Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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今年最後の更新となります。
いやー、一年は本当に早いですね。
来年も更新を頑張りますのでゼアルオーダー、よろしくお願いします!


ナンバーズ47 憎悪と愛の再会

黒髭から聖杯を奪ったヘクトールをカルデア海賊団が後を追う。

 

カルデアとアストラルでサーヴァントの気配を察知し、その方角に向けてひたすら船を走らせる。

 

そして、遂にヘクトールが乗っていると思われる船を発見したが……。

 

「なんだよあの舟は!?」

 

「この時代の船よりもかなり昔の船……なんだあの船は!?」

 

それは巨大な船でこの時代の船とは構造や特徴がかなり異なる異質な船だった。

 

そして、その船の正体を知っている者がいた。

 

「ふぅん。あれって、もしかしてアルゴー号?」

 

ギリシャ神話の月の女神、アルテミスだった。

 

「アルゴー号……?まさか……!」

 

「アルゴー船の事か!?」

 

「オリオン、本当なのか!?」

 

「はい、ご名答だコン畜生!ありゃ、正真正銘『アルゴノーツ』だ!金羊の毛皮を求めて旅立った、冒険者たちの船。人類最古の海賊団と言っても過言じゃねえ」

 

「あれが、アルゴー船……」

 

遊馬は人類最古の海賊団……金羊の毛皮を求めて旅立った冒険者たち・アルゴノーツを乗せた船、アルゴー船に冒険者の息子として一瞬だけ心が震えた。

 

しかし、アルゴノーツのリーダーはカルデアにいる一人のサーヴァントを裏切り、不幸のどん底に叩き落とした人物であるため、感動の心が一気に静まってしまった。

 

それは船頭にヘクトールと共に現れた一人の金髪の男……アルゴノーツのリーダーにして船長、イアソンである。

 

「やあ、君たちがヘクトールを追い詰めた海賊団かな?ほぅ、話に聞いていたが精霊と共にいる少年……君がマスターかね?」

 

「あんたがイアソンか……」

 

「そうさ!そして、紹介しよう!私の愛しき妻……メディアを!」

 

「えっ!?」

 

「今、メディアって……」

 

遊馬とマシュが驚く中、イアソンの隣に杖を持った遊馬と同い年ぐらいと思われる可憐な紫髪の少女が現れた。

 

「はい。お呼びですか、マスター?」

 

「っ!?あの子は……!?」

 

遊馬はその紫髪の少女見て驚いた。

 

その少女はこの特異点に訪れる前の日に夢で見た強大な闇と戦い、消滅させられた少女そのものだった。

 

「馬鹿な……あれがメディア……いや、私達の仲間のメディアの幼き姿だというのが!?」

 

アストラルはあの少女がカルデアにいるメディアの昔の姿だと推測するが、そもそも成長している存在がカルデアに既に召喚されながら幼き姿の存在が別の存在として召喚されることがあり得るのかと考え込んでしまう。

 

「一体何がどうなってるんだよ……」

 

イアソンが裏切ったメディアが側にいることやそのメディアがイアソンの側を嫌とも思わずに側にいる事、そしてあの夢で見た謎の光景……訳がわからないことが重なり、遊馬は頭の中がパンクしそうになった。

 

その時、カルデアから小鳥の緊急通信が入った。

 

『大変よ!遊馬!今、メディアさんがそっちに向かってるわ!』

 

「ええっ!?うわっ!!?」

 

デッキケースが開き、中から紫色の光が飛び出して現れたのは……。

 

「イアソン……イアソン!!!」

 

それは憎しみや怒り、様々な負の感情に顔を歪めたメディアだった。

 

生前からの憎い相手が現れたと聞いて皆の制止を振り切って無理やりカルデアから転送して現れたのだ。

 

メディアの登場にイアソンは驚愕し、目を見開いて若干体が震えていた。

 

「ば、馬鹿な!?ここに幼きメディアがいるのに、何故君が!??」

 

「この恨み、晴らさでおくべきか!!死に去らせ!!!」

 

メディアは杖を掲げると周囲に数多の魔法陣が現れ、魔力砲撃を放つ。

 

「うわぁああああっ!?」

 

「イアソン様!」

 

迫り来る魔力砲撃にイアソンはだらしない声を上げるが、そこに幼きメディア……メディア・リリィが前に出て魔力障壁を展開して魔力砲撃を受け止めた。

 

「っ!?あなたは昔の私!?どうしてよ……どうしてその男を守るのよ!!」

 

「私はイアソン様を愛しているからですわ!」

 

「ふざけないでよ……その男は……私に何をしたと思っているのよ!!」

 

「はっはっは!な、なんて醜い姿だ!まさしく君は『裏切りの魔女』に相応しい!!」

 

イアソンのその一言にメディアは正気を失い、復讐者と成り果てながら再び杖を構えて魔力砲撃を発動する。

 

「黙れ……黙れ黙れ黙えっ!!イアソン、貴様だけは……貴様だけはこの手でーー」

 

「メディア!!」

 

遊馬はメディアの前に出て肩を掴んだ。

 

そして……。

 

パシッ!

 

暴走するメディアの頬を軽く叩いた。

 

突然の事にメディアは呆然とし、魔術の発動を止めて魔力が空中に霧散した。

 

「マス、ター……?」

 

「メディア、憎しみに囚われるな。憎しみで力を振るったら自分も、自分の大切なものを失うことになる」

 

遊馬は憎しみに囚われたメディアを止めるために頬を叩いたのだ。

 

「でも、あいつは……あいつは!!」

 

「メディアの気持ちは俺にだってわかるよ。いや、下手したら俺が味わった苦しみよりも辛かったのかもしれない……」

 

遊馬は親友だと思っていた男は実は敵で裏切られて心に大きな傷を負った事がある。

 

信頼していた相手に裏切られた……それは遊馬とメディアも同じ思いをした。

 

「でも、仮に憎しみの心であいつを倒したらメディアと『あの人』との大切な思い出が壊れちゃうかもしれない……」

 

「あの、人……?」

 

「あんたを愛し、全てを捧げてくれた葛木先生だ。葛木先生がいたからこそ、あんたは夫婦の本当の愛情を知ることができたんだろ?」

 

「宗一郎、様……」

 

メディアはかつてのマスターであり、自分の為に戦い愛してくれた夫……葛木宗一郎を思い出し、涙が溢れた。

 

メディアはその場で崩れ落ち、両手で涙を抑えるために目を覆った。

 

「おい、イアソン……てめぇは何がしたいんだよ?」

 

遊馬はメディアにこれほどの憎しみを与えたイアソンを睨みつけた。

 

「ハッ、君のような頭の悪そうなガキに私の考えが分かるわけがない!」

 

「……遊馬、イアソンは自分の国を作り、王になりたいのではないか?」

 

アストラルはギリシャ神話のイアソンの物語から目的を推測した。

 

「王に?」

 

「イアソンはギリシャ神話で王座を追われ、最終的には国を追われた……だからこそ自分の国を作り、王になろうと思っているのではないか?」

 

「おおっ!まさか私の考えをこうも簡単に見抜くとは、君はとても頭脳明晰で聡明だね!うむ、気に入った!そこの精霊君、私の部下にならないか?」

 

イアソンはアストラルから感じ取れる神聖さやその頭の良さから部下にならないかとスカウトした。

 

「断る」

 

アストラルは考える間もなく即答で断った。

 

「はははっ、そう言わずに。僕の国が完成し、王になった暁にはメディアと一緒に側においてあげよう!!」

 

「……イアソンよ、この際だからはっきり言おう。『貴様如き』がこの私と釣り合うと思っているのか?」

 

他人を見下しているイアソンに今度はアストラルがイアソンを睨みつけながら見下す発言をする。

 

「なっ!?貴様、如きだと!??私はイアソン、ギリシャ神話の英雄でアルゴー船の船長だぞ!?」

 

「私は遥かなるランクアップの高みを目指すアストラル世界の使者。その私が貴様如きの隣に置くだと?身の程知らずもほどほどにしておけ」

 

「ふ、ふざけるな!では何故君がそのガキの隣にいる!?そのガキがこの私より優れていると言うのか!??」

 

「遊馬は私にとってこの命よりも大切な掛け替えのない存在だ。そして、私と隣に立つに相応しい無限の可能性を持つ最高にして唯一無二の存在だ!!」

 

「へへっ、嬉しいことを言ってくれるじゃないか、アストラル。照れるぜ」

 

アストラルの遊馬への熱い想いに一同は驚いており、言われた遊馬本人は少し照れながらアストラルに笑顔を見せた。

 

そして、静かに目を閉じてからゆっくり開くと真剣な表情になりながらイアソンに宣言する。

 

「イアソン、俺からも一言言わせてもらうぜ。王になりたいみたいだけど……あんたが王になっても誰も幸せにならない」

 

「な、なんだと!?貴様も私を否定するのか!?」

 

「……あんたの為に沢山の罪を重ねて背負ってきたメディアを平気で裏切り、見捨て、不幸せにした。何でだよ?何でお前はそう簡単にメディアを裏切ったんだよ……」

 

「ふ、ふん!貴様には分からないだろう!メディアの内に潜む本当の恐ろしさを!!」

 

「恐ろしさ?メディアにどんな恐ろしさがあるか知らねえけどな、そんなの怒ったうちの姉ちゃんや世界を滅ぼそうとした邪神に比べたらなんて事ねえよ。俺の知っているメディアはちょっと意地悪なところがあるけど、本当は優しいお姉さんみたいな人だ。つうか、お前の言うその恐ろしさはお前がメディアを裏切ったり酷い事をしたせいじゃないのか!?」

 

「ぐっ!??」

 

遊馬の指摘は的中しており、イアソンは心臓が大きく跳ねて跳ねてたじろいでしまう。

 

「どうやら図星のようだな」

 

「イアソン、てめぇは少なくとも、自分を献身的に支えてくれたたった一人の女性を裏切り、不幸のどん底に落とした。そんなことをするような奴が国民を幸せに出来るはずがない!!」

 

「あ、あの時のことは反省している!今度は間違いなくここにいる妻のメディアを幸せにするさ!!そして、私の国に住む国民を幸せする!!」

 

「……無理ね」

 

「何!?」

 

メディアは涙を拭い、フードを脱いでイアソンを真っ直ぐ見つけて指差す。

 

「イアソン……あなたは平和を願う心が本物でも、魂が絶望的にねじれているので決して理想の王にはなれないわ」

 

「メディア……君まで私を否定するのか!?」

 

「あれだけ私を裏切っておきながらよく言えるわね。と言うかもう私の名を呼ばないでもらえる?私はあなたの元妻、メディアじゃない……我が最愛の夫、葛木宗一郎様の妻、『葛木メディア』よ!!そして、ここにいるマスターの為に、世界の未来を守る為にあなたを倒す!!」

 

メディアは遊馬のお陰で復讐心を鎮め、カルデアのサーヴァントの一人として復讐ではなく、人類の未来を守る為にイアソンを倒す決意を固めた。

 

「その意気だぜ、メディア!かっとビングだ!」

 

遊馬とメディアの絆が深まり、気持ちが高まったその時、デッキケースにしまったメディアのフェイトナンバーズが紫色の輝きを放ちながら宙に浮いた。

 

「これは……?」

 

遊馬がフェイトナンバーズを持った瞬間、もう一枚のカードが現れた。

 

それは灰色の枠のカードでそこには1人の男性の姿が描かれていた。

 

「もしかして……」

 

遊馬はある一つの可能性を思い浮かべながらその灰色の枠のカードをデュエルディスクに置いた。

 

次の瞬間、メディアの前に紫色の魔法陣が現れ、中から一人の人間が現れた。

 

それは渋い雰囲気を漂わせる眼鏡をかけたスーツ姿の男性だった。

 

「ここは……何だ……キャスター……?」

 

男性は呆然としながら周りを見渡し、メディアが目に映ると驚いたように目を大きく見開いた。

 

そして、メディアは再び瞳に涙を浮かべながら口を手で抑えた。

 

「そ……宗一郎様……!?」

 

その男はメディアの元マスターにして最愛の夫、葛木宗一郎だった。

 

「嘘っ!?宗一郎って……本当に!?」

 

「馬鹿な!?彼はメディアの元マスターなのか!?」

 

遊馬とアストラルはサーヴァントでもない、メディア曰く体術が得意な高校の先生である葛木宗一郎が召喚されたことに驚いた。

 

先程遊馬がデュエルディスクに置いたカード、それはカードの効果によって特殊召喚される特別なモンスター、『トークンモンスター』のカードであり、どうやらメディアのフェイトナンバーズの効果を見る限りその効果で呼び出されるトークンらしい。

 

「キャスター……お前、なのか……?」

 

「宗、一、郎……様……」

 

メディアは怒りや憎しみではなく心の底から湧き上がる喜びの涙を流しながら宗一郎に抱きついた。

 

宗一郎はメディアを抱きしめながら頭を優しく撫でた。

 

「キャスターよ、死んだはずの私がどうしてここに……?」

 

「宗一郎様……今の現状など話したいことは山ほどありますが、今はそれどころではありません。私たちが戦わなければならない敵があそこにいます!」

 

「あの男か……むっ?隣にいる娘……お前によく似ているな」

 

「そ、それについては戦いながら話します。一番の敵はあの金髪の男ですわ」

 

「……お前の知り合いか?キャスター」

 

何となくメディアの知り合いなのではと察した宗一郎にメディアは口ごもってしまう。

 

「えっと、その……」

 

「あいつはイアソン。メディアの元夫で散々メディアに酷いことをして裏切った最低の男だ」

 

メディアが言いにくい事を遊馬が代わりに言った。

 

「君は……?」

 

「俺は九十九遊馬。メディアのマスターだ」

 

「君がキャスターの……?」

 

「詳しい話はこの戦いが終わったらちゃんとする。だから、葛木先生はメディアの旦那さんとしてやるべきことがあるだろ?」

 

「そうだな……」

 

遊馬に諭され宗一郎はメディアの最愛の夫としてイアソンと対峙する。

 

「貴様がキャスター……いや、メディアの元夫か」

 

「だ、誰だ貴様は!?」

 

「私の名は葛木宗一郎。高校で教鞭を振るっている。そして……メディアは私の妻だ」

 

「はっ!君がその女の夫?君も大変だろうね、その女と付き合わされて!」

 

「何を言っている……?私はメディアの為にこの力を、この命の全てを捧げると決めた。そして……私の『愛する妻』を悲しませた貴様をこの手で屠らせてもらおう」

 

「ヒイッ!??」

 

宗一郎は手の関節を鳴らしながら強く握りしめ、獲物を狙う蛇のような鋭い殺気を放ちながらイアソンを睨み付けると、人間とは思えないその恐ろしい殺気にイアソンは怯んでしまった。

 

「すげぇ、あれがメディアの旦那さんか……」

 

「そうよ、あれが私の旦那様……宗一郎様よ。ありがとう、マスター」

 

何故宗一郎が召喚されたのか不明な点が多いが、二度と会えないと思っていたメディアは嬉しく思い、遊馬の頭を撫でて感謝の気持ちを伝えた。

 

するとイアソンはその光景に驚くと面白おかしく笑い始めた。

 

「そうか……そうだったのか!メディアよ、君はなんとも哀れな女だ!まさかその小僧に自ら殺めた弟の姿を重ねるとは!」

 

「っ!?」

 

「弟を、殺めた……?はっ!?」

 

遊馬はカルデアで見たギリシャ神話で思い出した。

 

女神ヘラと女神アフロディテの呪いでイアソンに惚れさせられたメディアは逃走中に故郷から追いかけてきた実の弟を殺めてしまったのだ。

 

メディアは無意識のうちに遊馬をその弟と重ねてしまい、正常ではない自分の意思とはいえ自らの手で弟を殺してしまった事が頭の中でトラウマとして蘇り、頭を抱えながら苦しみ始める。

 

「あぁ……あっ、あぁ……」

 

「メディア……!」

 

宗一郎はメディアに駆け寄りながら抱きしめた。

 

「ははははは!見ているだけで笑いがこみ上げてくるよ。自ら罪を犯しながら今は亡き弟の影を追いかけるとは!」

 

イアソンの卑劣極まりない言葉に黙っていたマシュ達も怒りがこみ上げてきた。

 

そして、遊馬とアストラルは俯きながら静かに言葉を重ねて発した。

 

「「黙れ……」」

 

「はぁ?」

 

「黙れって言ってるんだよ!!!てめえ!!!」

 

「貴様のような卑劣な男を断じて許すわけにはいかない!!!」

 

怒りが爆発した瞬間、遊馬とアストラルの背後に銀河眼の光子竜の幻影が現れた。

 

銀河眼の光子竜はカイトが弟のハルトの命を守るために共に戦い続けてきたエースモンスター。

 

弟を殺める事になってしまった元凶とそれを何とも思わずに嘲笑うイアソンに対し、数々の戦いの中で家族の大切さを知った遊馬とアストラルの怒りに銀河眼の光子竜が共鳴したのだ。

 

「弟を、殺めた……?マスターは時々、妙な事を仰るのですね」

 

一方、イアソンが言った言葉に理解が出来ないと言わんばかりにメディア・リリィは首を傾げる。

 

自ら弟を殺した記憶が無いのか、欠落しているのか分からないがメディア・リリィはその事を気にしなかった。

 

「それで、キャプテン。このまま押しつぶしますか?『大英雄様』と共に」

 

「そ、そうだな!……よし、遂に君の出番だ!来たまえ!!」

 

イアソンが呼ぶとアルゴー船の中から新たなサーヴァントが現れる。

 

しかし、そのサーヴァントに遊馬たちは戦慄する。

 

「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎ーーー!!!」

 

それは巨人と見紛うほどの巨躯を持った巌のような男だった。

 

その男の正体をメディアとメドゥーサは知っていた。

 

「っ!?ま、まずいわ、マスター!あれはギリシャ神話の大英雄、ヘラクレスよ!」

 

「ヘラクレス!??」

 

ギリシャ神話の二大英雄の一人、神々の王ゼウスと人間の娘の間に生まれた半神半人の英雄。

 

数多の冒険と試練を繰り広げ、その全てを乗り越えた大英雄である。

 

「ギリシャ神話で一番有名と言っても過言ではない大英雄・ヘラクレス……しかし、彼から感じるこの気配はまさか……」

 

「ええ。あのヘラクレスはバーサーカークラスで呼ばれています」

 

狂戦士であるバーサーカーとして召喚されたヘラクレスは大英雄と言うよりも恐ろしい神のような敵を相手にしているような気分となる。

 

「勝てないさ!勝てるものか!このヘラクレスは、あらゆる場所であらゆる怪物と戦った。敗北などなく、最後には神まで至った男!それがヘラクレスだ!君達のような二流三流とは訳が違う。無造作に引き千切られるか、雑魚敵としての宿命だ!」

 

イアソンはまるで自分の事のようにヘラクレスを自慢する。

 

しかし、イアソンは英雄らしく最後の慈悲なのか遊馬たちに選択を与えた。

 

「さて、君達。そこのアーチャー、エウリュアレを引き渡せ。そうすれば、ヘラクレスをけしかけることだけは止めておいてやってもいい」

 

「エウリュアレを……仲間を渡せだと……?」

 

「そうだ。どうかな?悪い条件じゃ無いと思うけど?」

 

イアソンはそう言うが、遊馬の答えは初めから決まっている。

 

「ふざけんじゃねえ!!エウリュアレは俺の大切な仲間だ!エウリュアレを絶対に渡さない!ヘラクレスもヘクトールもぶっ倒して、最後にはてめえもぶっ飛ばす!!」

 

「マスター……」

 

エウリュアレは自分を差し出せば助かるかもしれないのにそれを拒否してまた守ると宣言した遊馬に心が打たれた。

 

「よく言った、遊馬!行くぞ!!」

 

アストラルはデュエルディスクを構えてデッキからカードをドローする。

 

「おう!行くぜ、アストラル!!」

 

「私のターン、ドロー!『ゴゴゴゴーレムを召喚!更に『トラブル・ダイバー』を特殊召喚!レベル4のゴゴゴゴーレムとトラブル・ダイバーでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

ゴゴゴゴーレムとトラブル・ダイバーが光となって海に吸い込まれ、光の爆発が起きる。

 

「「現れよ、No.39!我が戦いはここより始まる!白き翼に望みを託せ!光の使者、『希望皇ホープ』!!」

 

『ホォオオオオオオープ!!!』

 

ヘラクレスと同じように数多の強大な敵を倒して来た光の英雄……希望皇ホープが現れた。

 

「な、何だあれは!?これがヘクトールが言っていた召喚獣なのか!!?」

 

遊馬とアストラルが召喚した希望皇ホープから溢れる神性の力にイアソンは驚きを隠せなかった。

 

「まさかこれ程とは……しかし、マスター。例えどのような敵が相手でもヘラクレス様には敵いません」

 

「そうだ、そうだったな!例え君が強力な召喚獣を呼んでも、どれだけサーヴァントを束にかかろうともヘラクレスには勝てないのさ!」

 

イアソンはヘラクレスに勝てるものは存在しないと自信満々に言うが、メドゥーサはそれを真っ向から否定する。

 

「イアソン、メディア。あなた達は一つ見誤っています。他のクラスならともかく、バーサーカークラスのヘラクレスの命を奪う事ができるサーヴァントがいます」

 

「な、何だと!?馬鹿な、最強の英雄のヘラクレスの命を奪えるサーヴァントが存在するはずがない!嘘だ!嘘に決まっている!」

 

「私は嘘を言いません。マスター、アルトリアとエミヤを呼んでーー」

 

メドゥーサの言葉を遮るように再び遊馬のデッキケースが開くと中から二人のサーヴァントが現れる。

 

「セイバー見参!!」

 

「ふっ……アーチャー、推参」

 

「アルトリア!?エミヤ!?」

 

アルトリアとエミヤ、ちょうどメドゥーサが呼んでもらおうと思った二人のサーヴァントだった。

 

「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎ーー!?」

 

ヘラクレスはアルトリアとエミヤを見た瞬間に僅かながら驚いた表情を見せた。

 

「久しいですね、バーサーカー。いえ、ヘラクレス!」

 

アルトリアは約束された勝利の剣を構え、キリッと凛とした表情をする。

 

「まさか、貴様が『あの子』以外にバーサーカークラスで呼ばれるとはな……」

 

一方、エミヤはヘラクレスを呼んだイアソンを一瞬だけ睨みつけて干将・莫耶を構える。

 

「貴様が命を賭して守り抜こうとし、敬愛したあの子のためにも……貴様を止める!!」

 

エミヤは誰かの事を脳裏に思い出しながらアルトリアと共にヘラクレスに向かって突撃する。

 

「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎ーー!!!」

 

そして、ヘラクレスは咆哮を轟かせて自身の武器であるその巨大な躰に見合った大きさの斧剣を振りかざした。

 

「お、おい!アルトリア、エミヤ!」

 

「どうやらあの二人はヘラクレスと戦ったことがあるようだな。さて……これからどうするか……」

 

アストラルは数秒だけ目を閉じて思考すると瞬時にこの場を乗り切る作戦を構築して遊馬に伝える。

 

「……よし、遊馬。君はネロと共にヘクトールを頼む。私たちでヘラクレスを抑える」

 

アストラルの考えた作戦に遊馬は目を見開いて驚いた。

 

「俺とネロで?」

 

「君とネロ……二人の力ならヘクトールを倒せるはずだ。先にヘクトールを倒して敵の戦力を大幅に削る」

 

アストラルはネロと契約したことで現れたフェイトナンバーズの力でヘクトールを倒せると確信を持ってその作戦を考えたのだ。

 

「だけど、あのヘラクレス相手に大丈夫なのか?」

 

「アルトリアとエミヤはどうやらあのヘラクレスと因縁があるようだ。二人が必ず全力で止めてくれる。それから、マシュのフェイトナンバーズを貸してくれ。今の状況ではあのヘラクレスを相手ではこのフィールドが悪い。攻めを捨ててホープとマシュの力で守りに全てを込める。私を……私たちを信じろ、遊馬」

 

「アストラル……分かった、頼むぜ!」

 

「ああ!」

 

遊馬はデッキケースからマシュのフェイトナンバーズをアストラルに投げ渡す。

 

「ネロ、行くぜ!俺たちでヘクトールを倒す!!」

 

「おお、ユウマ!遂に余の出番か!!二人の愛の力をあの男に見せてやろうではないか!!」

 

ネロはフェイトナンバーズでの初陣とあってテンションが一気に高まる。

 

「いやいや、戦いに愛の力は関係ないと思うけど……」

 

「さあ行くぞ、ユウマよ!余のフェイトナンバーズと共に顕現した二枚の魔法の札……それで彼奴を封殺するぞ!!」

 

二枚の魔法の札……それは日を重ねる毎に遊馬とネロの絆が深まることでネロのフェイトナンバーズから専用のサポートカードが誕生したのだ。

 

「みんなはヘラクレスを頼む!その間に俺とネロでヘクトールを必ず倒す!!」

 

「さあ、正々堂々と真正面から勝負しようではないか……トロイヤ最強の戦士、ヘクトールよ!ローマ帝国第五代皇帝、ネロ・クラウディウスが貴様に引導をくれてやろう!!」

 

テンションが高まりつつあるネロは原初の火を構えて切っ先をヘクトールに向けて挑発する。

 

「はっ、オジサンも舐められたものだね。そう簡単にやられると思わないでもらいたいね!!」

 

挑発され、英雄らしく前に出て遊馬とネロの前に出て来て槍を構える。

 

「ふっ、貴様こそ余と余の夫を甘く見るでないぞ?三つの世界とそこに住む全ての人類の未来を救った真の英雄……ユウマは勝利への必然の奇跡を起こす!」

 

「ああ。行くぜ、ネロ!俺のターン!ドロー!!」

 

遊馬はギリシャ神話の名高き英雄の一人を倒すため、デッキからカードをドローする。

 

 

 

.




宗一郎様降臨!
カニファンや衛宮さんちの今日のごはんを見ていたらメディアさんを幸せにしたいなと思って出しちゃいました(笑)
存分にカルデアで夫婦生活を楽しんでくださいねー!

ヘラクレスはやっぱりアルトリアとエミヤが止めなきゃと思って二人を出しました。
その背景にはヘラクレスを慕った一人の少女の願いが込められております。

次回は遊馬&ネロVSヘクトールです。
来年もよろしくお願いします。
皆さん、良いお年をお迎えください!

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