誤字修正の方々に、この場を借りて感謝を。
※オリジナル要素やねつ造要素ありまくりです。
原作などで見なかったり聞いた覚えがないものは恐らく該当します。
原作ネタバレ、及びあちこち改変しておりますので閲覧にはご注意ください。
アイ・ライク・トブを既に閲覧済みであることを前提として書いております。
また、アイダホさんの設定も変動しておりますのでご留意ください。
その日、スタッファン・ヘーウィッシュは行きつけの店で『お楽しみ』をしていた。
生粋の嗜虐趣味を持つ彼は無抵抗の相手を殴るのが大好き。
その日の仕事は機嫌の悪い上司と顧客の間を取り持つという非常にストレスが強い代物だった。
疲れ果てた彼は自分を癒す為に、この店でお楽しみという名の虐待をしに来たのである。
「ふぅー」
薄暗い部屋の中。
いい汗をかいた男は体内と精神に溜め込まれたストレスがいい具合に発散されたのを自覚する。
タオルで体に浮いた汗を拭きながら、男は傍らでぴくぴくと痙攣している血まみれの女を見下ろす。
(あの女を使い潰せなかったのは惜しかった)
スタッファンは数日前まで連日殴打して楽しんでいた女性の事を思い出す。
不思議と発狂も壊れもせずに堪えていた女は実に嬲り甲斐があったからわざわざ指名した程だ。
どうせだから壊し切って息絶える瞬間を見たかったのに、既に廃棄処分したと店からの説明を受けたのは心底残念だった。
(この女は具合は良いが、あっさり壊れそうだからそこだけはつまらん)
そんな愚痴を零しつつも、あの説明を受けた時の店員の態度に少しだけ違和感を感じていた。
娼婦と言う商品の廃棄はこの店において早々珍しい事ではない。
実際、廃棄理由の一端であるスタッファンは何度も説明を受けているほどだ。
それゆえに、あの女が廃棄されたと説明した時の店員の態度に僅かな焦りを感じた。
(逃げられた?)
まさかそれはあり得ない。
片足の腱を切られて逃亡できない様にしてある。
更に言えば自分が散々に痛めつけてきたから逃げられるだけの体力はない。
(誰かが助けた?)
それもあり得ない。
この都市の裏社会において八本指は絶対だ。
彼らに逆らう真似事をする連中なんて限られている。
ましてや、廃棄された娼婦などという存在を助ける者など居るわけがない。
(じゃあ、あの女は本当に廃棄されたのかどっちだ?)
そこまで疑問が行きついた直後。
ドアの向こう側からズドンという炸裂音が響いた。
「な、なんだっ?」
スタッファンが戸惑う間にも、音は何度も響く。
客と思しき声や、誰何する見張りや店員の声が聞こえたが直後に炸裂音が響き、誰の声も聞こえなくなった。
「………」
30秒足らずで、廊下からは何も聞こえなくなる。
胃がチリチリする様な沈黙が続き、堪え切れなくなったスタッファンは立ち上がってドアの方へ近づこうとした。
「だ、誰か居ないのかっ」
スタッファンが叫んだ直後、ドアがくの字に歪んで弾け飛ぶ。
そのまま壁にぶち当たって床に転がった。
「へ……?」
逃亡阻止用に頑丈である筈のドアに拉げた蹴りの跡が付いている。
小さな足跡をくっきりと残した相手が、部屋の入口に立った。
「……あ」
それは小柄な少女だった。
両手には黒と紫のパーツで構成されたスタッファンの知らない武器……魔導銃が握られている。
ふわふわの紫色の髪に、小さな軍用略帽を乗せている。
デザインに品の良さすら感じる黒の制服は、返り血を幾つも浴びている為猟奇性を帯びていた。
普段であればスタッファンの嗜虐をこの上なく擽るであろう少女は……異様だった。
「あの」
所々に血が付着している能面の様な表情と、見開いた瞳孔に渦巻く偏執狂とも言える敵意。
強烈な威圧を受けたスタッファンは、何も言えずにベッドに腰を下ろした。
正確に言えば怯えて腰を抜かしただけだったが。
「あの」
少女が一瞬で得物をスタッファンへ向けた。
無表情な顔が怯えと狂気と激昂を配合した混沌たる形相へと変貌する。
「あのっ、死んでくださいっ死んでくださいっ!!」
僅かな躊躇もなく、禍々しい銃口がスタッファンに突きつけられる。
彼の反応など気にする事もないかのように引き金にかかった指に力が入り、
「待てガアプ。そいつは撃ち殺すな。目的の男だ」
黒い手袋をはめた手が、少女が構える魔導銃をそっと上にあげる。
「え、あ、はいっ、すみませんっすみませんっ私、また勢い余って殺しちゃうところでしたこんなダメな私ですみませんっ」
「あー、いいから。そんな謝るなよちょっと卑屈過ぎるぞお前……俺が入るから下がって廊下を見張っていろ」
出入り口で魔導銃を構えていた少女が引っ込み。
代わりに入ってきたのは山羊の仮面を被った男だった。
頭巾を被った上で顔面が灰色の生々しい造形の山羊のお面で覆われている為顔は全くわからない。
季節を考えれば暑くないかと聞きたくなるような、黒のコートは裏地に赤い生地が使われている。
そんな黒か赤かの二色で統一された男は、後ろでビクビクしている少女に新たな指示を出した。
「ガアプは建物と地下の制圧を続けてくれ。従業員とコイツ以外の客はただの金を持っているだけの変態共だから全員射殺して構わん。ただし、娼婦は巻き添えにするな」
「は、はいっ。り、了解しましたっ」
「後はトーチャーとうまく連携して仕事を果たしてくれ。さ、行け」
ガアプと呼ばれた少女が足早に走り去る音が聞こえる。
「な、なんだこの血の海は!? ガキ、おまえはだ「死んでくださいっ」」
ズドンという腹に響く音が聞こえ、顔見知りの用心棒の声が途絶えた。
複数の塊が床に飛び散る生々しい音と、シャコンというスライド音が廊下に響く。
外で起きている異常事態を明確に知らせる音を聞き、スタッファンの歯がカチカチと鳴り始める。
怯えているスタッファンとは対照的に山羊仮面の男は肩を軽く竦め、何事も無かったかのような足取りで部屋の中に入ってきた。
「お楽しみ中に大変失礼。騒がしくて申し訳ありませんねぇ……只今、店内の『生ゴミ』を清掃中でして。もっとも、一部の産廃は私が直接回収しに来たんですよ」
全身が赤か黒かの衣装の山羊仮面はククッと笑った。
その笑い声には親しみなどは微塵もなく、冷たい嘲笑のみが含まれていた。
「貴方には少しばかり質問に答えて頂きたいのでお迎えに上がりました。巡回使のスタッファン・ヘーウィッシュさん」
「な、なぜ私の名前を!?」
スタッファンの動揺を余所に、山羊仮面は羊皮紙の束を掲げてみせる。
羊皮紙には生々しい血飛沫が飛んでおり、スタッファンの恐怖をこの上なく煽った。
「受付で顧客名簿を拝借しましてね。随分と熱心に通われてるようで……いい趣味をお持ちの様だ」
「は、拝借!? き、貴様、こんな事をしてただで済むとでも思っているのか!! ここの所有者が誰なのか知らんのか、は、八本指だぞ!?」
この施設のバックには八本指が付いている。
これが王国内の裏社会で絶大な意味を持っているのは事実だ。
大貴族派と王族派双方に入り込み、あらゆる産業にも食い込んでいる王国最大の裏組織。
組織力のみならず、アダマンタイト級の猛者をも複数抱えて武力面でも表社会を圧倒しかねない存在だ。
王国の大人だけでなく、子供ですらこの組織の恐ろしさを知らぬ者は居ない程に。
「貴様が何者かは知らんが、ここに手を出して生きて帰れると思「だから、何です?」」
緊張感のない、むしろ白け切った口調で山羊仮面はスタッファンの言葉を遮る。
態度からしてわかる。彼は八本指を小指の爪の先ほどにも恐れてない。
「え」
「八本指とかいうクソ雑魚ギャング共が、なんだと言うんですかねぇ?」
ユグドラシル換算でLv90、難度にして270という世界の支配種であった真なる竜王に伍する実力を持つこの男にとって。
八本指とは、単に数が無駄に多く規模が大きいだけの破落戸共の群れに過ぎなかった。
その気になった瞬間に滅ぼすことが可能な程度の存在を恐れるアホは居ないのである。
山羊仮面が破落戸組織を今の段階で潰していないのは、彼の信条と趣味の拘りとショーのプログラムの都合に過ぎない。
「へ、は?」
「こんな腐った末期国家でイキってるLv30以下の連中程度がどうしたって? そんなもんでこの俺がビビるとでも思ってるのか? ええっ!?」
「ぶぎゃっ!!」
脱ぎ捨てていた靴がスタッファンの顔面に命中して文字通り豚の様な悲鳴が上がる。
鼻骨が拉げて鼻血が盛大に流れ落ち、スタッファンが顔を押さえて悶絶するが山羊仮面は構わない。
「借り物の威勢はそれまでかよ巡回使サマ? こんな悪趣味がお楽しみになんだから鼻血位で騒ぐんじゃ……お」
もう片方の靴を拾い上げて振り上げ……後ろから室内に入室してきた存在に気付いて靴を無造作に放り捨てた。
「来たか。他の部屋の娼婦たちの治療は終わったか? この娘も頼む」
山羊仮面の後ろからヌッと姿を見せたのは拷問の悪魔であるトーチャーだった。
丸い穴が二つ開いたズダ袋を被った筋骨隆々の巨漢の腰には、拷問に使われると思しき見るからにエグそうな小道具がずらりとぶら下げられていた。
巨漢はスタッファンを無視してベッドの方へ寄ると、小さな声で詠唱を紡ぎ仰向けに倒れたままの女性へ魔法による治癒を施す。
女性の弱弱しい呼吸が落ち着いたのを確認し、トーチャーは山羊仮面の方を向いて大きく頷いた。
「ご苦労トーチャー、次はそいつを捕まえろ。連れて帰ってからお前の本業の方をして貰う」
「ひっ、な、なんなんだソイツはぁ!?」
巨漢がずんずんと近づいてきて乱暴に両肩を掴まれるが恐怖で委縮してどうにもできない。
スタッファンは無力な女性には極めて勇敢だったが、見るからに凶悪な相手には乙女より無力だった。
「コイツは拷問のスペシャリストでな。回復魔法も得意だから延々と拷問を行う事が出来るんだ」
「ご、ごうも…………ひっ!! や、め、たす、けてくれっ!!?」
「拷問は好きか? 好きだよな、痛めつけるのが大好きなんだから痛めつけられるのもイケるだろ」
「い、いやだぁぁぁぁぁぁ!!」
トーチャーに抱え上げられて手荒に拘束具を手足に括りつけられ、スタッファンはあられもない悲鳴を上げた。
自分がこれからどうなるかを察し、どう足掻こうがそれから逃げられないと理解したからだ。
「安心しろよ、洗いざらい吐くまでたっぷりと拷問を楽しめるぞ?」
スタッファンを嘲笑うかの様に、山羊仮面の金色の目がギラリと光った。
「な、何故だ。どうしてこんな仕打ちを受けねばならないっ」
「……あ、何故?」
いきなり嗚咽交じりの言葉を叫び出したスタッファンに、山羊仮面は怪訝そうに首を傾げる。
「わ、私は何も、何も悪い事はしてないのにどうしてこんな目に遭うんだっ!!」
それはスタッファンが本心からそう感じて吐いた言葉。
しかし、傍で聞いていた山羊仮面の心証を床を突き抜け地中へと掘り進めるほどにめり込ませた。
結果的に言えば苦と惨と悲を絡めて地獄に墜とされるきっかけとなったこの失言。
真性のサディストであるスタッファンがどうしてその言葉が失言なのか、理解する事はこの男の性格上あり得ない事でもあったが。
「………………はぁ。生きる価値のない奴って、お前みたいな奴の事なんだろうなぁ…………トーチャー」
豚野郎の見当違いな叫びを聞いて山羊仮面の雰囲気が仮面越しでも分かるほど悪化したのを察し。
豚の次に怯えていたトーチャーが名前を呼ばれ全身をビクンと揺らす。
「コイツの情報を絞り出した後、エグイやり方で処刑しろ。えーと、あ、タブラさんの言ってたりょうちけい? だっけか。お前、知ってるか?」
トーチャーの頭部がコクコクと縦に動く。どうやら肯定の様だ。
見た感じ欧風の装いであるトーチャーが、古代の中華圏で一番残虐な処刑法を知っているとは意外だなと山羊仮面は感心した。
「じゃ、ソイツを連れてアジトに戻ったら早速拷問から始めてくれ……さっきからぎゃーぎゃーうるせぇな。こいつでも咥えてろ!」
脱ぎ捨ててあった自分の下着を喉奥まで突っ込まれる。
「んぐぅぅぅぅ!!??」
トーチャーに俵担ぎされ、連れ去られたスタッファンがその後どうなったのかは誰も知らない。
悪魔使いに屑認定された彼の事だから、絶対にろくでもない末路なのは間違いないだろう。
一時間後。
王都の警備の為に戦士達を連れて巡回を行っていた王国戦士長ガゼフは、突如上がった轟音と悲鳴の数々を聞いて部下達と共に現場へ急行した。
「これは……一体!?」
現場の大通りにはシーツを体に巻いた女性が数人座り込み。
更に木箱が幾つも置かれていた。
戦士たちが女性達を保護する中、ガゼフは木箱を慎重に開封した。
「戦士長殿、その書類は……」
「間違いない。八本指絡みの、違法娼館の書類か!」
中には違法娼館で取引されていた女性の人身売買。
果てにはそれに関わった人脈の証拠を示す書類が収められていた。
もし、これを一般的な警邏隊が見つけていたら八本指と懇意の上司が証拠の隠蔽を図っただろう。
だがガゼフは国王ランポッサ三世の直属の部下であり、指揮系統において貴族達は関与しにくい状態にある。
ガゼフの性格も相まって彼女らは戦士団に保護され、書類は直接王城へと持ち込まれた。
結果としてこれらの書類の存在は、禁止された筈の違法娼婦と人身売買の問題を表面化させ。
追求したい王族派と追及を回避したい大貴族派の紛糾を巻き起こす事になる。
奴隷売買部門は施設の一つを潰された事で面目を失い、部門長のアンペティフ・コッコドールは激怒。
下手人を探す為警備部門にも動員を要請、血眼になって実行犯を探しているが全く足取りを掴めていないようだ。
女性と証拠品が大通りに放置された件については誰がやったのかは不明のまま。
保護された女たちは誰に助けられたかについてろくに覚えている様子ではなく。
悲鳴を上げへたり込んでいた露天商や通行人達は『娼婦達と木箱が凄い音と共に一瞬で目の前に現れた』と意味不明な供述を繰り返すばかりだったという。
ガゼフ達戦士団の巡回路のすぐそばの大通りに、戦士団がちょうどやって来るタイミングでなぜこれらが出現したか?
これらの因果関係に説明を付け加える事が出来る存在は、王都には一人しか居なかったが彼女は沈黙を続けた。
(本当に、誰の仕業でしょうか?)
繊細な細工が施されたティーカップ、中に注がれた琥珀色の液体を眺めつつ思案に耽る。
つい最近に出来た己のパトロンの仕業には見えない。
このタイミングで行動を起こしても大してうまみがないからだ。
だが彼女の知識と常識の範囲では、パトロンとそのバックに居るであろう強大な存在にしか実行可能なやり口としか思えない。
では、同じ実力を持つ、彼女もパトロンも知らない第三者が事を起こしたのだろうか?
八本指の違法娼館の周囲に音衝撃その他を一切漏らす事なく。
当時内部に居た従業員警備員来店客らを血痕以外の痕跡を残さず行方不明にし。
館内で集めた証拠品と、治療したと思しき娼婦達を大通りの只中に突如として出現させるなど。
この王都で最強の冒険者の片割れとされている、目の前で紅茶を嗜んでいる自分の便利な駒と駒の仲間達でも到底無理だ。
もし可能であれば八本指などとっくの昔に弱体化か壊滅させる事が出来ている。
(次回、お会いした時に確認しないといけませんね……)
イレギュラーは嫌いではない。
己の想定外も楽しめるのが天才というべき存在だからだ。
たとえ王都が炎上しようが有象無象がいくら死のうがどうでもいい。
しかし、自身と愛する飼い犬が幸せになる道筋への邪魔になるなら話は別だろう。
折角この上ない保証が出来たと思った矢先にこれだ。
自然と深いため息が出てしまう。
「あら、どうしたのラナー。溜息なんてついて」
「大丈夫よラキュース。こうも不可解な事件が起きてしまって少し憂鬱になっただけだから」
ああ、全く。
人生とはままならない。
早く些事を片付けて愛犬との戯れで癒されたい。
ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフは心底そう思った。
ナザリックの王たるアインズ……もとい冒険者モモンは憂鬱だった。
モモンとして現場であれこれ暴れている間は気が楽だ。
でもこうして組合の会議室に呼ばれる時は、大概面倒ごとと相場が決まっているのでテンションも下がるのだ。
リアル時代も大概会議室に上司から呼ばれる時は、面倒ごとや厄介ごとを押し付けられる時だったので軽くトラウマな点もある。
(頼むから、簡単に片付く用件であってくれよ……式典の時のハムスケに乘って市内一周とか最悪だったんだからな!)
あれも式典後の会議室での懇談会で富豪たちから是非とも英雄が魔獣に乗っているところを見たいとか言いだされ。
都市長も組合長も賛同し始めた結果押し切られ、ハムスケに乘って市内一周させられるという羞恥プレイをさせられたのだ。
本当にあの時は恥ずかしくて数え切れない程精神抑制を繰り返す羽目になった。
もし、ギルメンにあんな姿を見られたら憤死するかもしれない。
もう既にアンデッドだけど、アインズは二度死ぬになりそうだ。
「モモン君。こちらの方はルンドクヴィスト殿。エ・レエブルで名を馳せていた元オルハリコン級の方だ」
「そうですか。私はモモンです。よろしくお願いします」
「ルンドクヴィストです。冒険者史上最速でアダマンタイト級に昇格されたモモン殿にお会いできるとは光栄だ」
緑色のマントを羽織った茶髪の中年男性が重々しく頭を下げる。
別に負の感情は感じられなかったが、自分を探るような目線は感じられた。
(なんでこんな目で見られるんだろ……ひょっとして王都の方でも色々有名になっているんだろうか?)
ハムスケの件も有名になってそうで嫌だなとモモンが考えていると、ルンドクヴィストは用件を切り出した。
「まずは、こちらをご覧になって頂きたく」
ルンドクヴィストが封筒を取り出し、丁重な仕草でモモンの方へと差し出す。
名刺を受け取るような感じでモモンが受け取ったその封筒はとても高級な羊皮紙で出来ていた。
封筒を閉じている封蝋印を見て、貴族とも付き合いのあるアインザックは思わず呟く。
「レエブン侯爵家の家紋……これは、レエブン侯爵閣下のご依頼ということですか?」
「はい、その通りですアインザック組合長」
「……まさか、侯爵家からの指名でのご依頼とは」
少しだけ動揺したアインザックに、無表情のままルンドクヴィストは告げた。
「パナソレイ都市長閣下には既に話を通してありますので政治的には問題ございません」
異様な手回しの良さと高位貴族からの依頼であるのに、都市長の同席がない不可思議にアインザックは得心がいく。
慎重に封蝋印を外して封筒を開封し、中の文章を兜の内部に仕込んだ解読アイテムを起動して読んでいく。
一通り読んでから「組合長にもよろしいですか?」と確認し、ルンドクヴィストが頷いたのでアインザックも内容を確認した。
「王都の警備、及び近頃の不可思議な事件に対する調査の要請。ですか」
「その通りです。ここしばらくの王都は怪しげな事件が多発し、民心は脅かされ夜間の外出制限すら発令されました」
「解決の為にアダマンタイト級の冒険者を派遣せよとの事ですか。いや、これは、聊か早急ではないかと」
「その点は承知しております。王国内の組合同士とは言え、踏むべき手順を飛ばしているのは事実です」
(うわ、組合長焦ってる。俺が王都に引っ張られるのがそんなに嫌なのか?)
本来であれば他の都市からの高位冒険者を動員する場合、正式な手順に乗っ取って招くのが筋である。
「ですが我が主レイヴン侯閣下はそれでは遅いと判断されたご様子。エ・ランテルで数々の偉業を果たされたモモン殿を一刻も早く招聘したいとの事」
「し、失礼ですが王都には高名なアダマンタイト級冒険者チームの、『朱の雫』と『蒼の薔薇』がおられるではないですか?」
アインザックの言葉はもっともだ。
王国内に存在するアダマンタイト級チームは漆黒を含めて3つ。
エ・ランテルの漆黒の他残りの二チームは両方とも王都の所属だ。
アズス・アインドラが率いる『朱の雫』。
そして若き才女たるラキュース・アルベイン・デイル・アインドラが率いる『蒼の薔薇』だ。
この二つのチームを有しておいて、何故エ・ランテルの冒険者に頼るのか。
違和感を感じさせられるのはある意味当然ともいえる。
「『朱の雫』は現在、王都から出ており不在となっております。故に『蒼の薔薇』が諸問題に対応する様第三王女殿下より直々のご依頼を受け行動をしております。ですが」
「私に招聘の要請が出ているという事は、蒼の薔薇でも解決の目途は立っていないと?」
「モ、モモン君!」
見るからに焦っている組合長を尻目に、ルンドクヴィストは淡々とした態度で返答した。
「はい。事件を起こしている相手は蒼の薔薇をもってしても捕捉、捕縛する事が叶わず事件は継続的に発生しております」
「となれば、捜査する冒険者チームを2チームに増やして共同で事に当たれば解決できるかもしれないと?」
「貴殿の活躍はこちらでも耳に届いております。あれほどの活躍を見せたのであれば蒼の薔薇だけでは届かぬ犯人に対しても届くやもしれぬと」
「ふむ……」
モモンは少しだけ兜の顎を擦り勿体ぶった後、組合長の方を向いてこう告げた。
「アインザック組合長。私はエ・ランテルの冒険者として……この依頼をお受けしようかと」
こうして、モモンとナーベはルンドクヴィストと共に王都に向かう事になる。
王都を震撼させている、謎の怪事件の数々を解決しそれを引き起こしている犯人を突き止める為に。
Q話数内でギルメン集合してないのでタイトル詐欺では?
アインズ様「騒々しい。静かにせよ」
Qあれ、ハムスケは王都に連れて行かないので?
モモン「ハムスケは俺が置いてきた。修行はしたがハッキリ言ってこの戦いにはついてこれそうもない(王都でまた跨る羽目になったら俺が恥ずか死ぬ」
Qなぜルンドクヴィストが使者?
原作同様レエブン候に動員させたいけどもっと早く呼び寄せたい。
第3位階魔法が使えて空飛べるルンドクヴィストならモモン達と空飛んで馬車や徒歩よりも格段に速く王都へ行けるから。
勿論、各領地の境界を無断で超えると関所破りになるので、ルンドクヴィストが先導して街道沿いに空を飛び。
境界の手前で降りて関所で通行税を支払いまた空を飛ぶ……感じを繰り返してます。