまくってる魂魄が、内藤に突撃したかと思ったら、そのまま内藤の胸にうずくまって泣き続けた。
これにはさすがの内藤もびっくりしたのか、少しだけ真面目に魂魄に話しかけ、頭を撫で始めた。
普段なら女の髪に男が触るなんて以ての外だろうが、今の魂魄は子供みたいに号泣してるから、どっちかというと、男が女に気安く触っていると言うより、子供をあやしているように見える。
「ランサーwwwww妖夢たんどうしようwwwwwこのままじゃ俺課題ができないんだけどwwwww」
「魂魄を無理やりお前から引っぺがすとなると、魂魄は余計に泣くだろうな。その状態の魂魄を放置したら、内藤が泣かせたみたいに見えるし、デメリットしかねえや」
「こんな形でwwwwwおにゃのこ泣かせるのwwwww本意じゃないんだけどwwwww」
「じゃあ、そのまま席に座って課題するしかねえな。我慢して、魂魄を抱えながら問題解け」
「え、ま、待ってwwwwwそれ完全に俺様妖夢たんにセクハラしてるようにしか見えないんじゃないのwwwww俺様下ネタ好きだけどwwwwwリアルなおにゃのことの触れ合いとかwwwww未知の世界すぎるwwwwwうはwwwww俺様ギャルゲーの主人公みたいwwwww修正されないd……やっぱり修正されてwwwww」
意外と初心なんだなコイツ。
笑っちゃいるけど、挙動が普段以上に変質者にしか見えない。
めちゃくちゃテンパってやがる。
「お前筋力あるんだから、魂魄持ち上げてさっさと座れ」
「ひどいwwwwwでもwwwwwそれしかないしwwwwwよっとwwwww」
未だ泣き止まない魂魄を横抱きに持ち替えて、自分の席に座った。
そのまま自分の膝の上に座らせると、再び魂魄は内藤の胸に飛び込み、思いっきり抱きしめる。
……やばい、この教室にいる他の奴らの視線が『リア充爆発しろ』って物語ってる。
俺はなんとも思わねえけど、やっぱり羨ましいもんかね、こういうのは。
「う~~~、内藤さ~ん……」
「ら、らめぇwwwwwそんなに強くしちゃらめぇええwwwww頭が沸騰しそうだよぉwwwwwヤバイってwwwww思春期の俺様には刺激強すぎwwwww」
おー、おー、一丁前に顔を赤くしやがって。
やべえ、これ見てる側めちゃくちゃ面白え。
内藤は、強気な女に強いが、弱気な女に弱いんだな。
「っべー!マジっべーわ!!あのままだったら俺、ガチの人生の墓場行ってたわ!!!」
そう思ってたら、扉がガラリと開いて、男子生徒が飛び込んできた。
なんだか切羽詰まってるような、そんな雰囲気を醸しながら、滑り込みつつ教室に入ってきた。
たしか、ブロントさんを連れて行った須川だったか。
「あー、ったく!なんで婚期を逃すと女ってのはあんなに凶暴化するのかねえ。ぜってえバブルのせいだ。バブルで女が男を格下に見てたから理想が高すぎて結婚できなかったんだ。それでいて結婚できねえのを男のせいにして責任押し付けてるから誰も貰い手がいなくなんだよ。あーもうやだやだ!!女ってのは怖いねえ。戦争中は補習室には戦死した奴以外は誰も入れねえから、さっさと死んでよかったぜ……ん?」
「おいすー^^wwwww須川wwwwwボスケテwwwww」
須川と内藤の目があった。
須川はそのまま内藤の膝の上を見て、魂魄がうずくまってるのを確認し、再び内藤の顔を見る。
笑顔を絶やさないことに定評のある内藤も、顔の端を引きつらせながら返答し、助けを求めた。
そして、須川はそのまま、申し訳なさそうな顔をして、教室の扉に向かっていった。
「ちょっwwwww待ってwwwwwどうして逃げるのwwwww」
「あー……いや、俺は何も見てないし、何も聞いてない。でもなんか入ってくるのやり直したいから一旦出るわ。多分入り方が悪かったんだ。もう一回入り方正しく扉開けたら、正しい補習室に繋がる扉になるはずなんだ」
「合ってるからwwwwwここ補習室で合ってるってwwwww」
「俺の知ってる補習室は、男女がいちゃつく様な教室じゃねえんだ。もっとこう静かな雰囲気が漂ってんだ。つーか多分教室間違えたんだ。何も見えてないけど一応内藤に謝っとくわ。なんかお取り込み中ごめん」
「盛大に勘違いしてるwwwww俺様と妖夢たんそういうのじゃないってばよwwwww」
「いやー隠さなくていいから。ほんと今の俺、自分の部屋でエロ本読んでる男子中学生の部屋に、ノックもせずに上がり込んだ母ちゃん並に空気読めてなかったわ。もう罵倒されるの確定な行動しちゃってるから俺。なんかもう『か、勝手に上がってくんじゃねえよババア!!』って言われてもしょうがないくらい空気読めてなかったわ。いや、何にも見えてないけど」
「話聞いてwwwww俺様妖夢たん慰めてるだけだってwwwww」
「あーくそ。こうやって俺が空気壊したのもバブルのせいだ。俺が勉強できねえのも、彼女ができねえのも全部バブルのせいだ。いや、俺はバブル時代なんて知らないけど、何にも見えてねえけど!!!」
「須川wwwwwマジちょっとこっち向いてwwwww一旦話し合おうwwwww」
「お前と話すことなんて何もねえz「お前ーーーー!!」げぼっ!?」
内藤と須川の漫才を強制終了させた謎の影。
そいつは、須川にドロップキックをかますと、倒れ込んだ須川の上に乗っかりマウントポジションをとった。
というか、霊烏路だった。
「さっきはよくもやってくれたなーー!!やられたらやり返す!!倍返しだ!!!」
「あぁ!?てめえさっきのバカ女じゃねえか!?俺に何の用だ!?」
「バカっていうなー!!バカっていう方がバカなんだぞ!!」
「あんな手に引っかかるやつはバカで十分だ!!つーかそれ、バカっていう方がバカだったとしても、ただ単に俺がバカになるだけで、お前がバカじゃないって証拠にはなんねえだろうが!!大体、よりバカだって言ってる時点でお前も多少は自分のことがバカだって薄々感づいてんじゃねーか!!」
「え、えっと……お前がバカで、私がバカで……あれ?どっちがバカだ?」
「今ので確信した!お前の方が俺よりバカだ!!」
「うにゅーーー!!!」
須川のやつ、すっげえ舌が回るな。
記憶力が乏しい霊烏路の相手には、相性が悪すぎる。
さっきのムカつくやつって須川のことか。
「お前がFクラスの時点で私よりバカだってことは決まってるじゃないか!」
「バカかお前。勉強できるからってバカじゃないってことにゃならねえんだよ。やれ国立大学卒だ、外国の大学卒だ、やたら有名な大学卒業しててもそんなの社会じゃ通用しねーんだよ。どうせ卒業するなら家庭からとっとと卒業してから自立できる方がよっぽど賢いわ。どっかの誰かさんは国のトップになっても母ちゃんからお小遣いもらってるし、家族から卒業できねえやつが国を支えるなんざ到底無理なんだよ」
「な、なんか賢そうなこと言ってる……って、それでもさっきの不意打ちは卑怯だよ!!」
「っち!だまされなかったか!!」
「あー!また私を騙そうとしてたなーー!!」
「あの不意打ちは卑怯じゃねえよ。だいたいあんなのでマジで引っかかるとか、俺も思わねーんだもん」
「うにゅー!汚いなさすが須川きたない!」
「ちょ、揺するな揺するな!!首が痛い!腹が気持ち悪い!お前が腹に乗ってるせいで余計になんか口に酸っぱいもんがこみ上げてくるって!!つーか顔が近い!!あんまり近づくな!息がかかる!顔がぶつかる!!」
霊烏路が須川の襟元をつかみ、激しく前後に揺する。
さっき昼飯食べたばっかりだしな、三半規管がぐちゃぐちゃにされてリバースしそうになってやがる。
それと霊烏路が須川に乗ったまま、顔を近づけてるせいか、さっきの内藤たちとは違った男女の修羅場を見ているような気分になってくる。
「ちょヤバイヤバイヤバイ。ヤバイって揺するなって。つーかお前俺にひっつきすぎ。わかった一旦置こう。こっちも距離置くから。一変仕切り直そう」
「そういって騙すつもりでしょ!?誰が騙されるもんか!!」
「いやその、お前マジで近すぎ。さっきからなんかあちこち密着してんの。俺の胸あたりとか、腰のあたりとか、なんかこう適度な弾力を持った柔らかい物体が当たってるから」
あー霊烏路って、頭の割に体つきがそれに反比例してるんだったな。
見た目は大人頭脳は子供ってか?
「お前が!謝るまで!!揺するのをやめない!!!」
「分かった!分かってっての!!謝る!謝るから!!はい、さっきはすみませんでした!!騙して済みません!!これでいいだろ!?」
「本当に謝ってるの!?心の底から!?」
「謝ってます謝ってます!!激しく不本意だけど謝ってるっての!!」
「なら、何かで詫びてよ!」
「はぁ!?ふざけんな!!なんで戦争中の作戦で、お前に賠償しなきゃいけねーんだよ!?」
「だったらこのまま揺するだけだよ!?謝られたぐらいじゃこの心の傷は埋められないんだから!」
「あー……クソッ!なんて厄日だ!今度昼飯おごってやる!それで手を打て!」
「よーし、それでいいんだよ。全く最初っから謝ればいいのに。須川はバカだなぁ」
「こ、このアマ……!!」
……あれ?ここって補習室だよな?
なんだって二つもでっけえフラグが立ってんだ?
内藤と須川、女に縁の無さそうな二人が一気にフラグを立てやがった。
……何かがおかしい。絶対何かがおかしいぞ。
「いやー、負けちゃいました」
「あ、紅。お前負けたんだな」
なにか間違っているのに違和感があり過ぎて悩んでいると、紅が入ってきた。
さっきまで明久と勝負してたし、明久に負けたのか。
「やっぱり明久は強いか。お前だってそう易易とやられるような奴じゃねーしな」
「えーっと、まあ明久さんに負けたというか……なんていうかね……あはは」
「なんだ、はっきりしねえな」
「まあまあいいじゃないですか。実際明久さん強かったですよ」
「明久はいいやつだからな。できるだけ仲良くしてやってくれ」
「それはもちろん!今度も二人で出かけに行く予定もありますし」
へえ、明久のやつやるじゃねえか。
まさか紅をデートに誘うなんてな。
去年なんかも、明らかにあの二人に好意を寄せられてるってのに気づかねえんだからな。
「やっほー美鈴!負けちゃったの?」
「そうなんですよ。……お空さん、やたら機嫌がいいですね?」
「うん!須川に今度ご飯おごってもらえるもん!」
あーあ、須川も災難だな。
霊烏路のやつ、精神年齢低いから子供みたいに振舞うし、そう邪険に出来ねえし。
「ドンマイだな、須川」
「そう思ってんだったら、お前が代わりに奢れ」
「お断りだ。ただでさえ俺は運が悪いのに、自ら不幸な道に突っ走る趣味はねえよ」
「テメー、他人事だと思って……」
「たまにはいいじゃねえか。女と二人で食事なんて、Fクラスのやつらに自慢できるだろ?」
「んなことしたら、俺が袋叩きになるわ」
ああ、Fクラスには女が少ないんだっけな。
そりゃあ妬まれるか。
「そもそも、俺の好きなタイプは、ああいうバカみたいなやつじゃなくて、お姉さんタイプが好きなんだ。こう、俺を暖かく包んでくれるような包容力を持った女性がベスト」
「あいつだってスタイルいいじゃねえか」
「外見よくても、中身がパッパラパーだったらガキとおんなじだろうが。あいつは人を包み込むんじゃなくて、へばりついて離れない駄々っ子だ。そういうの俺にはごめんだね。テメエのことで俺は精一杯なんだ、他人の面倒なんか見てる余裕なんざねーんだよ」
「理想高いな、お前」
「夢ぐらい見たっていいだろ。まだ俺だって若いんだ。三十路前になってアレレー?とか言ってるような行き遅れになったら現実と向き合って、俺なんかでも付き合ってくれるような酔狂な奴がいれば結婚する。それ以外なら、一生を独身貴族で過ごしてやらあ」
「……お前本当に学生か?」
「学生だ。もう俺は太く短く生きるって決めてるから、そこらへんはノータッチで頼まぁ」
なんだコイツ。
達観しすぎだろ、つーか何この隠居目前のオッサンみたいな言動。
あれだな、内藤とコイツを足して2で割ったらちょうどよくなんじゃねえか?
「須川!今度美鈴とも出かけるから、一緒に行くよ!」
「ばっ!おまっ!何考えてんだ!?何、人様のデート邪魔しようとしてんだお前は!?どう考えても俺らは邪魔じゃねーか!!紅もそれでいいのかよ!?」
「はい、構いませんよ?デートなんかじゃないですし」
「まさか、明久以上の鈍感がいるなんて……クッソ!ここの学校は変人しかいねえのか!?」
「そういうことならwwwww俺様たちも一緒に行くぜいwwwww皆で行けばwwwwwその分楽しいwwwwwうはwwwwwおkwwwww」
「テメエもちったあ自重しやがれ!!だいたい、いつの間にお前は魂魄とそんな約束をしたんだ!?」
「たった今wwwww妖夢たんあまりに不憫だからwwwww遊びに行けばwwwww嫌なことも忘れられるwwwww悲しいこともwwwww楽しいことで上書きすればwwwwwみんなハッピーwwwww」
「本当……何から何まで済みません……」
「魂魄を盾にすんじゃねえ!!俺が拒否できなくなるだろうが!!ランサーもなんとか言ってやってくれ!!」
「んーそうだな……」
それにしても、本当にこいつらおもしれえな。
明久の野郎とも、一回腰を落ち着けて話がしてみたいもんだ。
いっつも、俺は手伝ってすぐにクラブの方に戻るし、話を聞く限り、明久の周りの連中も一癖も二癖もありそうだ。
ブロントさんにも、色々聞きたいし、Dクラスのやつらと仲良くなんのも悪くねえ。
だとしたら……
「おいおい、お前ら。そんなに集団で行動してえのかよ?」
「当然wwwww友達増えればwwwww笑顔も増えるwwwww」
「俺は断固拒否だ!こんな奴らと一緒にいられるか!!俺は家に引きこもるぜ!!」
「だったら、俺も連れてけ。面白そうなイベントに俺を呼ばねえなんて酷いじゃねえか」
「ブルータス、お前もかァァァァァァ!!!」
「うはwwwwwおkwwwww」
「何にもokじゃねえ!!何にもokじゃねえよ!!」
いやあ本当に、見てて飽きねえな。
ああ、面白い。
「っち!ランサー、お前覚えとけよ……」
「いいじゃねえか。どうせ、『あいつはガキだから』わがままくらい許してやれよ」
「……本当にいい性格してるよお前は」
「はっはっはっ、そう褒めんなよ」
須川の言った言葉を使って言い返すと、睨みつけながら返してくる。
……ったく、そう思いながらも、お前も悪くないとか思ってんだろ?
なんだかんだで、このノリを楽しんでるようにしか見えねえんだからよ。
「こうなったらヤケだ。その時になったら全力ではしゃいでやる。歳も考えずに、バカみたいにはしゃいでやる!」
「お前それ、普段からだろ?」
「なんで分かった!?」
そうじゃなかったら、多分Fクラスになってないだろうからな。
それ、わかって聞いてんだろ?
「まあ、そんときは頼むぜ」
「わーったよ……っくそ、ランサー自害しろ!」
「全力で断る」
「あーったく、明久にどう言うんだよこれ……」
あぁ、向こうはデートって思ってる可能性があるもんな。
学生の夢を粉々に砕くも同然かこれは。
「どーせ、明久は女子と二人っきりだったら、頓珍漢なことしか言えねえから、ついていったほうがあいつも助かるんじゃねえか?」
「なんでお前がそれ知ってんだよ?」
「……むしろ、あいつがそういう状況で流暢に会話できると思うか?」
「あ、無理だわ」
「だろ?」
「そもそも、そういうの気づかずに無神経なことを言って、女を引かせるくらいのこと普通に言うわ。うん、俺が間違ってた。あいつにとって女と二人になるなんて、幼稚園児にダンプカーを操作させる並の困難な作業だった」
そこまで言うか。
「これもクラスメイトの好だ。あいつの手助けしてやるか。あのバカ女は適当に扱ってたら大丈夫だな」
「意外と友情に熱いんだな」
「なんたって、俺はジャ○プ愛読者だからな……つーか、あいつの行動見てるのマジで面白いし」
「それには同意するぜ」
あーあ、次の休みが楽しみだ。
今度はどんなバカ騒ぎをしてくれんのかね?