アイ・ライク・トブ【外伝更新中】   作:takaMe234

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誤字修正の方々に、この場を借りて感謝を。

※オリジナル要素やねつ造要素ありまくりです。
 原作などで見なかったり聞いた覚えがないものは恐らく該当します。
 原作ネタバレ、及びあちこち改変しておりますので閲覧にはご注意ください。
 
 アイ・ライク・トブを既に閲覧済みであることを前提として書いております。
 また、アイダホさんの設定も変動しておりますのでご留意ください。

※息抜きとスランプ抜けをお祈りして。

※分岐部分、『ジルクニフからの信頼度がちょっと足りなかった』『スメイロトが斜め上に頑張ってしまった結果』『遠ざけるには丁度いい位置があの国』

※第1話地点、原作開始から3年位前。ジルクニフが20歳ちょい手前。スメイロトが17歳位。カルカ様が21歳前後。ケラルトが22歳。レメディオスは24歳。

※レメディオスは現時点で原作聖王国編(4~5年後?)と同じレベルに至り英雄級となっています。
 10傑の一つを倒して他にも長城を突破できる強力な亜人達をなで斬りにしまくった結果ですね。知らず知らずの内にスメイロトによってレベリング成功。
 最近はスメイロトと一緒に出向先で行動を共にする事が多いですが、意外に彼とはうまくやっている感じです。「セイオウジョノオココロガー」「カルカサマガー」で思考誘導してます。

※ラクレマは非常に長く広い視野で今回の愛人計画を見ています。上辺は法国の規範的な人物に見えますが実はかなりの変人奇人です。
 もし、法国亡命ルートが発生した場合には高確率で彼女がスメイロトの正妻になります。(ジュンノも候補に挙がりますが自分の欲を優先し過ぎる本性がアウト。

※カルカとの結婚生活については、カルカはもとより意外にスメイロトも満足しています。これで最初から変に距離を取らずにカルカと接させて絆させればひょっとしたら愛人計画を蹴っていたかも。
 スメイロトはジルクニフと違い、情で誑し込めば結構チョロい感じですのでこの場合彼が超越者として表舞台に立つ『聖王国の守護者』ルートに分岐します。
 ただ、これは側室や愛人達にも適用される事なのでどうなるやら。

※クレマンティーヌは愛人計画に対しては強い嫌悪感を抱いています。あんな計画を半ば強要されているとは言え現状を容認しているスメイロトにも唾棄したくなる感情を覚えています。
 もっともその感情も八つ当たり以外の意味もないと自覚しているので「サルみたく勝手に盛ってろよ」と内心吐き捨ててます。

※???:*まだふくろのなかにいる*




セイ王国で理想のヒモ生活()  『王配の愛人ジュンノ・ヴェス・タグラフィーオ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その結婚式の寒々しさは、当時の聖王国の貴人達において語り草になったという。

 

王配であるスメイロト・ベサーレスと、ホバンス大神殿の神官長であるケラルト・カストディオ。

側室と言う形であれ、聖王女の側近中の側近が王家に輿入れする事に対し聖王国では様々な反応が生まれた。

下手な貴族の娘を入れるよりはずっといい事じゃないのかと言う民草の言葉。

これは明確な権力の集中の為の政略であり、露骨な外戚政治の為に行われる婚姻であるという南部の批判。

ただ、婚儀前後の聖王国の情勢は大まかには安定していて、北部政権に対する民衆の支持率は高い状態で移行していた。

その為か少数の批判はあえなく立ち消えになり、結婚式当日には話題にすら上がらなくなっている。

 

斯くして、この婚儀は執り行われた。

婚儀は大神殿で行われ、その後の宴は王城にて行われた。

カルカ・ベサーレスが成婚した時と同じパターンであるが、察しのいい者達は雰囲気が微妙に異なるのに気付いた。

 

雰囲気が、ピリついているのだ。

 

表向きはみんな笑顔で、祝福の言葉をかけあっている。

だが、主役たる新郎と新婦の席。同列の上座にある正室の席。

その周囲の雰囲気が、なんとも近寄りがたいのだ。

 

祝福の声をかけた後、正室の席に座っているカルカに声をかけるカスポンドの顔は穏やかだがその背中には冷や汗が流れていた。

酒席を口実に婚儀を揶揄しようとした南部貴族達も、そのピリピリとした雰囲気に恐れを為して早々に自分達のテーブルに引き上げた。

察しのいい貴族達は祝いの言葉を述べた後は早々に自分の席に引き上げていた。

祝いの言葉をかけに来たのはいいが、ケラルトの前で声もなく涙を流し続けているレメディオスは、口の端が微かに引き攣った笑みを浮かべた叔母に引っ張られていった。

 

(うわぁ、大変な宴席になっちゃったぞ)

 

スメイロトと言えば、出された料理とお酒を黙々と口に運び、招待客に話しかけられた時のみ愛想笑いを浮かべて応対していた。

 

公式な式典には数年ぶりに出席したという、スレイン法国の使節団からはそっと目を逸らしつつだ。

 

(なんで君達まで使節団に紛れ込んでいるんですかね……)

 

文官の礼服に身を包んだラクレマと、女性護衛官の礼服を着こなすジュンノ。

二人がアルカイックスマイルで夫婦の席を、正確には自分をじっと見ているのだ。

 

(きっとご挨拶に来た、とか言うつもりなんだろうけどさ。絶対に違うよな……)

 

ああ、なんという圧力か。

隣席のケラルトからも、少し離れた上座のカルカからも、来賓用の席の二人からも視線と言う圧を感じる。

 

(なんで、こんな圧を寄って集ってかけられなきゃならんのだ俺は。あのトラウマものの前世の結婚式を思い出すぞこれは)

 

政権の都合で、おっかない側室を貰う事になり。

法国の都合で、愛人達を押し付けられ。

おかげで正室は機嫌を損ね、笑顔の裏から瘴気を漂わせている。

 

(これって理想のヒモ生活から遠いよな。どうしてこう女絡みの問題ばかりやってくるんだか……)

 

もうちょっと、のどかな感じでいいじゃないか。

どうしてこう、眼前でキャットファイトしそうな塩梅なんだろうか。

 

そっと隣を見る。

ケラルトが笑顔でこちらを見てたので、速やかに視線を前に戻しワイングラスの中身を呷った。

 

(なんだこれ、地獄かよ)

 

 

 

 

 

 

「さぁ。私をお抱きなさい」

 

王城の離宮。

何時も、こちらに来るたびに基本として宿泊する場所。

カルカが何かにつけて贈り物や内装の変更をした結果、王家の私室に匹敵する豪華さになった訳だが。

 

「いや、そりゃ新婚初夜だからそうする訳だけどね……」

「なんですか、私に何か問題でも?」

 

寝所である天蓋付きベッドに仰向けになったネグリジェ姿のケラルトから牽制する様にぎろりと睨まれ。

いやいや、問題しかないでしょうにとスメイロトはゲンナリする。

偶にこっちで致しましょうとカルカが希望した時は乗り気なベッドだけにこんな真似は止めて欲しいと思う。

 

「そんな風に威嚇されるが如くであれば、大概の男は引いてしまうでしょうに」

「……性交など、子孫を残す為の生殖手段でしょう。愛があろうがなかろうが問題ない筈です」

 

この人、本気で同衾するつもりがあるんだろうか?

ひょっとして愛などと言うものは粘膜が錯覚させる感情でしかないとか言いそうではある。

 

「……ひょっとして、妬いてます? 私と、カルカとの事を」

「……!! カルカ様を呼び捨てにするなどっ!?」

 

ガバっと上半身を起こし、眦を上げてケラルトは睨んで来た。

 

「彼女もそれでよいと認めてくれたし、二人の時間の時ぐらいはその方がいいとも言ってくれたのだから問題はないと思うけど」

「~~~!!!」

「いい加減認めて頂きたい。カルカは自ら望んで私に寄り添っていると」

 

全く、何をそんなにムキになっているんだかとスメイロトは内心嘆息する。

まるで大学まで一緒に居た親友との距離が、社会人になって開いた事に狼狽する女友達である。

 

「彼女は妻に、母親になったのですよ? 今までとは違うに決まっている。どうしてそれを認められないのか」

「認めるもなにもないでしょう! あなたが、あの御方をっ」

 

激昂するケラルトに、スメイロトはらちが明かないと提案する事にした。

 

「では、私と勝負しませんか? 気が進まないでしょうがこうもしなければ何時まで経っても納得できないでしょう」

「勝負?」

 

怪訝な顔をするケラルトに、スメイロトはあくまで落ち着いた顔で言葉を続ける。

 

「あなたは性行為は子を残す手段に過ぎないと主張した。ならば、新婚期間中は決して閨の中で取り乱す様な真似はしないで頂きたい」

「……そのような事でしたか。いいでしょう。受けてたちます。勝者は何を得るのです?」

「敗者に暫く個人的な頼み事を無条件でのませられる。これでどうですか」

「ええ、それで構いません」

 

ケラルトの迷いのない返答に、スメイロトはしめたと思うと同時に苛立ちも感じた。

彼女のそんな事でいいのかと言わんばかりの、所謂『舐めた』態度にカチンと来たのだ。

 

(結局、彼女は俺を見下している。自分であれば俺なんかに、何を以てしても負けるわけがないと)

 

見下し侮っているからこそ、安易に勝負を受けてしまえるのだ。

例え自分にとって経験が無い事柄にすら。

 

(俺に対する反感もあるんだろうけど、ケラルト程の才女も感情で見誤れば王国貴族(豚共)と同じ程度の失敗を犯すって事か)

 

鼻で笑うような仕草で再び仰向けになったケラルトに、ガウンのヒモを引き抜きながらスメイロトは近づいていく。

 

(だがねケラルト、俺は帝国内部で活動してて兄貴の指示でリスト外の貴族を相手にしてた頃、その手の奴らを沢山見て来たんだよ)

 

ガウンのヒモが完全に引き抜かれ、高価な絨毯の上に落ちて金属の飾りが意外な程大きな音を立てた。

 

(見て来たからこそ、どうすれば相手の足を引っかけたり、煽れば乗るかよーく知っているんだ。君は色事に関しては無知だろうから殊更な)

 

音に反応してこちらを見たケラルトが、息をのみ頬をわずかに上気させる。

今まで神殿勤めで殆ど異性との深い交流が無かった女性らしい反応と言えた。

 

(当然ながら経験無しか。一応性教育を経験持ちの侍女などから教授されただろうけど、逆に言えばその程度でしかない)

 

少々聞きかじりをした程度の生娘らしい挙動に、スメイロトの口の端が上向きに歪む。

 

(だから、とっくりとわからせてあげようじゃないか……カルカに対しての様に優しくではなく手荒にしか出来そうにないが、それは因果応報って事でよろしく)

 

この時の彼の表情を彼の前世の父親が見たらこう言っただろう。

 

【アイツは儂の事を外道女誑し等と一丁前に嫌悪してたが、結局蛙の子は蛙だなワハハ!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()

 

 

「ジュンノ・ヴェス・タグラフィーオがスメイロト様の御子を懐妊いたしました」

 

法国の首都たる神都。

その大神殿の会議室にて、ラクレマ・ルレクチェ・クアンティアは十数人の少女たちに対して報告を行っていた。

会議室に集まっている少女達は法国の各地、各部門からある意味では選りすぐられた人材達ではある。

 

「今は二名が定数である夜伽担当も、人数の増員を検討する必要があるでしょう」

 

逆に言えば『非常に扱い辛かったり癖が強すぎて手がかかり扱いに困るから送られてきた人材』でもある。

実家と行政機関からの情報提供により、ラクレマはこの計画の為に選出された人材の内情にも詳しかった。

 

「予定よりも早く担当への動員がかかる可能性が高いのでそれは心得ておいてください」

 

そう言いながら、彼女は対面に並べられた椅子に着席している少女達を見渡す。

自分やジュンノの様に家柄も実力も申し分のない、実家と所属機関が全力で推す担当も複数居るのは事実。

だが総員の六割ほどは『訳アリ』な人材であるのも事実だった。

 

「選出する担当の序列は前回の会議でお話しした通りとなります」

 

ラクレマがそれらの情報を何故詳しく知っているのか?

何故ならば、彼女の実家がその手の人材の選定に深く携わっているからだ。

下は軍や役人の人材斡旋や配置、上は聖典や各神殿に携わる重要人物まで。

ラクレマも何れ関わる事になる、『巫女姫』の人材発掘と選定にも各機関との連携の元行っている。

最近は神殿への浄財で重役に入り込もうとする無能な俗物が出てきて困る、と彼女の父親は嘆いていたが。

 

(産休によりジュンノに代わる次の担当はこの子、でしたか)

 

一番手前の列で、ニコニコと笑いながら書類をろくに見ずにペラペラ捲っている褐色肌の白髪少女を見やる。

水明聖典に所属している工作員。最年少とは思えない高い才覚がありタレントと相まって重宝されてはいる。

ただ、性格が奔放過ぎて指揮官を定期的に変えないとまともに運用できない問題児でもあるのだ。

推薦しに来た当時の指揮官が、ストレスで頬をコケさせ目の下に隈を作っていたらしい。

 

(癖は強く我の塊ですが、あの御方なら上手く御してくれそうではあります)

 

貴重な紙の書類でてきぱきと折り紙を作り始めた少女から目を逸らし、説明を続けつつも他の担当候補に目をやる。

 

水色の長い髪を床まで垂らしている、ぼんやりとした目で虚空を眺めている商家の出の少女。

この少女も担当の増員が決定すれば、担当として聖王国に派遣される立場だ。

確か巫女候補筆頭に挙げられるほどの魔力を持っていて、タレントとの掛け合わせで高すぎる魔力故に自我が薄くなったとの事。

本来ならその適性のまま巫女姫として『調整』される筈だったが、最高機関が待ったをかけたのだ。

その魔力と異能をかけ合わせたら、凄い才能が出来るのでは?というある意味ジュンノと似たコンセプトを試みたい様だ。

スメイロトが聞いたらドン引きするか憤慨するだろうが、その感情を法国はあまり理解できない。

 

他の候補者も誰も彼もが性格も能力も背景も癖が強い。

きっと、この計画が無ければ厄介者扱いされたり、強制的に型に嵌められたりしていただろう少女達。

とは言え、最高機関も各部門も悪意があるかやる気がなくてこの人選にしたわけではない。

可能であればラクレマやジュンノの様な全てにおいて良質な担当を揃えるのが最善だろう。

 

「私達の身体と子宮をあの御方にお奉げする事により、次の100年を支える世代を作り出すのが目的です」

 

人類が生きる生存圏を四方の脅威から守るのは法国の使命であり、同時に大きな負担でもある。

そしてバランスの取れた良質の人材は黄金よりも貴重であり、限られたそれらの分配と運用は慎重に行われなければならないのだ。

彼女らは性格や能力に多少の問題はあれど、健康であり顔の見栄えも肉体のバランスも悪くない。

人類の守護者の次世代を生み出す機能として最盛期を迎える胎盤としては優秀と判断され集められた。

要は適材適所、そういう事である。

 

「皆様、我々の献身こそが法国、人類の未来を支える事になる。その事をどうかお忘れしない様にお願いいたしますね」

 

ラクレマの話を最後まで聞いていたのは凡そ3割。

スメイロトの負担はそれなりに大きくなりそうだと、視界の端を飛んでいく紙飛行機を余所にラクレマは結論付けた。

 

 

 

参加者達が立ち去った会議室。

行政機関の職員達が会議室の清掃と残った書類を片付けている。

 

「う……」

 

自分の書類をまとめ終えたラクレマは、ふと気怠さを感じて目の前にある演台に手をついた。

この倦怠感はここ十日間、あくまで軽度ではあるが彼女に付きまとっている。

 

(私も懐妊していますよねこれは確実に。スメイロト様はやはり『優秀』だという事でしょう)

 

ラクレマは、自分の生理の周期が止まっているのを先週確認し計画の担当上司に報告している。

本格的な診察はこれからだが、恐らくジュンノと同じく自分の身にも彼の子が宿っているのだろう。

 

(スメイロト様がお聞きになったら、どんな顔をされるのか)

 

前回の担当派遣でジュンノ本人が担当交代の挨拶も兼ねて、彼に懐妊の報告をした筈だ。

彼女からスメイロトの反応を聞きたいがのらりくらりと躱されていて、聞き出せそうにもないのがラクレマとしては残念である。

 

担当交代が嫌でスメイロトに泣きつき、健康上よろしくないと宥められたら安定期からなら大丈夫ですよねと食い下がり。

最後は「やだ、やだ、ねぇ、やだ!」と普段のイメージが完全崩壊するレベルで醜態を晒したのを法国も漆黒聖典もラクレマも知らない。

 

これらのばれたら人生終了の事実を、衆目に晒さない情けがスメイロト・ベサーレスにも存在した。

それだけの醜態をスメイロトに晒しつつも、外部には全く気取らせないだけの演技力と才能をジュンノ・ヴェス・タグラフィーオは有していた。

 

ジュンノの非常にアレな事実を知らぬラクレマは、次回の派遣時にどう自分の懐妊をスメイロトに伝えるか物思いに耽る。

 

喜んでくれるのか、そうかと事務的に受け流すのか。

折角子供を作るのだから、彼には喜んで欲しいとも思えてくる。

 

(この気持ちは私としても意外ですね)

 

彼の心を自分の方に向けてみたい。不思議にそう思えた。

スメイロトは、法国では、少なくとも彼女が住んでいる社会層では見た事のない人間だった。

ラクレマの中にあるのは、未知の異性への興味だ。

異性として内心興味を完全に失っていた、法国の『模範的好青年』達への感情とは違うものだ。

彼と過ごした時間は、彼女が今まで過ごして来た人生では感じた事のない『楽しみ』もあったから。

それが性交の快楽であれ、彼の自室での語らいやちょっとしたゲームという法国において大した価値がないものであっても。

彼女は思ったよりも自分がスメイロトに執着している事に気づいた。

 

「ふふっ」

 

思わず笑みが零れてしまった。

意図せず吊り上がった口の端をそっと掌で隠し、ラクレマは楚々とした仕草で書類を手に会議室を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

妙に複雑に折り込まれていた折り紙を外して元の書類に戻し。

漸く片づけを終えた職員は出口に向かおうとしてギョッとした。

 

「ねえ、その書類。私にくれない?」

「え、あ、貴女様は……ど、どうしてこのような場所に?」

 

会議室の出入り口から、その女、番外席次は気配もなく現れた。

何時もは手にしているとされる、正方形の玩具(ルビキュー)を持たずに。

 

「だからさ、ちょっとその書類、頂戴よ」

「え、はっ、え?」

 

ツカツカと歩み寄って来る相手の威圧感に、思わず職員は規定違反にも関わらず部外者へ書類一式を手渡してしまう。

書類を渡された彼女は、もはやこの場に居る意味はないと言わんばかりに踵を返して去っていく。

 

「ふぅん……」

 

人気のない大神殿の廊下を、普段は第一席次から手渡される資料や報告書を殆ど読まないのに熱心に読みながら進む。

実はこの書類を手にしたのは一度目ではなく二度目である。

愛人計画が発動した際に、ダメ元で神官長達が第一席次を通じて渡したのだ。

どうにかして、彼女に子作りに関して興味を持って貰えないかと。

だが、表紙を軽く読み流しただけで、彼女はすぐさま興味を失った。

その時はルビキューの三面目が揃うかどうかの瀬戸際だったのだからしょうがないというのは本人の弁である。

哀れ書類は数分も経たずにその存在を忘れ去られ、聖殿の自室にある大型のゴミ箱に投棄され。

清掃係の従者により回収され、繊維紙専用の溶解槽にて溶かされ再利用への道へと進んだ。

 

「あの堅物術師(ジュンノ)あんな顔(雌顔)をするとか、ちょっと驚いたから気にしてみたけど」

 

きっかけは、第一席次の悪あがきを彼女が見咎めた事だ。

何やらコソコソ手回しをしているのが妙に気になり、漆黒聖典の何人かに尋問……もとい質問を試みた。

緊張で青ざめた第七席次と、トラウマを刺激され失神と失禁を必死に堪えている第十一席次から無事情報を抜き出し。

そのまま丁度本国に帰還していたジュンノから直接色々と話を聞きだした。

 

番外席次の退室後、無限魔力は脱力し色々と(主に三か所から)漏らした。

 

証拠も揃えていたので第一席次を問い詰めたら、理由が『上から縁談を迫られたくないのでスメイロトに押し付けられないか試してた』との事。

 

「あんた、莫迦ぁ?」

 

呆れ果てた言葉と反応も許さぬ超高速のビンタに、第一席次は色んな意味で飛んだ。

しょうもない真実はどうでもよくなった彼女であるが、一度芽生えた興味はそのまま残った。

 

「スメイロト・ベサーレス。かぁ……」

 

艶やかな唇を軽く撫でた後、もう一度書類に視線を落とす。

 

「一応超越者だけど強さじゃまだまだ足りないのよね。ウチのおバカさんにも勝てそうにないし」

 

番外席次……アンティリーネ・ヘラン・フーシェは、オッドアイの瞳を細めながら呟いた。

 

「どうしよっかなぁ?」

 

彼女はまだ、自分がどう動くべきか決を下しかねていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖王国の丁度中央部に位置する森林地帯。

南部と北部の境界が重なっている事もあり、度々領地問題やモンスターの発生による討伐問題の押し付け合いが発生している。

 

側室問題がケラルトとの成婚により解決後、ホバンスの聖騎士団は中央部の貴族達からとある要請を受け取った。

中央部の森林地帯において、強力な亜人が出現したとの報告を受けたのでどうにか討伐願えないかと。

この要請に対し聖王女は承諾し聖騎士団の派遣を決定。レメディオス・カストディオ率いる聖騎士100名。

支援部隊として一般兵と後方支援の兵種が300名が派遣される事となる

聖王女の名代としてスメイロト・ベサーレス。補佐役としてケラルト・カストディオが派遣した補佐官(お目付け役)が付けられた。

 

 

 

ホバンスを発した討伐隊が数日かけて中央部に位置する街へ到着。

森林近くでキャンプ地を設営した討伐隊の森林地帯への進入まで一日を切った夜の事。

 

 

 

「はぁ、はぁ……!!」

 

ふらつきながら、一人の少女が森の中を走っていた。

目の前に僅かに見える、人が踏み分けた様に見えるけもの道を目指しよろめきつつも必死に走っていた。

 

「う、い、たい……」

 

左足に傷でも負っているのか、かなり引きずるようにして走っているが彼女にとっては気にならない。

 

(早く、早く、逃げないと殺される!!)

 

数時間前まで、彼女は袋に詰められていた。

森林の只中にある木造の十数の大きな家と倉庫が並んでいる村の中で。

だが、そこは普通の猟師村などではない。

リ・エスティーゼ王国に巣食う大規模な犯罪組織『八本指』の秘密拠点だった。

 

少女はそこの端にある倉庫の一部を利用した『便所』で使用されていた。

普段は袋に詰められ身動きは取れず、最低限の食事や用便、何より男どもに犯される為に引っ張り出される。

彼女、正確には彼女達はそこでいい様に扱われ、村に居る荒くれ者達の欲望を好き放題ぶつけられていた。

 

『おい、こいつ、死んでやがるぞ!?』

『しょうがねぇなお前、性癖だからって女の首絞めるなって言ってるだろうが! 捨て値とはいえ連れて来るのは手間なんだぞ!?』

『ったく……そこのお前、端っこのゴミ捨て場まで持って行って埋めてこい。腐ったら臭ぇだろ』

 

やがて、一緒に連れて来られた同じ境遇の女たちは減っていき。

比較的まだまともだった自分と、弱り切っていた二人の元娼婦らしい女達が残されていた。

 

『残ったのはたった三人です。どうしやすか部門長代行』

『南部のお偉方から貰った資金と、コッコドール様が以前南部で繋いだ非合法の人買いとのコネがある。数日内に新しい女買ってくるからそれまでコイツらで我慢しろ』

『え、使い潰していいんですかい?』

『おい、新しいのが来るまでは自重しておけよ? 来たら……まぁ、壊して構わんさ。どうせ使い潰す前提の中古品だ』

『へい、わかりやした。楽しみっすね聖王国の女』

『はっ、別に女の具合なんて国ごとに変わらねぇぞ』

 

翌日、二人は文字通り犯り殺された。

残るのは自分だけ。

彼女は死を覚悟して袋の中で震えていた。

唯一の心残りである、生き別れた妹の名を呟きながら。

 

「え……?」

 

それに気づいたのは頭を上げた時だった。

何時もは固く縛ってある袋のヒモが外れていたのだ。

いったん深呼吸し、そっと袋の外を伺う。

部屋の中には何人かの荒くれ者が居たが、全員が豪快ないびきを立てて眠りこけていた。

一度は落ち着かせた動悸が激しくなるのを必死に抑え、何時も男たちが入って来る出入り口の方を見る。

 

「……!!」

 

逃走阻止用に金属の枠組みが追加されている厳重な扉が、半開きになって室内に冷たい夜風が吹き込んでいた。

 

 

そこからは無我夢中だった。

ガタガタの体に鞭を打って、彼女は必死に森の中に飛び込み走り続けた。

何時だって外でうろついている見張り達が、あらぬ方向を見てぼんやりしているのには気づかなかった。

一番外周で見張っている番犬共が、巨大な食虫植物の奇襲を受け吠える間もなく呑み込まれ強酸で溶かされた後だという事にも。

 

「だ、誰か……誰か、たす、けて」

 

自分の左足が、一度は徹底的に腱を深く傷つけた後で最低限の回復魔法をかけ、重度の歩行障害が残る様にしてあったはずなのに。

ある程度の痛みはあるものの、小走り程度なら走れるほどに回復している不可解に対し逃げる事で頭が一杯な少女は気づかなかった。

 

 

何よりも、自分を見ろし監視している存在に気づけなかった。

 

 

 

 

 

「よし、このまま誘導しておけ。彼女の臭いと逃亡の痕跡は須らく消しておけよ」

『カシコマリマシタ、アルジサマ』

「順調であればキャンプ地外周の騎士団の見張りとの接触予定まではどれ位か?」

『アト、イッコクホドトナリマス』

「そうか。途中で倒れないように見ておいてくれ……後、一人師団はどれ位森の仲間達を集めてる?」

『ジュンビハデキタトノアイズヲドルイドガウケテオリマス』

「よし、ならシナリオ通りに事は進みそうだな。包囲は?」

 

大樹の上の枝に腰掛けて地図を広げていた男は、傍に控えているアルラウネ達に問う。

 

『メイ・キングノカベハ、ハイチズミデス。ホドヨイカベトナリヨビコムアナトナルデショウ』

『結構結構、大変結構』

 

パタンと地図を折り畳み、スメイロトは大樹から見える村を眺めた。

偽装網と木立で誤魔化しているつもりだろうが、ドルイドからすればとんだ張りぼてである。

 

「さて、騎士団が騒ぎだして我らが団長が出撃しなすったらこちらも敵地へと誘導開始だ。我が義姉殿にはまたしても救国の大手柄を立てて貰わねば」

 

大枝の上に立ち、両手を大きく広げ。

 

「俺と団長殿を同時に嵌めて潰すつもりだったか八本指? 嵌められたのはお前らの方だ……この森から生きて出られると思うなよ」

 

スメイロトは敵対者に対する殲滅を告げた。

 

「麻薬業者は皆殺しだ」

 

 

 







スメイロト君のこの世界線でのタレントは『ヒモになれる』タレントです。

特定の条件を満たした、ヒモにしてくれる女性のみ性交渉と会話のイベントで判定にプラス高補正がかかり、特殊一般クラスの『ヒモ』が疑似的にLv7付与されます。
ヒモを取得したプレイヤーは一般クラスの『マッスース』『ジャニター』『クリーニング』『クック』のクラスをLv7疑似的に付与されます。
これらのクラスはヒモも含めて疑似クラスであり、所有しててもクラスの100レベル枠を圧迫する事はありません。

「会話とセックスはいいけどさ、この疑似クラスってなんだよ?」
『ヒモと言えば、飼われてる女の家での主夫業と思われますが?』

スメイロトが聖王国から家出してどこぞの女の家に転がり込んでヒモやらせて貰うとか出ない限り死にクラス状態ですね。
一度、兄貴が潰した帝国侯爵家の娘と弟達の家(貧民街)に転がり込んで、僅かな遺産を元手に商人として必死に再起を目指す元侯爵令嬢を主夫として支えつつ弟たちの面倒を見るスメイロトとか見てみたいw
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