バカとナイトと有頂天   作:俊海

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どうもです。

タイトルのとおり、今回の視点は、明久ではなく士郎になります。
大規模な戦争になったので、それぞれの立場から見てもらおうと思って、このような形になりました。

次回は、おそらくブロントさん視点になる予定です。

それでは、どうぞ。


第二十話 バカとナイトと大戦争 衛宮士郎side

「さてと……俺はこのDクラスを防衛すればよかったんだよな」

 

 

戦争が再開し、F・DクラスVSB・Cクラスの大規模な戦いが始まる。

明久たちは、Cクラスの教室にいる生徒を押さえ込む役割を、ブロントさん達はBクラスの教室にいる生徒を戦死させ、FクラスとDクラスの間の戦線を作り出す役割を担っている。

俺達は、そのパイプラインが出来上がるまで、Dクラスを陥落させないように守りぬく。という指示をもらった。

根本も小山もDクラスの教室にいるみたいだが、雄二のやつ、どうやって攻略するつもりなんだろうか?

 

 

「何ぼーっとしてんだ士郎。俺達の最大戦力が油断して負けましたとかシャレにならねえからな?」

 

「ああ、そこは大丈夫だ。別に上の空だったわけじゃないし」

 

 

思案に耽っていると、須川が話しかけてきた。

俺達の戦力は、Fクラスからは、俺と須川、魔理沙と何人か。Dクラスからは、内藤や魂魄、霊烏路と……

 

 

「ああ!この感情はどちらに振り切ればいいんでしょうか!?お姉様と共闘できることを喜ぶべきなのか、それとも豚野郎と協力しなければならないことに悲しめばいいのかっ!ああ、味方でなかったらあの豚野郎を抹殺しに行くところだというのに!」

 

「…………何だあれ」

 

「あんなもんを直視するな、SAN値チェックすることになるぞ」

 

 

清水さん……だっただろうか、何故か発狂している姿を見ると、何かしてやらなければと思う気持ちと、近づいたら殺されると感じてしまう何かがある。

……明久、マジでドンマイ。

 

 

「そこの家畜!聞こえてますよ!」

 

「当たり前だろーが、聞こえるように言ってんだからよ。何をお前一人で盛り上がっちゃってるの?お前みたいなやつが大学とかの新入生歓迎コンパとかでテンション振り切ってやらかすんだよ。一時の気の迷いのせいでその後の大学生活までもが微妙な感じになっちまって、誰と仲良くしたらいいのかよくわからん状況に追い込まれんだ。今のうちに自重っつー言葉を覚えておけ」

 

「男子のくせに生意気な!私の純粋なお姉さまへの愛を邪魔するあの豚野郎が全部悪いんです!」

 

「お前の純粋の基準ってなんなの?何?ベ○ータみたく純粋な悪とかそういうアレなの?お前の心の中どっちかってーと純粋な悪って言うより純粋な灰汁みたいに見えるくらいドロッドロなんですけど。明久への憎しみと島田への恋が融合した闇鍋みたくなってるんだけど。肉染みと鯉が混ざり合ってスンゴイ灰汁出てきそうなんですけど」

 

「そんなはずはありません!私の愛の大きさにお姉様が戸惑っているだけです!それを私の手で素直にして差し上げようとしているだけなのに、何で口を挟むんですか!?」

 

「それは戸惑ってるっていうより怯えてるだけだからね?お前の愛の大きさのあまり潰されないかっていうか社会的な地位も潰されないかってビビってるだけだからね?下手したらストーカーに怯えている被害女性ってだけだからね?あいつだって諦めろっつってんのに追い回すなっての」

 

「今は常識に囚われているだけですけど、懇切丁寧に教えればお姉さまだってわかってくれるんです!男などという汚れた生命体よりも女同士の方がいいということに!」

 

「別に同性愛を否定するつもりはねーけど、世間一般的にはマイナー派閥なの分かってる?50人に1人よ?一クラスに一人いるかいないかくらいの割合だからね?お前が言ってることイケメン好きな女子に対して、ブサイクな男紹介する並の暴挙となんら変わらねーからな?」

 

「知りませんわそんなこと!あなたのような家畜、いや家畜以下の存在に私の考えが理解できる訳がありません!」

 

 

そこまで言い切って、清水さんは教室の向こう側に立ち去ってしまった。

そのまま残された須川が、少し残念そうにこちらに振り返る。

 

 

「…………ダメだ士郎、あいつ日本語が通じてるようで通じねえ」

 

「お前も、直視するなって言ったんだったら会話しなかったらいいのに」

 

「友人を馬鹿にされて黙ってるのが嫌だった。ついでに島田に被害が行くのを抑えられるかもしれないとも思った。反省も後悔もしてねえ」

 

 

なんだかんだで、須川もいいやつだな。

……それにしても、清水さんはどうしてあんなに男を敵視するんだろうか?

 

 

「今日もwwwww美春たん絶好調wwwww愛はwwwww世界を救うのねwwwwwうはwwwwwおkwwwww」

 

「……あれを見て絶好調って判断できるお前がスゲーわ。愛ってかその他諸々の感情いっぱいなんですけどあれ。愛ゆえに人を殺しそうなんですけど。愛ゆえに世界を滅ぼしかねないんですけど」

 

「大丈夫だってwwwww美春たん言うほど体力ないもんwwwww儚げなおにゃのことかただの俺様得だぜwwwww」

 

「あー……明久なら大丈夫だってことか?あいつも結構強いし?」

 

「光る雲を突き抜けwwwwwフライアウェイした明久がwwwww美春たんに遅れを取るはずがないwwwww」

 

 

……内藤って本当に余裕を持ってるな。

いつも笑顔で、怒ったりしないし。

 

 

「まあ内藤さんですからね。いつだって物事を楽観的に見るのが性分みたいですし」

 

「あらやだwwwww妖夢たんってばwwwww俺様のことを理解しすぎwwwww修正されるねwwwww」

 

「それにしても……清水さんには困ったものです。内藤さん、本当に彼女は大丈夫なんですか?」

 

「へーきへーきwwwwwあんなの可愛いものだからwwwwwちょっと恋に恋するwwwwwおwとwしwごwろwwwwwなだけだからwwwww思春期にはwwwww一過性同性愛ってものがあるからねwwwwwもう少し大人になったらwwwww落ち着くってばよwwwww」

 

「あれってなんかガチっぽいんですけど?」

 

「俺様のwwwww妖夢たんへの愛もwwwwwガチですwwwwwキリッwwwww」

 

「はいはい、そうですねー。内藤さんは女の子なら誰でも好きですもんねー」

 

 

いつものように、魂魄が内藤の言葉を聞き流す。

だけど、そんなものでへこたれるような奴じゃないことはこの場にいる誰もが知っている。

 

 

「あれあれwwwww妖夢たんwwwww嫉妬してるの?wwwwwマジ萌えるwwwww俺様の脇腹が疼くぜwwwww」

 

「嫉妬とかじゃありませんから。そんなんじゃないですから。内藤さんはいつでもそういう軽いノリだってことを再認識しただけですから」

 

「そんなーwwwww俺様結構本気でwwwww妖夢たんのことwwwww好きなんだけどwwwww俺様の恋人にwwwwwなwwらwwなwwいwwかww」

 

「奇遇ですね。私も内藤さんのことはそれなりに好きですよ?」

 

「えwwwwwマジでwwwwwついに俺様の春が来たーーー「『友人として』内藤さんのことは好きです。異性としてはありえませんから。これからも『友人として』よろしくお願いします」

 

 

うわぁ……見事なカウンターで返されてる……。

『これからも友達でいましょうね』というのは、相手を振るときの常套句だということは俺でも知っている。

無残に散ったな……内藤……。

 

 

「うはwwwwwおkwwwww妖夢たんの友達認定wwwwwktkrwwwwwみwwなwwぎwwっwwてwwきwwたwwぜーー!!wwwww」

 

 

あれ?いいのか内藤?

すごく普通に喜んでるけど……。

 

 

「……内藤さん、それでいいんですか?」

 

「恋人だろうとwwwww友達だろうとwwwww仲間がいるならwwwww最強無敵wwwwwイヤーンな関係になれないのはwwwww残念無念また来週wwwwwでもwwwww友達が増える喜びがあるならwwwww俺様嬉しいwwwww不幸なことなんてwwwww他の幸せの前にはwwwww風の前のちり紙に同じだぜwwwww」

 

「……それって『平家物語』の引用のつもりですか?それを言うなら『風の前の塵に同じ』ですよ?」

 

「そうともいうwwwww」

 

「そうとしか言いません!」

 

「まあwwwwwこれからもwwwwwよろしくwwwww」

 

「あーもう!分かりました!私の負けです!今後ともよろしくお願い致します!これでいいですか!?」

 

「うはwwwwwおkwwwww」

 

 

……実に惜しい男だな、内藤は。

もうちょっと普段から真面目にしていれば、さぞモテただろうに。

どうやったらあんなにポジティブシンキングになれるんだろうか。

 

……いや待て、清水のことはどこに行った?

最初はそっちの方向に持って行ってたのに。

ふと気になって、清水の方に視線をやると、彼女の前に霊烏路が立っていた。

?どうして霊烏路が?普段から仲がいいんだろうか?

 

 

「……ねえ清水。ちょっといい?」

 

「あら?なんですの霊烏路さん?」

 

「なんで須川のことを家畜以下って言ったの?私バカだからよく分からないんだけど」

 

「そんなもの決まっています!私のお姉さまへの愛を侮辱したからですわ!この崇高な思いが理解できない人間ならば、家畜以下も同然でしょう!?」

 

「なんで女の子が女の子を好きになることが崇高なの?子供ができないよ?」

 

「子供だとかそういう次元の話ではないのです!この人が好きだと心から思えることが重要なんです!それを邪魔するようなことをするから愚かなんです!」

 

「邪魔をする?」

 

「そうですとも!人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んでしまえという言葉があるでしょう!?それと同じです!これだから男というのは汚らわしいんですわ!」

 

「須川は良いやつだよ?その須川が友達だって言ってるから、吉井も悪者じゃないと思うんだけど……」

 

「騙されてはいけませんわ霊烏路さん!奴らも所詮は男です!その頭の中でどれだけ下卑た想像をしていることやら……ああ、恐ろしい!」

 

 

明久から聞いた話では、清水は美波を保健室に連れ込もうとしていたって聞いたけど。

それより下卑た考えとなると、今の俺にはちょっと想像できない。

……それにしても、なんで霊烏路は清水に突っかかってるんだろう?

そういうことをするキャラだっただろうか?

 

 

「ま、いっか、それでも私は須川と仲良くするもん♪」

 

「やめておきなさい霊烏路さん!男と仲良くするなんて、そんな人生を棒に振るようなマネなんか……」

 

「知らないの清水?好き嫌いはよくないんだよ?できれば清水もいろんな人と仲良くなって欲しかったけど、そこまで言うならいいや」

 

「そんな煩悩の塊のような生物となんて、絶対に騙されてますわ!」

 

「うにゅ?別に私は須川に騙されててもいいよ?仲良くしてくれるなら、それでいいじゃん。じゃあね、清水。いろいろ答えてくれてありがと」

 

「あ、ちょっと……」

 

 

清水の呼ぶ声も聞かず、霊烏路はこちら側――より正確に言うなら、須川の方に向かってくる。

満面の笑みを浮かべて、一切の遠慮もせず、須川の背中に飛び込んでいった。

 

 

「いえーい須川ーーー!暇だぞ構えーー!!」

 

「ウグッ!……テメェいま戦争直前なの分かってんの?遊んでる暇ねーから!あとひっつくな、離れろ!重てーんだよ!」

 

「いーじゃんいーじゃん!それに私は重くないー!」

 

「あーもう!わーったよ!重くねェから邪魔だし降りろ!」

 

「やだー!なんか清水に須川の悪口言われたときモヤモヤしたから、須川に謝罪と賠償を要求するー!」

 

「そんなのテメーの勝手だろーが!俺に当り散らすんじゃねェェェ!」

 

 

ああなるほど、清水に友達を馬鹿にされたから食って掛かってたのか。

できるなら考えを改めるようにと。

なんとも純粋ないい子じゃないか。

 

 

「霊烏路、須川と仲良くしてやってくれよ?」

 

「そんなの言われなくてもってやつだよ!」

 

「仲良くしてーなら、もうちょっと男女の距離感を掴みやがれ!」

 

「おい皆!B・Cクラスが攻めてきたぞ!全員迎撃の用意をしてくれ!」

 

「よーし!須川、行くよ!私達で敵を殲滅だー!」

 

「いいから降りろやテメェェェェ!!どこの世界に相方の背中に乗って敵陣に突っ込む馬鹿がいんだよ!?」

 

「マ○オとヨ○シーってそうじゃない?」

 

「俺がヨ○シーってか!?乗り捨てられるために存在する恐竜だってか!?あっ!テメェ何勝手に肩にまでよじ登ってやがる!?」

 

「うわー!すっごい高ーい!須川って力持ちだねー!」

 

「いいから降りろ!何がどうなったら肩車をするって状況になんの!?どうして俺はこんな状況に持ってこさせられてんの!?」

 

「ほらほら、もう相手が来ちゃってるよ?」

 

「チクショォォォォ!!もうやってやるよ!このまま突撃してやらあァァァ!!」

 

 

……なんとも締まらない出撃である。

真っ先に敵に突っ込んで行ったのに、情けない限りだ。

えーっと……俺の防衛する扉は…………

 

 

「……お前ら待てェェェェ!!お前らは俺達と同じ扉守るんじゃねーか!お前らが勝手に前に出たら、用意しといたのと別の教科で勝負されるだろうがァァァァ!!」

 

「じゃwwwww俺様達はwwwww反対側のドアを守るからwwwww士郎も頑張ってねwwwww」

 

「反対側は任せましたよ!」

 

「ああ、任された……こんなこと言ってる場合じゃない!」

 

 

内藤達との会話もそれなりに、勝手な行動をしたバカ二人を追いかける。

……明久や雄二は、こんなのを纏めていたのか。

あいつらの苦労っぷりがわかってしまう気がする。

 

 

「お、士郎、ようやくの登場か?」

 

「魔理沙!あの二人はどこに行った!?」

 

「心配すんな。まだ戦闘開始はしてないぜ」

 

「それはよかった……でも、どうしてだ?」

 

 

前に出すぎた二人なんて格好の獲物同然のはずなのに。

何が起きてるんだ?

 

 

「お、おい……お前先に行けよ……」

 

「やだよ……なんであいつら肩車してんの?なんであの状態でいきなりこっちに飛び出してきた?」

 

「あの二神合体トーテムポールに何の意味があるんだ……?」

 

「きっと何かの罠に違いないぜ……大した男だ」

 

 

意味不明な行動をとる二人を目の前にして、相手が混乱している……だと……?

 

 

「さあ来い!ここがお前らの死に場所だァァァ!」

 

「うにゅー!かかってこい!まとめて相手をしてやるぞー!」

 

 

当の二人はやる気満々である。

須川のやつ、吹っ切れてるな。

 

 

「……その肩車は何なんだ?」

 

「ふふん!こうなった以上私達に負けはないよ!私と須川がフュージョンすると、戦闘力が何倍にも……」

 

「オイあんま股を頭に押し付けんな気持ち悪い!」

 

「そ、そんなに押し付けてないでしょ!須川の変態!」

 

「なんで勝手にお前がやったことで俺が変態扱いされなくちゃなんねーの?冤罪じゃねーか」

 

「……その状態で俺達と戦うと?大丈夫なのかそれ?ろくに動けないんじゃないの?」

 

「あんまり舐めないでよ!滅茶苦茶軽快に動けるよ!なんだったらタップでも踏んでみよーか、あん?コノヤロー!」

 

「タップは無理だバカヤロー!」

 

「タップは無理だそうだコノヤロー!」

 

 

そして、その二人を囲むように、魔理沙とその他三人のFクラスの生徒が陣取っている。

すると、こちらに話をしていた魔理沙が、相手の方に向き直って口を開いた。

 

 

「おうおう、お前らB・Cクラスは勉強が出来ても、この戦型に覚えがないと見える。こいつらがこの状態で出てきた以上、お前らの戦死も確実ってことも分からないのか?」

 

「ど、どういうことだ!?」

 

 

本当にどういうことだ。

ただ二人が肩車しているだけじゃないか。

魔理沙は何を言い出すつもりなんだ。

 

 

「これはかの有名な戦国武将、竹中半兵衛が編み出した『人間合体騎馬』だ!まさかこれほどまでに完成度が高いものが見れるとは……長生きはするもんだぜ」

 

「へぇー、これがあの噂の構えか。いつかは実物を拝みたいとは思ってたんだよな……完成度高けーなオイ」

 

「竹中半兵衛って……あの軍師の!?お前ら、聞いたことあるか?」

 

「い、いや……そんなこと知らねえよ……一体どんな秘策なんだ……?」

 

 

俺だってそんな秘策があるなんて聞いたことがない。

おそらく、天国生活を謳歌していらっしゃる竹中半兵衛ご本人も身に覚えがないに違いない。

そもそも魔理沙は言うほど長生きしてはいないじゃないか。

あと、別のFクラス生徒、お前も大概ノリがいいな。

 

 

「……貴方たちは、この『馬無人馬一体』の前に敗れ去るのみです。戦死したい方から、どうぞ、前に……」

 

「その通り!B・Cの生徒はこの黒田官兵衛が秘策『二人戦国戦車』の餌食だ!」

 

 

残りの二人も相手を挑発するが、どちらも名前を間違えてるぞ。

さらに言うと、考案者の名前まで変わってる。

こんな騎馬戦の出来損ないみたいなものを見せられても、おふた方はただ戸惑うばかりだろう。

戸惑いまくって、二度見するまである。

 

 

「く、くそ……そんな技があるなんて……」

 

「なんだかよく分からないけど、とにかくすごい自信だ……」

 

 

……なんでさ。

どういう思考回路をたどったら、そう言う結論に至るんだ。

目の前で名前を間違えたというのに、なぜ誰も疑問を抱かない。

本当にこいつらは、勉強ができる上位のクラス陣なのだろうか。

 

 

「もういい!あの奇妙なオブジェに関しては後回しだ!誰が勝負に挑む!?」

 

「そ、そうだな……相手は、衛宮、霊烏路に霧雨だ」

 

「えーっと、確か衛宮が理系が得意で、霧雨は英語と理科、霊烏路は化学に特化していて……だったら理科か?」

 

「いや待て!反対側には魂魄がいるんだぞ!?油断をさせておいて国語で一気に殲滅する気かもしれん!それにあの合体ロボの下にいるやつは国語の点数が良かった覚えがある!」

 

「え、じゃあ社会?……別に誰かが得意って聞いたこともないぞ?」

 

「一体なんなんだよ!?」

 

 

俺達が、何の教科で勝負してくるのか予測しているようだ。

こっちは防衛戦だから、俺達が教教師を準備させることができるわけだしな。

だが先に言っておこう。

お前らが出した教科の中に、正解は『一つもない』ということを。

 

 

「ええい!もうこうなったら破れかぶれだ!とにかく勝負を挑んで教科を確認する!」

 

「おそらく敵は理系で挑んでくるはずだ!自信がある奴は召喚しろ!」

 

 

おっ、ついに攻撃してくるか。

だけど、残念。その回答は不正解だ。

 

 

「――それじゃあ、頼んだぞ、『兄貴』」

 

「ああ。それでは、教師としての役目を全うさせてもらおう」

 

「は……?」

 

 

教室の影から出てきた教師は、俺の兄である『衛宮誠志朗』先生だ。

そして、俺の兄貴の担当科目は――

 

 

「衛宮士郎!『家庭科』で勝負を挑む!」

 

「霧雨魔理沙も同じく勝負を挑む!」

 

「あ、私も私も!いざジンジョーにショーブだ!」

 

「俺も召喚だ!」

 

『…………へっ?』

 

 

 

『 Fクラス 衛宮士郎        

  Fクラス 霧雨魔理沙       VS     Bクラス・Cクラス×6人

  Fクラス 須川亮           

  Dクラス 霊烏路空

  

 

 

 

 

                

 

        624点              

 家庭科   321点        VS      平均 174点  

       205点             

       224点                      』

 

 

 

 

 

 

「な、なんだよその馬鹿げた点数は!?」

 

「家庭科のテストとか五教科のついでみたいなもんだろうが!!」

 

「こんなのだけ何本気で高得点狙いに行ってんだよ!バカじゃねーのお前ら!!」

 

 

ほう……家庭科を『ついで』と言うか?

家庭科のことをバカにしたな?

よろしい、ならば戦争だ。

 

 

「―――つまり、殺していいんだな、テメェらァァァ!!」

 

『えっ』

 

「よくも家庭科のことを馬鹿にしたな!!もはや許してはおけない!本気で行くぞ!お前らが座る補習室の席の数は十分かァァァァ!!!」

 

「なんでいきなり切れちゃってんのこの人!?先生どうなんですか!?衛宮のやつ『殺す』とか言ってますけど!?」

 

「構わん、やってしまえ士郎。さらばだBクラスとCクラスの生徒の諸君。理想を抱いて溺死しろ。……いや家庭科を馬鹿にするような愚か者には、理想などという高尚なものは理解できなかったな」

 

「こっちも何か色々やべえ!教師としてあるまじき発言してんだけど!?なんなの!?お前らなんでそんなに家庭科に対して情熱を燃やしてんの!?」

 

 

さすが兄貴だ、分かってくれてる。

こちらから親指をグッと上げると、兄貴もまた俺に向かってサムズアップを返してきた。

しかも、歯を光らせながらというおまけ付きで。

これは何が何でも勝たなくてはいけないな……!

 

 

「おいおい、家庭科さんのことをついでとか失礼じゃねーの?全教科の中で最強と名高い家庭科さんに対してよくも吠えられたな?」

 

「いや待てよ須川!お前Fクラスだろ?何でそんなに点数高いんだよ!」

 

「べっつにー?家庭科の実技は結構得意だってだけの話だぜ?将来を一人で過ごしていくなら必修といってもいいくらいじゃねーか」

 

「なんでお前は孤独に生きていくこと前提で将来設計構築してんの!?」

 

「じゃあ逆に聞いてやんよ!俺が将来結婚して幸せな生活が送れると思ってんの!?断言するね、俺は絶対に尻に敷かれる宿命だってな!!」

 

「現在進行形で尻に敷かれてるもんな、物理的に」

 

 

ふむ、須川はよく分かっているようだな。

生活と家庭科は決して切れぬ固い鎖で繋がれているも同然だ。

そこを怠らずに研鑽するとは……こいつ、できる!

 

 

「それはさておき、霊烏路、お前結構点数高いのな、霧雨もかなり高得点だしよ」

 

「ふっふーん!こう見えて、ご飯作ったり、お洗濯したり、お裁縫やお掃除も得意なのさっ!褒め称えてもいいよ!」

 

「そりゃあ必要に迫られてってやつだぜ?私がいないと、香霖の家がゴミ屋敷になるからな。しかもあいつってばほっといたら数日も飯を食わずに本読むんだから困ったもんだぜ」

 

「……女子力皆無だと思っていた二人が、案外女子力が高かった件について。しかもうち一人は女子力が天元突破して嫁力にまで至っていたでござる」

 

「べ、別に私は嫁とかそういうので上達したわけじゃないからな!一人暮らしのために練習するついでに香霖を実験台にしてやっただけだからな!勘違いすんなバーカ、バーカ!えーと、それとバーカ!!」

 

 

まあ最初のうちは、親しい人に食べてもらって意見を言ってもらうのも一つの手だからな。

魔理沙の言い分も別におかしいところはない。

……とは言っても、あんなに赤い顔で否定していても照れ隠しってことぐらいはすぐに分かるぞ。

 

そういえば、最近はアルトリアも料理の練習をし始めたんだっけ。

自分で食べればいいのに、どうして俺に試食をさせたがるんだろうか?

結局は、アルトリアの視線に負けて、半分ずつにして食べてるけど。

 

 

「そんなことはどうでもいい!重要なことじゃない!重要なのは、衛宮の点数が頭おかしすぎるってことだ!なんだよあれ!教師でもあんな点数たたき出せねえよ!」

 

「むっ、それは心外だな。私がこのような未熟者に劣るわけがないだろう。私だったら四桁は出せる」

 

「お前ら兄弟揃ってチート使ってんじゃねェェェ!!」

 

 

チートとは失礼な。

努力して叩き上げた点数だぞ。

 

 

「こっちが家庭科ってことは、反対側のドアは一体何の教科『うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!召喚を許可するうううううううううぅぅぅぅぅ!!!!!!』うん、分かったわ」

 

 

反対側は、保健体育だ。

内藤は保健体育が得意といっていたし、魂魄だって剣道部に入っているんだ、それなりの点数は期待できる。

……ただ、清水の点数は、高いほうが嬉しいような、低いほうが嬉しいような…………。

 

 

「そ、そうだ!……おい!Fクラスの野郎ども!須川とか衛宮が憎くねえのか!?衛宮は女たらしだし、須川に至っては戦略のためとは言え今まさにいちゃついてんだぞ!」

 

「はっ?別にいちゃついてねーし。これはあれだよ、ホイミンケンタウロスの構えって言ってだな……」

 

「とうとうカタカナにまで名前が変わってるぞ須川ァ!あと俺は女たらしじゃない!」

 

 

またもその奇妙奇天烈な肩車に新たな名前が誕生したが、そんなことはどうでもいい。

俺は女たらしじゃないって何回言えばわかるんだ!

なんだかんだで鈍感鈍感って言われ続けているけれど、別に今までにそういうことしたことって少ないだろう!?

百歩譲って、女子と接する機会が多いから女たらしと言われてしまうんだとしても、どう考えても俺よりも明久やブロントさんの方が多いじゃないか!

 

 

「あー、この間衛宮の携帯番号を教えてくれってクラスメイトの女子に言われたな」

 

「俺なんか、俺の下駄箱に女子からの手紙があったと思ったら、衛宮宛だったこともあったぜ」

 

「弓道部の見学に来てる女子って、3割から4割は衛宮目当てだって噂だぞ」

 

「で、誰が女たらしじゃないって?」

 

「みんな!これは捏造だ!信じるな!」

 

 

B・Cクラスの連中め!俺をそんなに孤立させたいか!

いや、そりゃ確かに女子からのメールだとか、手紙だとかはもらったかもしれないが、ああいうのは大体俺になにか修理してもらいたいとか、頼み事を請け負っている時だけだ!

俺目当てで観客が多いというのも、自分で言うのもアレだが、弓道でそれなりの的中度のある生徒なら、野次馬根性で見に来たっておかしくないじゃないか!

何でそんなに俺の話を誇張させたがる!?

 

 

「ふー……やれやれ、俺達も甘く見られたものだな。それを聞かされて俺達がお前らに寝返るとでも?」

 

「……私達はあくまで崖下の人間です。崖を登りきった友を賞賛することはあっても、こちらに誘う呪いの言葉をかける道理などありません」

 

「ああ、全くだ。その程度の言葉で、我らが友の成長を誇りに想う気持ちは、揺ぎはしない」

 

 

……なぜだろう。前の戦争でFクラスの連中はこういう奴が多いってことは分かっていても、違和感が拭いきれないのは。

 

 

「つーか衛宮が女たらしなのは今更だしな」

 

「……今更ですね」

 

「今更だな」

 

「そんな嫌な信頼はされたくなかった!」

 

 

どうあがいても、俺のそのイメージは払拭できないというのか。

ゴッド。俺、なんか悪いコトしましたか。

 

 

「まーそういうことだから、悪いな、お前らの思い通りにならなくて」

 

「……衛宮さん、いざとなれば交代しますので、全力でお願いします」

 

「任務を続行する。我々も可能な限り支援しよう」

 

「あ、ああ……」

 

「そうだ!この戦争が終わったら、俺達三人で街に行ってナンパしに行こうぜ!ただし衛宮、テメーはだめだ!」

 

「……いいですね。しかし私はこの通り内気なもので、うまくいくかどうか。……無事生き残れたら、ご指導お願いします」

 

「ナイスジョークだな。俺達がそんなテクニックを持っているとでも?そこはおいおい相談するか、なあに、なんせこれから時間はいっぱいあるんだからな」

 

「……なあ、お前ら、死ぬなよ?」

 

『いきなり何を?』

 

 

死亡フラグの地雷原でタップダンスしていたような気がしたんだけどな……。

 

 

「でも、このままじゃ俺たち負けちまうよ……」

 

「だ、誰か、家庭科が得意な奴は――」

 

「どいて。貴方たちは私の後ろで援護でもして頂戴」

 

 

いざ始まるかと思いきや、そこに乱入者の影が。

 

 

「あれ?十六夜?なんでこっちに?」

 

「……どうも、うちのクラスは家庭科が得意な人が少ないようで、私がこっちに来ざるを得なかったというわけよ」

 

「ちょ、ちょっと咲夜さん?なんか雰囲気が怖いよ?」

 

「河城まで……」

 

「あ、士郎!ごめん、敵だけど助けて!咲夜さんがおっかない!」

 

 

十六夜が、Cクラス生徒の河城にとりの首根っこを掴んで飛び込んできた。

河城は、女の子ながらも機械いじりが好きということもあって、その作業に俺も協力させてもらってたりする。

いやぁ、まさか趣味が合う人間がいるとは思わなかったな。

 

 

「十六夜がおっかない……?いつも通りじゃないか」

 

「いつも通りなら、私を拉致ったりなんかしないってー!ヘルプミー!」

 

「にとり?私はあなたを拉致なんかしていないわ。ただ、迅速にこの勝負を終わらせるために協力してもらおうとしているだけよ。解放するのはそれが終わってからだけど」

 

「それを世間では拉致っていうんだってばー!」

 

「むう……確かに」

 

 

そう言われると、十六夜は表情こそポーカーフェイスだが、少々殺気立っていることに気づいた。

何が十六夜をそんなに怒らせているんだろう。

 

 

「……なあ咲夜?望みの相手と勝負できなかったからって拗ねるなよ」

 

「あら、何のことかしら魔理沙?私は特定の誰かと戦いたいわけじゃないわよ?」

 

「まあいいさ。喜べ咲夜。お前の望みはようやく叶うぜ」

 

「止めてくれ魔理沙、その言葉は俺に効く」

 

 

軽くトラウマをえぐられたような気がした。

別に俺にはそんな言葉で傷つくいわれはないというのに。

 

 

「でも、お前ら二人だけで俺達に勝てるなんて――」

 

「だれが二人だけと言ったかしら?」

 

 

……えっ

 

 

「さーて、少しばかり眠いけど仕事しますかね。……え、なにやってんだいお前さんたちは」

 

「見て分からねーのか。ホイミンケンタウロスの構えだ」

 

「どうだ!すごいだろ!かっこいいだろ!」

 

「別にすごくもかっこよくもないと思うんだけどねえ……あと、あたいはそんな構え知らないんだけど」

 

 

須川の前に出てきたのは、小野塚小町か。

河城と同じCクラスだったはずだけど、家庭科得意だったっけ?

 

 

「やあやあずいぶん探しましたよ須川さん!ここであったが百年目、いざ尋常に勝……負…………」

 

 

次いで飛び出てきた東風谷早苗が、須川と霊烏路の姿を見て固まってしまう。

……うん、まあ仕方ないよな。

 

 

「おいおい、お前さんらが妙な事してるから早苗までフリーズしちまってんじゃないか」

 

「いやフリーズじゃねーから。この構えの前に恐れを抱いてるだけだ」

 

「そんなわけが……」

 

「須川さん!?それってあの伝説のホイミンケンタウロスの構えじゃないですか!完成度高けーなオイ」

 

「なんであんた知ってるんだい!?」

 

 

なんで東風谷がその名前を知っている!?

あと、今のでようやく初めて、この肩車の名前が他人同士で一致したぞ。

 

 

「あ、分かる?最近のやつらはこの構えのことを知らないから困るぜ」

 

「ええ、これも時代の流れでしょうね。かつて明治政府を壊滅の危機に追いやった、秘策中の秘策が廃れていくとは……」

 

 

最近の奴らどころか、古今東西探してもその構えを知ってる奴はいない。

あと竹中半兵衛も黒田官兵衛も、明治時代の人間ではない。

それと、もし仮に明治政府がこんな肩車でやられかけたのなら、鎖国して江戸幕府のままでいたほうが幸せだっただろう。

 

 

「御託はいいわ。さあ早く始めましょう。にとり、早苗は後ろから、小町は私と一緒に前衛よ」

 

「!行くぞ三人とも!俺と須川が前に出る!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『 Fクラス 衛宮士郎              Bクラス 十六夜咲夜

  Fクラス 霧雨魔理沙       VS      Bクラス 東風谷早苗

  Fクラス 須川亮               Cクラス 小野塚小町

  Dクラス 霊烏路空              Cクラス 河城にとり

  

 

 

 

 

                

 

        624点                 587点

 家庭科   321点        VS        294点  

       205点                232点

       224点                211点       』

 

 

 

 

 

 

「あら、士郎も高いのね。私負けちゃったわ」

 

「……お互いに400点越え……か」

 

 

家庭科は、ほかの教科よりも点数は稼ぎやすいけれど、それでも500点以上を取るのは難しい。

しかもこの点数だと腕輪までついてきてしまう。

相手がどんな能力を持っているのか、見極める必要があるな。

 

 

「……ねー須川。私達二人を足してもどっちにも勝てないよ……?」

 

「……なんだろうな、俺達もそれなりに高いのに、完全に蚊帳の外みたいな空気」

 

「あっはっはっは!こりゃあ参ったね!まさかのダブルスコアだ!」

 

「士郎は家庭科バカだからね……それはそれとして、三番目に高いのが魔理沙とは、少々意外だよ」

 

「咲夜さんに関しては、異能生命体と考えてるので、最初から勝つことは諦めてます」

 

「あの二人は例外だから、実質私の一位でいいだろこれ」

 

 

…………

 

 

「……なあ十六夜?俺達って普通だよな?」

 

「普通と思うけれど、それが?」

 

「なんで俺たち異常者みたいな扱いうけてるんだろう?」

 

「さぁ?不思議ね。家庭科で、このくらいの点数なら普通に取れるわよね?」

 

「だよなぁ……」

 

「そうよね……」

 

 

……なんでさ。

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