アイ・ライク・トブ【外伝更新中】   作:takaMe234

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誤字修正の方々に、この場を借りて感謝を。

※オリジナル要素やねつ造要素ありまくりです。
 原作などで見なかったり聞いた覚えがないものは恐らく該当します。
 原作ネタバレ、及びあちこち改変しておりますので閲覧にはご注意ください。
 
 アイ・ライク・トブを既に閲覧済みであることを前提として書いております。
 また、アイダホさんの設定も変動しておりますのでご留意ください。

※息抜きとスランプ抜けをお祈りして。

※分岐部分、『ジルクニフからの信頼度がちょっと足りなかった』『スメイロトが斜め上に頑張ってしまった結果』『遠ざけるには丁度いい位置があの国』

※第1話地点、原作開始から3年位前。ジルクニフが20歳ちょい手前。スメイロトが17歳位。カルカ様が21歳前後。ケラルトが22歳。レメディオスは24歳。

※リ・エスティーゼ王国「そっちも貴族が八本指と癒着したんだからお互い様でしょうが。ここは喧嘩両成敗って事で」カルカ「屋上行きましょう。久しぶりに……キレちゃいました」

※ある意味精神的な被害者は森林地帯近くの商業都市の領主。部下の極一部が南部に通じてたってだけでケラルトの審問を受けるわで結局無実を勝ち取ったもののこの件の心労で息子に代を譲ってます。

※粛清に対する各国首脳の評価  ランポッサ「こっわ。自分じゃあんなこと出来ないわ」 ジルクニフ「ほぅ、あの女も母親になるとこう変わるものか」 女王「粛清できる余裕があって羨ましいのぅ」

※ラクレマ「あの二人は御手付きになさらないのですか?」 スメイロト「初潮が来てて子供産める体なんでどうぞと言われても……もう2年は後で。戦力としては使えるから身柄はこのまま派遣で頼む」
 ラクレマとしては最高執行機関の認識のズレを理解してるが、スメイロトの女の好みに付いて探りたいのと、彼にとって都合のいい女を演じたいので神官長達の間違いを事前に指摘するつもりがない。

※上でああは言ってるが、この世界の人類文明を見れば農村部だと普通に13歳ぐらいで嫁になって14歳ぐらいで子供産んでてもおかしくはない。
 農家基準で嫁ぐのが遅れ気味な年齢である16歳のエンリが未婚なのは、ンフィー君の恋心知ってる両親が敢えて枠を空けているからかも?
 エ・ランテルの都市区画でポーション店開いてる薬師の孫とか間違いなく玉の輿だからね……でなきゃ、とっくにカルネ村の同じ世代の男宛がってる筈。

※お子様コンビの代わりにやって来た家柄のいいお嬢様(16歳 女性神官戦士 lv21)のタレントが「着衣が少ない程ステータスにバフがかかる」という代物でスメイロト君「エロゲネタかよ!」とドン引き。
 今まで来た愛人二人よりも遥かにベッドの上で強敵だった。確かに全裸なのだから一番バフがかかるのは道理だなと彼は納得した。
 比較例で言うと、長袖の神官衣姿だとLv21位のステータスなのに対し、一般的な下着姿だとLv24位までステータスが上昇し、スケスケランジェリーだとLv27、全裸だとLv30まで上がった。
 全裸で戦うのは非常にナンセンスだが、神の宝物庫に眠るコラボイベで実装されたビキニアーマー(正義実現委員会の副会長の超際どい黒ビキニのアレ)と他アクセサリー各種を着用する事でLv29を実現可能。
 下着姿っぽい感じの無限魔力にその装備スタイルでシンパシーを感じられるが、本人的には好きでこの格好をしてるのではないから納得いかない感じらしい。
 ゴブスレで出て来た神官戦士(♀)も戦女神の加護を得る条件としてほぼビキニ姿で戦場を駆け巡ってたのでさもありなん。
 というか、冬場とかどうするんだろアレ。戦死云々の前に凍死しそうなのだが。


セイ王国で理想のヒモ生活()  『側室ケラルト・ベサーレス』

 

 

 

 

「この国を内側から脅かす輩に、私は慈悲の心を持ちません。否、そもそも持つ必要があるのでしょうか?」

 

 逮捕された南部貴族達の処遇について問われた時のカルカ・ベサーレスの返答。

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

聖女王の御一新。

カルカ・ベサーレスの統治における方針を一転させた歴史的転換期とされる。

 

主に起きた出来事は、リ・エスティーゼ王国の犯罪組織と結託して国内での反政権行動を実行した南部貴族の粛清。

粛清対象となったのは北部政権が主導権を握っている事に不満を抱き転覆を望む、南部貴族総体の凡そ2割弱の『過激派』と定義される派閥。

 

「疾く、速やかに主犯格の貴族を逮捕するのだ!」

 

号砲が鳴り響いた後の、カルカ達の行動は非常に迅速だった。

 

「爵位を気にする必要はありません。公爵であろうが、男爵であろうが、全て咎人なので平等に縄を打ちなさい」

 

出立する北部軍主力に対し、白銀に輝く兜と鎧に身を包んだ戦装束のカルカはそう檄を飛ばした。

 

「国賊は一人残らず縄を打ち、裁きの場に引っ立てよ!!」

 

聖騎士団と騎兵兵団が先行し、歩兵を主体としたケラルト・ベサーレス率いる本陣は後に続いた。

馬を駆る兵達はレメディオスに率いられ先んじて南部に突入。

本陣は中部で待機していたスメイロト・ベサーレスと合流して南部へと進撃した。

 

これら疾風怒濤の勢いに対し、南部の貴族達は政治的にも軍事的にもまともな手段を講じる事が出来なかった。

 

八本指拠点の壊滅と八本指が保身と後々の脅迫材料として確保していた取引の履歴書類や協力を確約する契約書。

それらが八本指の幹部代行達とセットで、聖騎士団に確保され瞬く間に北部政権に事の詳細が露見してしまった。

聖騎士団の苛烈な拷問と尋問により幹部代行達は敢無く自白。

それらの情報はいち早く南下して戻って来た先遣隊の副団長達に共有され、逮捕の確固たる証拠と化す。

八本指拠点への制圧成功直後、都市警備隊の中隊長の一人が公然の場で泥酔した挙句乱心して剣を振り回す事件が発生し家宅捜索を受け。

そこから八本指への手掛かりが発覚し、芋づる式に商業都市に入り込んでいた南部貴族の手の者達は検挙されていく。

逮捕劇によって八本指の失敗と事の露見を南部へと知らせる者が居なくなったのも、南部貴族が初手において完全に後手に回った要因となった。

ただ、後の調査によって南部貴族が密偵を監視と連絡役として複数名、都市の内外に配置していたことが発覚。

彼らが存在していたのにも関わらず、南部貴族の連絡網が機能せず彼ら自身も行方不明のままなのは本事件の謎のひとつとして残されている。

 

この事件で王配スメイロト・ベサーレスに対しての、八本指による暗殺計画実行が未遂で終わったのは僥倖と見做されている。

正確にはマルムヴィストなる警備部門の幹部が暗殺を実行する筈が、当時スメイロトが宿泊していた別館が襲撃される事はなく。

聖王国に入り込んだ八本指が壊滅した後もマルムヴィストだけは逮捕はおろか行方すら分からず追跡捜査は続行されている。

 

 

本陣に先駆けて南部領に進出した先遣隊は次々と指定された貴族の所領に移動。

聖女王の署名入りの逮捕状を掲げ、八本指と癒着していた貴族達を逮捕していく。

 

「ば、莫迦な事を申すな! どこにその様な証拠があるというのか!!」

 

彼らは逮捕に対して強気で反論及び抗議したが、どの貴族も顔色は真っ青であり冷や汗で覆われている。

 

南部貴族の過激派達はカルカ・ベサーレスの本気を侮っていた。

例え王配と騎士団長の死亡後に、政権が自分達への嫌疑を向けても捜査が始まるまでに隠ぺいを完全に済ませられると。

あの『お優しい聖王女』であれば、強硬な捜査に躊躇し自分達への事実確認を優先してくると思っていたのだ。

少なくとも今までのカルカ・ベサーレスは、そこまで甘くなくとも国内における政治バランスを傾ける行為に対しては慎重だった。

慎重で相手に配慮し過ぎるが故に、政敵はそこに付け入る隙を見つけることが出来た。

 

今回の彼女は今までの『優しすぎて八方美人で優柔不断な聖王女』というイメージを完全に破壊した。

"外面如菩薩内心如夜叉"の如く逮捕状を携えた先遣隊を迅速に派遣し、本格的な調査と現地での沙汰を下す為の本陣を南下させてきた。

彼女のイメージを以前と同じく見ていた彼らは、証拠を隠す、または隠滅するだけの猶予を与えられなかった。

念のために中部に派遣した密偵達の連絡網がずたずたにされ、機能不全に陥っている事にこの時になってやっと気づいたが全ては手遅れである。

 

聖騎士達が貴族達を館から引きずり出し、館内を調査すれば出るわ出るわ。

八本指との裏取引の証拠が書類や現物として確保された。

レメディオス達の貴族達の身柄拘束、および証拠の差し押さえが進む最中に聖王国軍本陣が南部に到着。

聖女王カルカ・ベサーレスより南部における聖王の代行指揮権を委ねられた聖女王の名代。

臨時執政官ケラルト・ベサーレスを従えた王配にして聖王名代たるスメイロト・ベサーレスは普段通りの覇気のない面持ちと口調で宣言した。

 

 

「これより、聖王国における反乱分子の粛清を開始する。聖騎士団、並びに騎兵兵団は拘束中の貴族達を証拠品と共に臨時法廷へと連行する事。以上だ」

 

 

 

この一連の粛清により、『過激派』に属した南部貴族は悉く御家取り潰しの目に遭い。

主犯の高位貴族達は例外なく死罪を賜る事になる。

彼らの家族も連座対象とされ、一家揃って刑場に送られた。

これがまだ貴族同士の抗争であれば、条件付きで女子供の助命が為される可能性もあった。

だが、彼らが為したことは国内に人身売買と黒粉という危険な麻薬を流通させようとし、犯罪結社と手を組んで政権の転覆を目論むという言語道断の所業。

主犯格の一人は幼い我が子の極刑に対してスメイロトに慈悲を乞うたが、結局それが聞き入られる事は無かった。

 

「国家反逆罪とはかように苛烈な刑罰だ。そんな事も知らずに卿らはそれに該当する犯罪行為をしていたのかな? だとすれば、この結末も妥当というものだろう」

「そ、そんな無慈悲な!」

「忘れてはいないかね? 私はあの鮮血帝の弟なのだよ。まぁ、子供についてはその終わりに恐怖と苦しみが無いよう取り計らうことにする……引っ立てぃ」

 

淡々と、淡々と裁判は行われ審判が下り次第、咎人は刑場へと送られていく。

『過激派』への処断が続く中、調査の手は他の南部貴族にも広がっていった。

直接『過激派』に属してなくても、北部への反感や縁故の仲などで彼らの活動に関与したり助力した貴族が居ないかどうかの確認だ。

この件に関しては他ならぬ南部貴族からの密告が相次ぎ、『過激派』に多少なりとも関与していた南部貴族があぶり出される事になる。

苛烈な粛清に怯えた者達が自分達に火の粉が掛からないよう、怪しげな動きをしていた貴族を積極的に臨時法廷に告発した例が多い。

 

最終的に南部貴族は二割五分程の数が粛清、または地位の剥奪や領地没収、軽くても蟄居謹慎等の処罰を受けた。

ケラルトとしては総数にして三割は粛清しておきたかったらしいが、やり過ぎれば今後の国内の統治に差し障るのでそこは自重したらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼いたします!」

 

ホバンスの王城。

伝令の騎士が謁見の間から足早に去っていく。

恐らくは交代で他の騎士が早馬で南部に向かうのだろうが、彼自身の疲労もかなり蓄積されていた様に見える。

 

「カルカ様、本日の謁見はここまでと致しましょう」

「そうですね……」

 

老齢の補佐官がそっと声をかけて来て、カルカは漸く疲労で集中力が落ち始めている事を自覚した。

補佐官の進言を受けて謁見を少し早めに切り上げ、自分の執務室へと戻る。

 

「ふぅ……」

 

人払いをしてから執務机の椅子ではなく、来客用のソファに腰を下ろす。

執務用の椅子だと、どうにも気が張って仕方がない。

ちらりと、執務机の上を見る。

そこに積み上げられている羊皮紙の内容を、カルカはよく知っていた。

 

【処断済みの罪人リスト追加】

【没収された領地と財産などのリスト追加】

【没収した領地と財産の処置についての中間報告】

【世論に対して正当性の広報における中間報告】

【北部城壁地帯における亜人の活動報告】

 

どれも憂鬱な内容でしかない。

例え罪人だとしても死者の名前が連なって、その中には知っている人物もいたし子供も含まれている。

その死者の所有物についての処遇を、カルカは決めなければならない。

 

(正当性か)

 

御一新により既に百人を超える貴族と、その倍を超える彼らの部下であり汚れ仕事の担当者達が刑場で命を散らしている。

これらの苛烈な粛清に聖王国の民衆は一定の理解を示した。

示したが【冷血の聖女王】等と密やかな陰口があちこちで囁かれているのも事実だ。

即位してからの聖王女カルカ・ベサーレスと、粛清を発令した聖女王カルカ・ベサーレスとでは彼らの印象が異なるのだろう。

 

(それでも、私は後悔していない)

 

そう、カルカは後悔していない。

 

あの人に対して南部貴族と犯罪結社の殺意の矛先が向けられた。

忌まわしい中部での事件において、発覚した暗殺計画は未遂に終わったものの。

場合によってはスメイロトと親友を両方失っていたかもしれないという悍ましい可能性は、聖王女を聖女王に変えるに十分すぎた。

 

(そう、後悔などしない)

 

これは正しい事なのだから。

リ・エスティーゼ王国の現状がどうなっているのかを知っていて。

八本指等という、王国の惨状を作り出した犯罪組織を自ら招き込む等という最悪の愚行を為した南部貴族を許せる理由などない。

報告書では自分達で利用するだけ利用した上で叩き出すつもりだった等と、南部貴族の寝言が書かれていたが文字通り寝てから言えと言いたい。

 

(あなた達は、八本指を増長させた過去の王国貴族と同じ過ちを犯したのだ)

 

漸く亜人達の長城への浸透が鈍化し、国内に潜んでいた危険な亜人達も親友の活躍により掃討された。

大規模な動員も最近は無くなり、国民は狂暴な亜人の脅威に怯えずそれぞれの生活に専念できるようになった。

まだ足りないものも至らないものも多く、カルカが願う【誰かが犠牲にならずに済む国】には程遠いだろう。

それでも、彼女の抱く理想の国に僅かにでも近づけている、そう実感が出来ていた矢先の出来事だ。

 

(そんな愚かな者達を、許せる訳がない)

 

過去の自分が見たら、やり過ぎではないだろうかと諫言をしてくる行いだとしても。

今現在のカルカは粛清を最後まで成し遂げる覚悟で動いている。

将来の聖王国の為に。そこで暮らす臣民の為に。

 

自分の、家族の為に。

 

 

 

 

夜の帳がホバンスを覆い、家々の灯りの殆どが消えた頃。

 

彼女は侍女達によって寝間着に着替えさせられ、自分の寝室へと移動していた。

寝室は王族らしい豪奢さもあれど、彼女らしい品のいい調度品で整えられている。

 

天蓋付きのベッドに向かう前に、カルカはベランダに向かいドアを開けて外に出た。

広い石造りのベランダには寛ぐ為のテーブルと椅子以外に、大理石のプランターに植えられた大振りの植木が置かれている。

 

(今日も元気そうですね)

 

傍に置かれていた如雨露で水を与えながらそんな事を考える。

スメイロトがプレゼントしてきた植木で、トブの大森林で自生している珍しい花を時期ごとに咲かせる木だそうだ。

実際、季節が巡るごとに色違いの花を咲かせ、彼女の眼を楽しませていた。

 

『草木の世話も拘りを覚えると楽しいものだよ』

 

夫の言葉は確かにそうであると、カルカは最近思えてきた。

特に粛清等という血生臭い事柄を扱い、心身が疲弊していれば尚更だと。

植木の葉や幹をスメイロトに習った様にチェックし、異常がないと確認してから如雨露を床に置いた。

 

「おやすみなさい」

 

誰も相手が居ない事を理解しつつも、何となくそう呟いてベランダから出て寝室に戻る。

ドアの閉め方が甘かったのか、僅かに扉が開いて夜風が隙間から室内に吹き込む。

すっと伸びて来た蔓がドアノブを静かに操作し、ドアは音もなく完全に閉められて夜風は吹き込まなくなった。

 

 

 

ベッドは王族が眠る場として相応しい広さと上質な空間を提供している。

ここで夫と何度も愛し合っていた時は、偶に狭く感じてしまった時もあった。

もっとも今のカルカにとって、物寂しさを感じさせる無意味に広いだけの場に思える。

夜番の使用人は控えの間に下がっているので、寝室は静かで偶に夜風が窓のガラスを鳴らす音が響くだけだ。

 

(はぁ、独り寝が酷く寂しいですね。あの人も、あの子も居ないのは……)

 

我が子であるラムロッド・ベサーレスは、子供用の離宮で親族や乳母達が世話をしている。

王族の親子故に一般の母子とは距離感が違うのは承知している。

だが待望の王子だけにみんなの目の色が違い過ぎた。

特にスメイロトをラムロッドから露骨に遠ざけようとするのは、状況を理解しているカルカでも聊かならず不愉快だった。

 

『仕方がないよカルカ。私があの子に近すぎるのはベサーレス家としても宜しくないのは事実だ』

 

スメイロトは納得しているので、彼がラムロッドと顔を合わせられるのは僅かな機会でしかない。

こうした積み重ねもあってか、カルカはスメイロトに対して申し訳なさを強く感じていた。

そしてその分、カルカ自身がスメイロトに強い依存を感じていたのだが彼女はその自覚がなかった。

 

カルカ・ベサーレスは王族である事を常に求められていた。

聖王女たれ、と周囲に願われていた。自身の願いであれど、聖女であれと望まれていた。

例え親友と言える姉妹が居ても、どうしても臣下や立場という垣根が存在していた。

 

彼女は『糸が一筋すら付いてない自分を見てくれる、愛してくれる相手』を欲していた。

 

最初は政略結婚の相手に過ぎない彼にそこまで期待していた訳ではなかった。

なかったが、王族や為政者としては凡庸でも、スメイロトはカルカに寄り添ってくれる相手としては適性が高かったのかもしれない。

 

(スメイロト様……)

 

こんな夜だからこそ、彼に抱きしめて愛して欲しい。

単なる体温の温かさではない、心身両方を満たしてくれる夫からの愛が欲しくなるのだ。

更に言えば、はしたないかもしれないが彼女自身は男女の交わりが嫌いではない。

意識が飛ぶほどに彼から求められ、身もふたもない程に己を曝け出せる快楽の与え合いは寧ろ好きになっていた。

 

しかし、彼はこのホバンスには居ない。

大して長くない筈だった中部における亜人討伐が、南部での大規模な粛清に代わり。

大部隊と共にケラルトが派遣され、既に三か月以上が経過している。

 

そう、今はケラルトが彼のそばに居る。

 

「………」

 

無言で、眉間に寄った深い皴を指先で揉み解す。

仕方がない、彼女以外に適任者がいなかったのだから。

カスポンドでは処理能力は兎も角、温厚な気性の面で粛清をやり切るのかが難しい。

元々南部貴族と対立していて、"外面如菩薩内心如夜叉"と恐れられる程の容赦なさを持つケラルトが粛清担当として申し分なかったのだ。

 

「………」

 

だから仕方がない。

そして、問題もないだろう。

ケラルトは側室になっても、スメイロトと何かと距離を取りたがり。

妻としてのお勤めも「私は側室ですので」と自分に譲ってくれる位だ。

カルカは気づいていたのだ。ケラルトが私情でスメイロトを疎んでいたのを。

自分とカルカとの関係性を、夫婦という形で疎遠にするのが気に入らなかったのだと。

 

「大丈夫」

 

だから、二人きりでも問題はないだろう。

スメイロトの性格上、自分を嫌う態度を取るケラルトとの関係が深化する様な行動は取らない。

数か月単位で出先に二人きりでも、あの二人の関係性は平行線をたどるに違いない。

 

「きっと、大丈夫」

 

そう繰り返し呟いて。

カルカはシーツを頭から被り、眠りについた。

明日も朝から政務が連なっている。

しっかり睡眠はとらねば体がもたない。

 

「信じていますよ、スメイロト様」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

南部の主要都市のひとつ。

都市の近隣にある元侯爵家が所有していた別邸。

本陣の司令部は裁判が行われる所領の位置によって移動している。

裁判対象と証拠品の護送距離を短縮する事もあるが、暗殺やテロリズムから身を守るためもある。

外から見れば麻薬を他方に売り捌く極悪人でも、領土内では仁君の様に思われていた領主も居たのだ。

粛清を実施する王国軍本陣が恨まれている理由が多々あるが故の処置でもある。

もっとも、南部における粛清劇も終盤に近付いており、この伯爵領における調査が終われば各地へ治安維持部隊を残置し。

本陣上層部は聖女王への任務完了の報告と、南部粛清に関しての総括の為にホバンスへと帰還する予定であった。

 

 

 

照明が僅かなランタンだけの寝室。

 

「精神面な抑圧というか、我慢が溜まり過ぎるのは良くない……」

 

頭上から聞こえる声は、軽薄極まりなく不愉快の対象の筈だった。

 

「ふぅ、ふぅ……」

「そう思わないかなケラルトさん?」

 

どこか意地悪な口調で、自分の夫たる存在が語り掛けて来る。

かけてくるが、何時もの様に舌鋒鋭く反論できる余裕がケラルトには無かった。

 

「返事をしてくれないのは流石に寂しいんだけど?」

 

こんな状態にしておいて、どの口で言うのかと叫びたくなるが出来ない。

ひたり、と背中に置かれた手がゆっくりと下半身へと撫でる様に動いていく。

彼女の背中は酷く汗ばんでいるにも関わらず、男の撫でる仕草はどこか楽しそうだ。

 

「やっぱり、貴女は素直じゃない。普段は弁が立つけど、こういう時は意固地なまでに口を閉ざそうとする」

「っ、ふぅ……!!」

 

抗議の声を上げたくなるが、食いしばった歯がカチカチと鳴るだけで怒鳴るだけの余裕がない。

少しでも気を抜けば、腰が砕け肘が落ち自分は惨めな姿勢で床に這いつくばる事になる。

床には元住人の華美な趣味の名残か、上質な絨毯が敷き詰められている為勢いよく倒れても怪我はないだろう。

その代わり惨めな自分の姿は男を悦ばせ、ただでさえ軋んでいる彼女の理性を一気に圧し崩すに違いない。

 

「ふむ、だんまりのままか」

 

やがて女が意地でも喋らない事に焦れたのか。

男の両手が形のよい臀部をサスサスとさすっていく。

不本意ながらも、彼の手遣いはすこぶるいい。

側室問題が起きる前に、カルカが疲労が溜まっている時に王配にマッサージして貰い。

そこらのマッサージ師よりも上手なのではないか?と褒めていたがそれは事実のようだ。

何せ、この様な時の手遣いや力の加減ですら絶妙なのだから。

 

「ふ、くぅ、ううぅぅ……」

「お、素直になれて来たのかどうか……ね!」

 

グイっと押されて、息が止まる。

自分の女性の象徴の壁まで圧迫され、思わず声ならぬ声を小さく上げてしまう。

 

「あ゛、あひっ………ぃぃぃぃっ」

 

もう、限界だった。

無様に上半身が床に落ち、尻だけが高々と突き上げられた状態。

まるで躾を受けた犬の様だが、まさに今の彼女は雌犬なのだろうか。

 

「お、少しだけ素直になれた様で嬉しく思いますよ臨時執政官殿?」

「ふ、ぅぅぅぅ……ひっ」

 

体内の圧迫感が遠ざかり、ポンッという音と共に真空音が聞こえた。

 

「凄いね。これ、大洪水だ」

 

湯気を立てて粘液が滴り落ちる物体が、床に這い蹲ったケラルトの眼前に差し出される。

卑猥な形のソレは帝都の夜の街で遊び歩いている時に、作り方をそっちの業界の業者に教わったとか。

まさか、カルカにも……という疑問は顔に出ていた様で、彼女の夫は苦笑いで否定した。

こういうのは彼女には刺激が強すぎる、逆に言えば君の様な気性の女性には使ってみたいと思っていたと。

思わず張り手を浴びせてしまったが……鼻血を垂れ流しながらも本人は飄々としていた。

 

「うっふっふ、卑猥な官能小説とかで『体と心は別物』とか書かれてるけど、ケラルトさんの体はホントそうだとしか言いようがない」

 

玩具が無造作に床に放り投げられる。

二つの胸の膨らみを無造作に掴まれ、上半身を引き起こされた。

 

「ここも随分と素直な反応をしてる。ほら」

 

硬くなった頂きを指先で弾かれ、びくりびくりと体が揺れる。

初夜、もとい初戦でいい様に蹂躙された時にケラルトは思い知らされた。

この男は経験に準じた知識を得ており、女である自分よりも女の体の扱い方を心得ていると。

側室となってから数カ月経つが、伽の時は全く手も足も出ない状況が続いていた。

 

「それで、ケラルトさんの口からも素直な言葉を聞きたいんだよね。もっと、気持ちよくしてくださいって」

 

この男は毎回同じことを言わせたがる。

散々高めて弄んで、そういわざるを得ない程に蕩けさせておいてケラルトの口から言わせようとするのだ。

無理に押し倒してくるならまだ納得できる。

だが、自分から屈服を口にするのは常に男と戦い続けてきた彼女にとっては屈辱だった。

 

「そ、その、き……」

 

屈辱であったが、同時に本人の認識を超えて肉体が熟れてしまっていた。

彼女の姉はケラルトを「神より三物(知性、才能、美貌)を与えた」と評していたが、スメイロトはもう一つ加えたいと思っている。

四物目は美貌につり合う健康で黄金律のバランスが取れた女としての肉体だ。

 

「ん、聞こえない。もっと大きな声で言わないと。ほら」

「ひゃん!」

 

下腹部まで降りた片手の人差し指と親指によって強く摘ままれ摺り上げられる。

生理的な反応なのか、生暖かい飛沫が数回絨毯の毛を濡らす。

ケラルトはカタカタと痙攣を繰り返した後で、くったりと脱力した。

 

「ケラルトさん……」

 

スメイロトが彼女に覆いかぶさり、耳元でそう囁く。

僅かに顔を上げ、涙目のケラルトがボソボソと呟く。

 

「はい、よくできました」

 

満足げに頷いた王配は姿勢を整えて―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後。寝室は濁点が付いてそうな喘ぎ声で満たされる事になる。






大丈夫かな、ひっかからなきゃいいけど。

スメイロトさん、聊か嗜虐的ですが前世での親父殿の因果+ケラルトさんが征服したくなる女性、が原因の様です。
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