アイ・ライク・トブ【外伝更新中】   作:takaMe234

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誤字修正の方々に、この場を借りて感謝を。

※オリジナル要素やねつ造要素ありまくりです。
 原作などで見なかったり聞いた覚えがないものは恐らく該当します。
 原作ネタバレ、及びあちこち改変しておりますので閲覧にはご注意ください。
 
 アイ・ライク・トブを既に閲覧済みであることを前提として書いております。
 また、アイダホさんの設定も変動しておりますのでご留意ください。

※息抜きとスランプ抜けをお祈りして。

※分岐部分、『ジルクニフからの信頼度がちょっと足りなかった』『スメイロトが斜め上に頑張ってしまった結果』『遠ざけるには丁度いい位置があの国』

※第1話地点、原作開始から3年位前。ジルクニフが20歳ちょい手前。スメイロトが17歳位。カルカ様が21歳前後。ケラルトが22歳。レメディオスは24歳。

※スメイロトの手勢の紹介。神人を除けば漆黒聖典を圧倒する戦力数を誇り、神人を含めれば単騎の強さで圧倒される戦力バランス。
 神官長達からは神人の様にドラゴン・ロードからの警戒が無く逸脱者レベルの戦力を複数方面に派遣可能な事から物凄く羨ましがられている。
アルラウネ。総勢40体程。Lv47からLv35まで。ファイター、スカウト、ドルイド、レンジャーに分類される。親衛隊(lv47~44)は彼女らの上位を指す。
ドライアド。総勢130体程。Lv45からlv20まで。フォレストガード、ドルイド、ファーマスィスト、シャーマンに分類される。各眷属への通信隊は彼女らが担当している。
五月の王。総勢5体。Lv39からLv35まで。メイ・キング。フォレスト・フォートレス。拠点防衛、包囲網構築、移動可能で広大な防衛ラインと意外に使い勝手がいい。眷属の量産も可能。
その他の植物系モンスター。常時300体前後? Lv36からLv5まで。切り株のでかいのから、毛根の塊まで色々。勝手に増殖したものもいる。雑兵から警備兵、とある存在への贄など任務は様々。
????。総勢1体。現在Lv65。スメイロトの秘密兵器。自分が領有してる森林地帯で極秘裏に育んでいる。試作的な存在であり、とある少女の魔力と眷属の贄を継続的に注がれ今も急速に成長中。

※眷属らの活動の舞台は様々。王国の偵察や報復、アベリオン丘陵での偵察と間引き、竜王国でのかつての契約の自主的なボランティア、聖王国内での家族の警護、要所の監視、巡回等結構忙しい。
 上記の総数はかなりの数に思えるが、複数か国でそれぞれ活動し、聖王国内でも各地でスメイロトの指令を実行してるため一か所の数はあまり多くない。
 竜王国でのボランティア活動は、陽光聖典が派遣される期間と重複しないように派遣されている。

※ソツジュ・ミィ・ティリアン 13歳の足首まで届く空色の髪の少女。この世界では規格外のMPを保有し巫女姫候補だった。どこか虚無的な不思議ちゃんだが、スメイロトに派遣されてからは少し饒舌に。
 意味不明な言葉ばかり呟いたり、天啓と思われる受信から脳を防御する為に銀色紙の折り紙(兜)で頭部を覆ったりする。とある巨大存在をキヨサンと命名し親友として可愛がっている。小柄なお子様ボディで処女。

※ハイネ・リゼンブル・エドワルダ 14歳の肩口まで白髪を伸ばした褐色肌の少女。元水明聖典の潜入工作員でタレントの変身能力と変身対象のラーニングを行え声、仕草を学習できる。
 カルカ、ケラルト、レメディオス、カスポンドが居ない場所でのスメイロトの影武者を担当する。スメイロトを学習する為に隠し離宮で同居して彼の人柄を一番熟知している。背丈は平均的だが貧乳。処女。

※フィオナ・ボディリー・ラメンテア 16歳のLv21聖戦士の少女。アベリオン丘陵での戦いも数十回経験している。タレントが最大限発動すればLv31まで上昇するが条件として全裸にならねばならない。
 代々高位神官を輩出している名家の次女であり才女でもあるが、本質は法国の女性とはあるまじき程のフランクさを持ちそれを隠して生きる事に苦痛を感じていた。計画に志願した理由は主にそれである。
 非処女でありスメイロトが南部に出張中、何十回も彼女を相手した事で彼の子供を懐妊している。




セイ王国で理想のヒモ生活()  『王配の愛人フィオナ・ボディリー・ラメンテア』

「あー……落ち着くしいい湯だぁ」

「そうだねぇ」

 

頭上には夜空が広がり、湯気が立ち上がっていくのが見える。

 

ここは広大な森林地帯に隠されたスメイロト個人の所有する離宮だ。

全ては天然の木々と蔓と蔦で構成されていて、そこに少数の家財だけを持ち込んでいる。

住人の世話はドルイド達によって行われ、警護は五月の王とアルラウネ達が務めている。

 

ここに住めるのはスメイロト唯一人のみ。

そして彼の招きを受けた客人にのみ滞在を許される。

 

フィオナ・ボディリー・ラメンテア。

スメイロトの三番目の愛人であり聖戦士。

赤髪碧眼の見るからに勝気そうな少女であるが、実家と神殿で躾けられた上辺は兎も角として彼女の気質はフランクだ。

その気質をスメイロトはかなり気に入っており、ゲーム的にいう友好度で言えば法国の人間でトップクラスといえるだろう。

 

「たまにはこうして、何の気兼ねもなく風呂に入るのが堪らなく解放感があっていいんだ」

「あー、それわかるわかる」

 

相手が許しているとはいえ、隣国の貴人相手にこの態度。

この離宮にいる法国の者がフィオナのみだとは言え、最高機関の面子が聞いたら激怒か卒倒しかねない。

 

「このお湯も凄くいい香りだよね」

 

木の浴槽に張られた薄緑色の薬湯、ドルイドのファーマシスト達が配合した入浴剤が香草の芳香を浴室内に満たしている。

当然、入浴中の二人は全裸であるが、南部に居た頃の愛人当番は彼女のみだった事もありもう慣れたものである。

 

「いい香りか……強い香りとかは大丈夫なのか?」

「ん、全然大丈夫。まだ一か月を過ぎた位だからつわりとかもないよ。匂いとか食事も変わらないし」

「そうか。まぁ、今回来たのはその報告の為だからな」

 

フィオナはスメイロトの子を懐妊していた。

彼女の体内の変化に気づいたスメイロトが漆黒聖典に相談。

テレポートで一時帰国した彼女が神殿で診察を受けた結果、懐妊していることが確定したのだ。

 

「もう暫くしたら次の子が来るから、そうなったら暫くのお別れだね」

「……そーなるか。君の事は結構気に入ってたから、寂しくなる」

「そう言ってくれるのは嬉しいな。だけど……」

 

フィオナは少しだけはにかみながら、お湯を軽くかき混ぜる。

湯の中に沈んだ乳房が湯の動きに反応してフルリと揺れた。

 

「カルカ様とケラルト様の仲裁はしっかりやらないとダメだよ?」

「……………う、うん、わかってるさ」

「もう、もう少し威厳というか、二人の旦那様って感じでいけばいいのに」

 

フィオナの言葉に、スメイロトは軽く顔を湯の中に沈めて沈黙した。

 

「私もケラルト様が妊娠して、あんな風に関係が変化するとは思わなかったけどね」

 

 

 

 

 

 

側室ケラルト・ベサーレスの懐妊。

南部から戻ってきて一週間後、執務中のケラルトは体調不良を起こした。

 

「うっぷ」

「ケラルト様っ!?」

「………すみません、書類に胃液をかけてしまいました」

 

粛清と長期間の出張による疲労と心労か、と大神殿で前任の老神官から診察を受けた。

 

「あらケラルト、あなた、妊娠していますね。おめでとうございます」

「へ?………え……はい、ありがとうございます」

 

思えば心当たりがあり過ぎるというしかなく。

なんせ、南部という政治的敵地での数か月に渡る審判と粛清。

スメイロトは元より、実務全般を取り仕切るケラルトのストレスは凄かった。

疲労と心労と溜りにたまった鬱憤を、部下や南部にぶちまける訳にはいかない。

そして同じくたまり切っていた夫の口先に丸め込まれ、夫婦の営みという形での発散に至った。

他者の命を散らしている傍らで、子作りをするというのはかなりアイロニーではあったがそれでも発散しまくった。

結果、彼女の健康で成熟した体にせっせと三か月以上種蒔きを続ければ、着実なる受精からの着床と相成るわけである。

 

「スメイロト様の御子を懐妊致しました事をご報告申し上げます」

「……」

「……………」

 

三人だけの茶会の場。

ケラルトの報告を受けたカルカは、「そうですか。おめでとうございます」とだけ告げた。

静かな声だった。まるで周りの生活環境の音さえ断ち切るような声だった。

どうして、と内心冷や汗をかきながらスメイロトは思った。

側室が子を為すのは想定範囲の事のハズなのに、どうしてカルカはこうも威圧感を放っているのか。

 

(こ、こええええぇぇぇ!)

 

びりびりとした雰囲気に堪らず視線を下げていたスメイロトは、そっと隣に座るケラルトを見た。

 

(えぇ……)

 

カルカの雰囲気に押されることなく、ケラルトは堂々としていた。

いつものように、優雅な仕草で紅茶を一口嗜みそっとカップを置く。

彼女が口にしていた紅茶には、薄切りの柑橘が浮いていた。

 

「カルカ様。ご提案を申し上げたいのですがよろしいでしょうか?」

 

何故に挑むような口調で言うのか、スメイロトはカルカの方を見た。

カルカは仏の様な笑みを浮かべていた。怖い。スメイロトは目をそらした。

 

「……どうぞ。私にはケラルトの提案を聞かない理由はありませんから」

「ありがとうございます」

 

ケラルトの提案を聞いて、カルカは僅かにだが驚いた顔をした。

 

「つまり、スメイロト様の執務内容の拡張を行いたいと?」

「はい、こうしてカルカ様と私が妊娠した場合、どうしても執務や政治活動に幾ばくかの制限がかかるのは明白です」

 

実際、カルカが初子を孕んで出産するまでの間、臨時であるもののスメイロトの仕事の量が増大した。

国の最高位とその第一の側近が同時に母親になる、または妊娠期間が被ったらどうなるか。

カスポンドがヘロヘロみたいな超ブラック環境とまではいかなくても、かなりのブラックな勤務状態になるのは明らかだろう。

 

「少し、驚きました。臨時であればこそ受け入れましたが、基本スメイロト様の政務の拡張には否定的だったではありませんか?」

「我が身に事が至ってこそ、考えを改めただけの事です」

 

そう思うのであれば、他のベサーレス家の王族に事を頼めばいいのにとは思うがそれはケラルトとしてはよろしくないのだろう。

南部の閨で愚痴を延々聞かされた時、彼女にとって評価に値するのはカルカとカスポンドだけであり。

他の連中は目の前の仕事にだけ集中していればいい程度の、凡庸か俗物の二択にしか過ぎないとの事だ。

 

(そんな連中がウチの長男を囲んであれやこれやしてるのが心配なんだけどなぁ……)

 

少しばかり現実逃避代わりにわが子の将来を案じていると、幾つかの問答の後に納得したのかカルカが了承の返答を出す。

 

「わかりました。後日、会議にて提議してください。基本、私は賛同致します」

 

カルカも一口分紅茶を含んで口内を湿らせた後、何故かスメイロトの方を見て話を続けた。

 

「政務の拡張部分については、私がスメイロト様に直接教育をするということで」

「いえ、恐れ多くも聖女王たるカルカ様の手を煩わせる事はございません」

 

またしても、場の空気が凍った。

カルカの目がすっと細まる。

ケラルトはまた紅茶を軽く一口嗜んでから言葉を発した。

なんだか、口調が早くなってきてるのは気のせいだろうか。

 

「聖女王が取り決める案件につきましては関与するのが聊か性急かと」

「……では、誰が?」

「私が担当いたしましょう。スメイロト様には主要な政務からではなく、段階的に覚えていく必要があるかと」

「それは私でも可能です」

「同じ可能でも政務官と国家元首では使える時間と、その意味合いが異なります。御身が直々に為される必要はございません」

「ですが――」

 

そこから流石に時間だと呼びに来た双方の従者がやって来るまで、カルカとケラルトは早口で口論もとい論議を続けた。

 

スメイロトはその間、ただ茶菓子と紅茶を交互に口に含む動作を繰り返していた。

 

 

「スメイロト様」

「あ、はい」

「今夜、私の館でお話がありますので時間を空けておいてくださいね?」

「あ、はい(アイエエ……)」

 

帰り際、カルカに笑顔で声をかけられた。

その晩、無茶苦茶絞られて搾られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、ホントギスギス過ぎてどうしたものかと。おまけにホバンスに私の私邸を作る計画まで出てきてしまってな」

 

正確に言えば取り潰された南部貴族の大豪邸が隣家同士になっていたので敷地と邸宅同士を繋げて全面リフォームし、スメイロトの離宮へと作り変える計画だ。

 

「あ、それジュンノから聞いてる。カルカ様とケラルト様の共同提案で決定したけど、今でも改装の内容について主導権を水面下で争ってるみたいだよね」

「うん……そうなんだよ。カルカさんは兎も角、ケラルトさんがあそこまで食いついて来るとはね(またジュンノは覗いてるのか)」

 

どうしてこうなったとスメイロトは思う。

ちなみにジュンノは暇さえあればスメイロトを占術で覗き見して粘着していた。

ドライアドのシャーマン・リーダー(Lv45)に感知され、占術により遠視を妨害されてる様だが懲りた様子はない。

 

(本当、どうしてこうなったんだ。俺は可能な限り安全策を取ったハズなのに)

 

自分が何をしたとも嘆いている。

自分はただ、この国が自分の隠棲先として相応しい安定した国にしたかっただけなのに。

だからこそ敵対的な亜人達を弱体化させ、南部貴族が仕掛けてきたから八本指諸共潰した。

後はカルカが国策を主導しケラルトが実務を行いレメディオスが武を制し、それで数十年の安定が聖王国に齎されたはずだ。

自分は日陰者の王配として義務の分は働き、残りは悠々自適の生活を行える、その予定だった。

 

(どうしてこうなった!少なくとも危急の案件は概ね減らしたし、貴族が減った事で政界再編になったけど国家全体の安定性は高まったハズなのに!)

 

この考えをもしフィオナに伝えたら、少し呆れた顔でこう言われただろう。

 

『スメイロト様が女性に対して愚鈍だからじゃない?』と。

 

欲しいものを与えられれば、相手は更にもっと欲しがるのだ。

スメイロトは己の経験則で、その分量を自分の目分量で決めてカルカとケラルトに与えた。

その結果、相手がスメイロトの目分量よりもより多くを欲しがり始めただけなのである。

女の本質は貪欲だという事を、フィオナは己自身の経験を以て理解していた。

彼女自身も最初は本家から遠ざかりたかった逃避行為だったのを、結構スメイロトに入れ込んでしまっている。

まだ、彼女自身ラブではなくてライクの方だが、彼の子を産み出せばどうなるかはフィオナもわからない。

 

「でも、悪いことじゃないと思うけど。これで本当に王族として認められるのは善いことではないかしら?」

「そこは勘弁して欲しいよ。この調子で政務と政界への関与が深くなったらのんびり離宮生活できないだろ」

「スメイロト様ってその辺嫌がるね」

 

渋い顔で拒否を示したスメイロトに対し、流石にフィオナは疑問を投げかける。

優秀な人材はより多く責務を果たしより多く戦う。強き者はより多く責任を背負う事を美徳とする法国の価値観がにじみ出ていた。

 

「法国と貸し借りまでして表舞台に立つのを嫌がるとか。王族なら、その国の為にもっと頑張った方がよいのでは?」

「帝国時代にそれで大失敗したからだよ。実の兄貴に檻に入らない猛獣でも見るような目で見られたらなんというかさ……色々やる気が萎えてな」

 

嘆息した後、顔を薬湯でバシャバシャと洗う。

あれは実は結構効いている。

あの時、ジルクニフがあんな顔をせずに自分を見ていたら。

せめて、上辺だけでも弟を見る兄の顔で居てくれたら自分はこの国に来ることは無かったかもしれない。

ヒモなどになりたいなどという、厭世的な思考にはならなかったかもしれない。

 

「今ぐらいでいいんだよ。大して期待もされないが過度の期待や恐怖を向けられることもない。昼行灯の王配程度で丁度いい」

 

実際、現状の聖王国でスメイロトを肯定的にみているのは王家と各地の現地生産者位だろう。

前者にとってはカルカの後継者を作った時点でほぼ用済みであり、後何人かスペアを作れば『カルカの善き伴侶』という置物として置いておく位の心境だろうが。

だが、そんな軽々しい扱いでもスメイロトは構わないのだ。

 

「英雄だの救世主だのはコリゴリだよ」

「それを欲してる国の住人の前でそれを言うの?」

「言う。君がこれを上に話そうが、話すまいが言いたくもなる」

 

スメイロトは、普段はあまり使わない断定口調で言いきった。

 

「救国の英雄王配殿下? 聖王国の守護者様? 嫌だ嫌だ。凄く嫌だ。冗談じゃない」

 

帝国での働きはそういう評価を期待していたものじゃなかった。

ただ、自分の力で立場を得て自分自身の安息を手に入れたかっただけだ。

非力で上位者の言いなりになるだけの、張りぼての権力者の一族の一員ではなく。

そうでなくなった今生の自分であれば、何かが出来ると思っていた。

 

「例え力があっても、それは忍んで使うことにするよ。私には表側での権力者、カルカや兄の様な世間で力を振るう者としての適性がなかった。ただ、それだけだ」

 

結果は無残だった。

自分が勝手にそう思っていただけ、だった。

愚か者は力を得てもやはり愚か者でしかなかったのだ。

結局、スメイロトの中身は異世界に行こうが【世紀末世界の暴君一族の一員】に過ぎなかったのかもしれない。

他ならぬ今生の兄の瞳の中に映っていた、眼前にいる二足歩行の暴威に対する恐怖と戦慄を認識した瞬間。

 

「だから、法国への亡命はホントにそれ以外が無い位追い詰められないと選択肢に入らないね。期待と責任が超特盛の超越者または神人扱いとか考えただけで怖気が走る」

 

スメイロトはバカみたいな夢から醒めた。

 

「私は、表舞台なんぞで活躍できる存在ではなかった。だから、そうなりたいと思うのは完全に止めたんだ」

 

醒めて現実的な、彼基準の常識的な幸せを求めることにしたのだ。

 

「そっか……」

「すまないね、フィオナ。君の期待も裏切ってしまったかもしれないが、こればかりは譲れないんだ」

「ううん、いいよスメイロト様」

 

フィオナは隣に居るスメイロトの肩に頭を乗せ、何処か悪戯っぽく微笑んだ。

濡れた赤い髪と綺麗なエメラルドグリーンの瞳が印象的な、後九か月前後で母親になる少女は囁く。

 

「それでも、貴方が居れば人類の未来は悪いようにはならない。そう、自分で勝手に信じさせて貰うから」

 

そう言って腕を絡めて裸体を寄せてきた法国からの捧げものに、スメイロトは何も言葉を返せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻。

 

 

(羨ましいよなぁフィオナの奴。旦那様と今頃二人っきりでさ)

 

スメイロトの離宮ではハイネ・リゼンブル・エドワルダは、スメイロトとして夕食を口にしながら内心ぼやいていた。

スメイロトからラーニングしたマナーでナイフとフォークを操り、メインディッシュである鹿肉のグリルを優雅な仕草で切り分け上品に口へ運ぶ。

食材は申し分なくソースの味付けも悪くないと思う。

毒見を二重に経た後だから、隠し離宮でスメイロトが手ずから振舞ってくれた鹿肉料理とは違い冷めてしまってて味わいは負けてると思う。

 

(確か、聖女王が毒殺を恐れてチェックを二重にしてるんだっけか? 無駄な事してるよね)

 

旦那様にはそこらの暗殺者が使う毒なんざ、全く効きはしないのにとハイネは心の中で気に食わない聖女王の措置を嘲笑した。

ギガント・バジリスクの猛毒である鮮血をそのまま飲んでも、少し腹痛になる程度という規格外の耐毒性を誇る彼に毒殺なぞ事実上不可能である。

勿論ハイネは難度45程度の抵抗力しかないので、装飾用に偽装した耐毒性の指輪を装着しているが。

 

(あーあ、こんな使用人に囲まれてるだけの、話し相手も居ないつまらない夕食じゃなくて。旦那様の手料理がよかったなぁ……)

 

かの隠し離宮で替え玉修行として生活している時は本当に極楽だった。

手料理を作ってくれて、貴人としての振る舞いを色々と教えてくれて、疲れたらマッサージもしてくれた。

いけ好かない大人達みたいな態度で自分に接さず、細かく世話を焼いてくれるスメイロトに彼女はすっかり懐いていた。

 

(そのまま、手を出してくれたらもっと良かったのに……)

 

まだ早いとか言って自分を子ども扱いしてくるのだけは不満だった。

去年の事だが15歳のジュンノに手を出しておいて、14歳の自分には手を出さないのはおかしいとすら思っている。

おまけに後から来たフィオナはさっさと手を出して貰って、今じゃお腹に子供が居るとかハイネからすれば理不尽だった。

 

(きっと、おっぱいが小さい事が問題なんだろう。ソツジュの奴よりは大きいのに!)

 

ペタンコのソツジュよりは大きいとはいえ申し訳程度の差でしか無いことからは、ハイネは目をそらして食事を続けていく。

デザートが終わり、アルコールが指輪で中和されてるので酔えない食後酒を楽しんでいる風に見せかけながらハイネはふと気づいた。

 

(またあいつか。以前からこっちをちらちらとみて)

 

仕事に集中してて囲んでいるように見えてスメイロトを見てない使用人達の中で。

やたらスメイロトの方に視線を向けてるキッチン・メイドが居た。

食堂の入り口までサービスワゴンで料理を持ってきて、給仕係に料理を渡す度に毎回こちらを見ていたので何となく気になったのだ。

他の使用人たちは気づいてなかったが、諜報員として他者からの視線等の気配を感知する訓練を受けていたハイネは気づいていた。

 

(女王派でもカストディオ派でもないし、帝国の情報局でもない……あ、こないだの一件でここに放り込まれた元王国民、だっけ?)

 

そこまで考えてピンと来た。

この間の中部地方で起きた八本指事件で、王国から連れ込まれていた民間人の中で唯一生き延びた女性。

 

本来であれば難民扱いでホバンスの救貧院にでも放り込まれるのが関の山だった彼女がどうしてここに居るのかというと。

 

(自国民を奴隷の如く扱うリ・エスティーゼ王国とは違うと、聖王国では慈悲のある扱いをして自国民へのアピールにするため、だっけか?)

 

ホバンス政権の【自分たちは慈悲深い政権なのですよアピール】の恩恵を受けた彼女は一難民としてはあり得ない厚遇を受け。

そして使用人達から人気が無いゆえに万年定員不足であるこの王配の離宮へ、メイド見習いとして放り込まれたとか何とか。

キッチン・メイド見習いの姿をしているところからして、意外に調理などへの適性があったのかもしれないが、ハイネからすればどうでもいい事だ。

 

(名前は確か……ツアレニャンニャン、だっけ?)

 

もう一度目線をやると、既にサービス・ワゴン共々彼女は消えていた。

デザートと食後酒も終わったのでもう顔を見せることはないだろう。

 

(まぁ、いっか。どうでもいいし)

 

彼女が戦闘技能も特殊技能ももたない、本当にただの難民でしかない存在なのはとっくに調査済みである。

どうしてスメイロトの事を気にするのかは疑問だが、危害を加えるだけの力も無く外部勢力との繋がりもない見習いメイドなど気に留める必要もないのも事実だ。

 

(さっさと部屋に戻ろう。ひょっとしたら、旦那様から連絡来てるかもしれないし)

 

食後酒のグラスを空け、偽物のスメイロトは食堂から振り返ることもなく貴人らしい傲然な態度で去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから暫く後。

 

 

 

 

大陸最北西の位置する人類の国々から見て、南方と呼ばれる地域より更に南東に位置する場所。

 

デビルズ・パレスという歪な岩で出来た巨城が存在し、周囲や周辺国を恐怖に陥れていた。

 

その城と周囲を支配していたのは、双子の凶悪な魔将バレンタス。

過去にとあるユグドラシルプレイヤーが使役しており、プレイヤーが複数の真なる竜王達の討伐隊に仕留められた後は自由意志で活動していた。

 

彼らは自分よりも上位者たるプレイヤーを討った真なる竜王達の支配域には絶対に近づかず、ちょっかいや刺激する様な行動は避けていた。

だがそれ以外の種族やモンスターには容赦なく滅ぼし支配していき、攻め滅ぼした国の山脈を削って作ったデビルズ・パレスを居城とした。

悪魔達は真なる竜王を恐れてはいたが、滅ぼすべき敵とみなす事は忘れず何れ来る逆襲を夢見てそれに備えることにする。

 

我が身をより高みに至らせ、軍を揃え強大にする。

 

故に双子の魔将は屍を積み上げ、生贄を数百数千集めては儀式を行い魔力を高め眷属を増やす事に邁進した。

種族や目的こそ違うが己を高める為に数百万の生命を犠牲にした“朽棺の竜王”に似通うところがあるだろう。

己の位階を高める事についてはあまり成功しなかったが、戦車の悪魔や嘆願の悪魔を始めとする悪魔を軍勢規模で揃える事に成功した。

 

軍勢は揃えられた、次は位階を高めよう。

そうなればより高位の悪魔を召喚でき、魔将としての高みを目指せる。

そのためには支配域を広げ、より多くの生贄を集めなければならない。

周辺国と、その更に奥にある国にも偵察の悪魔を送り込み……双子の魔将は失敗した。

 

100年近くのこの異世界での行動で、最悪の失敗を。

 

 

 

「お前らか、近年この辺でふざけた真似してる悪魔ってのは……というか、バレンタスかよ」

 

自分の自慢の軍勢が馬鹿げた勢いで減っていく。

猛烈な爆発とあらゆる悪魔を貫く銃撃に双子と側近の悪魔達は戦慄した。

 

「絶対悪、とか名乗ってるみたいだが……お前ら程度でそれを名乗られたら俺が困る」

 

訳のわからない事を言いながら……悪魔にとってもっとも脆弱で甚振って楽しい種族の筈の人間が嗤った。

双子の魔将の軍勢をたった二体で蹂躙している魔将達の召喚者であり。

無駄に造形に拘った山羊の面を被り、黒いタキシードを纏い赤い裏地の黒いマントを翻したただの人間の筈の男が。

 

 

「なぜなら、この俺様こそが、絶対悪だからだ!!」

 

 

この瞬間、双子の片割れと周りに居た側近達とデビルズ・パレスの運命は決まった。

そして双子の片割れは己の半身を見捨てて、ただひたすらにその場から逃げ出し遠ざかる事に徹した。

 

幾つかの幸運と偶然により、バレンタスの片割れは魔将達と魔将を使役する人間から逃げる事に成功した。

 

 

バレンタスの片割れは逃げ続けた。

 

デビルズ・パレスから東北方面に遁走し、そこから浮遊する巨城を大きく迂回しながら更に北上して大陸最北西目指して逃げ続けた。

 

 

【絶対悪】を名乗る悪魔使いから逃げ切り、安全な場所で再起を企む為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




よし、これで終わりに目途が付いた……。

転生者無双と思った?
謎の山羊仮面は兎も角、スメイロト君は楽に終われると思うなよ?
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