バカとナイトと有頂天 作:俊海
こんなに時間がかかるとは思ってませんでした。
……いや申し訳ない。
暇潰し程度に見てください。
それではどうぞ。
おかしい。絶対に何かある。
「姫路さん、さっきから浮かない顔だけど、どうしたの?」
「いえ……何でもありません……」
どう見ても、姫路さんに何かあったとしか思えない。
辺りをキョロキョロ見渡しては、ふとした拍子に怯えたような表情を浮かべて、下を向く。
あからさまに挙動不審なのに、否定されても全く説得力がない。
「瑞希、風邪でもひいた?体弱いんだから、無理しないでよ?」
「大丈夫です……心配してくれてありがとうございます美波ちゃん……」
美波が声をかけるけれど、暗い声で返答する姫路さん。
彼女に一体何があったんだろう。
「ふむ……ここは一旦瑞希さんには下がってもらいましょう。明久さん、代わりに司令官はできますか?」
「うん、それくらいならお安い御用さ。姫路さん、具合が悪そうだから、あまり戦闘には加わらないようにしてね」
「……はい、すみません」
「平気平気、こんなの慣れっこだから。安心してね姫路さん」
そんな姫路さんを見かねてか、美鈴さんが下がるように言ってくれた。
代わりに僕が司令官になってしまったけど……姫路さんのことを思えば、これくらいどうってことはない。
問題は、姫路さんが下がることによって、みんなの士気が下がるかもしれないってことだけど……。
「野郎ども!!姫路さんが体調不良で一時後退するようだ!!丁重にお出迎えして差し上げろ!!」
「んなこと言われなくったって当たり前だぜバカ野郎!!姫路さん、お疲れのようでしたら椅子を持ってきましょうか!!?」
「それとも、喉が乾きましたか!?だったら、ちょっくら自販機までパシリに行ってきますよ!!」
「汗をかかれておられるなら、タオルがこちらにございますが!」
「ひ、姫路さんの汗をふいたタオル……ごくり」
「おいこらそこのDクラス生徒!!妙なこと口走ってんじゃねえぞ、ああーーん!?」
「貴様のようなものがいるから、我々系が誤解されていくんだ!!修正してやる!!」
「ご安心ください姫路さん!使用したタオルは、誰の手にも渡らぬように焼却処分いたしますので!!」
「我々Fクラスの崖下紳士が、そのような下劣な真似をすると思うてか!!」
「貴様みたいな人間は、紳士として失格だ!!恥を知れ!!」
逆にFクラス生徒は、ハイテンションになってしまっていた。
うん、僕はこのクラスのこういうところが本当に大好きだ。
「……つーかよ、吉井明久みたいなバカが司令官って大丈夫なのかよ?」
「あいつ観察処分者だろ?そんなヤツに任せるとか不安で仕方ねえよな」
「俺たちでやったほうがましじゃねえの?」
むう……Dクラス生徒の言うことも理解できる。
僕の肩書きが、不名誉すぎる『観察処分者』だもの。
……結構プレッシャーだな、司令官っていうのも。
「おうおうDクラスの諸君、言いたい放題いってくれるじゃねえの」
そんなDクラス生徒に声をかけたのは、僕たちのクラスの生徒だった。
「……なんだよ、文句でもあんのか?」
「いやいやまさか。むしろ、よくぞそこまで見抜けたな、と褒めてやりたいところだ」
「はぁ?」
「お前らも察している通り、吉井はバカだ!」
「あいつの点数はCクラスの生徒にすら及ばないと自信を持って言える程にバカだ!!」
「ああ!そうだ!吉井はバカだ!ついでにいうと女ったらしだ!」
「今も吉井のやつ、三人の女生徒に囲まれてるからな!できることならどこかで爆発してくれないかと思ってるくらいだ!」
「ついでに言うなら、軽く俺たちも『あれ?コイツの作戦に従って大丈夫なのかな?』とか戦々恐々するほどには、司令官としての信頼はない!!」
あれっ!?僕をフォローしてくれる言葉がひとつもないっ!?
「それでもなぁ!俺達はこいつにだったら従ってもいいと思えるんだ!バカだけどな!」
「実際俺達は、こいつらに助けられてここまで戦ってこれた!バカだがな!」
「誰よりも俺達のことを考えてくれているのは明久だ!バカだけども!」
「明久はバカすぎるから、俺たちでなんとか補佐してやらなくちゃいけねえんだ!バカなんでな!」
「お前ら見とけよ!絶対にこの戦争が終わったら明久に感謝する時が来るぜ!なんたってこいつはバカだからな!」
君たちは僕に対する評価の語尾に、バカをつけなくちゃいけない病気にでもかかっているのかい?
「畜生!君たちなんて大っ嫌いだ!」
「まーまー明久さん、そんなに怒っちゃダメですよ。ほら、よしよし」
軽く怒るふりをしたら、宥めるつもりだったのか、美鈴さんが頭を撫でてきた。
僕ってそんなに子供扱いされやすいかな?
「というか、ほとんどアキのことを褒めてる内容だったじゃない。ああ言ってるのも親しみがあるからみたいだし」
「それはまあ、分かってるんだけどさ……」
美波はそう言うけど、結構傷つく。
「ガッデム!またも俺達は明久のフラグを強化してしまっただけなのか!?」
「なんてこった!どうやったらあいつのフラグを破壊できる!?ええい!明久のフラグ建築能力は化け物か!!」
「待て!逆に考えるんだ!『明久に彼女が出来ちゃってもいいさ』って考えるんだ!そうすれば、明久がそれ以上フラグを立てることはできなくなるはずだ!」
「お前……天才じゃねーか!それだと明久にとっても俺達にとってもWIN-WINだ!」
「ところで明久の本命は誰だと思う?」
「やっぱり姫路さんじゃねーの?なんだかんだ明久って姫路さんを一番に気にかけてるし、この戦争を始めた理由の一部にも姫路さんが関わってるらしいぜ?ふふふ……自らの犠牲も厭わずに、ただ一人の少女のためにその身を捧げる……ロマンチックじゃあないか」
「ふっ、だから貴様はアホなのだ!いいか!現状で明久と一番心の距離が近いのは島田だというのは議論するまでもない!そんな島田との気の置けない関係から一歩踏み出した、その青春ストライク加減がいいというのが分からんのか!このたわけが!」
「いや、あえて俺は紅さんを推させてもらうぜ。あの元気で明るく、恋愛のれの字も知らんような無垢な少女が、ふとした拍子に、明久を友達ではなく異性として意識してしまうという、初々しくて2828しがいのあるギャップこそが最強にして不敗よ!」
「貴様ァ!!姫路さんとのあいだには初々しさは存在しないと抜かすか!?むしろこっちのほうが上だろうが!!この三人の中では奥手さがナンバーワンだと断言してもいいくらい、姫路さんはお嬢様タイプダルォォ!?明久は消極的!姫路さんも消極的!中学生みたいな恋愛をしてしまうのは確定的に明らかだ!!」
「はっ!ダメだね、全然ダメだ!確かに島田とは初々しさというのは少ないかもしれないが、逆に言うと互いにそれだけ気を許しきってる関係だってことだ!!もはや結婚すらしていないのに、まるで長年連れ添った夫婦のようにツーカーな関係を見てほっこりするのが紳士というものだろう!!」
「いいか!紅さんには他の二人には持っていないものがある!!それは明久に対してそういう感情を持っているかどうか分かっていないということ!!つまり『無』ということだ!!『無』から『有』は生まれ、『無』とは『可能性』のことだと言う!紅さんと明久の間には、無限の可能性が存在するってことだ!お前らは引力を信じるか!」
「……いっそのこと全員落とすっていうのはどうだろうか?」
『そこに気づくとは……やはり天才じゃったか……!』
どうしよう、僕の評価がどんどんとんでもないことになっていってる気がする。
「大丈夫じゃ明久。ワシはどんなお主でも友達でおるぞ」
「その優しさが余計に痛いよ秀吉……」
もう僕は、どうあってもその評価を覆すことはできないんだね……。
――――…………
「ドアと壁をうまく使うんじゃ!戦線を拡大させるでないぞ!!」
「私たちが前衛をしますから、他の皆さんは無理せずに、危なくなったら撤退してください!」
秀吉と美鈴さんの声が響く。
僕達の役割は、『Cクラスの教室に攻め込むこと』だ。
ブロントさんは、その途中のBクラスの戦線を押し込める役割で、士郎はDクラスを防衛を任されている。
僕達の戦線が拡大すれば、ブロントさん達の戦闘も楽になることから、結構僕たちの役割は重たい。
「絶対にみんな死なないでよ!僕の心配ならする必要はない!観察処分の経験が生きてる僕が、実戦経験の少ない敵なんかに遅れを取るはずがないんだから!安心して僕を盾に引き下がってね!!」
現状、なんとか前線自体は、僕、秀吉、美鈴さんの三人で拮抗できている。
美波?……今の教科は古文ってことから察してもらえると助かるかな?
「ううっ……ウチって本当に役たたずじゃない……」
「だ、大丈夫だよ美波!敵が別の教科で挑んできたとき、美波には活躍してもらわなくちゃいけないんだから!今は温存の時間だよ!」
Bクラスは文系が多いから、どうしても美波が活躍しづらい状況になってしまう。
いや、理系だとめちゃくちゃ頼りになるんだよ、美波は。
「明久さん!今は目の前の敵に集中ですよ!!」
「分かってるよ!!」
むっ、そうこうしているうちに、B・Cクラスが侵攻してきた。
「ぶっ殺せーーー!!」
「まずはお前らから戦死させてやる!!」
『破ッ!!』
『げふっ!?』
美鈴さんは、攻撃してきた敵を外に打ち払って崩した後に、両掌で胸を強打する『抱虎帰山』を、
僕は、敵の懐に踏み込んで肘で攻撃する技『開門肘』を敵に打ち込む。
アワレ二人は爆発四散!やはりカラテあるのみである。
「……明久さんって、本当に何かがおかしいですよねー」
「美鈴さんの教え方が良かったんじゃないの?僕ってバカだしさ、先生が良かったんだよきっと」
「そ、そう言われると照れますねー」
「お主ら!よそ見している暇はないぞ!千客万来じゃ!!」
『ハイヨロコンデー!!』
秀吉の注意で、即座に切り替える。
この戦線は僕達にかかってると言っても過言じゃない。
『注意は一秒、後遺症が死ぬまで』
平安時代に活躍した稀代の哲学剣士、ミヤモト・マサシの残した言葉だ。
「……いや、マジで三人だけであの軍勢相手に出来るってどういうことだよ?」
「クオラァァァ!!てめえDクラス!なにボサっと突っ立ってやがる!お前もさっさと戦わんかい!!」
「俺達の命に変えてもあの三人を死なせるな!!あいつらが引き付けてるうちに、俺たちも敵を一人でも多く屠れ!!」
「姫路さんの手を煩わせるな!姫路さんは今不調でいらっしゃる!姫路さんに戦闘させることは万死に値すると思え!」
「そうでもなかったら、明久たちの身代わりにでもなりやがれこのスットコドッコイ!!」
「はっ!?そんなの嫌に決まってんだろ!?鉄人の補習とか受けることを想像するだけでも吐き気がするわ!!お前らFクラスは俺達に死ねと言いたいのか!!」
「貴様の命が明久達と等価とでも思ったか!!お前ら俺達に不意打ちでやられたくせにいつまでも偉そうにしてんじゃねーよ!!」
「じゃあお前らが一旦やってみろよ!!手本を見せてくれたら俺だってやってやる!!」
「明久あぶねえ!!」
「うわっ!?近藤君!?」
「ちっ!仕留めそこなったか!!」
『近藤ォォォォォォォォォォ!!!言われた瞬間に明久の身代わりになりやがった!!さすが近藤!!俺たちにできないことを平然とやってのける!!そこにシビれる!あこがれるゥ!!』
「なんでいきなりレッツトライしてんのアイツ!?バカなの!?死ぬの!?」
「あいつはすでに死んでるぞ」
「そう言う意味じゃねえよ!!」
「みろ!あの近藤の勇姿を!あいつだってその身を賭して明久を守ったぞ!!たった今戦死したけどな!!」
「近藤!お前の姿はかっこよかったぜ!!」
「ああ!お前の姿は歴史に名を刻むレベルだったぞ!!」
「お前の栄光は末代まで語り継いでやる!!」
「へへ……ざっとこんなもんよ……」
「近藤君!!何で身代わりになってるのさ!?その気持ちはありがたいけど、僕なんかよりも自分の身を優先してよ!!」
「というか、今の攻撃、明久さんなら避けられましたから、かばう必要もなかったような……」
「……えっ?マジっすか?」
「……その、残念なんじゃが、犬死ってやつかの?」
「ドンマイね、近藤……」
「HEEEEYYYY!!あァァァんまりだァァアァ!!!」
「近藤何余計なことしてんだよ。明久の命令も訊けねーのかお前。戦死してんじゃねーよ」
「近藤……お前の姿、哀れすぎるぜ」
「ああ、歴史に汚点を残すレベルだったな」
「お前の無様さは末代まで語り継いでやる」
「あっれぇ!?お前らの手首のモーター全開すぎねぇか!?」
僕達の士気は悪くない。
でも困った。本来の総指揮官である姫路さんが、なぜか戦えないのは大きな痛手だ。
見た感じそれほど体調自体は悪くなさそうなんだけど……。
「あっ……う、ううぅ……」
戦おうとはしてるんだけど、すぐに動きを止めては俯いてしまう。
その度に泣きそうな顔をしているのが、見ていてとても辛い。
「やばい!!明久!!姫路さんのいるところが突破されそうだ!!」
「何ぃ!?ひ、姫路さん!!なんとか応戦を!!」
「あ、そ、そのっ……!」
その肝心の姫路さんに、B・Cクラスの魔の手が伸びる。
マズイ!このままだと姫路さんもろとも、一気に戦線が崩されてしまう!!
くっ!こうなっては仕方がない!こちらも奥の手を使うまでよ!!
ダッシュで人ごみをかき分け、古文を担当している竹中先生の耳元で囁く。
「……ヅラ、ずれてますよ」
「っ!?少々席を外します!!」
狙い通り少しの間ができる。
いざという時の脅迫ネタの一部を、こんなところで使うことになるとは予想外だった。
「姫路さん、何かあった?」
「そ、その、なんでもないですっ!!」
姫路さんの、この様子の原因を知らないことにはどうしようもない。
それでも姫路さんは頑なに否定する。
「そうは見えないよ。何かあったなら話してくれないかな?作戦とかも変更しなくちゃいけなくなるし」
「本当に、なんでもないんです!」
……じゃあ、なんで姫路さんは、そんなに泣きそうな顔をしているんだい?
「明久!右側が突破されそうだ!!援軍を頼む!」
「私が行きます!!」
僕から逃げるように、戦線に加わろうとする姫路さん。
でも――
「あ……」
またも、その場で足を止めてしまった。
何かを見て、そうなったみたいだけど……。
今の姫路さんの視線の先を追ってみる。
「……根本?」
そこには、Cクラスからこちらを見下す根本の姿があった。
あいつがどうかしたんだろうか?
何か変わったことはないか、注意深く観察する。
「っ!?」
なんで……なんで君がそれを持っているんだい?
姫路さんが、君なんかにそんなものを渡すわけがないだろう?
どうして――
――どうして、根本が、この間姫路さんが僕から隠した手紙なんか持っているんだ?
「……ははは、なるほどね。そういうことか」
「吉井君……?」
おかしい話だ。思わず笑いが出てしまったよ。
昨日言っていた、『切り札』っていうのは、そういうことだったのか。
そりゃあ『切り札』って言っちゃうわけだよ。
あの時点で姫路さんを無力化することができる手口が存在していたんだから。
そうなると、勝負を引き伸ばしにかかるあの協定の理由も、B・Cクラスが有利になるからってわけかい。
実にうまい方法だ。合理的で失うものもリスクもない、小汚い作戦だ。
「姫路さん」
「は、はい……?」
笑顔で姫路さんに声をかける。
姫路さんを不安にさせるわけにはいかないからね。
「具合が悪そうだから一旦保健室に行ったほうがいいよ。試召戦争はこれで終わりじゃないんだから、体調管理には気を付けないと」
「……はい」
「じゃ、僕は用事があるから行くね」
「あ……!」
「美波、秀吉、美鈴さん、僕一旦抜けるから、なんとか持ちこたえてね。他の皆も大丈夫かな?」
「……苦手科目だけど、アキに頼まれたら断れないわね。ウチに任せときなさい!」
「ふむ……ま、明久なら何か考えがあってのことじゃろうから、気にするでない」
「ふふん、私は明久さんの師匠ですよ?弟子の面倒くらい背負って差し上げます!」
「心配すんな!お前一人が抜けたところで、戦力にはさして変化はねえよ!!」
「なんせ天下の『観察処分者』様だからな!むしろ雑魚はすっこんでろ!」
「そうだ!お前なんざ、どこで行動してようが戦局には影響しねえ!」
「その通りだ!だから――お前の思った通りに行動しろ!」
「それで何の成果も得られませんでした!とか抜かしたら裸でフルマラソンしてもらうからな!」
「そら!さっさと行って来い!!もたもたすんな!!」
皆……ありがとう……!!
「よ、吉井君……!」
姫路さんが何か言いたげだったけど、気にせず背を向けて駆け出す。
皆に急げと言われたら、立ち止まるわけには行かない。
「面白いことをしてくれるじゃないか、根本君」
思わず、そんなセリフが口からこぼれた。
全く面白い、面白すぎて――
「ふふ……ふははは……」
――笑いが止まらない。
いや、笑うことしかできない。
思っているのと、真逆の感情が表に出てきてしまう。
でも、無理やりにでも押し込めないと、周りから不審者扱いされてしまう。
必死の思いで、なんとか失笑を止める。
いやぁ、笑わせてくれてありがとう、根本君。
お礼とは言ってはなんだけどさ、
絶対にブチ殺してやるから、首を洗って待っていろ。
――――…………
「雄二っ!」
「うん?どうした明久」
「なんか必死な顔して普通ならまだ付かない時間できょうきょ教室に参戦した明久がいた。どうすた明久、今のところ我慢してるけどいつ怒るが爆発するかわからないオーラが見えそうになってるぞ」
Fクラスに飛び込むと、雄二はブロントさんともう一人別の生徒と喋っているところだった。
え、あの生徒って……。
「あれ、ブロントさんに……忍者っ!?」
「……なんだ、吉井か」
意気消沈した表情で、こちらを眺める忍者の姿があった。
忍者って敵だよね?なんでこんなところに……。
「黄金の鉄の塊で出来ているナイトが皮装備のジョブに遅れをとるはずは無い。だがお前を生け捕りにする作戦には高確率で確実に成功させないといけないからよ、命は助けてやる俺は優しいからな他のやつらにも伝えてやるべき。さっきのがリアルでなくて良かったな、リアルだったらお前はもう死んでるぞ。何か言うことはないのか?」
「……勝ったと思うなよ」
「もう勝負ついてるから」
ああ、なるほど。
忍者は捕虜としてこっちに連れてこられたのか。
ブロントさん、忍者に勝てたんだ。よかったよかった。
でも、忍者を口説き落とすのって相当難しいと思うんだけど。
「で、どうする忍者。この条件を飲むのか、飲まないのか、さっさと決めてもらおうか」
「……言われるまでもねえ、その条件、飲んでやるよ。そんなことをされてたんじゃ、根本の奴の下につく理由はねえからな」
えっ、忍者、根本を裏切るの?
あれだけのことをされても裏切らなかったのに?
……雄二は、一体何をしたんだろう。
「そうか。そう言ってくれて助かった。それじゃあ、あとは手筈通りに頼むぜ」
「分かってるさ。しかるべきタイミングで、根本の野郎をぶっ飛ばせばいいってこったろ?任せとけ」
「よし、じゃあ解放してやる。気付かれんなよ」
そう言って、雄二が忍者を教室の外まで送り出すと、忍者はこちらには一瞥もくれず走り去っていった。
……忍者よ、君に一体何があったんだ。
「あの、雄二、忍者に何をしたの?違法薬物とか使ってないよね?」
「誰が使うか!!真っ当にこっち側につくように説得したっての!!」
「だって忍者ってすっごく頑固そうだし」
「別に忍者はバカではない系の話があるらしいぞ?あいつは自他共に認める効率厨だからよ、理論建てて説得すれば簡単に叩き落として論破可能」
「……もしかして、根本が何かしてたの?」
そう聞くと、ブロントさんがピクリと反応した。
表情では、それほど変化はないようには見えても、よく見ると拳をきつく握りしめている。
今にも噴出しそうな怒りを、無理やり押さえ込んでるような、そんな印象を受けた。
「……オレの圧倒的なPスキルの前に根本の命は長くない(不快)怒りのパワーの力が全快になったから根本はもう謝っても遅い」
「奇遇だねブロントさん。僕もちょっと根本は許せないかなって考えてたところだったんだ」
「ほう、明久はなかなか分かっているようだな。ジュースをおごってやろう」
「そうだな。根本は俺の敵だ。明確な、俺の敵だ」
二人で話していると、背後からまた一人会話に加わってきた。
振り向かなくったって分かる。
にしても、この生徒まで怒らせるなんて、むしろ根本に感心しちゃうよ。
「……君もかい、士郎」
「ああ。根本はダメだ。あいつはやっちゃいけないことをしてしまった。俺の仲間を傷つける、そんなヤツを俺は許しておけない。俺も協力するぞ」
こうやって士郎が戻ってきたってことは、Dクラスは特に問題無しってことかな。
それにしてもどうしたんだい士郎。いつになく無表情じゃないか。
本当にポーカーフェイスが得意だね。
それとも、そうしてないといけないくらい、何らかの感情が爆発しそうなのかな?
「大歓迎だよ士郎!君がいれば百人力さっ!僕達が力を合わせれば、大抵のことは乗り越えられるよ!さぁ、一緒に根本のクソ野郎をぶちのめしに行こうじゃないか!きっと雄二がそのための作戦を考えてくれてるはずだよ。それじゃあ雄二、僕たちは一体何をすればいいんだい?どんな無茶でも絶対に実行してみせるよ!」
「明久と士郎がPTになったことにより最高の騎士はヴァージョンアップして至高の騎士に進化した。最強の義務は最強のプレッシャーとなって襲いかかってくる。俺たちの魔の手がのぶて来ている以上根本は戦死からはのげられない。根本はバラバラに引き裂かれて裏世界でひっそり幕を閉じることになるのは確定的に明らか。雄二、お前全力で作戦を考えて良いぞ」
「おいおい、そんなに怒るなよお前ら。そんなに怒ってたら、雄二の作戦が実行できなくなるかもしれないぞ?……ところで、そうなった場合、別に俺が根本を倒してしまってもいいんだろ?大丈夫だ。正直なところ、根本を倒すまでは、戦死する気が全く起きないんだ。ああ、俺が根本を倒すところしかイメージできない……!」
この二人が一緒なら、どんなやつでも倒せそうな気がする。
待っててね根本君、君に再び会える時を心から待ち望んでいるよ。
「……こいつら三人を怒らせるとか、根本のやつは人生に飽きたのか?」
たぶん次の話は、どうしてブロントさんと士郎がブチギレてるかの話になると思います。
……ただ、私の小説での士郎は、原作ほど人間としてぶっ壊れておらず、人一倍正義感が強い、仲間思いの少年くらいの設定ですので、そこのところはご了承ください。
というか、そんな人間を描写することは、私には到底無理です。
やっぱり、きのこさんは凄いなぁ……。