バカとナイトと有頂天 作:俊海
多分、次あたりからいろんな作品とコラボすると思います。
完全に自分の趣味でやってますので、そこのところはご理解いただけると幸いです。
とはいっても二作品くらい追加するだけだと思いますけど。
「ち、遅刻だーーーーーー!!!」
やばいやばいやばい!!
登校初日で遅刻するなんて!
せっかく目覚ましセットしておいたのに、寝てる時に蹴り壊しちゃうなんてどこのギャグマンガなのさ!?
ああ、もう!本当にどっかが抜けてるな僕って!!
しかも遅刻してるのって僕だけみたいだしさぁ、周りに登校してる生徒の姿が見えないs
「…………ぉぃィィィィィィィィ……」
「……ん?なにか聞こえるような……?しかもこっちに近づいてきてるし?」
突然後方から叫び声?みたいなものが聞こえてきた。
でも、叫び声にしては独特すぎる叫び方なんだけど……
そうやって考えているうちに、その音源が僕の後ろまで接近してきて――
「おいィィィィィィィィィ!!!!!!!!」
「う、うわぁぁぁぁ!!?び、びっくりした!!どうしたのさそんなに大声出して!?」
試験の時に知り合った長身の外国人――ブロントさんがそこにいた。
なにやら奇妙な声を出しながら。
もしかして、これがブロントさんの普段からの叫び声なんだろうか?
僕と別れる時もこんな感じの声を出してた気がするし。
それにしても、本当になんだかブロントさんって日本語が独特なんだね。
「む?明久か。おもえもこのままじゃタイムアッポになってしまう系の話か?」
「うん、このままじゃ間違いなく遅刻だね。もしかしてブロントさんも?」
「うむ。なんか汚い目覚まし時計が俺の設定した時間に鳴らさないとかひきょうな真似をしたもんだから起きた時には時すでに時間切れ。起きてみたらアワレにも時計の役目を果たせずバラバラに引き裂かれて死んでいた目覚まし時計があった」
「それって要するにブロントさんが壊しちゃったってことでしょ?自己責任じゃない」
「う、うるさい気が散る!一瞬の油断が命取り!!」
「何が命取りなのさ?」
いや、僕も同じことしてるからあまり強気には言えないんだけど。
それでも、ブロントさんのなんだか自分が悪くないみたいな発言が引っかかる。
「そもそも日本は時間に厳しすぐる。いやこういうのハメでしょ?俺のシマじゃ今のノーカンだから」
「日本って……ブロントさん、やっぱり外国人なの?」
「どっちかというと大正解。あぁやはり本場イングランドのオーラを持っているとわざわざアッピることもなく相手にバラしてしまうことになる。無菓子に二本の北海道にきたことはマレによくあったが12回でいいところを謙虚にも9回でいいと言ってしまう。だから俺は日本語スキルも結構高い」
ああ……だからなんだか日本語がおかしいんだな。
外国人には少し難しいって言われるし。
確かイングランドってイギリスのことだったっけ。
だったら英語なんて得意なのかもしれない。
……っと、こんなことを話しているうちに学校に着いたみたいだ。
「遅いぞ!吉井、ブロント!」
「おはようございます。鉄じ……西村先生」
「おはよう西村先生英語で言うとグッモーニンスネーク」
「吉井、いま鉄人といいかけなかったか?それとブロント、なぜ俺を英訳するとスネークになるんだ?」
「ははっ、気のせいですよ西村先生」
「先生は英語でスネークというのは確定的に明らか。考えるよりも口が先に出る事もたまにある」
この人は西村先生こと鉄人。
文月学園の生徒指導兼補修担当の教師だ。
浅黒い肌にボディービルダー並みに鍛えられた体を持つ肉体派教師で、トライアスロンという常人では真似ができない趣味を持っている個性的な先生でもある。
「全く吉井はともかくブロントまで……ほら、受け取れ」
そう言って西村先生はダンボールから封筒を取り出し、僕たちに渡した。
ひょっとしてこれって……
「クラス分けの紙ですか?」
「そうだ」
「ありがとうございます。でもなんで掲示板に張り出さないんですか?こんな面倒なことしなくてもいいのに」
「普通はそうするんだろうがな……うちは世界的にも注目されている試験校ということもあってこれもその一環というわけだ」
「あまりに注目されると最強の義務は最強のプレッシャーとなって襲いかかってくるか。今回のでそれが良くわかったよ>>教師感謝。そんんあことより俺たちにはその紙なんてなくても自分のクラスくらいまあわかってる(予知夢)」
確かにブロントさんの言うとおり、僕たちはテストを途中で退席したわけだしね。
封筒の端を破きながらとりとめもなく考える。
……あのムカツク教師にはいつかしかるべき制裁を与えてやらないといけないね。
「西村先生、あの先生に伝言があります」
「なんだ吉井?」
「『月夜ばかりと思うなよ』と伝えてください。もしくは『伝説の木の下で釘バットを持ってお前を待つ』でもいいですよ」
「おまえは一体何をするつもりなんだ!?」
「何をするつもりって……ねぇ?」
「明久、俺にも一撃を入れさせろ。タイマンは1り対1りじゃなく真剣な喧嘩って意味だからな」
「落ち着かんかお前ら!!」
「いやだな先生、僕はとっくに落ち着いてますよ?」
「すごく落ち着いてるんだが^^」
「なお悪いわ!!!」
一体何を鉄人は叫んでいるんだろうか。
実際に先生をボコるような真似をするわけないのに。
封筒の中身を取り出した。
そこに書かれていたのは――
『吉井明久 Fクラス』
まあわかってたけどね。
「しかし吉井……あとからお前の答案を回収したが、あそこまででもDクラスには入れるぐらいの成績だったぞ。去年のお前を見ていてバカだバカだと思っていたが、その認識を改めなければならないようだな」
「別に僕はバカでいいんですよ。たとえ勉強が出来ても、人間としてクズだったら意味ないですし」
「……全く、教師もまた生徒から学ぶということか。枠にはまった行動しかできない大人と、多少無茶をしても正しいと思ったことをする子供、どっちが人間として優れているものか……」
西村先生はこんなふうにいつも僕たち生徒のことを考えてくれている。
あのバカ教師にも見習わせたいくらいだよ。
「ブロントは今年からこっちに転校してきたんだったな。どうかあの教師を見て日本人を差別しないでくれると助かる」
「何か日本人を差別とか言ってる奴はバカとしか思えないであわれになる。俺は別に日本人が嫌いになどなっていない証拠に明久とは仲がいい。明久は潔い武の心をもっているので貧弱一般人からすでに二歩も三歩も出てる状態。俺は不良だからよ、教師には歯向かうし教師に睨まれるのは日常茶飯事これくらいで俺をどうこうできると思う浅はかさは愚かしい」
「そうか……ありがとう」
ブロントさん……そこまで僕を評価してくれてたなんて……
人の褒め言葉をここまでおおっぴらに言える人なんてそうそういないよ。
そういやブロントさんって今年からこっちに来たんだ。
だったらそんな短期間でここまで喋れるのは相当すごいんじゃないだろうか?
もともとのブロントさんってどれくらい賢いんだ?
IQテストは100以上らしいけど。
「oi明久、そろそろ行くぞ。これ以上遅れると俺たちのクラスの担任の寿命がストレスでマッハになる」
「え、あ、うん。今行くよ。……それじゃあ西村先生失礼します」
「ああ、それじゃあな」
「……ブロントさん」
「……何かようかな?」
「…………ここは本当に教室というカテゴリーの施設?」
「…………俺の知ってる教室とは明白に明瞭に違う」
「………………そうだよね。ここの教室すごいね」
「………………それほどでもある」
Fクラスに向かう途中、Aクラスを少し覗いてみたけどあまりの光景に唖然とした。
個人用の最新式パソコンにリクライニングシート、冷蔵庫。さらにドリンクバーやケーキセット、巨大スクリーンまである。
……いくら一番上のクラスでもこれはやりすぎじゃないか?
「僕、こんなクラスだったら逆に勉強できないと思う」
「激しく同意ですね」
僕だったら間違いなく、パソコンとかでゲームをしてるし授業も聞かずにジュースを延々と飲んでるに違いない。
Aクラスに入れるくらいだったんだから、勉強の意識は高いんだろうけど、僕みたいな勉強に対して苦手意識を持っている人間だと格好の遊び場にしか見えない。
「私はこの2年Aクラスの担任の高橋洋子です。よろしくお願いします」
あ、HRが始まるみたいだ。
髪を団子状に丸めスーツを着ている知的な女性教師の姿が見えた。
その背後のプラズマディスプレイには、高橋洋子と大きな字が表示されている。
「まず支給品の確認をします。ノートパソコン、個人エアコン、冷蔵庫、リクライニングシートその他設備に不備のある人はいますか?」
「これで不備があるとか抜かすのは贅沢な人間だけだよね」
「確かになというか鬼なる。これ以上の贅沢を望むやつは心が醜い。贅沢は素敵だという名言を知らないのかよ」
どう考えても、高校生の授業で冷蔵庫なんて必要ない。
それとも何?授業中は飲食可なの?この教室だったら。
あまりの豪華さにブロントさんも少しばかり顔をしかめている。
その後も長々と設備に関する説明をした後、クラスメイトの自己紹介へ移行した。
最初に立ち上がり教壇の前まで来たのは、黒髪を腰の辺りまで伸ばし物静かな雰囲気を漂わせる女の子だ。
確か、一番最初に自己紹介するのはAクラスで一番成績のいい人だったから、あの女の子が事実上の学年トップってわけか。
「……霧島翔子です。よろしくおねがいします」
短くそう言い残すと、足早に自分の席に戻っていった。
……あ、霧島さんって言ったら、なんだか妙な噂が流れていたような。
なんでも、同性愛者らしくて、女の子を見つめる癖があるとか男からの告白は全て断ってるとか。
そこのところどうなんだろう。ちょっとブロントさんにも聞いてみようかな。
「ブロントさんはどう思「明久、早くFクラスに向かうべき死にたくないなら向かうべき!hai!!早く行ってください!まだ俺は死にたくないんです!!命ロストが怖いんです!俺のこれからの時間を奪わないで下さい!俺がロストしたらここで急がなかった明久のせいですね!?」
「え、ちょっ!?ねぇ!?どうしたの!?」
いきなりブロントさんが僕の背中を押して、教室から離れようとした。
何か嫌なものでも見たのか、黒光りするGでも出たのかというくらいの反応をしている。
僕が戸惑っているうちに、Aクラスからは数十mは離れた場所についたところで力を緩めてくれた。
ブロントさんの顔を見てみると、すごく焦燥しきった顔で、体中から汗が吹き出してきていた。
苦手な人でも教室にいたんだろうか?
「ぶ、ブロントさん!?もしかしてトラウマになってる人でもいたの!?」
「お……俺は不良界でも結構有名でケンカとかでもたいしてビビる事はまず無かったが生まれて初めてほんの少しビビった……いあ正確には二回目だが聞くな」
「本当にどうしたのさ?あんなに取り乱すなんてさ」
「ちくしょう俺はバカだ……事前に調べておけばよかったのに調べなかった結果がこれ。学校調べなかった結果だよ」
「……もしかしてあの金髪の女の「おいやめろ馬鹿!!この話は早くも終了ですね!!!」
ブロントさんがイギリス出身だから当てずっぽうで言ってみたんだけど、合ってたみたいだ。
僕にはほんのちらりと見えた、教室の端っこの方に金色の髪をした女の子が座っているのを。
あの子はとある情報では、イギリス出身らしいからブロントさんに関係しているのかと思った
けど……。
「あの子ってだいぶ前から日本にいたから、ブロントさんに関係があるなんて思わなかったよ」
「やめろと言っているサル!!それ以上言うとマジでかなぐり捨てンぞ!!」
……本当に苦手なんだな。
僕にも、非常に苦手な人はいるけど、ここまで拒否反応を示すなんて一体何をしてきたんだろう。
「……なんかゴメンね。過去の傷口えぐっちゃったみたいで」
「……俺も頭がバカみたいにヒットしていた。すまん」
「…………行こっか」
「…………hai」
凄まじく意気消沈して、僕たちはFクラスに向かった。
「むっ?あの姿は…………」
「どうしたの?」
「い、いえ何でもありません。少し懐かしい顔が見えた気がしただけです」
旧校舎へ来た僕達を待っていたのは、腐った木材を集めて適当に作った教室――いや、Aクラスの教室とは真逆の方向に教室と言っていいのか判断しかねる部屋だった。
「……何、このボロっちい教室?」
「……想像を絶する虚無感が俺を襲った」
さっきとは打って変わって廃墟のような凄惨な教室に呆然とする。
『二年F組』と書かれたプレートの前で、僕達はしばし立ち尽くしていた。
「……俺の想像力を超えてしまうほどの貧乏パワーがオーラになって見えそうになってるんだが?」
「さっき見たAクラスとは天と地以上の差だね……。ここまで格差社会だといっそ笑えてくるよ」
「…………俺も言い返そうと必死に回転させたが言い返す言葉が出なかった」
露骨に嫌そうな表情をするブロントさん。
そりゃそうだ、僕だってこんな教室が僕たちの教室なんて信じたくはない。
……いや!クラスの質は教室だけで決まるものじゃない!!
一緒に勉強していく仲間が一番大事なんだ!!
むしろこれは好都合かもしれない。
最底辺のクラスということは、上のクラスに対するコンプレックスだって大きいはずなんだし、敵の敵は味方って感じになれば仲良くやっていけるはず!!
「とりあえず入ろっか。立ち止まっててもなんともならないし」
「それもそうだな。立ち往生するくらいなら俺は前に進むだろうな」
「きっと教室のみんなは温かく迎えてくれるよ。これから一年苦楽を共にする仲間なんだし!」
「ナイトはジョブを選ばないからな。こんなダークパワーが宿ってそうな教室に遅れを取るはずがない。なによりナイトは後衛がいてこそ隠された力を発揮する披露宴となる。やはり教室の質よりやはり仲間の質だな」
僕たちは気を取り直して意気揚々と教室の扉を開ける。
さぁ、どんな素晴らしい仲間が僕たちを迎えてくれるんだろう。
ブロントさんも――普段が無表情だからわかりづらいけど――少しばかり期待している。
いざ行かん、新たな教室へ――――
「早く座れ、蛆虫野郎!」
「しゃあらぁぁぁぁぁああ!!!」
「メガトンパンチィィィイ!!!」
「のわぁあ!?な、何すんだよお前ら!?」
「いい加減にしろよ!?僕たちがどれだけ最後の希望に望みを託してたのかわからないのか!?」
「お前勝手に蛆虫呼ばわりされた奴の気持ち考えたことありますか!?マジでぶん殴りたくなるほどむかつくんで止めてもらえませんかねえ!?」
ッチ!仕留めそこなったか!
普段なら笑って受け流すけど、今の僕は阿修羅をも凌駕する存在だ。
僕たちが今までのいらいらがたまってきた時に突っかかってきた自分を恨むんだね。
「って雄二?なんでそんなところに立ってるの?」
「ん?まだ教師が来てないからな、教壇に立ってみたんだよ」
僕たちを蛆虫呼ばわりしてきたのは去年の同じクラスで僕の悪友でもある坂本雄二だった。
昔は神童とか言われてたらしいけど、だったらなんでこんなクラスにいるのさと突っ込みたくなる。
「……にしても、お前でかいな。今年から編入してきたやつか?」
「ブロントだ。謙虚だからさん付けでいい」
「…………明久、なんだこいつは?」
「…………いや、僕もよくわかってない」
雄二が眉をひそめて僕に小声で話しかけてくる。
ブロントさんって初対面の人からしたら変人に見えるからね、仕方ないといえば仕方ないんだけど。
「まぁいいか。なぁブロントさんよ、お前って外国人か?」
「その通りだと関心はするがどこもおかしくはないな。イングランド出身だ」
「……だとすると、英語は…………思わぬ嬉しい誤算だな」
あ、なんか企んでるな、あの顔は。
口の端を釣り上げながら独り言言ってるし、すんごく怪しい。
僕が標的にされなかったらいいけど。
「えーと、ちょっと通してもらえますか?」
ガラリと音を立てて僕たちの背後から冴えない雰囲気の男性が教室に入ってきた。
ひょっとして僕たちのクラスの担任かな?
何というか、少し気の毒に感じてしまう僕がいる。
「それと席についてください。これからHRを始めますので」
「はい」
「うーっす」
「先生、俺の席がどこか分からないんだが?このままだと席に付けにい不具合が発生することになる」
「空いているところに適当に座ってください」
「席すら決まってないの!?」
「お前……それでいいのか?」
なんというFクラスクオリティ。
僕たちの扱いが適当すぎる。
初日でやる気なくしそうなんだけど……
「え~おはようございます。私はこのクラスの担任の――」
先生がチラッと黒板を見る。
そしてそのまま正面を向き――
「福原慎です。どうぞよろしくお願いします」
「……ねえ雄二?もしかして……」
「ああ。この教室にはチュークもまともにない」
「……おいィ?」
チョークなんて教室に必要最低限のものじゃないの!?
まともな授業すら受けさせない気かこのクラスは!?
「ではまず設備の確認をしてください。不備が見つかったら報告お願いします。なお必要なものがあれば極力自分で調達するようにください」
「センセー、俺の座布団ほとんど綿が入ってません」
「我慢してください」
「俺の卓袱台足が折れています」
「木工用ボンドを支給しますので自分で直してください」
「先生、窓が割れてて風が寒いです」
「わかりました。ビニール袋とセロハンテープの支給を申請しておきます」
な、何なんだこの教室は!!
こんなのだったら小学校の方がまだましな授業を受けられるよ!!
不備が見つかったらって、不備しかないのにどうしろっていうのさ!?
窓が割れてるとか、机が壊れてるとか、もはや授業妨害のレベルに達してるじゃないか!!
「これはひどい……」
「ちょとsYレならんしょこれは……」
やる気なくしそうなんてレベルじゃなかった。
やる気がなくなるレベルだよ、普通に。
これだったら、Fクラスに来ることになる『あの子』までひどい目にあうじゃないか。
あの子は病弱なのに……このままだったらいけない!
やるしかないか…………『あれ』を。
「それでは、自己紹介を始めましょうか」
福原先生の声を聞きながら、僕はそう決意をした。