アイ・ライク・トブ【外伝更新中】   作:takaMe234

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※オリジナル要素やねつ造要素ありです。
 原作などで見なかったり聞いた覚えがないものは恐らく該当します。
 ご注意ください。












結8

戦争という名の政治ショーを幕開けするには、多大な手間と準備が必要とされる。

リ・エスティーゼ王国もバハルス帝国も、ショーを開催する為の準備に余念がない。

 

 

 

 

 

 

【バハルス帝国の皇帝ジルクニフが王国に大使を派遣。例年の様に領土問題及び麻薬問題について王国を非難。王国側も非難を一蹴し交渉は決裂】

 

【皇帝ジルクニフ。大使の帰国と同時に王国への侵攻を宣言。例年通り、カッツェ平野を戦場に指定する。王国側もこれを了承】

 

【エ・ランテルにて馬車の出入りが増加中である事を確認。兵糧食と物資の搬入が行われている模様】

 

【帝国軍、国内防衛用の一軍を除き、残りの七軍の動員を全て完了。各軍団、総訓練を開始】

 

【貴族軍が招集された民兵達を引き連れエ・ランテルに到着し始める。六大貴族の内、半数が既に到着。王族も陣頭指揮を執る為に王都を出発】

 

【七軍の将軍達と直属部隊による閲兵式が帝都アーウィンタールにて行われる。皇帝ジルクニフが将軍達を前にして演説、今回の戦いにおいて王国との領土問題が解決すると宣言】

 

【ランポッサ三世、エ・ランテルに第一、第二王子を伴って到着。数日前に発表された皇帝ジルクニフの演説内容を批判。今回の戦いでも王国軍は敗れる事が無いと談話を発表】

 

【アインズ・ウール・ゴウン。以前の勧告を無視して王国の関係者が領域を侵犯している事、麻薬組織が畑を作っているのに全く取り締まらない事について非難。王国側が非難を一蹴した為一方的に宣戦布告】

 

 

 

「さてさて、両軍ともに順調に戦争へと進んでいるなぁ。うちも、宣戦布告しちゃったけど」

 

アイダホは上がってくる報告書を見ながら、揚げジャガを一つ口(?)に放り込む。

このままいけば、両軍は例年通りの茶番劇という名前の戦いを開始する。

アインズ・ウール・ゴウンとしては予定通りの展開である。

 

「そうですね……」

「……」

 

黒曜石の円卓の向かい側。

同じように資料を見ている二人の少女の表情を伺う。

アルシェの表情にはそれ程変化はない。

彼女にとって王国は元より敵国であり、帝国も既に捨てた故国だからだ。

ただニニャにとって王国は、あまりにも感情が入り混じる存在。

かつての故国であり、自らの意思で捨てた国。

アイダホは捨てた理由と過程を知る故に、彼女に確認したい事があった。

 

「ニニャ。一つ聞きたい事がある」

「はい、アイダホ様」

 

アイダホは軽く紅茶を啜り、ティーカップをテーブルに置いてからニニャに向き直る。

 

「君は、この戦争をどう見る? 王国に、君のかつての祖国に負けて欲しいか? 計画通りに行けば、王国の運命は以前説明した通りだ。君は、その運命を受け入れられるか」

「構いません」

 

ニニャはアイダホの問いに即答した。

アイダホが想定してたより、全く躊躇の無い返事。

それは、彼女が王国に対して抱く絶望と怒りの証。

 

「アイダホ様。以前お話しましたね。私の姉を救って頂いた時に、私達の故郷での惨状を語った事を」

「ああ、覚えているよ……」

 

ツアレとニニャの故郷の寒村。

常に空腹を感じながら畑を耕しても、収穫した食物は殆ど領主に持っていかれる。

姉妹は飢えと病気に怯えながら、両親が他界してしまった厳しい世界で生きる事を強いられた。

100の内60を持っていかれるよりも過酷な、100の内80を持っていかれる現実。

貧しいどころではない、必要最低限の食事すら足りない極度の貧困。

周囲の家では若い娘を身売りに出す様な、そんな悲惨な状況でも姉妹で寄り添って生きて来た。

 

なのに、貴族はそんな姉妹すら引き裂いた。

 

生活の為の糧を限界まで奪っておきながら、更に姉までも貴族は奪ったのだ。

己の下劣な、情欲を発散するというそんな理由で。

ニニャは成人するまでの数年間を、たった一人で泥を啜って生き抜き魔法の師匠に出会った。

その間、ツアレは貴族の元で性処理用の玩具として弄ばれ蹂躙されていた。

 

何故、自分達がこんな目に遭わなければならないのか。

それは姉妹が何千回、何万回と世界に問い掛けて来た事だった。

 

神も、国も。誰も姉妹に手を差し伸べてはくれなかった。

差し伸べてくれたのは、異形たる大森林の領主。その方のみ。

 

姉にとって、恋と愛を向けるのがたとえ人で無くても良いように。

妹にとっても、忠義を向けるのは人で無くても良いようになっていた。

 

人の国が、人間の王や貴族が自分達に一体何をした?

搾取と暴虐を姉妹に行っただけではないか。

無慈悲に奪い取り、玩具の様に弄び飽きれば捨てるだけだった。

 

かの領主は自分達に何をしてくれた?

人間としての身分、仕事と、温かい寝床と充分な量の美味しい食事を与えてくれた。

人として生きていける場所と希望を与えてくれた。

 

姉妹にとって、国とは、祖国とはアインズ・ウール・ゴウンである。

決して、自分達を踏み躙るばかりであったリ・エスティーゼ王国ではない。

 

だから、王国なんて戦争で負けてしまえばいい。

 

「王国なんて、負けてしまえばいい。いいえ、戦で負けてしまう程度なんて生ぬるい……あんな国など、あんな豚共を許容している国は……滅んでしまえばいい!!」

 

ニニャは普段であれば絶対に浮かべないような、憤怒と憎悪に満ちた形相で吠えた。

アイダホですら一瞬だけ驚く位の、気迫と負の感情に満ち溢れていた。

 

「ああ、分かったよ。ニニャ。落ち着いてくれ」

「……申し訳ありません。興奮してしまいました」

「ニニャ、落ち着いて」

 

隣に居たアルシェも、気遣う様に肩に手を置いている。

彼女は元貴族であるが、貴族という肩書を一切漂わせずむしろ嫌悪している節があったのでニニャから嫌われる様な事は無かった。

ニニャが十分にクールダウンしたところで、アイダホは落ち着かせる様に語り掛ける。

 

「怠慢で国を腐らせた連中には報いを受けさせる。ただ、民達までは可能な限り労苦が行かないようにはしたい。無暗に王国を崩壊させれば、かつてのお前達の様に苦しむ民衆が沢山発生するだろう。そこは忘れないでくれよ?」

「はい、それは、分かっています」

 

ニニャも理解はしているのだ。

自分達姉妹が憎むべきはあんな地獄を作り出していた支配者達であり、同じ苦労を背負った民衆ではないという事は。

 

「すまないなニニャ。お前があの国に絶望しきっているのを知っていながら我慢しろと言っている」

「いいえ、貴方様には心から感謝しています。あの、姉さんを攫った外道貴族にも制裁を下してくださいました……ですから、アイダホ様が我慢しろと仰るのであれば我慢します」

 

ただ、奪われる辛さをその身に痛い程味合わされた過去は、理性を押しのけあの国そのものに報復せよと叫ぶのである。

それを抑えよとは言えても、無くせと言える程アイダホは傲慢ではなかった。

ツアレを救出した時の無残な姿を知る者としては。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アルシェ、主力であるゴーレム群の編成は?」

 

ニニャが研究室に戻った後、アルシェと投入する戦力について話し合う。

 

「はい、現在煉瓦ゴーレム170体、ストーンゴーレム80体、芋型ゴーレムが380体が実戦投入可能、総予備としてアイアンゴーレムが10体とミスリルゴーレムが3体になります」

「両軍の動員状態を考えれば、後増えて10体あればいいかどうか。やはり時間と国力が全然足りなかった」

 

出来立てほやほやの国である。

これでも頑張りに頑張った方だ。

かき集めたマジックアイテムや資材が無ければ、アイダホ本人が無双しなければならなかっただろう。

国の力を示すのにそれではダメだ。

軍の、国軍の力を示さなければならないのである。

 

「王国軍の一軍を相手にする事を考えれば十分ではないでしょうか?」

 

アルシェはカッツェ平野の地図と、布陣予定地に置かれているチェスの駒を見ながら疑問を発する。

アインズ・ウール・ゴウンが対峙し、交戦するのはリ・エスティーゼ王国軍だ。

帝国軍向けの布陣をしている彼らを横合いから殴りつけるのがおおまかな作戦の筈。

 

「いや、最悪帝国軍も相手にしなきゃいけないとなると少ない。こちとら、勝手に王国軍に宣戦布告する塩梅で帝国と同盟してる訳でもない」

「て、帝国とも戦うのですかっ?」

「ああ、以前の会談ではお互いに邪魔しあわないように、って口約束しただけ。一応書類もあるけど保険にはならないよ多分。まぁ、うちの方が新興の国の領主だから仕方ないと言えばそうだが」

 

実際、今回の戦いについて帝国とは同盟も協同もしていない。

今回の思惑について相互不干渉を取り込めただけだ。

だが、その相互不干渉もジルクニフの気持ち次第では、【無かった事】にされてしまうだろう。

勝ち戦になるのであれば、奪い取るパイを取り分ける人数は少なければ少ない方がいい。

対等な国同士の約束ならともかく、バハルス帝国という大国と、アインズ・ウール・ゴウンという吹けば飛びそうな小国だ。

いざ、追撃の段階になって消耗したこちらにも帝国軍が向かって来て、漁夫の利を得ようとする場合も考えられる。

ジルクニフは個人的に好感を持てる為政者だが、同時に抜け目のない野心を持つ皇帝でもある。

アインズ・ウール・ゴウンが東側に領土を広げるのを未然に防ぐ為、こちらにも軍事行動を起こす可能性は十分にあるのだ。

 

「だから、やっぱり俺も戦わないといけないって事だ。王様自ら武威を示す必要がある。いざとなれば俺一人だけでもお前らに凄く痛い目を見せられるよってね」

 

その為の超位魔法であり、その為の神器級アイテム。

王国は全く知らないし、ジルクニフも口伝で聞いた程度のアイダホの切り札。

カッツェ平野を焼け野原か灰塵に変え、数十万の死体を積み上げられるだけの威力を持つ兵器。

 

だが、これを使用してどちらかの軍を実際に吹き飛ばすつもりはない。

王国軍を壊滅させて労働力と後々支配する者達を失う訳にはいかない。

帝国軍を壊滅させて大陸東部のミリタリーバランスを崩壊させ、ジルクニフと共倒れ必至の消耗戦を起こす訳にもいかない。

 

「ようは、超でかい猫騙しで王国も帝国もびびらせる。そういう寸法だ」

 

可能な限り、血を流さず取り分は最大に。

威嚇と威圧だけにしか使わないとなれば、神器級のアイテムが泣きそうだがこんな代物をポンポン使わなきゃいけない状況になればそれはそれで色々終わっている。

 

「はったりと脅しで戦争を制す。実態と裏側が見えればみっともないが、ばれなきゃ問題はない。上手くやろう……さて、ちょいと出かけて来る」

「どちらに行かれるのですか?」

 

首を傾げたアルシェに、どこか憂鬱な雰囲気を漂わせながらアイダホは返答した。

 

「リ・エスティーゼ王国の首都だ。少し、確認したい事がある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅茶を嗜んでいて、ふと視線を落とすと小さな布切れが手元に置いてある。

その布切れに書かれた【人払いを】とのメッセージを見て目を細める。

 

侍女に人払いを命じ、自分以外誰も居なくなったティーラウンジの中を見渡す。

 

「姿を消したまま失礼します。戦の前にお聞きしたい事がありましてね。お邪魔させていただきました。要件が済めばすぐに退散いたします」

「大領主様。アポイントメント無しの御来訪は困りますわ。御持て成しのご用意もできませんので……」

「ああ、ラナー殿下のティータイムが何時なのかは調べがついていたのでね。何、貴女が紅茶一杯を飲み干すまでに終わる話ですよ」

 

アイダホは、万が一に備えて姿を消したままラナーと対峙する。

 

「では、率直に問います……蒼の薔薇に情報を手渡して手駒とし、第二王子殿下とレエブン侯が渡してきた王国の売却プランのプランナーを担ったのは貴女ですか?」

「………」

 

ラナー姫は、何時もの穏やかで淑女な微笑みを浮かべたままだ。

慈悲深く優しいと国民に評判の、【とある少年に望まれた理想の姫】の笑みを浮かべたままだ。

 

だが、アイダホは気づいていた。

その碧眼が笑顔とは一致しない、黒い眼光を忍ばせている事に。

言いようのない不快感を堪えつつ、アイダホは言葉を続けた。

 

「蒼の薔薇の資料と、プランの情報の揃え方、多少は弄ってありますが類似点が幾つかありました。ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラと貴女個人のつながりと情報が手に入る前後に宮殿に立ち入っている事も確認済みです。あなたも流石に私とイビルアイの交友関係までは知らなかったようですね。

 そうでなければ、あなたはレエブン候かザナック王子に再編集させて類似点を消したでしょう。私も他に証拠が無いか調べてみましたが、何も見つからなかった。随分用心深いようですね?」

「……」

「別に隠した事を非難している訳ではありません。ただ、実行する身としても、誰が作ったか分からない計画に自国の運命を託すのは不安を感じるだけなのです。独自に蒼の薔薇に情報を渡し八本指の活動を潰す様差し向けたのは見事ですし、あのプランについても素晴らしかった。この国の支配層で無くて良かったと心底思える位に。

 ええ、あまりにも効率的でえげつなくて怖気を感じましたよ。まるで不要な貴族たちを草むしりでもするように効率的に排除、粛清していく……もう一度聞きます。ラナー殿下、あなたが一連の計画のプランナーを担当したのですか?」

 

アイダホの問いに対し、ラナーは

 

「はい、そうですわ」

 

そうあっさりと肯定した。

同時に室内の空気の温度が下がったような気がする。

そして、少女の温和な瞳が、一瞬でドロリと濁った。

 

(うわっ)

 

アイダホは姿を消していた事、ブラックエレメンタルゆえに表情が存在しなかった事に安堵した。

僅かながらに、別人になった様な少女の雰囲気の切り替えに動揺してしまったのだ。

 

「まさかそんなにあっさりと認めるとは……正直、否定して欲しかったですね。あんな計画を建てたのがあなたのような少女であるとは思えなかったし思いたくもなかった」

「あら、その様な評価を頂けるとは光栄の至りです。その案を考えている間は本当に楽しかったのですよ? この糞ったれな王国を少しでも住み心地よくしたいなぁと考えて居たらああなっただけです。大領主様も家に溢れかえる程油虫が住み着いていたら不愉快でございましょう?

大領主様がその案を実行なされば、今は目障りな害虫の群れが闊歩しているヴァランシア宮殿での生活も幾分快適になると思いますの。大赤字の国庫にも優しくなるでしょうし良いことづくめですわ」

 

その外観に全く似付かわしくない、あまりにも腹黒くえげつない言葉の羅列。

これが、この女の本性か。外側と中側の詐欺だと叫びたくなる差異にアイダホは戦慄した。

 

「概ね同意しますが、容赦がありませんな」

「今までの戦で無意味に死なせてきた将兵の代わりに有意義に死なせる時が来ただけの事。醜く太った害虫達の有効的な利用法を私は提示しているだけです。王国の総人口850万を救う為に必要な犠牲だと思えば微々たるものではありません事?」

 

ラナーは、お茶会で流行りのドレスの好みを貴族子女達と語り合う様な口調でさらりと言った。

 

(うわ、うわっ)

 

この女、ヤバすぎる。

腹黒とか狸とかそんな生易しいレベルじゃない。

真顔で「一人の人間の死は悲劇だが、数百万の人間の死は統計上の数字である」と言い出しそうだ。

 

(この女やばい)

 

この女には容赦がない。加減とかじゃなくて容赦がない。

笑顔を浮かべたまま、自軍の兵士にお前の犠牲が必要だから死ねと言えるタイプだ。

これだけの知啓だ。強力な味方になってくれると確信はしている。

してるが……それ以上に怖気が先立つ。

彼が実体化していたら、背筋に冷や汗が一筋流れていただろう。

 

「あなたがこれまでこの国の表舞台に出てこなかったのが不思議ですよ。あなたがその気になれば、お飾りの博愛の王女様などではなく、宰相なり、王なり、望む形でこの国を統べられたでしょうに」

「無理ですわ。私はクライム以外の人間がどうして私の考えている事を察せられないのか理解できないのです。つまりはクライム以外、その他の人間の気持ちが理解出来ないのですよ」

「クライム……あなたの従者の騎士ですか?」

「ええ、ご覧になってください。この時間帯であれば、あそこで警護をしている筈です」

 

彼女が窓辺に立ち、姿を消したままのアイダホもその横に立つ。

彼女の視線の先には、ミスリル製の鎧に身を包んだ少年騎士が背筋を伸ばして立哨している。

このティーラウンジに続くドアの手前である。

彼は王女が茶を嗜む安全を確保する為に、生真面目に立哨をしているのだろう。

 

「私はね、この国の未来なんて正直どうでもいいのです。お父様もお兄様方も貴族達も国民も全て平等に価値がない。帝国に併合されようとも貴方に占領されようともどうなろうが知った事ではないの。私にとって価値があるのは、クライムだけ。私の望みはクライムと結ばれて……あ、できれば首輪をつけて鎖で繋いで独占できる形で飼えれば問題ありません」

「………」

 

突然の性癖カミングアウトにドン引きしているアイダホの事などどうでもいいとばかりに、ラナーはその黄金という二つ名に相応しい笑顔で続ける。

目は暗黒に濁ったまま、表情だけ可憐な王女を形成しているものだから悍ましい事この上ないが。

 

「ですからアイダホ様、私とクライムが理想的な環境で幸せに暮らせるよう、ご支援とご協力をお願いできますでしょうか。ザナックお兄様とレエブン候は、私とクライムの関係を応援してくださるとお約束してくださいました。

 アイダホ様にもお約束して頂ければ、私も心強く、これからもアイダホ様が為さることへの助力を惜しみませんわ」

 

王女の輝かしく可憐な笑顔がアイダホに向けられた。

公式祭典などで国民に向けられる穏やかな太陽の如き笑顔ではなく、全てを燃やし尽くすどす黒い太陽の様な笑顔だった。

 

それに対し、アイダホは一度だけ変わらず立哨を続けているクライムへと目をやった。

城を偵察した時も、王女の様子を調査した書類を見た時も、彼はラナー王女に常に付き従っていた。

自分が見た限りでも、報告書を見た限りでも、彼は王女に命を懸ける事すら厭わない忠誠心を抱いていた。

いや、アイダホから見たら王女と話している彼は、彼女に対する好意を忠義で押し殺しているようにも見えた。

 

いや、見えたんじゃない。もう確定でいいんじゃなかろうか?

お互い思い合ってるなら大丈夫だろう。

後は若い者同士でイチャコラでもペットプレイでもやっていればいいんじゃないかな。

 

アイダホは、ラナーに向き直る。

 

「ああ、私も君達を応援しましょう。身分の差を超えた愛は、尊く美しいものですからね。ええ、是非とも末永くお幸せに」

 

頑張れ、クライム少年。

君の男振りに王国とアインズ・ウール・ゴウンの運命がかかっている。

 

アイダホは王女の姿をした魔女に愛された生真面目な少年騎士に、内心でそっと手を合わせた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ダークサイドなアイダホとニニャの台詞


「たて、ニニャよ」


「ゴーレム戦列は予定通り、配置を完了しました」

「よくやった、ニニャよ」

「察するぞ、いまだ王国の腐れ貴族に復讐する機会を欲しているな」

「はい、陛下」

「堪えるのだニニャよ、戦の時になれば向こうからやってくる。現れたら私の前に引き付けるのだ」

「お前は強くなった……今のお前とであれば、奴らを地獄へと突き落とす事が出来る」

「御意」

「全ては、余の予見した通りに進んでおる………ク、ハハハハハハ………!」




安東大将軍様、誤字報告ありがとうございました。

さーくるぷりんと様、誤字報告ありがとうございました。

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