アイ・ライク・トブ【外伝更新中】   作:takaMe234

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※オリジナル要素やねつ造要素ありまくりです。
 原作などで見なかったり聞いた覚えがないものは恐らく該当します。
 原作ネタバレ、及びあちこち改変しておりますので閲覧にはご注意ください。
 
 アイ・ライク・トブを既に閲覧済みであることを前提として書いております。
 また、アイダホさんの設定も変動しておりますのでご留意ください。



(元)芋と骨と悪 後編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日の昼過ぎには王都に発つんですか? 予定より繰り上げですね」

「ああ、もうこの街に長居はよろしくない。他方からの視察も入る様だから勘付かれる前に出るよ」

 

スイートルームの応接間。

ルームサービスのコーヒーには手を付けず、スメイロトは向かいのソファに座るブレインにそう告げた。

 

「それにな、これは私の勘が告げてるんだが……一昨日の襲撃からこの街に異物が急増してる」

「異物?」

「ああ、不可視の術を使った異形らしい影が幾つかね。ジュンノが感知したが追跡しきれなかった」

「申し訳ございませんスメイロト様。私の占術では追いきれないようです」

 

ブレインはその言葉に驚いた。

彼の雇い主の内縁妻は気難しく気位が高く堅苦しいので、ブレインにとって苦手な女だったが術の位階の高さと運用の巧みさは認めていた。

その彼女がスメイロトに頭を下げ、己の至らなさを悔いているのだ。これは普通ではない。

 

「いや、いいさジュンノ。君の魔法より上手が居るって事はあり得るケースだ……だから、二人とも昼までに身支度と準備をしておいてくれよ」

 

だからこそ、一刻も早くこの街から去るべきだと判断したのだ。

出来ればカルネ村に関する情報は仕入れておきたかったが、ンフィーレアは負傷の治療と療養でそれどころではなくなってしまった。

加えてズーラーノーンとの戦いに部分的に関わってしまったので、今の彼に近づくと自分の正体が露見する危険が出て来るかもしれない。

なのでスメイロトはさっくりと諦め、街から王都へ移動する事を最優先とした。

 

(ジュンノの第六位階の占術魔法で捉え切れず、切り札の儀式アイテムで強化した第七位階魔法で漸く感知と追尾が可能)

 

スメイロトは確信した。

間違いなく、危険なレベルの存在がこの街に入り込み始めていると。

漆黒聖典の索敵及び警戒担当の彼女の探知を掻い潜り跳梁をしているのだ。

もうズーラーノーンの高弟だの、八本指の六腕とかそんなチンケなレベルの相手ではない。

しかもその第七位階の魔法で把握した数と、スメイロト自身のスキルでうっすらと感知出来てる数は一致していない。

 

(やばいとしか言いようがないんだよなぁマジでよぉ!)

 

もうこのエ・ランテルは王国の街ではない。

忍び込ませて来てる奴がその気になれば瞬時に所属が変わるか廃墟になるだろう。

音もなく支配されるか、一夜も経たずに【エ・ランテル跡地】となり地図から街が消える。

 

(ジュンノの第七位階に対抗、優越出来る可能性はフールーダの爺様か。もしくはズーラーノーンのトップ。または異形種の魔法使い集団位か?)

 

あるいはユグドラシルのNPC。

こちらで言うところの魔神か、法国で定義するところの従属神か。

スメイロトは法国来訪時に、ある程度この世界とユグドラシルの関りを教えられていたのでこの様な考察が出来た。

そしてその知識と前世のユグドラシル・プレイヤーの知識は、スメイロトに最悪の予想を想起させるに十分だった。

 

(そして、最悪のケースはユグドラシルのプレイヤー。……俺みたいに中身だけじゃなくて、アヴァターごとやって来るだろうから拙い)

 

六大神や八欲王のようにギルド丸ごと転移して来ていた場合。

こうなるともう勝負とかそういうレベルではない。

どうやって地に頭を擦り付けて命乞いをするか。

いかなる媚でも売って生き残りを画策しなければならない相手だからだ。

 

(もし相手がプレイヤーだと確定したら、もう王都での日程とか放棄して帝国に戻り兄貴を説得しなきゃならなくなるけど……真に受けてくれるかどうか)

 

プレイヤー相手に権力者として懐柔する?

プレイヤー相手に対決する?

プレイヤー相手に国家の総力で挑む?

 

(バカ言っちゃいけない。無謀としか言いようがない判断だ)

 

前世でユグドラシルプレイヤーだったスメイロトからすればナンセンスな話だ。

プレイヤーについて何も知らない兄は恐らくこの世界の常識的な範囲で合理的に判断してプレイヤーに対応しようとするだろう。

帝国へと取り込んで、更なる国力と戦力の増強を考えるかもしれない。

 

(悪くはないけど、相手の方が上過ぎて帝国に従う理由がないんだよなぁ)

 

脅威と感じれば帝国の総力を挙げ、外交戦を繰り広げ、周辺国を巻き込んで対抗しようとするのかもしれない。

 

(手段として正しいけど、相手が強すぎて意味がない。というか周辺国も纏めて叩き潰されて終わりだわなぁ)

 

相手はもはや神に近い存在だ。

かつてこの世界を支配した真の竜王達の殆どを撃滅したのも八欲王と呼ばれるプレイヤー達とその手勢だ。

レベル30台が英雄でレベル40台が希少な最強格な人類国家など、何ヵ国束になった所で無造作に蹴散らされて終わりだろう。

いや、物臭な相手だったら敢えて反抗させた上で敵対的な存在を集結させ、一気に殲滅し無人の地に自分好みのユートピアでも作りそうだ。

 

(ホント、プレイヤーだったらどうしよう……せめて、対話が出来る相手ならいいんだけどさ)

 

六大神みたいなのなら……法国に行った時に案内役の女性神官から長ったらしく延々と聞かされた伝承が事実であれば少なくとも保身は可能だろう。

 

(もし、八欲王みたいなやつらや会話が成立しない相手だったら……どうにもならんか)

 

そうなった場合、スメイロトにはもうどうしようもない。

複数のプレイヤー相手では、法国も敢え無く滅ぼされて終わるだろう。

帝国や王国その他周辺国は巻き添えの余波であっさり滅んでそうだ。

人類国家が滅び去る前に、普段世界の支配者を気取ってるらしい真なる竜王とかいう連中が腰を上げて対応してくれるのを祈るしかない。

 

(はぁ、憂鬱だぁ……)

 

ずーんとした重苦しい雰囲気を発しているスメイロトに対し、ジュンノとブレインは心配げな視線を送る。

しかし、前世の記憶を持つ為に要らぬ心労をしょい込んでいるスメイロトは二人の視線に気づかなかった。

そういえば、件の執事と高慢なお嬢様は何時の間にか街から去っていったと思い返す。

 

(ひょっとして、あいつらもこの街に入り込んでる相手の手先だったか?)

 

一度も遭遇しなかったが、もし二人の正体がプレイヤーの密偵だった場合は遭遇しなかったのは不幸中の幸いかもしれない。

 

 

少なくとも、この時のスメイロトはそう考えていた。

 

少なくとも、まだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、冒険者モモンは冒険者組合前で行われていた式典に参加していた。

 

「皆様も新しきミスリル級冒険者に拍手をお願いいたします!」

 

熱を帯びた組合長プルトン・アインザックの演説に、辟易とした感情が湧き出て……抑制され、少しイラっとする。

 

「このエ・ランテルを亡者の群れから救った漆黒のモモン、従者ナーベに大きな拍手を!!」

 

斜め後ろから小さい舌打ちが飛んできて、内心ヒヤヒヤする。

もっとも彼女の舌打ちを聴覚で拾えたのは高位プレイヤーのスペックがあればこそだ。

無数の拍手が周囲で打ち鳴らされている以上、自分の後ろで仏頂面をしているだろう従者ナーベ……ナーベラル・ガンマの不快には誰も気づくまい。

 

(もっとも、俺も溜息の一つでもつきたいんだよなぁ……こういうの本当に苦手だから)

 

冒険者モモン……をカヴァーにしたユグドラシルプレイヤー、モモンガは冒険者組合の前に集まった人だかりを見て小さくため息を吐いた。

こういう時こそ、全身を完全に覆う甲冑というものは便利だ。

何せ着用者がどんな顔をしていても声音さえ気を付ければバレないのだから。

もっとも彼は亡者の魔法使いの最上位たるオーバーロードなので、表情筋などは存在しないのだが。

 

(うわ、なんだよあいつ。まだ俺の昇格に不満を抱いてるのかよ。俺がお前に何をしたっていうんだ……嫉妬か、嫉妬か?)

 

人垣の後ろの方で不機嫌そのものな顔でこっちを睨んでいる……クラルグラとかいうチームのリーダーであるイグヴァルジ。

急遽簡易的な式典を行いモモンとナーベがミスリル級に飛び級で昇級すると告知した途端、組合長に猛烈な勢いで噛みついていた男だ。

たかが銅級が一回の依頼を達成した途端にミスリル級になるとはどういう事だ。いかに重大事案とはいえ絶対にあり得ない。喧々諤々。

癇癪を起した子供の様にああだこうだとごねまくったが、都市長と組合長に正論で畳みかけられしどろもどろになり。

止めとばかりに「ならば君ならアンデッドの群れを率いるズーラーノーンの高弟に勝てたのか?」と指摘され撃沈。

そこからは流石に大人しくしているが、ああも険悪な雰囲気をこちらに向けているとなると後々で嫌がらせでもしてきそうな気がする。

 

(全く、嫌だよなぁ……ああいうのを見ると異形種狩りの頃を思い出す)

 

チャット機能で露骨にヘイトを向けてきたプレイヤー連中の不愉快さは今でも明確に覚えている。

むき出しの悪意に晒され続けた結果、たっち・みーに助けられなければ自分はきっとユグドラシルのプレイを止めていただろう。

 

(いっそ、消すか?)

 

ふと、そんな物騒な考えが脳裏を過る。

ああも噛みついてきた以上、これからの依頼やらなにやらで敵意を持って絡んで来る可能性は高い。

その時にナザリックの戦力で敢えてトラブルを起こし、クラルグラには『行方不明』になって貰おう。

勿論彼らは生きたままナザリックにお持ち帰りして、今も『調教』が進んでいる八本指なる組織の連中やつるんでいた傭兵団の仲間入りをして頂く。

この世界の仕組みや在り方についてはナザリックでも調査中だが、その為の実験体はいくらあっても不足はないのだ。

一応この世界では上澄みに入るかもしれないミスリル級の冒険者だ。

徹底的に研究対象として利用し、使い潰した後は中位位のアンデッド製造の媒体程度には使えるかもしれない。

 

(ミスリル級の犠牲が発生したとなれば依頼の難易度が上がるし、それを漆黒が解決したとなれば更に功績がアップするかもしれない)

 

うん、悪くないぞ。

寧ろやるべきじゃないかとモモンガの気持ちは前向きになった。

他に二つミスリル級のチームがあるのだから、一つぐらい消えても問題はないだろう。

そんな感じでクラルグラのナザリック逝きが着々とモモンガの中で確定事項になりつつある時。

 

「……ん?」

 

プヒプヒ言いながらアインザックに引き続いて演説をしているパナソレイ都市長の言葉を聞き流していたモモンガはふと意識が外に向くのを感じた。

別に何かを感じた訳でもなく、警戒の為にかけている魔法に感知したわけでもない。偶然、よそ見をした結果だろう。

 

人垣の向こう側、メインストリートを一人の人間が過っていくのを見えた。

 

「えっ?」

 

思わず声が出てしまった。

 

黒いシルクハット。

黒いマントに所々から赤地が見える真っ黒なコート。

 

それはまるで、ナザリックの大災厄の魔である彼が好き好んでしていたファッションの様で……。

 

「さぁ、モモン君! 今から関係者との懇談会があるのだ。私について来てくれたまえ」

 

思わず伸ばしかけた手を遮ったのはアインザックだった。

 

 

その後、無茶苦茶精神抑制した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「参ったなぁ……王都行きの空の馬車がないとはねぇ」

 

エ・ランテルの乗合馬車の乗り場で男……プリテンダー・イービルは嘆息していた。

普段なら何台もの馬車が待機しているこの広場は今は見事にガラガラである。

何日か前のアンデッド騒ぎにより、街から出る者達が馬車を借り受けていったのだろう。

彼が護衛してきた南方のキャラバンも、取引が終わって新しい荷物を積み終えるとそそくさと出て行ったようだ。

今日の他の時間帯の便も全て予約が入っていて、もう彼が座る席はないと言われてしまった。

こういった事は一過性だから半月もすれば元に戻るだろうが、巻き込まれたプリテンダーからすれば面倒ではある。

 

そういえばそのアンデッドの群れを倒した『英雄』を称える式典が都市長と組合長主催で行われていたなと彼は思い出した。

彼自身は英雄なんて存在は好かないので見向きもしなかったが、街の中に広がっている不安を一掃する為にああいう茶番もしなければならないのだろう。

 

(全くご苦労なことだ)

 

そんな事を考えながら周囲を見渡すプリテンダーだが、その目つきは険しい。

キャラバンと別れてから、この街を一周してきて確信していたからだ。

 

(やっぱり、このリ・エスティーゼ王国は腐っているのか。もう、どうしようもないレベルで)

 

国内随一の流通都市なのに、都市内部のインフラが貧弱過ぎる。

スラム街も広く、街の外側にも溢れ出そうな勢いだ。

大通りは活気にあふれているが、すこし通りを外れれば活気はなく生気のない住人ばかり。

南方で活動している間でもキャラバンの噂の伝手で聞いていたが予想以上の様だ。

 

(まぁ、いい。その方がこちらも容赦なくやれる)

 

プリテンダー・イービルはそう冷たく考えた。

 

(存分にやらせて貰うさ。俺の『趣味』ってやつをな)

 

 

「主よ、ご報告がございます」

「話せ」

 

物思いに耽るプリテンダーの背後から突如として声がかかる。

だが、プリテンダーは前を向いたままその姿が見えない存在に応じた。

彼は慣れている。自分が召喚できる存在……悪魔の扱いに対して。

 

そこから丁寧に、かつ要点を的確に抽出した報告を受けていたプリテンダーは正直に驚いた。

 

(都市の要人の何人かにはシャドウデーモンが張り付いているのか。こりゃ誰かの手が完全に入っている)

 

プリテンダーからすれば下位のシャドウデーモン程度でも、『この世界』においては珍しい存在だ。

南方で出遭って既に潰した亜人の宗教団体が何体か運用していた位だが彼らからすると『偉大なる神の残したシモベ』だという。

 

(あれは過去のプレイヤーの残滓っぽいが、こちらは現役で活動しているプレイヤーの手駒か?)

 

プリテンダーの懸念は続く報告で現実味を増した。

 

「幾度か我が存在を察知されそうになりました。都市に展開している不可視の者達以外に占術に長けたものがいるようです」

「……へぇ、お前でも危ういか」

「はい。第八位階かそれ以上の占術、あるいは探知魔法を使用しているものかと」

 

シャドウデーモンの報告に、プリテンダーはいよいよ眉を強くひそめた。

 

このシャドウデーモンは一般的なLv30前後の個体ではない。

lv60台の最上位。今の自分のレベルにおいて召喚可能な存在で【例外を除けば】最高位に近い存在だ。

ステルス特化型であり、たとえ相手が竜王や魔神レベルだとしても今まで見つかったことなどなかったのに。

 

「わかった。俺が探りを入れてる事がこの街に手を入れている相手にばれるのは拙い。一旦召喚を解除するから帰還しろ。以上だ」

「かしこまりました」

 

プリテンダーは告げた通りに、悪魔との契約のパスを切断する。

恭しく頭を下げた悪魔の気配が揺らめき、やがて完全に消失した。

 

(……まさか、プレイヤーらしい存在とかち合うとはな)

 

北上してきて最初の街がこれだとは。

わざわざ南方からやってきた価値はあるのかもしれない。

そのプレイヤーが何を考えているのかはわからないが、自分の趣味と合わないのであれば……

 

(俺は俺の趣味の、流儀を貫かせて貰うだけだ)

 

その為にも王都に向かわなければならないのだが、昼過ぎになっても席のある馬車は見つからない。

護衛でもいいので相乗りできないかと思ったがそれらの枠も既に埋まっているらしい。

 

(……夕方までに見つからなかったら、いっそ空を飛ぶか。不可視を上掛けしても相手によっては不安は残るが)

 

プレイヤーらしい存在の跳梁がある以上、目立つ移動手段は控えた方がいいのは事実だ。

だが街の流通の不安定が収まるまでこの街にとどまるのもプレイヤー絡みのリスクが高くなる。

 

どうしたものかと考えていたプリテンダーの視線の先に二台の馬車が映った。

一台目はかなり上質の誂えであり、曳いている馬も上質な軍馬の如き体格だ。

一台目に人間を乗せて、二台目には荷物その他を車載している感じだろうか。

 

(どこかの商家の馬車かね? 後ろに居るのは護衛みたいだが数は少ない……いや、違うか)

 

それぞれの馬車の馬を操っているのはただの御者。

それ以外の護衛や従者の姿は見えず、二台目の馬車の御者の隣に青髪の男が座っているだけだ。

 

(ほぅ、地元の神刀を装備してるって事はそこそこ腕が立つ様だな。逸脱者程には見えないから英雄級前後か?)

 

他にも積んでいる荷物の方から変な気配を微細に感じるが、プリテンダーは一台目の方に注意を向ける。

走査系を阻害するノイズが走るが、この程度を術者に感知されずに解析するのはお手の物である。

 

(車内に第6階位程度の魔法で防御魔法をかけているか。しかも魔法を使用してるのがわからない様隠蔽までしている……後は防音もか?)

 

こちらの基準で言えば、かなり高位の魔法使いを乗せている様だ。

少なくともただの商家やキャラバンとは思えないので、何やら隠れた要素があるのかもしれない。

 

(見た感じ、王都への街道に向かう様だが……取り敢えず声をかけてみるか)

 

これから同じ王都に行く事もあって、プリテンダーはこの一行に対して興味を抱いた。

護衛として雇ってくれるか声をかけてみようとプリテンダーは声をかけてみる。

 

案の定、応対してきた青髪の男……護衛にそっけなく断られた。

こう見えても護衛は十分に居るので、わざわざ旅の傭兵に頼るほどでもないと。

 

「そうか。ならしょうがないな」

 

残念そうに呟いた瞬間、一台目の馬車のカーテンが降りているドアが開いた。

 

「どうしたカク。何かトラブルでも……」

 

出てきた身なりの良い、見るからに商家のぼっちゃんな青年はどこか気だるげにプリテンダーを見る。

プリテンダーの鋭敏な嗅覚は青年から上質な香水の匂いと女の強い体臭を感じた。

というか、口の端と首筋に微かにだが口紅が付着している。

コイツ、まさか車中で連れの女といちゃついてたのか?

プリテンダーの中で『リア充爆ぜるべし慈悲はない』と憤怒の魔将が処刑判定を高らかに告げようとする手前で青年との視線が交差する。

 

「「……………」」

 

そして二人は沈黙した。

 

彼らの想いは一つである。

 

 

 

 

 

((あれ、この人とどっかで逢った事があったか?))

 

 

 

 

 

 

数十分後、プリテンダーは臨時の護衛としてぼっちゃんことウカリ氏に雇われ王都を目指す事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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