アイ・ライク・トブ【外伝更新中】   作:takaMe234

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誤字修正の方々に、この場を借りて感謝を。

※オリジナル要素やねつ造要素ありまくりです。
 原作などで見なかったり聞いた覚えがないものは恐らく該当します。
 原作ネタバレ、及びあちこち改変しておりますので閲覧にはご注意ください。
 
 アイ・ライク・トブを既に閲覧済みであることを前提として書いております。
 また、アイダホさんの設定も変動しておりますのでご留意ください。

※息抜きとスランプ抜けをお祈りして。

※分岐部分、『ジルクニフからの信頼度がちょっと足りなかった』『スメイロトが斜め上に頑張ってしまった結果』『遠ざけるには丁度いい位置があの国』

※第1話地点、原作開始から3年位前。ジルクニフが20歳ちょい手前。スメイロトが17歳位。カルカ様が21歳前後。ケラルトが22歳。レメディオスは24歳。

※夜食を作りに出向く夜の厨房で偶に出会うメイドと、ツマミの話題でキャッキャしてるスメイロト君。視察にも付いてくるし健気だなぁと思ってる。メイドの方はほぼ確信している。
 あの忌々しい袋の中で弱り切っていた自分を治療し、あの八本指の拠点を局地的に無力化していた者達を指揮していた人物だと。(指摘したらやばい事になりそうなので黙っているが)

※ひょっとしたらあるかもしれない18年後位のラムロッドのスメイロトへのセリフ。改革策を提案時周りが反対してる中、父親が「私は父親としてラムロッドを応援したい」と支持を表明。
直後息子がブチ切れて叫ぶ。「あなたが!何時! 私に父親らしいことをしたぁ!!?」(おおー、ちょっと遅れてきた倅の反抗期って奴か)スメイロトは寧ろ安心した。

※ひょっとしたらあるかもしれない15年後位のアンドレアのスメイロトへのセリフ。「大丈夫だよ、私は何があってもお父様の味方だからね。お父様が裏で何をしてても。うっふっふっふっ」「ひえっ」
 母以上の才覚と伯母を上回る剣才を持ち合わせた超サラブレッドな才女。父親から見ても「この子が王子として生まれてたら間違いなく国が割れてこの子が勝っていた」と言わせしめた。

※Qところで『絶対悪』さん、どうして魔将を取り逃がしたんです?  A「うおお、こいつ、七彩の竜王なんだか知らねぇけどいい加減しつけぇんだよ!!」「逃がさぬぞぉぉぉ世界を穢す汚物がぁぁぁ!!」
 絶対悪なのにウンコ呼ばわりされた挙句、追いかけまわされ振り切るまで手間がかかり魔将を逃がしてしまいました。
 ちなみに竜王は魔将をガン無視してました。理由は殺すつもりならいつでも殺せるからですね。ツアーから見ての変態エルフ王デケムと同じ扱いです。
 絶対悪さん曰く、戦うにはまだ早い。もっと鍛えて手札を揃えて情報を絞り切って逃げれないようにしてからぶっ殺すとの事。どっかの御骨様と戦術思考が似てるかも。

※ツアーってギルメンとの相性はどうかな? アイダホ=完結作でもそうだが相性はよろしくない。アイダホは秩序寄りだけど、あの手の上からマイ秩序をマウントしてくる手合いは嫌い。

※ジュンノとの間に出来た子供の名前はユノ(♀)。法国の子供では1番目。金髪で赤目なので皇室の血が思い切り見た目に出ている女の子である。

※ラクレマとの間に出来た子供の名前はクリム(♂)。法国の子供では2番目。顔立ちは母親似なので遺伝子はラクレマ寄り。

※フィオナとの間に出来た子供の名前はフィオリア(♀)。法国の子供では3番目。顔立ちは母親似で赤髪と赤目という組み合わせ。

※フォーレ・バレーナ・ペルスズ 15歳。愛人第一期陣の最後の一人。タレントや才能がメインの第一陣であるが、彼女の場合名家の異系交配による将来的な可能性を模索している部分もある。
 巨大なピンクブロンドのドリルヘアー。オホホと言いそうな高飛車系令嬢っぽい見た目だが世間体の態度と裏腹に本性は小動物系のオドオドした性格。
 愛人計画の際の名家各家の令嬢立候補にて、三女故に断れずに立候補せざるを得ず言われるがままだった。スメイロトに送られた後で超レアなタレントが発覚し実家の扱いが掌クルクルになり内心ブチ切れスメイロトに泣きついている。
 タレントは『触れた鏡とよく知っている任意の鏡ひとつとを一日二回ゲートで繋げる事が出来る』。これで法国と聖王国のカヴァー拠点との往来が劇的に楽になった。
 普段は神殿で聖典や特殊部隊を法国の別の都市へ派遣する時ゲートを開いて送り込む仕事もしている。愛人時も聖王国内の愛人工作班や漆黒聖典の移動で彼女は毎日二回のお勤めを果たしている。



セイ王国で理想のヒモ生活()  『元アインズ・ウール・ゴウンギルドマスターモモンガ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クレマンティーヌ。元漆黒聖典の一員。

 

祖国から逃げ出し、自由を望む歪んだ女。

 

陽が落ちて夕闇に沈みかけているエ・ランテル市街地と貧民街の境界線。

薄暗い路地を歩きながら、クレマンティーヌは獲物を探していた。

彼女は嗜虐趣味があり、貧民街の住人を適当に選んでは遊んでいた。

クレマンティーヌは現在身を寄せているズーラーノーンの拠点に居るのがあまり好きではないからだ。

本来は彼らの切り札にでもなる手土産でもある方が断然よかったのだが、今回それを持ってくるのは躊躇われた。

本国が本腰を上げるような騒ぎを起こせば、まずやってきそうなのは腰が重い漆黒聖典よりも元皇弟の手下のモンスター共だ。

優等生面している親戚のクソアマか元同僚の淫乱女が一言告げ口すれば、あの男が捜索隊としてアルラウネ達を派遣してくるリスクも有り得る。

故に冒険者や表側の街の住民たちは『遊び』で狙う事が出来ない。

 

(あいつらがやってきたら、もはやどうにもならなくなるからね……)

 

クレマンティーヌは、プライドが高く自分の力に自負がある女だ。

自分が人類の選ばれた領域、英雄級である事に自分のアイデンティティすら感じていた。

 

だが、上には上がある事もよくよく身に染みている。

粋がっていた時代の自分を『躾けた』人外領域すら超越した漆黒聖典最強の化け物。

六大神の血を引くと言われてる先祖返りのアンチクショウもそうだがそれだけではない。

 

あのむさ苦しい逸脱者たる『人間最強』と呼ばれるバーバリアンや。

自分の元上官たるむかつくすまし顔を何時も浮かべていた青年のふりをした神人たる少年。

他で言えば聖王国に根を張り巡らせ、ご苦労な事に法国に協力して慈善事業染みた事までしてるスメイロトだ。

 

彼女にとって特に性質が悪いのはスメイロトだ。

奴は手勢のモンスター達を軍隊の様に使役している。

質も量も組織力も、全てに於いて忌まわしい兄の一人師団よりも上手。

兄が師団を名乗るのであれば、スメイロトは一人国軍だろう。

逸脱者級の個体に率いられた英雄級の個体の群れという反則的な部隊を複数編成している。

特にリ・エスティーゼ王国に送られているのは、難度100以上の精鋭部隊だ。

八本指の麻薬生産能力を前年から削ぎ落し続けているのはたった二つの分隊の様だが、それらのどちらかが来るだけでも自分は詰む。

自分以上の力量の存在がチーム編成でやってくるのだ。

古巣の漆黒聖典よりも身軽に即時やってくる。

捕捉されたら最後、逃げられようがない。

 

「ちっ……」

 

思わず舌打ちが出る。

遠方の聖王国に居る男に、いちいち怯えなくてはならないのが忌々しい。

正室の聖女王と側室の神官長に挟まれて大人しく王配ごっこでもしていればいいものを。

 

「ちっ……!」

 

クレマンティーヌにとって、あの男は隊長以上にいけ好かない。

普段からへらへらと笑っているのもそうだが、偶に見せるあの変に達観した目線が隊長以上に気に入らない。

最高執行機関の年寄り共の思惑で差し出された癖に、そんな男に情を移して喜んで股を開いて子供まで作ってる色ボケ共もだ。

 

(くっだらない)

 

国の都合で上の判断で決められた男と子供作って、それに幸せを感じてるとか心底おめでたいガキ共だ。

自分の様に都合よく使われて、体裁のいい孕み袋扱いだろうに。

ムカムカしたので路面に唾を吐き捨て、クレマンティーヌは向かいを歩いてきた物乞いとすれ違った。

 

「お嬢さん、おめぐみごっ!?」

 

すれ違いざまに、喉に一撃見舞う。

スティレットを根元まで押し込みゴリゴリと捩じると、中年の男は吐血しながら痙攣するばかりだった。

 

「ふん、わっるいねー。私ってば、機嫌悪くてさぁ? 運が悪かったと思って諦めて?」

 

スティレットを引き抜くと、物乞いは声もなく仰向けに倒れた。

弱まっていく痙攣を見ながら、クレマンティーヌは恍惚とした笑顔を浮かべ。

 

「へ?」

 

次の瞬間に背中から感じた、悍ましいほどの瘴気を受けて硬直した。

 

「へ、な、にこれ」

 

こわばる体を必死に動かし、振り向いた先に居たのは。

 

「ひ」

 

引き攣った悲鳴すら、強制的に途切れる。

 

 

 

 

それは、まさしく死の具現だった。

 

 

 

 

エルダーリッチ?

かつてとある遺跡で遭遇し人間最強を中核とした漆黒聖典複数人で戦い、戦死者を出しながらも辛勝したナイトリッチ?

否、そんな生温い相手ではない。

その程度如きのアンデットではない。

 

巨体に纏いつくように吹き上がる禍々しい瘴気。

夜の闇を凝縮したような黒いローブ。

手には複数の宝玉を嵌めた巨大な杖を手にしている。

 

そして、虚ろな骨の内部に収められた宝玉と、眼窩に収められた赤い光が彼女を凝視していた。

 

 

 

もし、クレマンティーヌが口をきけていたらこう問いかけていただろう。

 

(スルシャーナ様!?)

 

六大神の最後の一柱にして、永遠の安らぎと久遠の絶望と死を司る神。

人類国家の偉大なる建国の神である存在に酷似したソレは、僅かに首を傾げながらクレマンティーヌに語り掛ける。

 

「あのー、すみません」

 

返事が出来ない。

恐怖と絶望で体が竦み、動くことができない。

死の神が発するオーラにクレマンティーヌは抵抗できず、ただ恐怖で硬直し喘ぐのみ。

 

「ログアウトとGMへの連絡が出来ないんですがあなたもですか?」

 

これがより低レベルの相手なら即座にショック死か失神しただろうが、なまじの抵抗力があるためそれすら出来ない。

何より、祖国が信じていた神が眼前に顕現し、その神威を自分に浴びせかけているという事実が彼女を停止させた。

 

(え、これ、神様が私に直接神罰を与えに来たって奴? え、どうして、そんな!)

 

「えっと……すみません? ログアウトと運営への連絡が出来ないのですが、これってひょっとして新ゲームへの導入だったり?」

 

グイっと接近した死の神が、再びクレマンティーヌに語り掛ける。

更に瘴気の圧が強まったのか、彼女の手からスティレットが抜け落ち路上に落ちて甲高い音を立てる。

ガクガクと笑う両ひざと、その間から黄金の液体が滴り落ちるが羞恥の意識すらもはや働かなくなっていた。

 

(いやだいやだ、どうしてわたしだけ、わたしがひどいめにあっていたときにはきてくれなかったのにどうしていまさらくるのですか!?)

 

「ちょっと、無視は酷いんじゃないですか? 今どき、異形種差別って無いと思うんですけど。というか、ここ何処ですか?」

 

死の神の声音に苛立ちが混じり。

全ての骨の指に超常の力が籠められた指輪が嵌められた手が伸ばされる。

 

「ねえ。私の話を聞いてくださいよ!」

(いやだいやだいやだいやだいやだいやだひどいりふじんすぎるどうしてわたしだけこんなめにやだやだやだ)

 

相手側としては、ボディ、肩にタッチして認知をさせる。

その程度の接触だった。同時に最悪の失念だった。

 

彼の手には『負の接触』が実装されており、接触した味方以外の存在には自動的に負のダメージが流し込まれる。

 

もっとも、PK対戦すら過疎化が深刻化してから久しく体験しておらず。

元々主敵である100レベルプレイヤー達、あるいはそれすら上回るレイドボス等相手にとって微々たるダメージしか入らない事もあり。

最後の年に至っては他のギルドのプレイヤーとの交流もほぼ途絶えていた死の神にとって、他プレイヤーとの接触時にダメージスキルをカットするエチケットすら忘れかけていた。

とはいえまかり間違っても相手はすぐ気づいて指摘してくるか、握手してもほとんど影響のないレベルのダメージしか出ない。

 

「がっ?」

「へ?」

 

ただし、それを「残念あるいはしょんぼりなダメージ」と言えるのはあくまでカンストのプレイヤーだ。

はるかに格下の、Lv30台前半でしかないクレマンティーヌにとって、負の接触は。

 

「ごぶあぁ!!??」

 

たった数秒間の接触で、致命傷となった。

体内を負のエネルギーが奔流の様に暴れ、彼女の生のエネルギーを食い尽くした。

 

「かみさま、こんなの、あんまり、です」

 

死の神の自分の手とクレマンティーヌを交互に見て戸惑う様なそんな仕草。

それがクレマンティーヌが見たこの世で最後の光景だった。

 

「え、ええ………ひょっとして、サービス終了でログインしたエンジョイ勢だったのかな? 悪い事したかぁ~」

 

 

 

 

 

 

そして数十分後、手伝いもせずほっつき歩いてばかりのクレマンティーヌを連れ戻しに来たカジット・デイル・バダンテールが見たものは。

 

仰向けに姿勢が整えられたクレマンティーヌの死体と。

 

「なんじゃ、これは……?」

 

『ごめんなさい。リスポンしたら食べてくださいね』と異界の言葉で書かれたメモ帳が載せられてる謎のチーズとフルーツのお詫びセットだった。

そのお詫びセットはギルメンのアイダホから「これで大概のお詫びはなんとかなる」とアドバイスされた結果作り出したオリジナルアイテムでもあった。

 

その後、あまりにも強大な何者かの気配を感じて猛り狂う死の宝珠の影響でカジットの計画は大幅に変更を余儀なくされる事になるのだがそれはまた別の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、ミスリル級の冒険者チーム天狼と虹は、合同でエ・ランテル市街の巡回を行っていた。

組合長のプルトン・アインザックからの直々の命令を受けた結果、両チームのリーダーであるベロテとモックナックは日没後に一度市街の巡回を行っている。

理由は二つあり、一つは先日ここを出立したガゼフ戦士長と戦士団が戻るまでのモンスターに怯える民心の慰撫。

もう一つは虎の子のミスリル級チームの一つを返り討ちにされ、王都の戦士団が出張らなければならなくなり冒険者組合への失望と信頼の低下を懸念した事だ。

 

二つのチームのリーダーは目を合わせ、苦々しい嘆息を漏らす。

 

功績に目が眩んだクラルグラのリーダーであるイグヴァルジが先走った結果、彼だけが触手の様なもので首を刎ねられ戦死。

リーダーの死亡と同時にわき目も振らず撤退した他のメンバーは命からがらエ・ランテルに到着後、クラルグラの依頼失敗とイグヴァルジの戦死を報告していた。

そもそも、相手の素性の分からなさと先発した金等級があまりにもあっさりと追い返された点を見て、彼らはモンスター討伐に対して慎重に対応する様組合長に進言している。

なのに自分であれば森の中に潜むモンスターを討伐する事も容易いと言ってのけ、ベロテとモックナックの制止を振り払って討伐に出向き返り討ちにされたのだ。

これら巡回もイグヴァルジの失態の尻拭いをしているようなものである。

 

とはいえ、彼らの表情に緊張感はない。

彼ら自身、これらの巡回は慰撫以上の意味はないと理解していた。

さらに言えば、彼らが数日前顔合わせをしたガゼフ・ストロノーフ戦士長の勇姿を見て彼らは感じていた。

これでもう、事件は解決したも同然だと。

噂に聞く国宝の装具こそ纏っていなかったものの、ガゼフから発せられる戦士としての気迫は彼らミスリル級を圧倒せしめる程だった。

戦士団が開拓村の方に旅立った後、エ・ランテルで事件の解決を疑わないものは殆ど居なかった。

ベロテとモックナックもそのうちの二人であり、後数日もすればエ・ランテルに再び平穏が訪れるものと信じて疑っていない。

 

「た、たしゅけてくれぇ、あ、アンデッドだぁぁ!!」

 

その叫び声が聞こえるまでは。

 

「おい!」

「ああ」

 

ベロテとモックナックは頷きあい、後ろのチームメンバーに続くよう指示を出す。

彼らは急激に悲鳴と叫び声が増大し、慌てふためいて逃げ出す群衆が溢れるエ・ランテルの通りを逆行していく。

 

彼らは、恐らく何らかの理由で墓地のアンデッドが市街地に迷いだしたと判断していた。

複数の防衛機構で防御されてる墓地と市街地の境も、極まれにアンデッドが這い出てくるという可能性はあり得るのだ。

実際、少ない例であるがこの数十年で数件は発生して少ないが犠牲者も出している。

 

そしてそれらは、ミスリル級の彼らにとって迅速に討伐できる程度の低級アンデッド。

 

 

 

 

その筈、だった。

 

 

 

 

 

「ちょっと、誰か、俺の話を、聞いて、くださいよっ!!」

 

返事はなく、返ってくるのは叫び声、怒号、鳴き声、悲鳴ばかり。

彼は……モモンガは苛立ち交じりに叫ぶが、彼の声にこたえてくれるものはいない。

路地裏から外に出て、誰に話しかけてもこのありさまである。

なんだか武器を構えてやってきた連中も、自分を見るなり悲鳴をあげて逃げ出していった。

頭に来たので後をついていき、連中の本拠地らしき所で抗議しようとしてもやはり同じだった。

 

中に居た者達……それこそ初期ログインして数時間から、プレイ開始して数日程度の貧弱極まりない装備の者達。

彼らも同じように叫び、泣き、嘔吐し、失禁し、脱糞し、気絶し、奥や二階へ逃げ込み、窓をぶち破って外に飛び出す者までいた。

 

あまりの塩対応に、モモンガの怒りと苛立ちは吹き上がり………何故か沈静化した。

行儀としては悪いにしても思わず舌打ちをし、フロアの隅で震えてる4人の若者達を無視してズカズカと外に出た。

 

「ほんと、なんだよっ、今どき異形種差別とか最低だな!」

 

こんな街、二度と来ねぇよ!と心中で誓い。

飛行の魔法を自分にかけてモモンガは空に飛び立つ。

 

「あれ……でも、ここってどこだ?」

 

ヘルヘイムの辺境にある湿地帯の奥、『グレンデラ沼地』ではない。

見渡す限りの緑地と遠くに広がる山脈と大森林。

 

「そういえば……風を、感じる?」

 

ペタペタと自分を触れる。

持っていた杖のエフェクトを作動させる。

周りをもう一度見渡す。

最後にもう一度、GMへの連絡とウィンドウの呼び出しを試みる。

 

「え………………これは、どういう事だ? ユグドラシル2とかじゃなくて?」

 

不安、恐怖、焦り、そして好奇心が爆発的に吹き上がり……。

 

「…………う。クソっ」

 

また、強制的に鎮静化させられた。

 

モモンガは漸く自分が普通ならざる状況に至っている事を完全に実感した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

 

 

 

「なるほど、遠方からいらした方なんですね」

「ええ、そうなんです」

 

大森林地帯の一番傍に位置する開拓村、カルネ村。

 

「すみませんね朝から早いのにお手数をおかけして……村長さん」

「いえいえ、道に迷われた方でしたら助けるのも吝かではありませんので」

 

その日、村長の家に来客が訪れた。

地味な色柄のローブに身を包み、奇妙な配色の御面を装着した男性だった。

彼は自分を遠方から旅してきた術師と名乗り、この周りの地図を教えてくれないかと依頼してきた。

地図はあるにはある。しかし、測量なんてしてない、大まかな位置しか描かれてない粗末極まりない代物である。

そしてそんな粗末な代物でも、本ですら貴重品のこの村では村長の家でしか置かれていないのだ。

 

「見せて頂きありがとうございます。大きな街道に出るには……エ・ランテルに出ればいいのですね?」

「今から徒歩で行けば夕方……陽が落ちて閉門するまでには到着すると思いますよ」

「そうですか。本当にご親切にありがとうございます」

 

巨体を屈めてペコリと頭を下げる術師に対し、謙虚な人だなぁと村長は感想を抱いた。

都市の人間やら役人やらはやたらと尊大な人間が多いので、こういう人なら自然と親切に出来るのにとも思えた。

お礼をと言い出した術師に対し、ただ地図を見せただけですのでと謙遜する村長。

これも目上の存在に対して警戒心の強い王国民らしい態度ではある。

 

「では、私はこれで失礼します」

「道中お気をつけて、サトルさん」

 

村の入り口まで見送ってきた村長に、モモンガ……もといサトルはもう一度頭を下げる。

入り口付近で遊んでいた子供たちは、村長に頭を下げる人物を珍しいものでも見るかのように見ていた。

 

「あ、そういえば気になっていたのですがあの人達は誰ですか?」

 

村の入り口から外れたところで、一団の武装兵達が簡素な天幕を張り野営をしているのが見えた。

馬を多数連れていることから騎馬兵に思えたが、それにしては装備と馬が粗末だなとサトルは思った。

 

「あの方は戦士長様ですよ。周辺国最強の戦士と名高いガゼフ・ストロノーフ様です、御国ではご存じありませんか?」

「ええ、本当に遠方でして、この近隣で有名な方も噂が伝わってなかったようなので」

 

あれが辺境最強か。と、精悍な体つきの30代ぐらいの指揮官を遠目に眺めた。

昨日の夕方に到着し、今日から大森林に潜んでいると思しきモンスターを討伐するとの事だ。

 

(見た感じ、レベル40もいってない感じだけど大丈夫か?)

 

村の近くに広がっている大森林に、どれ程のモンスターが潜んでいるのか彼は知らない。

あの程度の討伐隊では、それこそ序盤のエリアでしか討伐なんて無理なんじゃないかなという感想しか抱けなかった。

 

「ふーん………ぁ」

 

戦士団の野営風景を何となく見ていると、サトルは何か違和感を感じた。

 

「お?」

 

直後、遠方で爆発音が二つ聞こえた。

 

「え、今の音はなんでしょう?」

「さ、さあ……?」

 

戦士団の野営地でもざわめきが大きくなるのを見ながら、サトルは思案に耽る。

何か、自分のスキルでやらかしていないかと。

勿論、エ・ランテルを恐慌に陥れた絶望のオーラ等は全部オフにしてある。

一つ一つ、整理を続けて原因を探り続けた結果……。

 

(あ……占術用のカウンター切るの忘れてた)

 

誰かがこっそりこの辺を覗いていて、偶然自分を見てカウンターが作動した。

つまりはそういう事だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「観測班のドルイドが負傷した……だと?」

「ハッ、カンソクヨウノケンゾクハバクサンシ、ドウチョウシテイタドルイドニモエイキョウガ」

「………」

 

明け方の郊外の離宮。

私室でスメイロトはドライアドの長から緊急の報告を受けていた。

眷属達の連絡網を束ねる彼女から、スメイロトは衝撃的な内容の報告を受けていたのだ。

念のために追加で派遣しておいた、観測班のドライアドのチームの眷属に損害が出たという。

 

(まさか、偵察用ドローンの要領でこさえた不可視の使い魔が爆散させられた?)

 

ユグドラシルプレイヤーの常として、覗き見する時は必ず間に緩衝材を挟む。

こうする事でパーティーを巻き込んだり、ギルド内での大惨事などを防ぐ。

こちらではカウンターを使えるのは早々居ないとは言え、常に備えさせたのが結果に出たという訳だ。

 

「……誰の仕業だ?」

 

真なる竜王とは思えない。

ズーラーノーンの調査時に噂だけ聞いた深淵なる躯か?

 

(それとも、まさか、プレイヤー?)

 

思考だけがグルグル回る中、スメイロトは跪いて指示を待っている長に告げる。

 

「観測班に通達。ただちに国境外へ退避し、予定地へと脱出」

「実行班に通達。プランをRに変更。確保してあるダミーRを戦士長にぶつけて速やかに予定地へ脱出しろ。暗殺任務は放棄だ」

「ハッ、タダチニ」

「俺は法国にこの件を伝える。かかれ」

 

足早に自分の寝室に戻る。

 

「スメイロト、様?」

「フォーレ。鏡を貸してくれ。『商会』に移動してジュンノに会う必要がある」

「は、はい?」

 

寝台から起き上がった全裸の令嬢に指示を出し。

スメイロトはシーツに包まっていて、何故か下半身は丸出しな褐色少女のお尻をペチペチと叩く。

 

「ハイネ、寝起きで済まんが身代わりを頼む。今すぐ外出しないといかん」

「ふえっ?」

 

暗殺失敗とイレギュラーが発生した事について報告を急ぐスメイロトであるが。

数時間後にカヴァー拠点の『商会』で協議中に追加の報告である、聖王国の国境外に存在する監視哨からの緊急連絡を受けた。

 

 

『緊急連絡。国境外南西監視哨より、上位悪魔らしき影が北上中。至急、警戒されたし』

 

「うわー……マジかよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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